2017年に出版されベストセラーとなった「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」(佐藤航陽 著) では、今ある「お金」の価値が変化する将来について書かれています。
仮想通貨、フィンテック、シェアリングエコノミー、評価経済、といった新しい経済の形が紹介されています。
その中で、新しい世界では私たちが今持っている「お金=現金」の社会での位置付けが大きく変わるだろうと示唆しています。
資本主義と「お金」
現在の資本主義経済の中では、「お金」はモノやサービスを得るための最大の道具と言っていいでしょう。
そして、モノやサービスの売買とは、「等価交換」です。
わかりやすく言えば、「売り手」と「買い手」が、
「これだけの量のお金をくれるなら、この商品やサービスをあげましょう」
「この商品やサービスをくれるなら、これだけの量のお金をあげましょう」
ということで双方が納得し、モノやサービスと貨幣を交換するのです。
このシステムの下では、当然、「貨幣」をたくさん持っている人は持っていない人に比べて多くの、もしくは質のいいモノやサービスを手に入れることができます。
そして現代では、多くはモノやサービスを作り出すための「労働力」の対価として「貨幣」を手に入れ、その「貨幣」を使って自分が欲しいものやサービスを手に入れることの循環になっています。
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お金の価値とは?
さて、古代には「物々交換」の時代がありました。
しかし、物々交換の場合、お互いの欲しいものが常に一致するとは限らないといった問題点が生じます。
それが実際にどのような形を経て貨幣制度に発展していったかは様々な学説がありますが、いずれにせよ、基本的に「お金」は「誰にとっても共通の価値を持つもの」として、モノやサービスの価値を定量化する役割を果たしていると言って良さそうです。
また、「お金」の最大の特徴は、日本の場合は日銀によって、貨幣の信用性が公的に担保されているところです。
ある意味では、国という特定の存在が支配している経済圏とも言えます。
しかし、この形が変わろうとしている、というのが「お金2.0」の主張です。
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絶対的支配者が存在しない「お金2.0」の世界
「お金2.0」では、特定の支配者がいない経済圏について紹介しています。
これらの経済活動に共通するのは、「分散化されたシステム」であり、中央集権型の経済とは全く違う姿をしています。
まず挙げられているのが、仮想通貨の世界です。
一例としてビットコインを挙げると、仮想通貨と「お金」の違いは「現物としての貨幣が存在しない」ことだけではありません。
ビットコインは、基本的には誰でもマイナー(採掘者)になって発行することができるのが最大の特徴です。
日銀でなければ日本円を発行できない、というように特定の存在によって経済圏が支配されている世界とは異なります。
絶対的な管理者が存在しなくても、例えば二重支払いの禁止や、持っている額を超えて送金ができない、というような「共通のルール」の存在によって、利用者間で自動的に回っている経済システムです。
そしてそのルールや在り方が気に入らなければ、自分はビットコインではない他の経済圏に移ってしまえば良いだけです。
離脱者が増えれば自然と経済圏が縮小し、通貨の価値にも影響が出て、自然に淘汰されます。
また、「シェアリングエコノミー」の世界も、特定の支配からかけ離れた経済圏として挙げられるでしょう。
一例を挙げると、UberやAirbnbがシェアリングエコノミーとして展開する有名なサービスです。
Uberは、タクシーのように運転手を束ねたり何十台という車を所有したりしているわけではなく、単なる個人同士のネットワークです。
車を持つメンバーと、移動したい人をマッチングするシステムがそこにあるだけで、自動的に需要と供給が満たされ、経済活動として機能しています。
空いている状態の、自分の車と時間を他人とシェアすることで経済活動を行なっており、こうした経済活動は「シェアリングエコノミー」と呼ばれています。
個人が所有する宿泊施設や民家と、宿泊したい人をマッチングするAirbnbもシェアリングエコノミーの一つです。
Airbnbという会社自体が不動産を所有しているのではなく、個人同士をマッチングすることで、自動的に個人同士で経済的なやりとりが成立しています。
佐藤氏は、メルカリもその一つとして挙げています。メルカリが提供しているのは商品でなく、個人のいらないものと欲しいものをマッチングさせる場所とルールだけです。
いずれも、絶対的支配者が存在せず、個人間で自然と経済活動が回っている世界です。
また、気に入らなければ、会員登録を解除すれば良いだけの、「参加自由」な世界です。
集団の質が悪ければ利用者は減り、プラットフォームを提供する企業の価値も下がるような特徴を持っています。
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「評価主義」とは
これらサービスは、「評価主義」「評価経済」の存在を示しています。
佐藤氏は「資本主義」を補う考え方として「評価主義」の存在を挙げています。
資本主義のなかで定量的に評価されづらい、愛情や好意、信頼などの「内面的な価値」と慈善活動などの「社会的な価値」にスポットを当てようというもので、これらが貨幣に取って代わる存在になり得るというものです。
「内面的な価値」「社会的な価値」は、現在のところ実生活の中で数値化されず、直接役に立つものではありません。
一方で、個人や企業のレベルでこうした「価値」を共有することで生活が成り立つ経済圏がいくつも存在するようになれば、「通貨」だけが価値を持つとは限らないものになっていくのかも知れません。
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まとめ
本書は主にITやAIの進化といった面から新しい価値の創造や流通について触れています。
田舎の小さな集落では、実際にものを分ける習慣や、自分が休日であれば、近所の家のことを手伝うのが当たり前になっている生活しているコミュニティも珍しくありません。
このような社会では、「通貨」がないとモノやサービスを手に入れにくい経済圏に比べれば、その価値は相対的に低いとも言えそうです。
このように、自分の持っているものが「価値」として誰かの欲しいものになり、自分もまた「通貨」ではない「価値を感じるもの」を受け取ることができる場所を選んで暮らす時代が来れば、「お金に縛られない」生き方が可能になるのかもしれません。
出所)「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」(佐藤航陽 著)
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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