同じ収入のビジネスパーソンでも、お金が貯まる人と貯まらない人がいます。
この両者の違いは、一つには出費の管理の仕方、貯蓄に対する考え方と捉え方にあると言って良いでしょう。
そこで今回は、「収入>支出」の家計を作り、余裕のある気持ちで人生を過ごしていくための考え方を考察していきます。
1.お金を貯めるにあたって、中長期でのイメージを持つこと
2.現在の家計について把握すること
3.預金の残高を積み上げるための仕組みづくり
という3つのステップで、見ていきます。
お金を貯めるにあたって、中長期でのイメージを持つこと
目的を意識せずに貯蓄を始めることは、モチベーション維持することが難しいです。貯まる家計づくりの第一歩として、まずは家計の出費部門の全体像を見渡し、いつ、どれくらいのお金が必要であるのか。状況を正しく把握するところから始めることがポイントです。最初からファイナンシャル・プランナーなどのプロにアドバイスを求めてみるのも間違いではありませんが、やはり敷居の高さを感じるものです。そこではじめの一歩は、例えば、エクセルやノートに、10年先までの青写真を描いてみることから取り組んでみましょう。家族構成と、誰が何歳のときにどんなイベントがあるかを書き出してみると、いつ、いくらの資金が必要になるかが明確に分かります。
より簡単に見通しをつけるなら、
日本FP協会のライフプラン診断
全国銀行協会のライフプランシミュレーション
といったサービスも利用できます。
自分や家族の年齢、収入などを入力していくだけで、何歳頃は資産がいくらで、出費がいくらかといったことをイメージすることができます。
自分と家族の未来を想像し、具体的な数字を落とし込んで目標を立てることからはじめましょう。
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現在の家計について把握すること
出費の見直し編
その上で重要になるのが、出費の「体質」を正しく把握することです。家計簿をつけることは手間がかかりますが、生活にかかるコストを知れば、節約できるポイントを探せるようになります。これが、貯められる家計を作る第一歩です。
家計簿を最近つけていない・つけたことがないという方は、まずは大雑把にでも、家賃や電気代などの固定費と、食費・消耗品費等、それぞれの項目でどれくらいの出費をしているかを書き出してみましょう。
「意外に使ってなかった」「食費でこんなに使っていたとは驚きだ」等、自分の生活を振り返る機会にもなっておもしろいものです。
また、もし夫婦の一方だけで家計を管理している場合は、現在と未来の家計の状態について、ふたりで共有してみることもおすすめです。貯蓄に対する価値観や目標を共有できるようになります。
収入源の見直し編
有効求人倍率が1.59倍*1(令和元年8月時点)と売り手市場になっている今、転職で収入アップのチャンスを求める人もいるかもしれません。ただ、転職は人間関係が変わったり、生活のリズムが一新されたりと、自分と家族の生活に大きな変化をもたらします。
そこで、勤務先が副業を容認している場合は、収入源を増やしてみるのも一案です。
働き方改革が進み、会社によっては残業が抑制される中、厚生労働省は副業・兼業を推進する政策を平成30年から始めています。*2
俗に「副業元年」と呼ばれるようになった出来事でしたが、それから数年余りが経ち、世の中の副業に対する認識は大きく変わり始めていると言って良いでしょう。
2018年10月時点の調査によると、副業を行っている人の平均月収は6.82万円となりました。*3
気になる労働時間は、1週間あたり平均10.32時間ほどで、内容としては飲食店でのアルバイトやライターの仕事をしている人もいます。*4
ところで、副業で収入が増える場合に気をつけるべきことがあります。それは税金です。本業の給与所得以外に年間で20万円以上の収入が発生した場合、確定申告を行う必要があります。
また、本業の収入と合わせた額によっては所得税額の税率が上がってしまう可能性も出てくるため、思わぬ所得税の負担増に驚くことがあるかも知れません。
この点は十分に注意をして、収入アップを楽しみながらも正しい納税を心掛けましょう。
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預金の残高を積み上げるための仕組みづくり
家計の入出金について確認を終えれば、次は貯めるための仕組み作りです。
1ヶ月の出費を把握すれば、収入から支出を引いて余った部分のお金は貯蓄に回せばいいように思われます。実に簡単です。
しかし、「お給料が振り込まれる口座に残った分を貯めておけばいいや」と考えていると、お金は貯まるようで貯まりません。次のお給料日前に残高を見た時、気が緩んでしまい、気持ちが大きくなるからです。
ここで大事になるキーワードが「先取り貯蓄」。
収入から出費を引いて余ったお金を貯蓄に回すのではなく、予め貯蓄分を差し引いて、家計を管理するという考え方です。
給与振り込み日に自動的に他口座へ振り込まれるように登録しておき、生活資金口座に入金されないようにしておくと便利です。
この際、
- 財形貯蓄
- 積立型定期預金
- 個人型確定拠出年金
というキーワードを抑えておくことも心掛けましょう。
財形貯蓄
毎月の給与とボーナスから任意の額だけ差し引いてくれる財形貯蓄は、計画的に資金を貯める強い味方です。貯蓄の目的を定めない一般財形と、マイホームの購入・建築・リフォームに使える財形住宅貯蓄、老後資金の貯蓄として積み立てる財形年金貯蓄の3種類から、目的に合ったものを選んでみると良いでしょう。
財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄については、合算で550万円まで利息が非課税になります。低金利が続く中だと実感しづらいかもしれませんが、残高が積みあがってくると、税制のメリットが目に見えてくる場面もあるかもしれません。
積立型定期預金
銀行で積立型定期預金口座を作り、任意の日に普通預金から指定した額を振り替えます。毎月の引き落としのほか、ボーナス月の設定もできます。親の名義の普通預金から子供名義の積立型定期預金口座への振替も可能で、子どもの名前で預金を積み立てていきたい場合にも便利です。
個人型確定拠出年金
老後の備えを厚くしたいという場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入を検討するのも良いかもしれません。預金のほか、投資信託を使って資産増加を狙っていくことができます。積み立てしている資産について、掛け金が所得控除を受けて毎年税金が軽減されること、運用で値上がりした分の税金がかからないこと、年金を受け取るときにも税制面で優遇がある制度ですが、原則的に60歳まで引き出しができないことに注意が必要です。
また、自営業者かサラリーマンかといった立場によっても掛け金の上限が変わってくるので、資金計画を立てるにあたって、制度について正しく理解してから利用しましょう。
一番大事なことは、貯めると決めた口座からはお金を引き出さないことです。
財形貯蓄や積立型定期は、途中解約が可能です。解約をすると、予定していた貯蓄額を達成することが難しくなってきます。資金計画に基づいて、強い意志で資産形成に取り組むことが何より重要です。
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最後に
「お金がない」という嘆きから解放されるには、「収入>支出」の状態をつくってから、それを維持していく必要があります。金銭面のストレスから解放されるべく、家計の現状を把握し、資産を積み上げていけると良いでしょう。
*1
出所)独立行政法人 「労働政策研究・研修機構」
*2
出所)厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
*3
出所)パーソナル総合研究所 「副業の実態・意識調査」
*4
出所)日本経済新聞 「副業の平均月収はおいくら? 6万8200円と民間調べ」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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