総務省が毎月発表している統計の一つに、「家計調査」があります。
一般家庭の収入、支出、貯蓄、負債がどのくらいあるかを調査し、景気の動向をはかるものですが、調査結果は地域別や年齢別、品目別といった形でも公表されていて、「土地柄」や「年齢」で異なる生活の様子を垣間見ることもできます。
将来、どんなことにお金がかかるようになるのか想像する材料にもなるでしょう。
家計調査でわかること
家計調査は、世帯あたりの月々の収入と支出を把握するのもそうですが、支出に関しては、買い物をした時のレシートのような細かさでお金の使い道を明らかにしています。
例えば「食品」の場合、肉であれば鶏肉なのか豚肉なのか、はたまた牛肉かその他か、というところまで調査しています。
例えば、2019年5月の調査結果を見てみましょう。
標準指標とされる、「二人以上の世帯」の場合での消費支出と、大まかな内訳はこのようになっています。*1
なお、増減率の「名目」というのは実際の金額、「実質」というのは物価水準の変動を除いた場合の増減を表しています。
見てみると、「住居」の金額が極端に少ないように感じますが、これは持ち家の人の場合は家賃がかかりませんので、ゼロとしているからです。
賃貸の世帯の家賃と、家の修繕や設備交換などにかかった費用をならすと、このような金額になるということです。
地域によってモノの値段は異なりますが、このように食費や生活費などの平均的な数字を見て、どのように感じるでしょうか。
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コーヒーに一番お金を使う都市はどこ?
家計調査を様々な切り口で見ると、興味深い結果も出てきます。
例えば、全国の都道府県庁所在地(東京は区部)と政令指定都市のなかで、日本で一番コーヒーにお金を使っているのは、京都市です。
1世帯あたりの年間支出金額は8,372円で、全国平均(6,301円)の1.3倍となっています。
総務省によると、人口あたりの大学の数が多いので、教授や学生がコーヒーを飲む文化が根根付いたのでは、と言われているそうです。
次いで大津市、奈良市、広島市、福岡市となっています。
図1 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
また、性別によってお金の使い道が違うこともあります。
化粧品などに関しては想像しやすいと思いますが、このような調査結果もあります。
下の図は、単身世帯でのペットに関する年間の支出です。
図2 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
ペットの購入やペットフード、動物病院などへの支出が含まれていて、35歳~59歳の女性の支出がとても多くなっています。
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50歳代で一気に増える支出とは
もちろん、お金の使い方は年齢によっても変わります。
ここで、先々どのようなことにお金が必要になるかを見ておきましょう。
30歳代から増え始めるのが、教育関係費です。2018年の年間支出は以下のようになっています。
図3 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
やはり、50歳代では大学に通う子供への「仕送り金」が増えています。40歳代の世帯の約4倍となっています。
教育関係費全体を見ても支出がもっとも多い世代です。これを見越して早めに資産形成をしておくのも良いでしょう。
そして、特別大きな金額というわけではありませんが、60歳代、70歳代にも支出の特徴があります。
下の2つのグラフを見てください。2018年の年間での「健康」に関する支出ですが、それぞれ、何に対する支出か分かるでしょうか。
図4 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
図5 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
図4は「スポーツ施設使用料」(二人以上の世帯) です。60歳代がもっとも多く、もっとも少ない30歳代の世帯の約9倍です。時間に余裕ができる、ということも関係しているでしょう。
そして図5は、サプリメントなど「健康保持用摂取品の支出金額」(二人以上の世帯) です。
サプリメントの他、青汁やローヤルゼリーなどが含まれます。
このように、将来どのように自分の生活が変わっていくのか、調査結果から想像することもできるでしょう。
また、年齢による違いは、貯蓄面にも現れています。
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年齢による貯蓄形態の違い
次に、貯蓄の状況についてです。それぞれの世代が、どのような形で貯蓄しているか、というものです。
貯蓄ゼロの世帯を除くと、下のような平均値になっています。
図6 出所) 総務省統計局「家計調査結果」を基に三菱UFJ国際投信作成
「通貨性預貯金」とは、定期の預貯金とは違い、銀行などの口座からいつでも引き出せるお金のことです。
40歳未満では通貨性預貯金の割合が多いですが、50歳代以降になると、株式などの有価証券の保有金額が大きく増えていっています。株式投資を始める人が増えていると見られます。
そして有価証券の保有金額は、70歳代でもっとも大きくなっています。
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まとめ
ここまで、総務省の「家計調査」の内容を見てきました。ここでご紹介した中には、予想外の調査結果もあったかもしれません。
このように消費者が何にどれくらいお金を使っているか、という情報は、過去のデータを参照することで、物価の推移や関連企業の業績を推測する材料の一つにもなっています。
また、お金の使い方はその時々の株価によっても変動するという特徴があります。
株価が上がっている時には支出全体が増え、逆に下がっている時には、節約意識がはたらいて支出も抑えられる、という傾向がありますので、消費者が景気をどのように捉えている推測することもできる指標の一つです。
ぜひ、参考にしてみて下さい。
*1
出所)総務省統計局 「世帯主の年齢階級別1世帯当たり支出金額,購入数量及び平均価格」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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