近年は、老後に想定される様々なリスクに備えるべく、多種多様な保険が販売されています。家計に大きく影響する老後の医療費や介護費用ですが、これをどこまで保険でカバーすべきなのかは、他の資金準備手段も含めて慎重に判断することが大切です。
老後の生活資金や医療費、介護費用などについて不安を抱えている人は少なくありません。実際、生命保険文化センターが平成30年に実施した「今後増やしたい生活保障準備項目」に関する調査では、「世帯主の老後の生活資金の準備」と回答した人が最も多くなっています*1。
しかし保険商品は、非常に多くの種類が販売されています。そのため「老後に不安はあるものの、どのような保険を選べばよいのかわからない」という方も多いかもしれません。
そこで今回は、想定されるリスクをもとに、どのような保険が必要なのか考えてみましょう。
「死亡」に備える保険についてどう考えるのか
子供が独立し、住宅ローン等の支払も終えている世帯の場合、死亡時に必要になる費用はさほど多くありません。借入金があったり、相続に莫大な費用がかかったり、といった特別な事情がない限り、一般的には葬儀費用やその他諸費用を合わせて200~300万円程度がかかると言われています。
これらの資金を保険で準備するのも、ひとつの選択肢です。若いうちに短期払いの終身保険に加入しておくのもいいでしょう。ただ、近年は低金利の影響もあって、魅力的な商品を選ぶのは難しくなっています。
そのため死後に必要な費用を預貯金でカバーできる世帯、あるいはこれから資産形成をしようとしている世帯については、無理に保険で備えないというのも一つの考え方です。
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老後の備えとしての医療保険は終身型がおすすめ
医療保険は「終身型」と「定期型」に大別され、それぞれ以下のような特徴があります。
- 生涯にわたり保障を受けられる
- 保険料は加入時のまま変わらない
- 更新限度年齢があり、それ以降は保険の更新ができない
- 更新時の年齢に比例して保険料が上がる
日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳となっており、昭和22年より毎年伸び続けています(平成30年時点)*2。この傾向は今後も続くことが予想されますので、年齢に比例して保険料が上がったり、更新限度年齢が決められていたりする定期型の医療保険は、老後の備えとしてやや不安が残ります。
「老後の医療費への備え」としての保険選びであれば、保険料が一定かつ生涯にわたり保障を受けられる、終身型医療保険が良さそうです。
保障内容は医療事情の変化に対応できるものに
医療保険の保障内容は、医療事情や社会保障制度の変化に対応できるものにする必要があります。
近年は入院日数の短縮化傾向と通院治療の増加傾向が顕著*3ですので、入院時にまとまった一時金が給付される「入院一時金特約」や、退院後の通院治療も保障される「通院特約」の付加を検討してみてはいかがでしょうか。
保険料の払込期間を工夫して老後の負担を軽減
医療保険選びをする際は、保障期間や保障内容だけでなく、保険料の「払込期間」にも着目してみましょう。
終身医療保険の中には、「10年払済み」「60歳払済み」「65歳払済み」というように一定期間で保険料の支払いを終えられる商品があります。もちろん、終身払いに比べると保険料は高くなってしまいますが、現役で働ける間に一生分の保険料を払い込んでおき老後の保険料負担をなくす、というのもひとつの選択肢ではないでしょうか。
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介護時にかかる費用と介護保険の考え方
老後に想定されるリスクのひとつ、「要介護状態」。要介護状態になると、自宅を改装したり、福祉サービスを利用したり、施設に入居したり、といったことに伴い、様々な費用が必要になります。
では、家族が、あるいは自分が要介護状態になったとして、どのくらいの介護費用がかかるのでしょうか。
介護にかかる費用の平均は約494.1万円
生命保険文化センターが平成30年に実施した調査によると、介護費用のうち、介護ベッドの用意や住宅の改造など一時的にかかった費用の平均は69万円となっています。また、公的介護保険サービスの自己負担費用を含む毎月の介護費用の平均は1ヵ月あたり7.8万円、介護期間の平均は4年7ヵ月となっています*4。
つまり介護にかかる費用の平均は、「一時費用69万円+1ヵ月あたりの介護費用7.8万円×平均介護期間4年7ヵ月」により計算される、494.1万円、ということになるのです。
介護費用は要介護度が上がるにつれて高くなる傾向にありますので、平均額を大きく上回る費用が必要になる可能性も十分考えられるでしょう。
老後の介護費用には保険で備えるべき?
老後の介護費用を賄う手段として近年注目されている、介護保険や認知症保険。この種の保険では、要介護認定を受けた場合や保険会社所定の状態になった場合、認知症と診断された場合などに、保険金が給付されます。
要介護状態になった場合などにまとまった保険金や年金が給付されるのは魅力的なのですが、以下のようなデメリットがあることも忘れてはなりません。
- 掛捨て型の商品の場合、要介護状態や認知症にならなければ保険料が無駄になる
- 認知症保険の多くは、数か月~数年の免責期間が設けられている
- 加入時の年齢によっては、保険料が高くなる
- 保険料を払えなくなると失効してしまう
他の方法も検討してみる価値はある
上述のように介護保険や認知症保険にはメリットだけでなく様々なデメリットも存在します。そのため老後の介護費用を賄う手段としては、保険だけにこだわるのではなく、他の方法を検討してみることも大切です。
例えば、積立投信やつみたてNISAといった、長期投資による資産形成によって要介護状態へのリスクに備える、という方法はいかがでしょうか。もちろん、元本割れのリスクがあるなどいくつかのデメリットの存在は否定できませんが、積立額を自由に設定できたり、積立を一時的にとめたり、投資商品や投資環境によっては高い利回りが期待できたり、というように保険にはないメリットもたくさんあります。
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まとめ
老後に想定される、様々なリスク。これに備える方法にはいくつかの種類がありますので、まずは何が不安なのか、それにどう備えたいのか、といった点について整理することから始めてみてはいかがでしょうか。保険は、あらゆるニーズを叶える万能なアイテムではありません。保険商品を選ぶ際はその特徴やメリット・デメリットを理解し、ときには他の資産形成の方法も視野に入れつつ、自分のニーズを満たすものかどうか慎重に判断することが大切です。
*1
出所)公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
*2
出所)厚生労働省「平成30年度簡易生命表の概況」
*3
出所)厚生労働省「平成29年患者調査の概況」
*4
出所)公益財団法人生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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