食品の値上げはなぜ起きた?価格動向や影響を受ける業界、株価への影響を知っておこう

食品の値上げはなぜ起きた?価格動向や影響を受ける業界、株価への影響を知っておこう

2022年に入ってから食品の値上げが相次いでいます。値上げは生活費の増加につながるため、私たちにとって身近な問題です。食品の価格が上昇すると、経済や株価にどんな影響を与えるのでしょうか。

今回は、食品の値上げが起きた理由や価格動向、株価への影響などについて解説します。

食品の価格動向

まずは食品の価格動向を確認しておきましょう。

農林水産省の資料によると、2020年の価格を100とした場合、食料の消費者物価指数の推移(全国:2012年1月〜2022年8月)は以下の通りです。

出所)農林水産省「我が国・主要国における食料の消費者物価指数の推移

2022年8月は食料全体で104.5、生鮮食品を除く食料で104.2となっています。2014年4月と2019年10月の上昇は、主に消費税率の引き上げによるものです。2014年以降は緩やかな上昇が続いていますが、2021年後半から上昇ペースが高まっていることがわかります。

次に、値上がり率が高い主な食品を見てみましょう。

出所)農林水産省「食品価格動向調査(加工食品)2022年10月
令和4年10月【10月10日~10月12日】(PDF)(10月19日更新)

加工食品では、小麦加工品や油脂類の値上がりが目立ちます。2022年に入ってから、小麦粉や食用油の価格上昇ペースが大きく増加しています。

出所)農林水産省「食品価格動向調査(食肉・鶏卵)2022年10月
令和4年10月【10月10日~10月12日】(PDF)(10月19日更新)

出所)農林水産省「食品価格動向調査(魚介類)2022年10月
令和4年10月【10月10日~10月12日】(PDF)(10月19日更新)

※平年比とは、2017〜2021年度の食品価格動向調査業務による同月の調査価格の5ヵ年平均価格と比較したもの

食肉・魚介類では、輸入牛肉やまぐろ、さけの価格が平年比113〜127%程度と高くなっています。

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食品が値上がりする理由

食品が値上がりする主な理由は以下の通りです。

原材料価格の上昇

天候不良や国際紛争などによって生産量が低下すると、原材料価格の上昇を招き、食品価格が値上げされます。

近年では、地球温暖化を背景とした記録的な猛暑や自然災害が頻発しており、農作物の生産に影響を与えています。*1
また、ロシアによるウクライナ侵攻による物流の停滞が加わり、小麦等の国際価格の上昇につながっています。*2

物流費の上昇

2022年に入り、ガソリン価格が値上がりしています。全国のレギュラー現金価格(円/リットル)は、2021年初めは130円台でした。しかし、その後は上昇傾向が続いており、2022年1月以降は170円前後で推移しています。*3

ガソリン価格の高騰により物流費が上昇すると、コスト増加分を小売価格に転嫁する必要があるため、食品の値上げの要因となります。

人件費の上昇

人件費の上昇も、食品が値上がりする理由の1つです。人手不足で人件費が上昇すれば原価が上がるため、利益を確保するには値上げが必要です。近年では、新型コロナウイルスや少子高齢化の影響で人手不足が生じやすい環境にあります。

食料自給率の低さ

食料自給率とは、国内の食料全体の供給に対する国内生産の割合です。日本の食料自給率(2020年度)は、カロリーベースで37%、生産額ベースで67%となっています。諸外国に比べて低く、先進国の中では最低水準です。

品目別に見ると、米(97%)や鶏卵(97%)、野菜(80%)は高い一方で、小麦(15%)や大豆(6%)は低く、大部分を輸入に頼っています。*4

異常気象などで生産量が減少すると、輸出国は自国内の供給を優先するのが一般的です。食料自給率が低い品目は国内への安定供給が難しくなり、輸入価格が高騰して食品の値上がりにつながります。

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食品の値上げで影響を受ける業界

食品の値上げで影響を受けるのは主に食品業界です。ただし、食品業界といってもさまざまな業種・業態があります。

原材料や物流費、人件費が高騰すれば、食品メーカーは値上げを検討せざるを得ません。値上げが売上アップにつながる可能性もありますが、卸売業や小売業との交渉も必要です。一般消費者に受け入れられなければ、売上減少につながる恐れもあるでしょう。

卸売業や小売業は、メーカーの値上げ分を販売価格に転嫁できるかが課題です。価格に転嫁できなければ利益が減少し、経営環境は厳しくなります。

旅館・ホテルや飲食店、持ち帰りサービスでは、食材の仕入価格が上昇すると宿泊料金や販売価格の値上がりにつながります。安定した利益を確保するには、値上げによる顧客離れを防ぐ取り組みが必要になるでしょう。

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食品の値上げが株価に与える影響

食品の値上げは企業業績を左右する要因の1つであるため、食品業界を中心に株価にも影響を与えます。収入が上がらない中で食品の値上げが続けば、消費者心理が冷え込んで景気が下がり、株価低迷を招く恐れもあります。
ただし、株価はさまざまな要因で変動するため、今後どのように推移するかを予測するのは困難です。

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まとめ

食品の価格は、原材料価格や物流費、人件費などに左右されます。また、日本は食品自給率が低いため、輸入に頼っている品目ほど外部の影響を受けやすい傾向にあります。食品の値上げは経済や私たちの生活に大きな影響を与えるので、今後の動向を注視しておきましょう。

*1 出所)環境省「地球温暖化の現状

*2 出所)日本貿易振興機構(ジェトロ)「ウクライナ情勢が小麦、野菜、衣料品などの国内産業にも影響

*3 出所)資源エネルギー庁「石油製品価格調査(給油所小売価格調査)調査結果一覧

*4 出所)農林水産省「知ってる?日本の食料事情2022」P1.10

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