老後に「下流老人」となりそうなサラリーマンの特徴とは

老後に「下流老人」となりそうなサラリーマンの特徴とは

三年ほど前、「下流老人」というキーワードが流行ったことを覚えている方もいるかもしれません。
貧困者の支援を行うNPOの代表である藤田孝典氏が、著書「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」で使用した言葉です。

藤田氏の定義によれば、下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」を意味します。

例えば、首都圏に住む一人暮らしの高齢者の場合、生活保護で支給されるお金は月額13万円程度です。

ただし、医療や介護などのサービスは別途、現物支給されるうえ、所得税や住民税なども免除されるため、現物給付や控除された金額を収入として換算すると、額面よりも実際に支給されている額に換算するともう少し多くなります。

出所)藤田孝典「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」

したがって、年金などを含めてそれ以下の収入で生活をする老人は「下流老人」と言えるでしょう。

誰もがなる可能性のある「下流老人」

この流行の背景には、「下流老人」という言葉が『格差への意識』を刺激したことが挙げられますが、当然、「自分も老後資金の不足で『下流』になってしまうのでは」という不安もあるでしょう。
政府の調査は、それを裏付けています。

日頃の生活の中で、悩みや不安を感じているか聞いたところ、「悩みや不安を感じている」と答えた者の割合が63.1%、「悩みや不安を感じていない」と答えた者の割合が36.4%となっている。

日頃の生活の中で、「悩みや不安を感じている」と答えた者(3,986人)に、悩みや不安を感じているのはどのようなことか聞いたところ、「老後の生活設計について」を挙げた者の割合が53.5%、「自分の健康について」を挙げた者の割合が52.1%と高く、以下、「家族の健康について」(42.1%)、「今後の収入や資産の見通しについて」(39.7%)などの順となっている。(複数回答、上位4項目)

出所)内閣府「国民生活に関する世論調査」平成29年度
グラフは上記を基に三菱UFJ国際投信作成
※複数回答

老後の資金不足は致命的であり、寿命に直結する事項です。「下流老人」となってしまうことは誰しも避けたいでしょう。

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「下流老人」となることを防ぐには

では、いったいどうすれば「下流老人」となることを防げるのでしょうか。
例えば、上で述べた著書「下流老人」において、藤田氏は予防策として次のことを挙げています。

  • 「人の世話にならないことが美徳である」とのプライドを持たない
  • 家計を管理して貯蓄する
  • 地域社会とのつながりを大切にし、可能な限り働く
  • 地域のNPO活動にも参加しておく
  • 支援しやすいように「話しやすく」「プラス思考」でいる

より単純化していえば

  • 妙なプライドを持たず、
  • 計画的に老後資金を貯め、
  • 友達を積極的に作り、
  • 様々なコミュニティに顔を出して
  • オープンマインドである

そういった人は、「下流老人」になりにくいと言えるのではないでしょうか。

何を当たり前のことを、と言う方がいるかもしれませんが、これは言うほど当たり前ではありません。
特に、最後の項目「オープンマインド」は容易に身につくものではないでしょう。

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変われなかった管理職

この「オープンマインド」、すなわち柔軟さやポジティブさを身につけることは、ある種の人によっては非常に難しいことのようです。

例えば、私が覚えているのはある製造業での話です。
私は以前コンサルティング会社で働いており、とあるメーカーから人事評価制度の再構築に関する依頼を受けていました。

聞き取り調査をした結果、問題点は非常に明らかで、一言で言ってしまえば「管理職」を評価するための基準が適切ではなく、例えば、部下の離職率を低く保つことや教育の場を提供するといったことが管理職の評価に組み込まれてないなど、「管理職がやるべきことをやっていない」状態でした。

そこで、私はいくつかの施策を提案し、そして、最後にそのメーカーの経営陣に申し上げました。
「管理職の評価基準を改めて、その内容を明文化すべきだと思います」

ところが、(予想はしていましたが...)何人かの部長が猛反対しました。

「部下の離職率が高いのは、人事の採用が下手だからだ」「我々は皆、教えられたのではなく、先輩の後ろ姿を見て学んだ」
「昔からこの方法でやってうまくいっていたんだ」

そんな反発があったのです。

経営陣は、彼らの意見を認めつつも、部長たちに対して「あなた方のマネジメント力を向上させるためには、評価基準の再構築が不可欠である。むしろ、新しいことにチャレンジするチャンスだ」と、変更の必要性をこんこんと説きました。

しかし、何名かの部長は、非常に頑なでした。
「この歳になって新しいことはできない」と、評価基準の変更に消極的な態度を取り続けたのです。

結局、会社はしばらく、以前の評価基準と新しい基準の「ダブルスタンダード」を受け入れることにしました。
その後、新しい基準に適応した管理職と、そうでない管理職との間には大きな差がついたことは言うまでもありません。

変化をオープンに受け入れた管理職は大きく成長し、変化を拒んだ管理職は厳然たる数字の結果を突きつけられ、ついにはその地位を追われることになったのです。

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必要なのは受援力

「下流老人」を支援する藤田氏は、ソーシャルワーカーとして現場で10年以上生活相談を受けて感じたこととして、支援を「しやすい」人と、「しにくい」人がいると述べています。

藤田氏はそれを、支援される側が支援する側の力をうまく活かし、生活の再建に役立てる能力という意味で、「受援力(じゅえんりょく)」と呼んでいます。

「支援しやすい方の特徴は、話しやすかったり、プラス思考だったり、自分から積極的に問題の解決にあたったり、自分の問題を把握していたり、ある程度の支援方法や制度を学んでいたりする。気軽に相談に来てくれて、問題が複雑化する前にアドバイスできる。
一方で、支援が困難な方は、かたくなに心を閉ざしていたり、自暴自棄になっていたり、マイナス思考で問題解決に対して消極的だったりする。また、問題の所在が把握できずにやみくもに行動してしまう場合もある。これらが何よりも問題なのは、支援者との間に信頼関係が築けないということだ。するとたいてい、支援はうまくいかない。」

出所)藤田孝典「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」

この話を読み、私はすぐ、あのメーカーにいた「変われなかった管理職」を思い出しました。
彼らは、「与えられたチャンス」を活かせず、頑なに心を閉ざし、問題解決にも消極的でした。

また「チャレンジは不利益」とのマイナス思考に囚われ、その場所から一歩も動けなかったのです。

こうなってしまうと、どんな優秀な経営陣やコンサルタントもお手上げです。
結局、彼らは「無意味なプライド」と「頑固さ」で自壊してしまったのです。

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老後に「下流老人」となりそうなサラリーマンの特徴

この記事のタイトルは、「老後に『下流老人』となりそうなサラリーマンの特徴とは」です。

まとめてみると、

  • 成果が出ていない割に、妙にプライドが高く
  • 変化することに対して頑なであり
  • 仕事の人間関係以外に友達がおらず
  • かといって、副業や外部のコミュニティ活動も面倒臭がって参加せず
  • マイナス思考であること

上記のようなサラリーマンは、すでに下流老人へ片足を踏み入れていると言えるでしょう。
上でご紹介した部長たちも、まさに老後に苦労するであろう「下流老人」の特性を示していました。

なお、藤田氏も述べていますが、私は経済的に困窮していても、非常に幸福そうな老後を送っている方々を何人も知っています。

そういう方々はお金に困っていても、人間関係にはあまり困っていないように見えます。
多くの友達に囲まれ、趣味や食事などの誘いもしょっちゅうあります。
本当に困っているときにも、「ここなら職を紹介できるよ」という、助け舟ももらえたりします。

現代は、サラリーマン受難の時代です。
年功序列や終身雇用制度は崩壊しつつあり、将来もらえるはずの退職金や年金も減っていくことが予想されます。
お金がない、貯蓄ができない人も増えていくでしょう。

だから、本当の意味で「下流老人」となることを避けるには、「お金」ではない部分でも努力をしておくこと、つまり、精神的な柔軟さや、仕事と関係のない友達を作る能力を磨いておくことも重要なのです。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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