よくある中途採用の面接での退屈なやり取り
ある、中途採用の面接でのやり取りです。
応募者は、
「もっと大きなやりがいを得たかったからです。」
と、即答します。
「具体的には、どのようなことでやりがいを得られるとお考えですか?」
「御社の◯◯事業について、webサイトやニュースリリースで拝見しました。営業職を募集していたので、その仕事ができれば、大きなやりがいが得られると思いました。」
「それは、今在籍している会社でも可能ではないですか?異動願いなどは出されました?」
「はい、出しました。残念ながら、希望は叶わずでして……」
「なんと言われましたか?」
「いえ、特に何も。」
「異動願いが却下された原因は、なんだと思いますか?」
「正直、わかりません。」
面接官は少し考えてから、質問しました。
「今の仕事には、あまりやりがいはないですか?」
「ないわけではありません。面白いと思うこともあります。」
「ではなぜ、今の仕事を続けたいと思えないのですか?」
「もう5年以上、現在の仕事に携わっています。お客様への提案も慣れて、新しいチャレンジが足りないと感じています。」
「社内では新しいチャレンジが得られないと判断した、ということでしょうか?」
「そこまでではありませんが、御社の事業が魅力的に見えたもので、外に出るチャレンジも必要かと思いました。」
……正直、この面接に参加して、私は退屈でしょうがなかったです。
大人同士の会話で、正しい事を言っていますし、特に問題はありません。
ですが、どこまでいっても、応募者の本心は見えませんし、面接官が本当に何を知りたいのかも、よくわかりません。
こんなやり取りが繰り返される面接のどこに意味があるのか、私にはよくわかりませんでした。
*
ネガティブな転職理由は言わないほうがいい?
一方、別の機会に、大変面白い面接を見ることができました。
こちらも中途採用の面接です。
「転職というのは人生の一大イベントですよね?」
応募者は頷きました。
「ですから、決意があったのだと、我々は理解しています。「なんとなく」転職する人はすごく少ない。そうですよね?」
応募者は再度、頷きました。
「では、率直にお聞きしますが、今やっていること、今いる会社の、何が嫌だったのですか?」
「もっとやりがいのある仕事が……」
「すみません、我々が聞いているのは、「何が嫌だったのか」です。これは、大事なことなので。例えば、人間関係、給料、権限、それとも?」
「……」
「何かを得たい、というよりも、何かが嫌だ、という理由で転職をする人のほうが、実は圧倒的に多いんですよ。別に恥ずかしいことではありません。」
「……」
「ひょっとして、エージェントの方から、「ネガティブな転職理由は言わないほうがいい」とか、言われてます?」
「……」
「あのですね、ネガティブな転職理由は言わないほうがいいとか、やめた方がいいですよ。ほんとのことを聞かなくちゃ、我々も採用できない。」
「まあ……、そうですね。」
「だいたい、我々のホントのところを知りたいと思って面接に来られたんじゃないですか?」
「はい。」
「もちろん、本当に前向きな理由だけで転職する人もいるかも知れません。でも、繰り返しますが、そんな人は稀です。今の会社に不満がある、上司と合わない、だから転職する、でいいですよ。」
応募者の表情が、徐々に柔らかくなってきました。
「で、こういうことを言うと、中には怒る人もいます。「本当に、そういうネガティブな理由ではないです」と。よく訓練されたサラリーマンだなぁとは思いますが、まあ、そういう人は採用しません。うちの会社に入ると、率直に意見を言われるので、多分耐えられないと思います。」
「……そうなんですね。」
「で、どうなんですか?」
「……正直、今の会社の将来性には、かなりの疑問があります。部長は仕事してないですし、課長は保身ばかり。うんざりしました。」
「ほう。なぜそう見えたのですか?」
「商材が悪いのに、営業の尻を叩くことしかしないからです。課長はそれを意見することもできません。」
「なるほどねー。」
「で、思ったんです。今の会社にいるのは、時間の無駄だと。あと、もっと稼ぐチャンスがあるなら、そっちに行きたいというのも、当たり前だと思います。」
「なぜ、商材が悪いって思ったんですか?正直、御社とのコンペにうちが負けているケースもありますけど…。」
「それは……」
……
この面接は、大変面白いものでした。
全てではないにしても、お互いの手の内をさらして、率直な意見交換につながっていますし、応募者が何にストレスを感じるのかも、よく把握できます。
*
建前ばかりの面接はやめるべきではないか。
面接というのは、殆どの場合、面接官と応募者は仮面をかぶって対立します。
例えば、面接官は自社をより良く見せようとしますし、応募者の本音を見極めようとして、ストレートな質問を避けます。
だから、応募者の方も、余計なことを言うまいとして、建前ばかりになる傾向にあります。
逆に、応募者は「本当の転職理由」を言うと嫌われるのではないかと思って、エージェントなどが指導する「きれいで、ポジティブな理由」ばかりを言いがちです。
しかし、それでは応募者が転職しようと決意するに至った本質の部分は、きれいに加工されてしまっており、面接官の心には届きません。
普通に考えれば、面接官と応募者が対立するよりも、協調して情報を出し合ったほうが、実りある時間になりやすいのは間違いないでしょう。
もういいかげん、時間が無駄になる、建前ばかりの面接はやめるべきではないか。
「なぜ転職したいのですか?」という面接官の質問に、無理やり「前向きな転職理由」を答える応募者を見るたびに、そう思ってしまうのです。
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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