お金を使わない世代のサブスク消費とは

お金を使わない世代のサブスク消費とは

2000年代に成人するミレニアル世代を中心に、消費シーンが変わりつつあります。脱所有へと流れるサブスクリプション(月額利用、以下、サブスク)の動きは、一過性のものなのか本当に世界の消費のあり方を変えてしまうのでしょうか。今回は、サブスクで生活すると、お金が貯まるのか、それともより出費が増えてしまうのか、確認していきます。

サブスクとは?

サブスクとは会員制の定額利用サービスのことです。もっとも私たちに身近な例は、Amazonのプライム会員サービスではないでしょうか。Amazonプライムの会費は月額500円。日本では2007年にサービスが登場しています。

Amazonプライムのように、月額で課金(年払いもあり)される生活が徐々に浸透し、それから10年以上が経過した2019年にはたくさんのサブスクサービスがリリースされています。

ソフトブレーン・フィールド社の調査によると、もっとも使われているサブスクサービスは動画。そして音楽、電子書籍、ソフトウェア、ゲームに続きます。*1

このデータからわかることは、サブスクを「生活を潤すもの」や「趣味のもの」に利用する傾向が強く、生活必需品はまだまだ“所有”がほとんどであるということではないでしょうか。

しかし、そう遠くない未来に、サブスクが生活に入り込み、必需品もサブスクで、という流れが来るかもしれません。そのとき、果たして生活費はどのように変化するのでしょうか。

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サブスクでない場合の、平均的な生活費

まず、サブスクではない買い切り・所有の場合の平均的な生活費をみてみます。
筆者が都内で一人暮らしをしていたころの生活費をみてみると

家賃 62,000円
光熱費 8,000円
通信費 10,000円
食費 40,000円(ランチ代 16,000円、朝夜自炊 24,000円)
雑費 3,000円
衣服 20,000円
交際費 7,000円
新聞・書籍・コンテンツ代 7,000円
合計 157,000円

となりました。
総務省統計局が出している家計調査報告(単身世帯)の消費支出が、令和元年は157,953円となっていますから、だいたい肌感覚と一致しています。*2

これが、どう変化するか、確認していきます。

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何がサブスク化できる?

家賃・光熱費・通信費・食費・雑費・衣服費・交際費・書籍代のうち、サブスクのサービスがよくみられるのは、ランチ代と衣服費と書籍代です。

たとえば、あるランチのサブスクでは、お昼ごはんを毎日さまざまな店からテイクアウトすることができて月12,000円です。飽きてしまいそうなものですが、カレー、幕の内弁当、生姜焼き定食、オーガニックサラダ、ハンバーガーセットなどを頼めます。

また、あるファッションのサブスクでは、月9,800円で借り放題。クリーニングも先方で行ってくれる上、スタイリストがコーディネートを考えてくれます。なお返送料が300円かかるので、何でも注文し何でも返すという利用を防いでいます。

利用者目線でみてみると、保管場所の悩みや、洗濯の手間などもカットできますので、多忙ながらおしゃれを楽しみたい、毎日違う服が着たいというニーズに合致しているのではないでしょうか。

そして、書籍代やコンテンツ代です。
ある本のサブスクでは、月額1,500円となり、毎月3冊、さまざまな本が送られてきます。忙しくて本屋にいく暇がない、そもそも本屋が近所にない、読書習慣をつけたい、といったニーズにぴったりです。

また、家具家電のサブスクも徐々に増えています。
掃除機、電子レンジ、ドライヤー、床掃除ロボットなどが、月1,000円からサブスク化されています。

ただし、家具家電のサブスクはメーカーが行っているものではなく、作られたものを買い取ってサブスクで市場に提供するというビジネスモデルです。それなら、最初から家具家電つきの賃貸を借りてしまうのもいいかもしれません。

実際に、提供する賃貸は、新しい賃貸の形として家具家電つきで、さらには光熱費の手続きも不要というサービスを提供しています。月10万円前後からなので、家具家電を所有してあちこち引っ越すのとは違った、コンパクトなライフスタイルを送りたい方が、興味を示しているようです。

筆者が個人的にいいなと思ったのが、お花のサブスクで、月額500円でお花が届くというものです。花を部屋に飾るだけで生活の質が大きく向上し、しっかりと世話すれば長持ちし、コストパフォーマンスも優れています。

花屋さんで買うのもおすすめなのですが、自分では選ばないような花や思いもよらない飾り方の提案を受けられるので、魅力を感じます。

全体的なコスト感覚としては、所有した場合の平均価格にサブスクの料金が設定されており、だいたい所有した場合と同程度の価格帯ですので、サブスクがお得だとは一概に言えません。

よって、お金を節約するためにサブスクを導入するというよりは、もっと身軽になって、モノを持たない生活によって、自分のやりたいことややるべきことに集中するライフスタイルにするため、といったところでしょうか。

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都心でないと厳しい?

ライフスタイルの話が出ましたが、サブスク型の生活は都内の、それも都心部を中心に生活している、もしくはしたい人でなければ、現状は生活が成り立たないようです。ランチのサブスクが代表的で、レストランが密集する都心部のさらに中心部に限られています。

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所有生活の利点とサブスク生活の利点

では、最後に所有生活の利点とサブスク生活の利点を双方みていきます。
まず、所有の生活としては、文字通り自分のものになるということがあげられます。たとえば、服にせよ本にせよ、自分のものですから自由に使って良いのです。二次流通のマーケットも活況ですので、使い終わったらフリマアプリで売っても良いでしょう。

本が代表的で、極端な話をすれば、買ってしまえばお風呂で読んだっていいのです。しかし返却が前提のサブスク化された本をお風呂に持ち込むことは、常識的に避けるべきですので、あくまで借り物という意識が必要です。

サブスクのメリットとしては、なんといっても“モノを所有する”というライフスタイルがガラッと変わることです。この脱所有の隠れたメリットとして、生活の中で選択肢を減らすということに繋がります。「今日は何を食べよう」「どんな服を着よう」「どの花を飾ろう」という日常の中での選択が減るのです。

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最後に

生活をサブスク化するのも、所有のままでいくのも、どちらがオススメというわけでもなく、現状コストも大差ありません。では、なぜミレニアル世代にサブスクが徐々に浸透しつつあるのか、そこが大切なポイントです。

まず、サブスクには生活の固定費が上がるという面があります。固定費が上がると聞くと、節約志向の方は驚かれるかもしれません。しかし人間は1日70回もの選択をし、意思決定しています。*3

サブスクによる固定費化はその意思決定の回数を減らします。 日常からできる限り選択の回数を減らして、自分がやるべきことに集中する、あるいは本当に自分がやりたいことを探すための時間と精神力の余裕を生み出せる、それがサブスク化生活のメリットではないでしょうか。

*1 
出所)ソフトブレーン・フィールド社 「サブスク市場は発展みせるも、利用経験者は1割に満たず」

*2 
出所)総務省統計局 「家計調査報告(二人以上の世帯)-2019年(令和元年)6月分及び4~6月期平均-」

*3 
出所)「後悔しない超選択術」(メンタリストDaiGo 著)

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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