「いつのまにか破産」を防ぐために

「いつのまにか破産」を防ぐために

 「破産」と聞くと、皆さんはどのような印象を持ちますか?どこか遠い世界の話のように聞こえる方が多いかもしれません。でも実は、普通の生活をしているつもりだったのに「いつのまにか」破産せざるを得ない状況になっていた、という方も多くいるのです。どういうことなのかお話するとともに、そうならないためにしていただきたいこと、考えていただきたいことをお伝えいたします。

借金の理由がわからない?

 筆者は以前、法律事務所でパラリーガルとして働いていたことがあり、自己破産の申立て業務の補助をしていました。裁判所に破産を認めてもらうには、破産申立てに至った経緯を申告する必要があります。そのため、弁護士とともに依頼者との面談に入り、50名以上の方の借金の理由をうかがってきました。事業資金の融資を受けたものの経営が破綻してしまった方や、住宅ローンの借入れ直後に長期間失業してしまった方など、その理由は様々です。

 しかし、こういった明確な理由がある方のほか、意外と多いのが「よくわからない」とおっしゃる方です。いつ頃、どんなことのためにお金を借りたのかよく覚えていないにもかかわらず、気付いたときには数百万円単位の借金ができていて、自力での完済が不可能な状態になっていたというケースです。筆者も、初めのうちはどういうことかわからず困惑しましたが、依頼者一人一人のお金まわりを丁寧に調べていくと、一つのパターンが見えるようになってきました。まとまった出費はしていないけれど、収入レベルより少し高い生活水準を長期間続け、クレジットカード等により借金の実感なく借り続けてしまうというパターンです。

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無意識レベルの浪費とは

 管轄裁判所によって多少運用が異なりますが、破産申立てにあたっては、保有している全預貯金口座の過去1~3年分の通帳コピーの提出が必要です。また、借金の額の裏付けのため、債権者(お金を貸してくれた人や会社)から資料を提供してもらって確認する必要があります。たとえばクレジットカードであれば、クレジットカード会社から利用明細を提供してもらいます。

 法律事務所では、通帳の入出金やクレジットカード明細を一つ一つ分析することで、依頼者の借金の原因を探っていきます。すると、頻繁に引越しを繰り返して、その度に家具を新調していたり、ヨガやエステといった趣味に対して毎月の固定費として結構な額の支出を続けていたりと、本人にとっては当たり前になっていた浪費の事実が浮き彫りになっていきます。

 初めのうちはボーナスで帳尻を合わせて年収の範囲で収まっていた支出も、どこかのタイミングで銀行残高では足りなくなってしまいます。ここで立ち止まって生活を改めることができれば、破産には至りません。「今だけ、ちょっとだけ」と思ってクレジットカードの支払方法をリボ払いに変更したり、ATMでお金をおろしたついでに銀行カードローンを契約したりすることから、借金が始まってしまう方が多くいらっしゃいました。もちろん、返済計画をきちんと立てた上で、目的を持ってお金を借りることは悪いことではありません。しかし、見通しを立てずに問題を先送りしてしまう癖が一度ついてしまうと、リボ払いの返済月額が返せていれば問題ない、利用限度額までは自分が自由に使って問題ない、等と感覚が麻痺してしまう方が多くいました。

 破産は、持っている資産をお金に換えて債権者に配る代わりに、借金の返済義務を免除してもらう仕組みです。そのため、原則として資産価値のある家や車は手放さなければなりませんし、解約返戻金がある程度貯まっている保険は解約させられてしまいます。さらに、裁判所には、破産する方だけでなく同居親族の給与明細等の提出も要するため、協力を求める必要があります。さらに、一定期間、裁判所が選んだ破産管財人という弁護士に生活状況を細かく報告することが求められる場合もあります。

 もちろん、破産は、本当にどうしようもない状態になってしまったら利用すべき、国が認めた仕組みですが、やはり、未然に防げるのであれば防ぎたい事態です。

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お金の動きを可視化

 無意識のうちに借金が膨れ上がり、気付いたときには自分の手には負えないような額になっていた、という「いつのまにか破産」を防ぐためには、まず、お金の動きを可視化することです。
 現在、家計管理ができるスマホアプリはたくさん作られています。中でも、クレジットカード等の利用記録や銀行口座の入出金記録が自動反映されるものは非常に便利です。クレジットカードの使い過ぎを防ぐためにも、利用状況をしっかり把握する必要があります。

 交通系電子マネー、クレジットカード、デビットカード、QRコード決済等のキャッシュレス決済は、今や全く利用していない人を探す方が難しいほど浸透してきています。キャッシュレス決済が可能な店舗も、日に日に増えているように感じます。こういった決済手段とアプリを連携すれば、利用した額や店舗が自動で記録されて家計簿作成が自動化されるので、面倒臭がりな方でも簡単に支出を把握できます。

 支出内容をカラフルな円グラフにする機能を持つアプリもあり、パッと見ただけで支出の大小を把握することも可能です。筆者自身も、アプリでの家計管理を始めたときは、安いからと言って気軽に入っていた喫茶店でのコーヒー代や、友情はプライスレスだからと理由をつけてお会計を気にしていなかった居酒屋での飲食費が思いのほかかさんでいる事実を目の当たりにして驚いた記憶があります。まだ利用されていない方は、ぜひ試してみてください。

参考記事
家計簿作成の強い味方! マネーフォワードを使ってみた
家計簿だけじゃない! マネーフォワードをもっと使いこなそう

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一番大事なものはなに?

 家計状況を把握したら、次に、収支をコントロールする方法を考えます。そこで重要なのは、自分にとって一番大事なものはなにかを考えることです。毎週末の草野球が生きがいだという方や、化粧品には絶対のこだわりがある方など、いろいろな方がいらっしゃると思います。
皆さんの一番大事なものは何でしょうか?それを決めたら、その他の支出を削れないか検討してみてください。大事なもののためなら、その他のことはある程度我慢できるのではないでしょうか。筆者は、友人との飲み会代を確保するために、お菓子は月に3,000円まで、美容院は半年に1回、といったマイルールを決めています。

 そうやって毎月の予算を立てて、費目ごとに管理してください。アプリによっては、今月はあといくら使えるか自動計算してくれるものもあります。また、預貯金等の残高の推移を自動で棒グラフ化する機能を持つアプリもあります。少しずつでも右肩上がりになっているグラフを見るのはきっと楽しいはずです。

 この記事を読んでいただき、「いつのまにか破産」に至ってしまう方が一人でも減ること、そして、自分と向き合って資産を育てる楽しさを味わう方が一人でも増えることを、心から願っています。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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