自分の老後の生活を想像したとき、楽しみというより不安という人がほとんどだと思います。老後生活資金不足の問題を見聞きするうちに、その不安がますます募るという人も多いのではないでしょうか。とはいえ、若い頃からの行動と心がけ次第では、老後の安心を生むこともできるはず。老後不安に負けないために、早いうちから対策を考えていきましょう。
高齢者の貧困が増えている不安
まずは不安の原因を整理してみましょう。以前、高齢者の貧困がニュースなどで話題になりました。リタイア後に生活保護の世話になるなんて自分には関係ないと思いつつも、不安は尽きないものです。
実際、現在生活保護を受けている人の過半数は高齢者世帯です。厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(平成31年4月分概数)」*1によると、平成31年4月には世帯数として895,247の高齢者世帯が生活保護を受けています。前年同月に比べると16,206世帯増えており、また2年前の4月からは35,922世帯増えています。ちなみに、平成31年4月時点で生活保護を受けている高齢者世帯のうち、約91%は単身・高齢者世帯です。
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老後生活資金が足りない不安
多くの人に、より強く不安を感じさせるきっかけとなったのが、老後生活資金として2,000万円不足するという話題だと言えるでしょう。これは、金融庁が発表した「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」*2のなかで、「夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職夫婦」というモデルケースを用いていくつかの条件を元に計算したところ、老後生活資金として1,300万円~2,000万円足りないというような記載をしたことが発端です。
実際には、老後生活資金として不足する金額は現役時代の年金保険料加入状況や、お金の使い方、居住状況、預貯金や投資などによる資金準備状況をはじめとした、さまざまな状況によって個々に異なります。
問題の発端となった報告書のなかにも計算の元になる条件は記載されているものの、2,000万円という具体的な数字だけが一人歩きしたこともあり、これまでなんとなく感じていた不安が表面化してきたという人も多いでしょう。
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不安を安心に変える!いまからできる対策とは
少子高齢化が進んでいる昨今、公的年金だけを頼りに生活できないということは致し方ないことです。今回の問題は、その事実を多くの人が改めて認識するきっかけに過ぎません。老後に不安を感じ続けるよりも、経済的に困らない老後生活に向けていまから行動し、自分自身で安心感を生み出していきましょう。
必要となる老後生活資金を知る
老後生活資金として必要となる金額はさまざまな要因で決まり、人それぞれです。2,000万円不足という情報に惑わされることなく、自分の場合の老後生活資金がいくらになるか、ざっくりとでも見積もってみるとよいでしょう。
年金保険料をきちんと払う
公的年金だけでは生活費に足りないとはいえ、そもそも年金を払ってなければ将来の老齢年金はもらえません。会社員の人は厚生年金保険料が給料から自動的に引かれていますが、自営業やフリーランスの人のなかには国民年金保険料を払っていない人もいるようです。老後の収入源を築くために、きちんと年金保険料を納めましょう。
自分が将来もらえる年金額を定期的に確認する
いくら年金をもらえるかを知ることで、いくら準備すべきか見込みを立てやすくなります。毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」や日本年金機構が提供している「ねんきんネット」などで自分の年金額を確認する習慣をつけましょう。
50歳未満の人は、現在までの加入実績を元に計算された年金額になるため、予想以上に少なく感じるかもしれません。しかし、今年届くねんきん定期便に書かれている年金額は、未納などの特別な事情がない限り、昨年よりも増えているはずです。こうやって毎年増えていく年金額を確認することで、安心が生まれてくるでしょう。
現在の生活にお金をかけすぎない
老後は慎ましい生活をすると考えている人は多いようですが、一般的に生活レベルは上げやすく、下げにくいものです。現在の生活でも、昇給などで収入が上がるのに比例して支出額も上がっている人もいるのではないでしょうか。生活レベルをほどほどに、必要な出費かどうかを見極めて、お金をかけすぎない暮らしを心がけましょう。
そのためにも年間に使っている金額も把握しておきたいものです。家計簿をつけなくても、手取り年収から年間の預貯金などで増えた金額を引けば、年間の支出額がわかります。毎年の預貯金増額分と支出増額分では、どちらが割合的に多く増えているか比べてみるといいでしょう。支出のほうが多い人は、支出を抑え、貯蓄をする努力をしていきましょう。
子どもにお金をかけすぎない
人生の3大支出といわれる教育費ですが、お金をかけすぎるのも自分達の老後資金不足の不安に繋がります。子どもの進路の選択肢を広げるためにも、さまざまな習い事や教育を受けさせたいのが親心ではありますが、せっかくお金をかけても子どもが望まないのでは無駄な支出になりかねません。その分、自分達の老後のために蓄えておくこともできるはずです。
無理なローンを組まない
住宅ローンをこれから組む人、いま返済中の人も、無理な組み方をしていないか今一度見直してみましょう。たとえば完済年齢がリタイア後になっていないか、支払利息が多すぎないかなど。退職金で完済することを見込んで住宅ローンを組む人も多いですが、そうすると老後資金のためには退職金をあてにできなくなります。繰上げ返済や借り換えなどで利息を軽減できないか見直してみるのもいいでしょう。
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金融リテラシーを高めることで経済的な不安を解消
お金にかかわる、金融や経済に関する知識や判断力のことを「金融リテラシー」といいます。最近金融リテラシーという言葉を聞くようになってきましたが、お金について十分な知識をもち、お金との付き合い方について適切に判断する力を持つことは、経済的な不安を軽減させることができます。
老後の経済的な不安軽減のためには、たとえば次のようなものがあります。
- 老後の年金額を知るにはどうすれば良いか
- 老後の備えとして必要な金額を見積もるにはどうすれば良いか
- 老後資金を準備するためには、どんな金融商品を選べば良いか
- 老後に病気や要介護状態になったときにはどんな公的保障があるのか
- 万が一のセーフティーネットにはどんなものがあるか、など。
金融リテラシーを高めるといっても、一朝一夕にできるものではありませんから、できるだけ早いうちから取りかかるのがおすすめです。安心感もより高まるでしょう。最近ではファイナンシャルプランナーなどを招いて企業内セミナーや相談会を実施する会社もありますから、このような機会を有効に活用するのもいいですね。もちろん、自分自身でも積極的にお金の勉強をして、金融リテラシーの向上に努めていきましょう。
*1
出所)厚生労働省「「生活保護の被保険者調査(平成31年4月分)」
*2
出所)金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書(令和元年6月3日)」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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