ポイント
ミニマリストというライフスタイルが今、注目を集めています。
ものを持たない、買わない、必要最小限のものだけで生きる、そんな生き方です。では、そこで一つの疑問が頭に浮かびます。最小限で暮らすミニマリストは一体、お金が貯まるのでしょうか?
今回は、3人の著名なミニマリストの本から、彼等がどのような言葉を残し、お金についてどう考えているか、確認していきます。
ミニマリストとは?
実はミニマリストの定義はあいまいです。ものを極限まで減らしたのがミニマリストという方もいて、洗濯機すら持っていない人もいます。反対にそうではなく、自分が快適であれば、モノの個数には縛られないという方も。
ひとつの考え方として、「強調」があると、若きミニマリストで若者に絶大な人気を誇る、ミニマリストしぶさんは定義しています。シンプルライフがものを減らした生活であるなら、ミニマリズムは”一点を強調”ということのようです。
とのこと。これには異論があるかもしれませんが、自分が好きなものを見つけ、生活の中で際立たせるために、ほかをそぎ落としていくこと。それがミニマリストだということができます。
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ミニマリストは生活にお金がかからない?
一点豪華にするため、他をそぎ落とすといっても、彼等はお金までそぎ落としてしまっているのでしょうか? それとも、空っぽの部屋で貯金通帳をみて喜んでいる? そもそもお金のためにミニマリストをしているの? 余ったお金はどうしてるの? いろいろな疑問が浮かびます。
ミニマリストのライフスタイルを拝見していると、お金があまりかかっていないように感じられます。では、実際のところはどうなのでしょうか。書籍を紐解いていきましょう。
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ミニマリストのお金についての考え方1*1
まず、日本におけるミニマリストの第一人者である、四角大輔(よすみ・だいすけ)氏の『自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと』を確認していきます。第一章からお金の話が書かれていますが、
「小銭入れを捨てる。(中略) おすすめは、買うか買わないかの“ジブンルール“を持つこと。たとえば、ぼくの場合、500ミリリットル以下のペットボトルは基本的に買わない。お金と資源の無駄だ」
「衝動買いを捨てる。(中略) 街は今、モノを買わせる仕組みにあふれている。」四角大輔氏は、メンタルコントロールや外部からの消費刺激に左右されない精神のバランス力を重んじているようです。生活費は年間150万円あれば足りると書かれています。年間150万円は、普通に考えると生活が成り立たないような気がしますが、それでも四角さんは生活をコンパクトにまとめて、さらに(執筆当時は)1年の半分をニュージーランドの自然が豊かな場所で、自然とふれあいながら暮らしています。
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ミニマリストのお金についての考え方2*2
続いて、冒頭で少し触れたミニマリストしぶさんの『手ぶらで生きる 見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法』をみていきます。
「ミニマリストになって、生活費がかからなくなり、お金があまるようになった。(中略) だから僕は、人にお金を『まわす』ことにした。」
「僕の貯金は、常に60万円ほど。60万円の根拠は、『必要最小限かかる生活費の1年分』である。」
「少ないお金で生活できるようになったから、不安はまったくない」とあります。ミニマリストしぶさんは、冒頭で見た『強調』の考え方を好んでおり、ライフスタイルも洗濯機がドラム式であったり、床掃除はルンバにおまかせだったりと、何もかも生活から神経質に取り除いてしまうのではなく、テクノロジーとうまく付き合い、快適な生活をされています。
そもそも、ミニマリストが流行ったきっかけは、2008年に発売されたiPhone登場だといわれています。スマートフォンで何でも情報が手に入り、さまざまなモノを代替するようになったので、ミニマリスト生活が加速するようになったのです。
その頃に育ったしぶさん。現在はブログよりもYouTubeでの情報発信をメインにされています。スッキリとした部屋で、最小限のモノを持ち、お金は実際に生活費×1年分以上の貯金を持たず、すべて取材費や旅費、仲間への発注、困っている人への寄付などで使ってしまうのです。
もし現在の生計が立てられなくなる何かがあっても、月7万円なら、無理なくバイトで稼げる、そんな精神的な安心感が、彼のミニマリズムを支えています。
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ミニマリストのお金についての考え方3*3
ミニマリストの祖といっても過言ではない、アメリカ人ジョシュア・ベッカー氏の本『より少ない生き方 ものを手放して豊かになる』を読んでいると、ミニマリズムは精神世界と強く結びついていることがわかります。ベッカーさんは
と独自の表現であらわしています。さらに、「ものもお金も、あまったら手放す」という考え方を推奨しており、貯金や旅行もいいですが、最近のアメリカでは寄付という選択肢も考えられるとしています。
精神性が非常に高く、世界との強い結びつきを、モノを経由してではなくモノを捨てて自分の心と向き合うことで、実現しているのです。仮にモノを捨てたくないということは、きっとそのモノを通じた思い出を捨てたくないということでもあるのです。そこには、きっと何か心の大きなこだわりやトラウマ、挫折、そして夢や希望などが隠れているはず。モノを捨てることで、ミニマリストは自分の心と向き合い、一度きりの人生を消費に左右されず生きようとしているのかもしれません。
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お金を貯めるためにやるものではない
今回、上記以外にも、たくさんのミニマリストの本がありそれらを読みました。読書を通じてわかったことは、極めてスピリチュアルな話が多いということです。心の混乱が、部屋の混乱として表出するという仮説からはじまって、部屋を整えることで心を整えようという考え方です。
そこでお金の話になりますが、消費しないことでお金は確かに貯まると皆書いておられます。しかし、それすらも執着せず、社会に還元していく傾向が強く見られました。これらのことから、お金を目的にしてミニマリストになろうとすると、うまくいかないかもしれません。
お金はあくまでおまけ。部屋の片付けや捨てを通じて、多くのミニマリストがたどり着いた境地が「人生はお金ではない」という考え方に統一されるのは、非常に興味深いものです。
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まとめ
ミニマリストになったらお金は貯まる?というテーマをみてきました。答えとしては、たしかに貯まるようです。しかし、多くのミニマリストが貯金通帳すら処分しており、あまり残高を気に留めている様子はありません。
おそらく、部屋を整えることで、将来の不安への執着を断ち切り、そこから開放されることを目指している側面もあるからではないかと予想します。思い切って家中のいろいろな不用品を捨てることで、こだわっていたのがモノそのものではなく、思い出や不安などの心であること、捨てることを通じてそこから一歩成長できること、未来を前向きに見つめられることなどに気がつけるかもしれません。
*1
出所)四角大輔 「自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと」
*2
出所)ミニマリストしぶ 「手ぶらで生きる。見栄と財布を捨てて、自由になる50の方法」
*3
出所)ジョシュア・ベッカー「より少ない生き方 ものを手放して豊かになる」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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