「育児休業給付金」はいつまで、いくらもらえる?休業期間を決める指針に

「育児休業給付金」はいつまで、いくらもらえる?休業期間を決める指針に

家族が1人増える出産は、特別なライフイベントです。
特に共稼ぎのカップルにとって、出産後、育児と仕事を両立させていくためには、支援制度を上手に活用することが必要です。

その代表的な制度が育児休業制度
育児休業については、どの程度の期間取得するのか悩むところです。
そもそもこの制度を利用すれば、どのくらいの期間、休業することができるのでしょうか?
それを踏まえ、保育園に入れるかどうか、職場での制度をどのように活用するか等、様々な観点から検討する必要がありますが、給与が支給されない休業中の収入はどうなるのかという点も大切な検討材料です。

そこで今回は、給与が支給されない休業期間中に受け取ることができる「育児休業給付金」についてわかりやすく解説します。

そもそも育児休業制度とは?

現行の育児休業制度

現行の制度では、育児休業給付金が受給できる期間は「子が1歳に達する日」の前日までですが、保育園に入れないなどの要件を満たせば最長2年間まで延長することができます。*1:p2

図1 支給対象となる期間を延長し、子が1歳6か月になるまで育児休業を行った場合

出所)厚生労働省「育児休業給付の内容及び支給申請手続きについて」p7より引用

図1は、1歳6か月まで期間を延長した場合を表していますが、この後さらに「2歳に達する日の前日」まで受給期間を延長することが可能です。

「パパ休業」「パパ・ママ育休プラス」

共稼ぎの場合には、さらに利用できる制度があります。

まず、「パパ休業」。
これは、通常は育児休業の取得は原則1回までですが、父親が子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても、再度、育児休業が取得できる制度です。*2:p3

図2 「パパ休業」の例

出所)厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」p1より引用

「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

図3 「パパ・ママ育休プラス」 の例

出所)厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」p1より引用

この制度は、両親がともに育児休業をする場合に、一定の要件を満たせば、育児休業の対象となる子の年齢が、1歳2か月にまで延長されるというものです。*2:p3

このように、男性の育児参加を支援する背景として、男性による育児休業制度の利用率が低いことが挙げられます。

図4 育児休業取得率の推移

出所)厚生労働省(2021)「令和2年度雇用均等基本調査:事業所調査結果概要」p18より引用

女性の取得率は近年80%台で推移しているのに対して、男性の取得率は2020年(令和2年)以前は10%にも満たなかったことがわかります。
しかし、最近は急速に取得率が上がり、2020年には初めて10%を超えました*3:p18

男性の育児参加を支援する制度の充実がこうした状況につながっているのかもしれません
が、女性の育児と仕事の両立を支えるためには、今後さらに男性の育児参加を進めていく必
要があります。

取得期間の状況

では、育児休業はどのくらいの期間、取得する人が多いのでしょうか。

図5 育児休業で最も多い取得期間(女性・正社員等)

出所)厚生労働省「厚生労働省委託事業 令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握の ための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈企業調査〉」p81より引用

図5から、女性(正社員等)の場合、育児休業で最も取得が多い期間をみると、「全体」で最も割合が高いのは 「子が 1 歳まで」で 41.4%、次いで「子が 1 歳超~1 歳 6 か月以下まで」 が 20.7%です*4:p81

復帰するためには子どもを預ける保育園の選択や受入れ状況など、必要な情報を早めに集めることが大切です。

改正「育児・介護休業法」で環境整備がさらに進むか?

2021年6月に「育児・介護休業法」が改正されました。
この改正によって、育児と仕事の両立を支援する制度はさらに手厚くなります。

改正のうち、受給者に関わる概要は以下のとおりです。*5:p1

  1. 男性の育児休業取得促進のための柔軟な育児休業の枠組み
    男性は子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得することができる(2回まで分割して取得できる)
  2. 育児休業を取得しやすい環境を整備し、妊娠・出産の申出をした労働者に個別に育児休業の制度を周知し、意向確認をすることを企業に義務付ける
  3. 育児休業を2回まで分割して取得することを可能にする(上記1以外の場合)
  4. 有期雇用労働者の育児休業を取得しやすくする
  5. 育児休業給付に関する所要の規定の整備

    1)1・3の改正を踏まえ、育児休業給付についても見直しを行う

    2)出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例を設ける

ただし、新制度の施行はこれからです。
2と4の施行は2022年(令和4年)4月1日と決まっていますが、それ以外は注意が必要です。
1と3、5-1)は、公布日である2021年6月9日から1年6か月を超えない範囲内で政令で定める日、5-2) は公布日から3か月を超えない範囲で政令で定める日、つまり2021年9月9日までには新しい制度に移行している可能性があるのです。

育児休業を利用する場合には、詳細を必ずお勤めの会社で確認するようにしてください。

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給付の種類は?

出産時・育児休業中に受け取れる給付金は、大きく分けると一時金として1回のみ受け取るものと、休業期間中に複数回にわたって受給できるものの2つに分けられます。

「出産育児一時金」「出産手当金」

一括で受け取る給付金には、「出産育児一時金」と「出産手当金」があります。

「出産育児一時金」は、出産する際の入院費や分娩費を補うためのものです。
子ども1人につき42万円が、産科医療補償制度に加入していない医療機関等で出産した場合は40.4万円が、それぞれ加入している国民健康保険や健康保険組合などから支給されます。*6

次に「出産手当金」は産前産後休業期間中を対象としているので、予定日ちょうどに生まれた場合は98日分×日給×3分の2が支給されます。*7
なお、この場合の日給は、[支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額の平均額]÷30日で計算されます。

「育児休業給付金」

「育児休業給付金」は育児休業期間中を対象にしているので、受取日数は取得した休業期間により異なります。
育児休業取得日から180日までは休業開始時賃金日額×67%が、181日以降は休業開始時賃金日額×50%が支給されます。*1:p3

なお、先ほどみた「パパ・ママ育休プラス」を利用すると、例えば以下の場合、2人合わせて1歳2か月まで67%給付を受けることができます。*2:p1

図6「パパ・ママ育休プラス」 を利用した場合の育児休業受給金の支給例

出所)厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」p1より引用

休業前と同等とまではいきませんが、「育児休業給付金」は給与の5割から7割近くの金額を受け取ることができるので経済的な不安が軽減されるのではないでしょうか。

「育児休業給付金」の対象者と注意すべき点は?

では、「育児休業給付金」を受給できる条件について確認してみましょう。
主な要件は以下のようなものです。*1:p2、p3

  • 1歳(または1歳半、または2歳)に満たない子どもを養育するために、育児休業を取得する雇用保険の被保険者であること
  • 育児休業開始日以前2年間に、賃金支払い基礎日数11日以上の月が12ヵ月以上あること

ただし、以下の場合には給付金は支給されません。

  • 育児休業支給期間中に、賃金支払いがあり、支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額×支給日数の80%以上であること

注意が必要なのは、雇用保険からの支給となるため、妊娠がわかってすぐ退職した場合や、育児休業の当初からすでに退職を予定している場合は支給の対象外となることです。*8

また、勤務先によっては3年の育児休業期間が認められている場合があるかと思いますが、「育児休業給付金」自体が3年間受けられるわけではありません
先ほどみたように、「育児休業給付金」の受給期間は最長で2年間です。
場合によっては無収入の期間があるということも踏まえた上で、休業期間を検討することが必要です。*4

「育児休業給付金」の手続き方法は?

次に、「育児休業給付金」の手続き方法について押さえておきましょう*1:p.6

手続きは被保険者本人が行うことも可能ですが、原則として事業主が所定の書類を管轄のハローワークに提出することによって行います。

申請が受理されて、受給資格が認められると支給開始です。ただし、支給が開始されても満期まで自動で受け取れるわけではありません。2ヵ月毎に新たに申請する必要があるので、提出の洩れが無いように、勤務先との連携をどのようにするのか、休業前におおまかな流れを確認しておくと安心です。
また初回の振込は、支給決定日から1週間程度とされていますが、それ以降の振込は2ヵ月毎になります。お給料のように毎月入ってくるわけではありませんので、先の見通しを立てておく必要があります。

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将来の年金受給額を下げないためにも「養育特例制度」の活用を

最後にぜひ活用して頂きたい制度をご紹介します。
3歳未満の子どもを持つ厚生年金被保険者が対象となる「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という制度です。*9

復帰後に短時間の勤務や、時給制に変更するなどして給与が下がると、社会保険料もあわせて安くなります。そうなると、保険料が下がること自体はよいのですが、将来の年金額も減ってしまいます。
そこで、保険料は下がっても年金額は以前の水準とみなして支給されるというのがこの制度です。

この制度を利用できるのは、厚生年金で使われる「標準報酬月額」の等級が1つでも下がった場合です。

ちなみに、令和3年度版の厚生年金保険料額は32等級に分かれていますが*10、給与が該当する等級が1つでも下がった場合、必要書類を提出すれば特例制度を利用することができます。

該当した場合、メリットが大きいこの制度ですが、利用は任意のため、手続きを忘れてしまうケースもあるようです。
過去2年間は遡って措置を受けることができるので、ご自分が該当しているのか、書類は年金機構に提出されているのか是非ご確認ください。

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おわりに

育児休業期間中に育児と仕事の両立を支援する目的で、給与の約5割~7割弱の給付を受け取ることを可能としている「育児休業給付金」制度は、今後さらに充実していくことが決まっています。

折しもコロナ禍によって普及したテレワークを機に、ワークライフバランスに関する意識が高まっています。

出産という特別なライフイベントに備え、こうした制度の内容を把握して活用を検討することは、ライフステージに合わせたワークライフバランスを実現するための大きな支えとなりますので、是非積極的に活用しましょう。

2019.4.10 公開

2021.9.6 アップデート

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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