転職してもすぐに不満が出る人は、転職は「決まるまでが勝負」ではなく「決まってからが勝負」と知るべき

転職してもすぐに不満が出る人は、転職は「決まるまでが勝負」ではなく「決まってからが勝負」と知るべき

コンサルティング会社に在籍し、人事系の仕事をしていると、自社、他社を問わず数多くの「転職者」を目にする機会があります。

実際、30代にもなれば、半数以上の人が、「転職経験者」となります。
50代にもなれば、7割近くの人が「1度は転職をしたことがある人」です。

出所)リクナビNEXT「年代別の転職回数と採用実態

ただ、その「転職」が成功したかどうかと問われれば、必ずしもそうとは言えないでしょう。

事実、「お金」という面だけを切り取ると、全転職者のうち、転職で賃金が上昇したのは半数以下の4割で、残りは「変わらず」かむしろ「減少した」となっています。

出所)厚生労働省「平成 27 年転職者実態調査の概況


もちろん、金銭面での待遇が上がったからと言って必ずしも「成功」と断定することはできないですし、逆に下がったからと言って、必ずしも失敗とは言えません。

ただ、間違いなく言えるのは「転職に失敗する人はめずらしくない」ということでしょう。

ではなぜ「転職失敗」は後を絶たないのでしょうか。

その理由は簡単です。
「転職しただけ」では、本人の能力やスキルが変化しないからです。

当たり前ですが、転職は「決まるまでが勝負」ではなく「決まってからが勝負」です。
転職という、一種の「リセット」を利用して、さらに能力を向上させることができるかどうかが、転職後に問われます。

例えば、転職の動機は大きく3つあります。

  • 金銭面での不満
  • 人間関係での不満
  • 仕事内容での不満

それぞれ「転職後」に何が待っているか、見てみましょう。

金銭面での不満で転職をした人の「転職後」とは

例えば「金銭面での不満」で転職をしたとしましょう。

現職で400万円だった年収が、転職によって500万円に増えたとします。
本人は喜んで転職します。

ところが、転職先は当然「年収500万円に値する仕事」を求めます。

同じような仕事をしている会社なら当然、「より多く働け」となるでしょうし、
もっと賢く仕事をしている会社なら「もっと賢く働け」となります。

要は、大抵の場合、転職先で年収に応じた働き方にキャッチアップできなければ、
「期待はずれの新人」の烙印を押され、居づらくなってしまいます。

給与というのは、不動産の価格と同じで、「自分しか知らないお買い得な職場」というものは存在しません。
高い給与には、高い能力が求められます。

したがって「転職先が提示した年収に値する人材」に成長できなければ、同じように転職を繰り返すだけです。

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人間関係での不満で転職をした人の「転職後」

では「理不尽な上司」が原因で転職をしたとしましょう。

新しい職場には、どうやら理不尽な上司はいないようです。
気持ちよく仕事ができそうだ、ということで転職をしました。

転職してしばらくは、「転職は成功だった」と満足でした。

ところが、1年後、事業部の体制見直しで、上司も同僚も変わり、あなたの苦手なタイプの上司と同僚が増えてしまいました。

「これでは、前と同じじゃないか……」と思い、また転職を決意します……

なんて話は腐るほどあります。

要は、「自分が許容できるタイプ」を増やしていかない限りは、状況の変化が起きるたびに転職をしなければならない、という羽目に陥ります。

だから、転職は「人間関係をリセットする」だけでは駄目なのです。

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仕事内容での不満で転職をした人の「転職後」

「仕事内容での不満」で転職をしたとしましょう。

新しい職場での仕事は、暫くの間充実しています。
「覚えなければならないこと」も多いし、「あこがれの仕事につけた」という満足感もあります。

ただ、その高揚感も持って1年程度です。

ある程度仕事を覚えて、業界の抱える問題も知り、今の会社でできることの限界も知ってしまうと、あれほど憧れていた仕事も、徐々に色あせて見えるようになります。

そんなとき、知人がニュースで話題になっていた会社に入社したと知りました。
その会社の業務内容を調べると……面白そうです。
結局また、今の仕事に不満を持ち、「転職」の機会を探すようになります……

なんて話はたくさんあります。

結局の所、仕事内容で不満を持ちやすい人は、どこかの時点で、与えられた条件の中で「チャレンジ」を発見していく能力の獲得をしなければなりません。

どの職場にいても、ある程度仕事を覚えてしまえば、当初の興奮と感動は無くなります。

そんなとき、「仕事は誰かが与えてくれるもの」という感覚の人は、その職場に何も見いだせず、転職を考えるだけになります。

ですが、「自らチャレンジを作り出せる能力」を持つ人は、どのような環境でも、機会を発見して面白さを見出すことができます。

転職を通じて「新しい機会を得る」だけでは、駄目なのです。

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問題は主体性である

要するに、「転職した」だけでは、本人の能力は、何も変化しません。

転職した後に、



「より需要のある、より高いスキル」を獲得できるかどうか。
「より多様なタイプの人間とうまく付き合っていける能力」を獲得できるかどうか。
「限られた状況で、より多くの機会を発見できる能力」を獲得できるかどうか。


そういった勝負をしなければなりません。
でなければ、短期間で「転職」を繰り返す羽目に陥ります。

結局どの会社に就職しても、遅かれ早かれ必ず同じ不満が出て、また転職したくなります。


以前、あるソフト開発業の会社で、見聞きした出来事です。

「今度入ってくる人、すごい経歴らしいですよ」
と、一人のマネジャーが言っていました。

「あ、こないだ面接したKさんですか?」

「そうそう。副社長が面接したらしいけど、◯◯大卒で、◯◯を立ち上げた人なんだって。」

「おお、本当ですか。それは凄い。」

「即戦力だって、社長も喜んでました。」

すると、一人の社員がボソッと言いました。
「なんで、そんな凄い人がウチなんかに来たいって言ったんですかね。」

マネジャーがすかさずフォローを入れる。

「その話も副社長が聞いたらしいんだけど、ウチの◯◯さんと知り合いで、ウチのこともよく知っているから、らしい。」

「そうなんですね。」

「楽しみですね。」


ー半年後

副社長が現場のメンバーに聞く。
「こないだ入社したKさんの様子はどう?」

「すごい頑張ってますよ。前評判どおり優秀でした。」

「そうかー、それは良かった。」

「ただ、最近マネジャーとちょっともめてるみたいです。」

「なんで?」

「詳しくは知らないんですけど、ミーティングでマネジャーに凄い怒られたらしいですよ。」

副社長はそれが気になり、マネジャーを呼び出してことの成り行きを聞いた。
すると、マネジャーは言った。

「いや、Kさんは最初のうちはよかったんですよ。でも最近はだめですね。」

「なぜですか?」

「不満ばかり口にするからですよ。例えばお客さんにフォローする体制ができてない、マニュアルが整備されていない、育成する仕組みがない……とかなんとか。」

「ほうほう。」

「こっちだって、そんな事はわかってます。割り当てるリソースが不足してるんで、「じゃ、あなたがやってください」って言ったんです。」

「そしたら?」

「「私の仕事じゃない」っていうんですよ。いやいや、ウチが人手不足なのは、わかってたはずでしょう、って言いました。そしたら彼、渋々「わかりました」って言いました。」

「で?」

「彼に任せっぱなしなのも良くないので、彼に「どうなりました?」って聞いたんです。そしたら、「仕事を妨害された」って言うんですよ。冗談じゃない、妨害なんかしてないですよ。」

「妨害?」

「彼が人を貸せというんです。わからなくはないですけど、まずは自分で手を動かしてやってみてください。といったら、拗ねてしまって。」

「ああ……なるほど。」


Kさんはその後、2年も経たないうちに、また他社へ転職していってしまいました。

辞めたい、と副社長に申し出たときのKさんは前向きに
「やりたいことがあるので」と言っていたそうです。

ですが、Kさんは周りの人達には
「うちの会社には未来がない。仕事がつまらない。仕組みがない。」と盛んに漏らしていたそうです。

おそらく、Kさんは今後も転職を繰り返すでしょう。
それは、Kさんの生き方なので、誰もケチを付けることはできません。

ただ、Kさんが「成功した転職だった」と思うことは本当に少ないでしょう。

彼は実際、「自分が変わらなくて良い会社」を探しているのですから。
どこへ行っても、遅かれ早かれ、不満が出るはずです。

結局のところ、転職は「決まるまでが勝負」ではなく「決まってからが勝負」。
「転職がすべてを解決する」なんて、ありえません。
転職は、自分を変えるきっかけにすぎないのです。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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