「ゆとりある老後に必要な資金」といわれてピンとくる方もあまり多くはないのではないでしょうか。
もっとも、老後といっても現在30~40歳代であればピンとこないという方もいらっしゃるでしょう。
その一方で、勤務先で定年を目前に控えているという方もいらっしゃるかと思います。
年齢によって老後に関する関心の高さは異なってくるかと思いますが、ここではどのくらいの資金が必要かを計算してみましょう。
老後に必要な資金を計算するにあたっての考え方
老後に必要な資金を考えるのにあたっては、支出だけを考えるので十分とはいえないでしょう。定年後に収入がないかといえばそうではありません。定年後に新たに仕事に就かなくとも年金収入があるでしょう。
ここでは、老後に必要な資金を理解するために以下のような簡単な式を考えることにします。
老後に必要な資金は、毎年の収入と支出の差額をその後何年必要とするのかという考え方です。
(老後の年間支出-老後の年間収入)×必要年数=老後に必要な資金
ただ、以下のようなツッコミや指摘もあろうかと思います。
「暮らし向きはそもそも年齢に関係なく人それぞれだし、自分の老後の支出のイメージがつかない」
「老後の収入は年金が主な収入源であろうが、世帯構成もばらばらで一概にはいえないのでは?」
「必要年数って、寿命ってことでしょう? それは誰にも分からないでしょう」
こうしたポイントを見ていくと、老後に必要な資金を計算するにあたって、事前に分かっている、もしくは確定している要素の方が少ないかもしれません。
(目次へ戻る)
老後の支出はどのくらいか
では、老後の支出はどのくらいなのでしょうか。
生命保険文化センター「平成28年度 生活保障に関する調査」を参考にすると、「老後の最低日常生活費」の月額平均額が22.0万円です。
また、老後は時間もあるので趣味などにより積極的にお金を使ってみたいという方もいるかもしれません。「ゆとりある老後生活費」を見ていくことにしましょう。
「ゆとりある老後生活費」とは「老後の最低日常生活費」と「老後のゆとりのための上乗せ額」を合計したものです。
その「ゆとりある老後生活費」ですが、月額平均額が34.9万円となっています。
その内訳は「老後の最低日常生活費」の月額平均額が22.0万円、また「老後のゆとりのための上乗せ額」の月額平均額が12.8万円となっています。
では、「老後のゆとりのための上乗せ額」はどのような使途が想定されているのでしょうか。これは以下のような項目が主な使途となっています。
- 旅行やレジャー
- 身内とのつきあい
- 趣味や教養
- 日常生活費の充実
こうした項目を見ると、老後を楽しむために削れない!と思われた方も多いのではないでしょうか。 だとすると、老後に必要となる支出は「ゆとりある老後生活費」を前提にしなければならないかもしれません。
(目次へ戻る)
老後の収入とはどのくらいか
老後の収入というと年金ばかりが強調されますが、実は、時代は変化しつつあります。総務省の「平成29年就業構造基本調査 結果の概要」によれば、全国の65歳以上の有業率が24.4%となっています。
有業率とは、有業者数がどのくらいの割合いるかという比率ですが、実に4分の1近く仕事をしていることになります。
もっとも有業者といっても、休んでいて今は収入を得ていない人なども含まれているので、必ずしも収入があるわけではないですが、この比率は知っておいてもよいでしょう。
ただし、ここでは老後の収入の計算を簡単にするために、収入が年金のみとしてみましょう。
年金は退職するまでの就業状況や給与水準、また生年月日が算出する際に関係してくることから、一様に言えるものではありません。
ここでは、厚生労働省の「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」のデータを参考に年金支給額を見ていきましょう。
まずは、企業に勤務してきた夫と専業主婦であった夫婦の世帯(夫と妻は同じ年齢と仮定します)を考えてみましょう。
平成28年度末現在の厚生年金保険受給者の平均年金月額は14.8万円。また、国民年金の平均年金月額は5.5万円となっています。世帯あたりで見れば収入は20.3万円ということになります。
また、夫婦ともに企業に勤務してきた場合であれば、先ほどの厚生年金保険受給者の平均年金月額の2倍を概算として考えることができるでしょう。その場合、世帯あたりでの年金収入は29.6万円となります。
繰り返しとなりますが、世帯当たりの年金収入については世帯構成はもちろんのこと、どのような勤務状態であったかなどによっても異なってきます。
(目次へ戻る)
老後はいつまで続くのか
老後がいつまで続くのかを自分で事前に知ることはできません。そこで、日本の平均寿命を参考にしてみましょう。厚生労働省の「平成29年簡易生命表」によれば、男性は81.09年、女性が87.26年となっています。
もちろん、この平均寿命はあくまでも「平均」であって、この年齢で老後が終わるという話ではありません。
老後が続く以上年金収入はあるものの、支出を考える上で平均寿命を前提に考えると「長生きのリスク」というものを認識しておかなければなりません。
(目次へ戻る)
ゆとりある老後の生活に必要な資金をざっくり計算してみよう
ここでは、実際に老後を迎えるにあたってどのくらいの資金を用意すればよいかを考えてみましょう。
ステップ1:想定支出を計算する
たとえば、夫婦で90歳まで生きたとすれば、老後の支出は以下のように計算することができます。ここでは、先ほどみた「ゆとりある老後生活費」の月34.9万円を前提にしてみましょう。
60歳で仕事をやめた場合、そこからを老後とすると、90歳まで30年あります。
34.9万円×12ヵ月×30年=1億2,564万円
なんと!1億円を大きく超えてしまうことになります。
ステップ2:想定年金収入を計算する
ここでは、先に見た企業に勤務してきた夫と専業主婦であった夫婦の世帯を見てみることにしましょう。
年金支給は65歳からですから、90歳までもらえるとしても25年間となります。
20.3万円×12ヵ月×25年=6,090万円
ステップ3:老後必要資金を計算する
今回のケースでいえば、老後30年に必要な資金といえば、想定支出から想定年金収入を引いた約6,500万円ということになります。
もっとも、世帯構成の違いで年金収入が今回のケースよりも多いこともあるでしょうし、支出に関しても30年間ずっと「ゆとりある老後生活費」が必要な生活をすることもないでしょう。
ただ、年金収入だけでは不足する可能性が高いといえますので、早くから準備をして老後資金を準備したいものです。
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
おすすめ
今年こそ!ある程度まとまったお金を貯めるにはどうしたらよいか
2019.02.18|
2018.10.29|
2018.09.06|
2019.03.12|
2019.02.13|
つみたてNISAとは?一般NISAやジュニアNISAとの違いは?
2019.04.11|
便利でお得!初心者に「つみたてNISA」をきっかけに投資を始めて欲しいワケ
2019.03.13|
老後に向けた貯金はいつから始めて、いくら貯める?暮らしに応じて最適な選択を
2018.10.29|
2019.04.01|
2018.09.19|
ゼロクーポン債って何?税金やリスクの仕組みを含めて詳しく解説
2022.12.14|