他人事ではない「老後破産」の現実。その時が来て困らないために、今から始めたいことを知ろう

他人事ではない「老後破産」の現実。その時が来て困らないために、今から始めたいことを知ろう

「下流老人」「老後破産」......。このような耳の痛い言葉が多く聞かれるようになり、もう数年ほど経ったでしょうか。「老後破産といっても、いま真面目に働いているのだからそんな心配はないだろう」と思い込み、その実態を見て見ぬふりで済ませようとしていませんか?

今回は、「老後破産」と呼ばれる状況を招かないために、今から備えておきたいことについてまとめます。
「わが家でも定年までにこれはやっておこう」「自分の状況と重ねてみて、これは必要?」「わが家は自営業だから、備えをしっかりしておこう」など、ぜひ、これからの暮らしの備えにお役立てください。

公的年金があるにもかかわらず、生活保護を受給する高齢者の割合は増えている

2016年度には、生活保護受給世帯全体の半数以上の割合を高齢者世帯※が占めるようになりました。公的年金の恩恵を十分に受けていると思われる現代の高齢者においても、貧困の問題が明るみに出てきているといえます。

※男女とも65歳以上の者のみで構成されている世帯か、これらに18歳未満の者が加わった世帯

出所)厚生労働省ホームページ「生活保護制度の現状について

受給開始年齢の引上げなどを目のあたりにして、公的年金には今ほど期待を持てないと思われる現役世代においては、老後に貧困に陥るリスクを想定してしっかり備えることが必要といえそうです。

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余裕ある老後生活の実現に、必要になるお金はどのくらい?

生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人でゆとりある老後生活を送るための費用は月額34.9万円となっています。一方で、年金の平均は月額18万円※となっており、毎月16.9万円が不足します。
この不足分を補おうとすると、25年で5,000万円程度が必要です。もちろん、ゆとりある生活のために必要というだけで、生活するために5,000万円必要というわけではありません。

出所)生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(平成28年度)」、総務省「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)」

※二人以上の世帯のうち無職世帯、65歳以上、用途分類「公的年金給付」

しかし、この「5,000万円」という数字を目の当たりにして、「わが家はそこまで必要ではないにせよ、やっぱり老後は年金収入だけに頼れないんだな」と、実感された方も多いはず。そこで、次の項目からは「定年後の生活苦から老後破産への負のスパイラルを断ち切るため、今後やっておきたいこと」を、くわしくご紹介。もちろん貯蓄することばかりではなく、別のアプローチ方法もご提案します。

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老後破産に至る原因を踏まえて、早めに備えておきたいこととは?

定年退職後に生活苦に陥ってしまい、「老後破産」とはいかないまでも、その直前の状況でいつまでも不安を感じながら暮らし続けることは避けたいもの。そこで、ここでは定年退職後の暮らしを踏まえて今から始めたいことや、大きな負担なく始められることを、5つご紹介します。

1

なんといっても健康第一!

健康を損なってしまえば、そのぶん医療費がかかってしまいます。もちろん高齢者の医療負担は相対的に低いですが、医療を受ける機会が増えれば費用はかさむでしょう。早いうちから健康管理や体力づくりに気を配り、不摂生のツケが定年後に回ってこないようにしなければなりませんね。

2

住宅ローンも老後の生活苦の原因!60歳以降の返済はなるべく残さずに

定年後に住宅ローンの返済が残ってしまったことが原因で、老後の生活が苦しくなるケースは意外に多いもの。つまり、住宅ローンの返済が、60歳を過ぎても残る予定がある方は要注意です。
もし職場の定年が60歳で、年金の支給開始が65歳からなら、その間の5年間は収入のない中で住宅ローンを返済し続けなくてはいけません。もし貯蓄や退職金で返済できたとしても、その後の生活費が目減りしてしまうと思うと不安ですね。
少しずつでも繰り上げ返済などを活用し、今あるローンはできるだけ収入のある定年までの間に完済してしまうようにしましょう。

3

自営業の方は、早めに老後のための積立制度を活用!

会社員や公務員の方は退職金制度や確定拠出年金がありますが、個人商店や自営業を営んでいる方の場合は、当然ながら退職金はありません。そこで、自営業者の方はご自身で退職金の代わりとして、老後の生活資金を積み立てておける制度を活用するのがおすすめです。

その代表的なものに、中小企業の役員や個人事業主が加入できる積立制度「小規模企業共済」があります。また、国民年金に上乗せして積み立てをおこない、その金額によって老後に受給する国民年金の支給額を増やせる「国民年金基金」も、良く知られていますね。これらの掛け金は全額が課税所得控除の対象となりますから、税金対策になることもメリットです。

これらのほかにも、国民年金の受給額を少額上乗せできる「国民年金付加年金」や、「個人型確定拠出年金」など、自営業者向けにもさまざまな老後資金の積み立て方法があります。もちろん、民間の保険会社が販売している個人年金保険に加入しておくという方法もあります。

4

60~65歳までは何らかの収入を得る手段を確保しよう

たとえ60歳で定年を迎えるとしても、年金支給開始までの5年間は働けないというわけではありません。もっとも手っ取り早い手段は、年金支給まで再雇用や再就職などで一定の収入を得られる状況にしておくことです。
もともと働くことが苦ではなく、身体も健康なのであれば、今や60歳を過ぎてもできる仕事だって少なくはありません。退職して急に何もすることがなくなり途方に暮れてしまうよりは、社会活動に参画できることで心理的な不安も低減できるでしょう。

5

「退職金」「確定拠出年金」も貯蓄のうちと考える

貯蓄というと、自分の給料やボーナスから少しずつ除けて貯めたお金を連想する方も多いでしょう。しかし、定年まで働けば支給される退職金や、積み立てて戻ってくる確定拠出年金なども立派な貯蓄です。それらも、老後の生活費としてしっかり組み込んで考えておきましょう。

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老後破産の危険は誰にでもある?あなたのライフスタイルを再チェック

「普通にサラリーマンとして働いていたのに、退職後『老後破産』の危機に......」などといったエピソードを、ネットニュースの記事などでご覧になった方も少なくないでしょう。しかし、完璧に備えをしていなければ誰もが老後破産に陥るというわけではありません。

ただし、どなたでも生活スタイルや将来の見通し次第で、老後の生活が今より苦しくなってしまう可能性は十分にあります。今一度、ご自身の生活をチェックして見直すべき点を洗い出してみましょう。

育児・教育は、定年を区切りに終えられる?

意外に多いのが、晩婚化による出産の高年齢化などで、子供の学卒年齢が定年後になるケース。もし定年を迎えた時点で子供が大学に通っているなら、授業料だけでも1人あたり年間50万円から100万円程度はまだ必要です。もし、定年後も子供が学校に通い続ける予定があるなら、早期のうちから学資保険やつみたて投資、貯蓄の利用などで、定年後の負担をなくす・減らすための対策をおこなっておきましょう。

老後はあれも、これもしたい......と、無理をしようとしていない?

定年退職後に「夫婦で海外をめぐる旅をしたい」「バイクで日本を一周したい」など、夢を膨らませている方も少なくないでしょう。しかし、その時点で退職金や預貯金があるからといって身の丈に合わない暮らしを続けていては、たとえ90歳まで暮らせるだけのお金があっても数年で底をついてしまうかもしれません。

多くの方にとって、定年以降は現役時代よりも収入が少なくなります。なので、定年以降はお金の使い道について優先順位をしっかりと持ち、将来を見据えながら貯蓄を使っていくことが重要になりそうです。

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余裕ある老後の暮らし方とは?しっかり「使う」「地道に増やす」ことも大切

いかがでしたか?

老後の暮らしの余裕とは、「生活レベルが高いこと」や「やりたいことが何でもできること」、それに「いつまでも蓄えがたくさん残っていること」とは、少し違っているようですね。
老後の暮らしにおいて、余裕とは「蓄えをきちんと生活のために消費できる状況が続き、今日や明日の不安が極力少ない状態」と考えるとよいでしょう。

安心して暮らすためには、蓄えを「使っていく」ことも大事です。不安を感じながら、いつまでもお金をタンスに残しておくことが幸せな老後とは言い切れないもの。身の丈にあったお金の使い方が必要ですが、節約だけが老後破産への備えではありません。

何歳になっても、日々の充実のために適度な負担でできる仕事ならずっと続けていくのもよいですし、無理のない範囲で投資をし、楽しみを兼ねて少し安心の種を増やしておくこともおすすめです。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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