ポイント
子育て中の家庭にとってうれしい制度が育児手当(児童手当)。子どもの人数や年齢に応じて、毎月の支給金額が変わります。一方で所得制限もあるため、所得がアップするともらえる額が減ってしまうこともあります。また、引っ越しをした場合は自治体への手続きも必要です。
本記事では、すでに育児手当を受給している方向けに、家庭環境やライフスタイルの変化に応じて変わる育児手当の内容についてまとめました。
育児手当(児童手当)とその他の制度についておさらいしよう
育児手当の正式名称は「児童手当制度」です。自治体等から子育て支援のために支給される手当のことで、「子ども手当」と呼ばれていた時期もありました。受給するには自治体への申請が必要で、ひと月の支給額は児童一人あたり5,000円~15,000円。対象は日本国内に住む0歳から中学校修了(15歳に到達後の最初の年度末)までの児童です。毎年2月、6月、10月に前月分までの手当が支給されます。
出所)内閣府「児童手当制度の概要」
育児や出産の際に手当がもらえる制度は、他にもいくつかあります。
育児手当と混同されやすいので、こちらも一度おさらいしてみましょう。
出産育児一時金
健康保険の被保険者(または被扶養者)が出産した時、各保険機関に申請することで受け取れる手当金のこと。子ども一人につき原則42万円支給されます。もし双子など多胎児であった場合は、その人数分の金額となります。
出所)全国健康保険協会「子どもが生まれたとき」
出産手当金
こちらも出産育児一時金と同じく、健康保険の被保険者を対象とした手当金。被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として支給されます。1日当たりの支給額は、「支給開始日※以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷30日×(2/3)です。
※支給開始日とは、一番最初に給付が支給された日のことです。
出所)全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
乳幼児医療費助成制度(子ども医療費助成制度)
各自治体による助成制度で、乳幼児に必要な医療費を補助する制度です。所得制限や費用負担の範囲、対象年齢などは各市区町村によって異なります。
児童扶養手当
ひとり親世帯を対象とした手当で、国の制度です。両親が離婚や死亡した場合などが該当し、対象となる児童の養育者に支給されます。2019年2月現在、児童一人の場合は月額最大42,500円です。二人目になると、この金額に最大10,040円が加算され、三人目は最大6,020円加算と、一人につき数千円加算される計算です。所得に応じて支給額は変わります。毎年4月、8月、12月に前月分までの手当が支給されます(2019年11月からは、2ヵ月分ずつ年6回に変更予定)。
出所)厚生労働省「児童扶養手当について」
育児休業給付金
育児休業期間中に支給される給付金のことです。雇用保険の加入者が対象です。諸条件を満たす必要はありますが、支給額は支給対象期間1ヵ月あたりにつき「休業開始時の賃金日額×支給日数の67%(6ヵ月経過後は50%)」相当額です。※育児休業給付金の詳細については、「出産前には知っておきたい、育児休業給付金。計算方法や申請の流れをご紹介」も参照のこと。
出所)ハローワークインターネットサービス「育児休業給付について」
育児手当金と混同していた方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の制度と育児手当金は別の制度です。
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【パターン別図表付き】育児手当金、年齢と子どもの人数に応じた支給額
さて、育児手当金は年齢と子どもの人数に応じて、支給額が変わっていきます。
基本的には、0~3歳未満は月額15,000円、3歳~小学校修了前は第1子または第2子なら月額10,000円、第3子以降は月額15,000円。中学生は一律月額10,000円です。
子どもが2人までの場合は3歳まではいずれも月額15,000円、それ以降は月額10,000円と覚えておけば総支給額の計算も楽ちんなのですが、3人目以降からは金額が増えます。ただし、高校を卒業した(18歳の誕生日後の最初の3月31日以降の)子どもは頭数に入らないため、第3子でも第2子や第1子の扱いになることがあり、少しややこしくなります。
以下、わかりやすいようにいくつかの例を図表としてまとめてみました。
いずれの子どもも3歳未満のため、最高額の15,000円が支給されます。
長子が3歳以上になったため、10,000円に減額されます。
通常であれば3歳以上になると支給額は10,000円に減額されますが、7歳の子は第3子のため3歳以上になっても15,000円が支給されます。第3子が中学生であった場合は、10,000円に減額されます。
長子が中学校を卒業しているため、1人目は支給されなくなります。ただし、まだ長子は16歳なので、7歳の子は第3子とみなされ、3歳以上でも支給額は15,000円です。
こちらは長子が高校を卒業したため、第1子として数えられなくなります。そのため7歳の子どもは実質的には第3子でも第2子としてみなされるため、支給額は10,000円が該当します。
出所)内閣府「児童手当制度の概要」
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所得に応じた支給額は扶養親族数で変わる!
今現在は育児手当金をもらっていても、「所得がアップしたらもらえなくなるのでは」と思っている方もいるのではないでしょうか。実際、育児手当金には所得制限があります。ただし、所得が制限を超えても全くもらえなくなるわけではなく、児童一人あたり一律5,000円になります。
所得制限は扶養親族の人数に対して変わるので、下記の図を参照してください。
扶養親族数が一人増えるごとに所得制限限度額が38万円ずつ増えていきます。
扶養親族の人数は、前年中の所得に対する確定申告、または年末調整時の申告内容に準じることになります。
出所)内閣府「児童手当制度の概要」
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手続きが必要なのはどんなとき?転居時の対応方法
育児手当金を継続して手当を受けている方は、毎年6月に「現況届」を提出しているはずです。これは受給者全員に必要な手続きですが、引っ越した際などは、これとは別に新たに引越し先の市区町村に申請し直さなければならないことがあります。
同じ市区町村内への引っ越しの場合
市区町村への住所変更届を提出すればそのまま受給できますが、自治体によっては子育て支援課で手続きが必要になることがあるため、念のため自治体のホームページを確認しておくと安心です。
別の市区町村への引っ越しの場合
引っ越し前の市区町村で受給停止の申請をした後、引越し先で再度申請が必要です。転入した日の翌日から15日以内が期限となるため、忘れずに申請するようにしましょう。申請が遅れても受給自体は可能ですが、遅れた分の月の手当は受けることができません。
手続きに必要な書類等は市区町村によって異なることがあります。また、請求者と子どもが別居している場合など、特殊なケースはさらに追加書類が必要になるため、やはり自治体のホームページでしっかり確認しておきましょう。
出所)内閣府「児童手当制度の概要」
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まとめ
2人目、3人目が生まれると、現在の倍、またはそれ以上の額を受給できる育児手当金。子どもが中学卒業するまでの総支給額は、一人あたり200万円近くになる計算です。決して安くはない金額ですから、特に引っ越したときなどは忘れずに申請して、もらいそびれないようにしましょう。
厚生労働省の調査によれば、育児手当金の使い道として最も多いのは子どもの教育費。ついで、子どもの日々の生活費となっています。もし、子どもが増える予定があるとすれば、どんなふうに毎月の手当を使うのか、改めて家族で相談してみるのもいいかもしれません。
出所)厚生労働省「平成24年児童手当の使途等に係る調査」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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