モノを買わず、借金せず、投資と貯蓄にお金を回す「賢い消費者」となった、若者たち

モノを買わず、借金せず、投資と貯蓄にお金を回す「賢い消費者」となった、若者たち

とかく、お金の話になると「稼ぐ」話が盛り上がります。
副業、転職、出世、スキル……。

しかし、最近私が興味を持ったのは「使う」についてです。
実際、使う人がいなければ、稼げる人もいないのです。

特に私より下の世代の消費については強い興味を持ちました。
というのも、最近よく「若者の〇〇離れ」を目にするからです。

例えばニューズウィークでは、昨年このような記事がありました。
「平成が終わろうとしている。激動の昭和を経て30年。生活や仕事を取り巻く環境が移り変わるなか、若者の嗜好にも変化が起こった。かつて多くの国民が日々の疲れを癒やし、ストレスを発散し、そして趣味として楽しんだ「酒・たばこ・車」離れが今、主に20~30代の若者たちの間で進んでおり、多くのメディアでも取り上げられている。」*1

ただ、このような記事が出ると、TwitterなどのSNSで
「消費しようにも、お金がない!」
という、返しが行われるのが、風物詩となっています。

そのやり取りが定番となっていますが、果たして若者たちは本当に「◯◯離れ」を起こしているのか。そして「◯◯離れ」が真実ならば、それは低所得のせいなのか。そんなことが気になりました。

そこで、少し調べてみることにします。

若い人たちが消費しないのは「事実」

消費者庁の白書によると、どうやら若者が消費しないように見受けられます。
調査では、以下のようにあります。*2

出所) 消費者庁 「平成29年版消費者白書 第3章 【特集】若者の消費」

しかし、その理由は本当に「お金がないから」なのでしょうか。

実は「お金がないから消費しない」については、いささか疑問が残ります。
というのも、可処分所得が増えたとしても、消費をしない、というデータが見られるからです。
2016年度政府経済財政報告では、総務省が実施している「家計調査」によると、世帯人数が2人以上の勤労者世帯のうち、世帯主が39歳以下の世帯では、可処分所得が緩やかに増加する中でも消費支出はほとんど伸びておらず、節約志向が強まっているとされています。

ジェイ・エム・アール生活総合研究所を率いる、マーケティングコンサルタントの松田久一氏は、著書「「嫌消費」世代の研究」*3の中で、お金があっても消費が増えないこの事象を「嫌消費」=「収入に見合っただけの支出をしない態度」と言っています。

彼は逆に調査の中で「消費に夢をもったころとはどんな時代だったのですか」と逆に聞かれ、面食らったこともあるとのこと。
確かに、「消費に夢を持った時代」がどのようなものであったか、現代においてはピンとくる人は、もはや少ないかも知れません。

それに対して、松田氏は「昭和的」消費の価値観を、田中康夫の小説から引用しています。*4

「野菜や肉を買うなら、青山の紀ノ国屋がいいし、魚だったら広尾の明治屋か、少し遠くても築地まで行ってしまう。パンなら、散歩がてらに代官山のシェ・リュイまで買いに行く。ケーキは、六本木のルコントか、銀座のエルドールで買ってみる。学校の子たちと一緒なら、六本木のエストや乃木坂にできたカプッチョの、大きなアメリカン・タイプのケーキを食べに行くのがいい。淳一と一緒の時は、少し上品に高樹町のルポゼで、パイにトライしてみる。夜中にケーキを食べに出かけるなら、青山三丁目のキャンティで、白ワインと一緒に食べるのがいいだろう。キラー通り沿いにあるサンフランシスコ・フレーバーのお店、スエンセンズで大きなアイスクリームを食べてから、おなかをこわさないかなと心配しながら帰るのもいい。」

なるほど、確かに「昭和」はこんな感じだったかも……という年配の方もいるのではないでしょうか。私は昔、買い物好きの祖母が、こんな感じの話をしていたなあ、と思い出しました。

こうした事実から鑑みると、かつて日本は「なにを消費するかが、その人の「格」を示す」と認識されていたと考えられます。

松田氏は、以下のように述べています。

「選択される商品サービスは、個人の単なる欲求を満たす機能ではなく、他者へのメッセージ性・記号性をもっていた。どの街のどの店で何を買い、どこで食事をし、どんな自動車に乗るかによって、自分の価値が評価された。 「肌着をスーパーで買う自分が許せない」と聞かされた。多くの消費者は、商品サービスの選択を通じて、自分の個性を表現し、他者との差異化を試みていた。」

たかだか消費で「許せない」とは、穏やかではないですが、まさに「消費」=「格」の世界ではそれほど大きな意味があるのでしょう。

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借金せず、投資と貯金にお金を回す「賢い消費者」となった、若い人たち

最近では「タピオカ」がとても流行になっていますが、かつての家電や自動車などのように、数十万、数百万円という大きな消費支出に結びつくような動きは、今のところなさそうです。

私は先日、20代の若者たちと話をし、様々な品目について「ほしいかどうか」を尋ねたところ、以下のような回答が返ってきました。

テレビ → いらない。Youtubeなどネットで十分に足りる。
車 → いらない。タクシーもあるし、必要があればカーシェアリングで借りる。最近はシェアサイクルも便利。
服 → 好きな人は好き。だけどほとんどユニクロ。スーツも着なくなってきている。
音楽 → 無料の音楽サービスか、Youtubeで聞いている。
飲み会 → 家か一人で飲む。
語学などの習い事 → webで教材探す。

逆に「なにに使っているか」を尋ねると、

投資
貯金
スマホ(通信費)
ゲーム
スポーツ

という回答が最も多く、消費にあまり積極的でない様子が伺えます。
とはいえ、白書や松田氏も指摘するように、彼らは決して「買い物が嫌い」なわけではなく、

「必要のないものは買わない」
「ローンは組まない」
「大きな金額はつかわない」
「評判をよく調べてから買う」

と、賢い消費者であることが示されています。

そして、社会学者の古市憲寿氏の著書「絶望の国の幸福な若者たち」*5によると、若者は「それで幸せ」なのです。

「ユニクロとZARAでベーシックなアイテムを揃え、H&Mで流行を押さえた服を着て、マクドナルドでランチとコーヒー、友達とくだらない話を三時間、家ではYouTubeを見ながらSkypeで友達とおしゃべり。家具はニトリとIKEA。夜は友達の家に集まって鍋。お金をあまりかけなくても、そこそこ楽しい日常を送ることができる。

実際、現代の若者の生活満足度や幸福度は、ここ四〇年間の中で一番高いことが、様々な調査から明らかになっている。たとえば内閣府の「国民生活に関する世論調査」によれば、二〇一〇年の時点で二〇代の七〇・五%が現在の生活に「満足」していると答えている。そう、格差社会や世代間格差と言われながら、日本の若者の七割が今の生活に満足しているのだ。」

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では今の若い人たちは何にお金を使うのか

そこで私が気になったのは「今の若い人たちはなににお金を使うのか」です。

古市憲寿氏によれば、今の若者の価値観は「幸福だが、不安を抱えている」といいます。

であれば、「お金」の使いみちは、自分自身の「現在の幸福」ではなく、「将来の不安」を解消するために使うと考えるほうが、合理的です。

実際、「投資」や「貯金」との回答は「将来の不安解消のために備えている」のでしょう。

また、若者の幸福の大きな原因の一つは「仲間」の存在です。

まるでムラに住む人のように、「仲間」がいる「小さな世界」で日常を送る若者たち。これこそが、現代に生きる若者たちが幸せな理由の本質である。

若者は「賢い消費者」と見られるために、浪費を避けますが、仲間と共通の体験をするための出費については、惜しみません

ワールドカップや、ハロウィーンの盛り上がりは、「仲間と楽しむ」「SNSに投稿する」といった消費行動から生まれたものとすれば、納得がいきます。

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まとめ

日本の若者が、昭和の若者が欲しがった自動車などの「モノ」に消費しないのは事実ですが、それは「お金がないから」ではありません。

お金があっても、彼らはすでに「賢い消費者」ですから、刹那的な消費や、大きな買い物にはあまり興味を示さないのです。
そしてなにより、日本の若者は、すでに「モノ」を買わなくても十分幸福なのです。

では、彼らは何にお金を投じるのか。
それは、将来の不安を消してくれるような投資や貯金です。
あるいは、仲間とのつながりを楽しむための「体験」や、「SNS映え」です。

イベント、スポーツ、パーティなど、いわゆる「コト消費」のマーケティングが上手な企業が、若者世代の心をつかむことになりそうです。

*1  出所)Newsweek 「平成の若者「○○離れ」と、メーカーの「好消費」開発」

*2  出所)消費者庁 「平成29年版消費者白書 第3章 【特集】若者の消費」

*3  出所)「「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち」(松田久一 著)

*4  出所)「なんとなく、クリスタル」(田中康夫 著)

*5  出所)「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿 著)

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