自分の親、あるいは将来的には自分自身も、老人ホームや介護施設、サービスを利用する可能性はあることでしょう。
訪問介護からデイサービスへの通所、老人ホームへの入居など、その形態は様々ですが、老後にこうした施設を利用する場合、それぞれにどのくらいのお金がかかるのでしょうか。
今回は、老後を考える上で気になる、それら施設の利用と料金について紹介します。
要介護(支援)認定制度
介護保険の適用となる施設やサービスを利用するには、まず、行政による要介護(要支援)の認定を受ける必要があります。
この認定を受けるにはまず、自治体の担当窓口に、介護保険の被保険者証を添えて「要介護(要支援)認定」の申請をします。
申請を受けた自治体は、担当者による「訪問調査」、それを元にした「一次判定」と「主治医による意見書の提出」、次いで「二次判定」の審査を行った上で、申請者に対して「認定・結果通知」を出します。
結果の通知は、原則、申請から30日以内です。また、「非該当」と認定される場合もあります。
要介護、要支援の認定には区分があります。状況の変化により、区分変更も行われます。
「要介護」の手前の段階、介護防止の必要性があるのが「要支援1」「要支援2」で、要支援2の方がその必要性が高いとして、介護保険の支給限度額は多くなります。
その先に「要介護」の5段階があり、「要介護1」から「要介護5」までの区分で、数字の高い区分の方が介護保険の支給限度額が高くなります。
つまり、「要介護5」が、もっとも支給限度額が高くなり、その分、介護保健の適用で利用できるサービスの「量」が多いということになります。
この区分にしたがって、「地域包括支援センター」のケアマネージャーなどにサービスの利用計画を作成してもらい、各種サービスや施設の利用を始める、というのが一般的な流れです。
この段階で、老人ホームへの入居についても、希望があればケアマネージャーに伝えるのも良いでしょう。
なお、要支援・要介護の区分ごとに支給される介護保険の限度額(1ヵ月あたり)は以下のようになっています(2019年10月~)*1。
要支援2:105,310円
要介護1:167,650円
要介護2:197,050円
要介護3:270,480円
要介護4:309,380円
要介護5:362,170円
実際にこうしたサービスや施設は、介護保険が適用されるものであれば利用者の自己負担はおおよそ1割~3割だと考えられます。
つまり、自己負担1割の人が「要介護1」の状態である場合、「16,700円の自己負担分」までは1割で利用できますが、それを超える分は実費での支払いが必要になる、という仕組みです。
なお、別に「高額介護サービス費」の制度があり、月額で一定以上の負担が生じたときは、申請によって一部が戻ります。収入や家族の状況により金額は異なります。
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介護保険で利用できるサービスの種類
さて、介護保険の給付を受けて介護予防や介護サービス、施設を利用する場合、「支給限度額が適用されるサービス」と「支給限度額の適用されないサービス」があります。
以下のように分かれています*2。
・限度額が適用されるサービス:
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、福祉用具貸与、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護(短期利用に限る)、定期巡回・随時対応サービス、夜間対応型訪問介護、認知症対策通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護(短期利用に限る)、地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用に限る)、複合型サービス
・限度額が適用されないサービス:
居宅療養管理指導、特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型と短期利用を除く)、認知症対応型共同生活介護(短期利用を除く)、地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
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老人ホームの種類と費用
まず、長期の入居を前提にした「老人ホーム」は、2種類に分かれます。
自治体や社会福祉法人が運営する「特別養護老人ホーム」と、民間企業が運営する「有料老人ホーム」です。
特別養護老人ホームは「公的施設」ですので比較的割安に料金が設定されていますが、65歳以上で「要介護3」以上などの特定の人でないと利用ができません。
また、数が限られていますので、地域によっては待機者が多いこともあります。
一方の有料老人ホームは運営企業によって様々な料金体系があり、介護の必要がない人でも入居できる施設もあります。
一般的に、老人ホームは「介護・看護サービス」と「居住空間」を同時に提供するものです。よって、施設内での介護サービスの部分には介護保険の支給限度額が適用されても、家賃や食費はその対象外で、自分で支払う必要があります。
さらに、病気にかかる医療費やおむつなどの消耗品も介護サービスの対象外ですので、追加で必要になるお金です。
平均的な費用では、比較的負担の少ない特別養護老人ホームの場合、食費がおよそ42,000円、住居費は多床室でおよそ26,000円、従来型個室の場合はおよそ36,000円となっています*3。
よって、少なくとも月に7万円~8万円程度の自己負担が発生します。生活全体でみると、そこに医療費などの日常生活費が加わります。
有料老人ホームとなると、この金額を上回ることが考えられます。
施設や運営企業によって様々ですが、一般的には、家賃の一部を先払いする「入居一時金(前払金)」と「月額費用」を支払う、という料金体系が取られています。
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まとめ
ここまで、老後の介護サービスや施設について見てきました。
基本的に、在宅や通所で受けるサービスは、ほとんどの範囲が介護保険の給付でまかなえますが、老人ホームへの入居となると、特に民間の場合は一時金の負担が生じます。
月々の負担を年金でどのくらい賄えるのか把握しておくことがまず必要ですが、安心できる備えとしては、民間の年金保険への加入、あるいは一定額の貯蓄や資産作りをしておくのが良いでしょう。
*1,3
出所)厚生労働省資料「2019年度介護報酬改定について」
*2
出所)厚生労働省資料「2019年度介護報酬改定について」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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