出産前には知っておきたい、育児休業給付金。計算方法や申請の流れをご紹介

出産前には知っておきたい、育児休業給付金。計算方法や申請の流れをご紹介

いずれ結婚をしたい女性にとって、子どもを産むかどうかは重要な問題です。「子どもができたとしても働き続けたい」という気持ちであれば、育児休業(以下、育休と記載することがあります)も考えなければいけません。中でも気になるのは、育休中の収入について。企業によって育休中に賃金を受け取れるかどうかの規定が異なるため、自分の勤め先がどのような決まりにしているのか、事前に調べておく必要があります。
もし、充分な賃金を受け取れないとしたら…。そんな時に頼りになるのが「育児休業給付金」です。どのような制度なのか、どれくらい給付金をもらえるのか、申請方法などについてご説明します。

そもそも育児休業給付金って何?受給の条件は?期間は?

育児休業給付金とは、育児休業期間中に支給される給付金のことです。財源は雇用保険から賄われています。
給付金は非課税ですし、申出をすれば社会保険料は一切かかりません。育児休業中に、手取り賃金の8割程度まで給付金がもらえる(給付金単独では67%が上限)、非常に頼もしい制度です。

会社から賃金が出る場合も受給資格はある

受給資格はやや複雑なので、箇条書きで確認してみましょう。

  • 雇用保険に加入している
  • 1歳未満の子を養育するための育児休業を取得している
  • 育児休業を開始する以前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12ヵ月以上ある
  • 育児休業期間中の1ヵ月ごとに支払われる賃金が、休業開始前の1ヵ月あたりの賃金の8割未満
  • 育児休業期間中の就業している日数が支給単位期間(1ヵ月ごとの期間)ごとに10日(10日を超える場合にあっては80時間)以下であること。(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)

育児休業期間中に一時的に就労した場合でも、規定日数または就業時間以下であれば給付金を受け取ることができるので、例えば週に1回の勤務や、1日数時間の月20日といった短時間勤務なども可能になります。
働いたらその時点で給付金がもらえなくなることはありませんから、休業中でも繁忙期は職場を手伝ったり、少しずつ就業日数を増やして本格復帰に備えるなど、柔軟な働き方ができるというわけです。

受給期間は原則1歳まで。ただし最長2歳まで延長も可能

上記の通り、受給できるのは原則子どもが1歳までの間です。受給の対象期間は1ヵ月(30日)単位で計算され、休業終了日が月をまたぐ場合は日割り計算されます。ただし、「パパママ育休プラス制度」を利用して両親が一緒に育児休業する場合は、1歳2ヵ月まで受給期間を延長できます。
また、認可保育園に入所できない、または配偶者の怪我や病気などやむを得ない事由に当てはまる場合は、手続きを行うことで育児休業給付金の受給期間を最長2歳まで延長できるようになりました。ただし、この場合は育児休業も延長しなければなりません。

出所)ハローワークインターネットサービス「育児休業給付について」

目次へ戻る

育児休業給付金がどれくらいもらえるか計算してみよう

気になるのが、一体どれくらいの額の給付金がもらえるのかということです。休業中に会社からもらえる賃金の有無でも変わりますので、自分の場合に当てはめて考えてみましょう。

支給額は現在の賃金によって決まる

支給額は、支給対象期間1ヵ月あたり「休業開始時の賃金日額×支給日数の67%(6ヵ月経過後は50%)」相当額です。「休業開始時の賃金日額」として算定できる金額は現在1ヵ月あたり449,700円まで。支給額の上限は301,299円、6ヵ月経過後は224,850円となる計算です。
給与が250,000円の場合で実際に計算してみましょう。

(例)休業前は月給250,000円。休業中は賃金が無い状態で10ヵ月の育休を取得した場合
250,000円×0.67×6ヵ月+250,000円×0.5×4ヵ月=1,505,000円

休業中もある程度賃金が出る場合はどうなるのでしょうか?
上記の賃金日額×支給日数の67%(6ヵ月経過後は50%)相当額と賃金の合計額が賃金日額×支給日数の80%を超えるとき、超えた分の支給額が減額されます。賃金だけで賃金日額×支給日数の80%以上になる場合は、前述の受給資格に当てはまらなくなるため、給付金は出ません。

また、初回給付から6ヵ月経過すると支給額が17%減ってしまいますが、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用すると受給期間が1歳2ヵ月まで延長できるので、例えばママが6ヵ月間育児休業を取得した後パパがさらに6ヵ月間育児休業を取得すれば、合計1年間、67%の割合で給付金を受け取ることもできます。
現在は国の施策としても男性の育児休業取得を推進しているので、パートナーと相談してできるだけ制度を効率よく活用する方法を検討するのも良いでしょう。

出所)ハローワークインターネットサービス「育児休業給付について」、厚生労働省「「育児休業給付金が引き上げられました!!」リーフレット

給付金はいつ支給される?

給付金は申請後「育児休業給付決定通知書」が届いてから一週間程度で口座に振り込まれます。申請から初回の振込までには、3~4ヵ月かかるのが一般的のようです。また、支給を受け続けるためには2ヵ月に1回、都度申請が必要になります。

出所)ハローワークインターネットサービス「育児休業給付について」、厚生労働省「Q&A~育児休業給付~

目次へ戻る

どこに申請する?育児休業給付金の手続き方法

育児休業給付金は、基本的には事業主に対して「育児休業給付金支給申請書」を提出して申請します。事業主からハローワークに提出してもらうのが通常ですが、なんらかの理由がある場合は受給者が直接ハローワークに申請することも可能です。
ここでは事業主に書類を提出するケースをご紹介します。必要な書類については、勤め先にもよく確認しましょう。

提出書類

  • 育児休業給付金支給申請書
  • (育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
                ※受給資格確認と支給申請を同時に行う場合)
  • 賃金台帳または出勤簿など支給申請書の記載内容を確認できる書類

基本的には会社任せで問題ありませんが、初回の育児休業給付金の申請が遅くなると、その分給付金の支払いも遅くなります。育児休業中、早目のタイミングでまとまった資金が必要になるなど気にかかる要素があれば、どのタイミングで申請をするのか勤め先に聞いておくと安心です。

支給期間を延長する場合の手続き

延長手続きも、原則としては勤め先を経由して行います。延長の際は、「育児休業給付金申請書」にある「支給対象となる期間の延長事由―期間」の部分に内容を記載の上、必要な確認書類を添付して提出します。延長理由によって異なりますが、確認書類となるのは以下のようなものです。どの書類が必要になるのか、会社にしっかり確認するようにしましょう。

  • 市町村が発行した保育所等の入所保留の通知書など、当面保育所等において保育が行われない事実を証明することができる書類
  • 世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳
  • 保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等
  • 母子健康手帳

出所)ハローワークインターネットサービス「育児休業給付について」、「育児休業給付の内容及び支給申請手続について」

目次へ戻る

育児に使える制度をきちんと知っておけば将来設計も立てやすい!

なかなか育休を取れない…という話も少なくない現在、子育てにはどうしても大変だというイメージがつきまといます。ですが、育児休業給付金の金額も以前は50%だったものから67%にまで引き上げられるなど、少しずつ制度が充実してきているのは確かです。
子育てのために使える制度の恩恵を受けられるよう、あらかじめ情報を調べて知っておくことが何より大切。それが、自分の将来設計を描く手助けにもなるはずです。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

関連記事

人気ランキング