「絶対に儲かる」「必ず価値が上がる」とうたって、未公開株や社債、美術品などへの投資を呼びかけて多額の現金を集める、いわゆる「投資詐欺」の被害は後を絶ちません。
詐欺犯は年々手口を変えて巧妙化していますので、基本的な知識を身につけておくことが重要です。
投資詐欺とは
「投資」は株や社債などを、将来の値上がりを期待して購入するものです。こうした金融商品は市場で取引されるものですから、景気や社会情勢、国際情勢によって価格が常に変動するのが当たり前です。
しかし、「この会社の株はまだ未公開だが、上場するので必ず値上がりする」「自分たちのプロジェクトに出資すれば、必ず何パーセントの利益をつけて返金する」など、あらかじめ利益を確約した上で多額のお金を振り込ませたり、送らせようとする事業者が無くなることはありません。
このような話を信じてしまうと、利益どころか返金もされず、場合によっては連絡がつかなくなってしまう、という事件も多く発生してきました。
このような投資詐欺では、様々な商品が投資先としてうたわれます。
株や社債、事業への投資だけでなく、美術品、貴金属、なかには「老人ホームへの施設入居権」などという投資先を提示してくることもあります。
実際に、株だけでなく、美術品や貴金属を購入し、のちに高値で売却し、「結果的に」利益をあげる人はいるかもしれませんが、どんな投資にも「絶対」はありません。
冷静に考えてみれば、必ず儲かると分かっているものがあるならば、わざわざ他人に紹介せず、自分が買うのではないでしょうか。
「限定紹介」などという言葉をうたうことも多くあります。
しかし冷静に考えれば、そのような「限定」に自分が選ばれる合理的な理由は、ほとんどの場合思い当たらないものです。業者は適当な言い訳をするかもしれませんが、いったいどこから自分の住所や連絡先、名前という個人情報を手に入れたのかも、非常に怪しいところです。
このような勧誘を受けた場合、まずは冷静になって、状況を整理しましょう。
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投資詐欺を見抜くポイントと法律
投資目的で現金を集めることは、どんな方法でも行っていいというわけではありません。
いくつもの法律で様々な規制が設けられていて、違反すると犯罪として検挙されます。
代表的な例をあげてみます。詐欺ではないかのチェックポイントにしてください。
1)「必ず儲かる」「元本保証」「損はしない」
金融商品は常に市場の中で、様々な要因によって価格が変動します。つまり、不確実性があるということです。
このような「断定的判断の提供」を行って投資を勧誘することは、金融商品取引法で禁止されています。
つまり、このようなうたい文句で勧誘してくる業者は、それだけで法律に違反しているということです。多くの場合は詐欺犯であると考えて良いでしょう。
2)無登録業者
よくわからない会社名を名乗る業者であれば、やはり一度は疑ってみましょう。
金融商品を扱う金融証券取引業を行うには、一定の条件を満たした上で、内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
無登録で金融商品の勧誘を行う行為は、金融商品取引法で禁止されています。
正式な登録業者の一覧は、金融庁のホームページに掲載されています。
まず、業者に登録番号を聞き、こちらで照会しましょう。
また、中には実在する登録業者の名前を名乗っている場合もあります。怪しい場合は、名前を聞き、折り返しかけるという確認方法も検討してください。
もちろん、登録業者であっても「絶対に儲かる」「元本保証」と説明して勧誘することは禁止されています。
3)訪問、電話での勧誘
頼んでもいないのに、一方的に訪問してきたり、電話で勧誘してきたり、という行為もまた、金融商品取引法で禁止されています(不招請勧誘の禁止) 。
突然の訪問や電話による勧誘は、そもそもあなたの連絡先をどうやって知ったのか、を疑う必要があります。
詐欺犯は、事前に地域の下調べをしています。家の構えや住んでいる人がお金を持っていそうだと判断すれば、いわゆる飛び込み営業をします。
電話はランダムに手当たり次第、ということがほとんどです。
まず見ず知らずの相手が、自分のことを知っているということで、相手を疑いましょう。
何かと言い逃れをしようとするでしょうが、何を言おうと、一方的な訪問、電話での勧誘そのものが禁止されていますので、相手にしてはいけません。
4)「未公開株」「私募債」
一般的に、幅広い投資家に「未公開株」や「私募債」の取引の勧誘が行われることは考えられません。
この点をかいくぐるために「限定で紹介している」などといったハガキが届くこともありますが、誰に紹介しているかはわかりません。
直接たずねると、適当なウソをついて相手を信じ込ませようとします。詐欺犯はウソのプロですから、最初から関わらないようにしましょう。
5)「友人を紹介すれば配当が増える」
マルチ商法と呼ばれる金融詐欺で多く見られる、典型的なうたい文句です。
そのような投資先があるとしたら、それは「無限の利益を間違いなく生み出すもの」であり、現実的には存在しません。
最初のうちは配当が振り込まれるかもしれませんが、やがて入金は途絶え、連絡さえつかなくなる詐欺が横行しています。
6)金融庁など公的機関の名をかたる
金融庁や公的機関が、特定の商品や事業に関する投資を勧誘することはありえませんし、「委託を受けている」「指示されている」などと説明する業者もありますが、公的機関が投資の勧誘を民間企業に委託することはありません。
このような勧誘を受けたら、ただちに電話を切って警察等に相談しましょう。
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「プロ向けファンド」に注意
なかでも、最近は「プロ向けファンド」への投資をかたるケースに関する相談が増えています。
「プロ向けファンド」とは、実際にある投資方法です。
これは、 機関投資家や富裕層から資金を集め、それを原資にしてベンチャー企業投資や不動産などの運用などで利益をあげるものです。投資を募る相手に1人「プロ投資家(適格機関投資家)」が含まれていれば、それ以外49人までは、一般の投資家からも投資を募ることができる、というものです。*1
ベンチャー企業などへの投資を活性化する狙いで導入された制度です。
しかし、プロ向けファンドは簡易な届出だけで運営できる仕組みになっていたため、ダミーの適格機関投資家を利用し、その人の名前を使って他の投資者から資金を騙し取る投資詐欺が相次ぎました。
その後、プロ向けファンドの運営に関する規制は強化されましたが、「プロが運用する」「プロに出資する」などという言葉を使って投資を募る手口の詐欺はまだ続く可能性があります。
また、「金融庁に届け出ている」ことを強調して勧誘する場合もあります。
いずれにせよ、プロ向けの投資に自分が勧誘される合理的な理由があるのか。
まずは冷静になって考えてみましょう。
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まとめと相談先
少しでも怪しい、特に、一方的な訪問や電話でいきなり投資話を持ちかける業者は、詐欺の可能性を疑いましょう。
その上で、「聞いたことのない会社名」や「いまいちよくわからない部分」が少しでもあれば、まずは即断せず、すぐに金融庁などの窓口に相談しましょう。お金を騙し取られてからでは手の打ちようがありません。
また、詐欺犯は金融の知識が浅い人を狙うことが多いです。
少しでもわからないと思ったら、その場で話を進めることは絶対にしてはいけません。
そして、金融商品は、販売に当たって、リスクの説明をしなければならないことが法律で定められています。
「絶対に儲かる」話など存在しない、という事実を強く認識しましょう。
*相談先:
金融サービス利用者相談室
・電話での受付
受付時間 平日10:00~17:00
電話番号 0570-016811 (IP電話からは、03-5251-6811)
「事前相談(予防的なガイド)」は、0570-016812(IP電話からは、03-3506-6812)
・ファックスでの受付
受付時間:24時間
ファックス番号:03-3506-9999
・ウェブサイトでの受付
受付時間:24時間
・文書(郵便)での受付
宛先:〒100-8967 東京都千代田区霞が関3-2-1 中央合同庁舎7号館
金融庁 金融サービス利用者相談室
また、悪質な場合は、上記のような相談先すら装って詐欺行為が行われる可能性もあります。電話番号や住所をしっかり確認しましょう。
*1
出所) 内閣府大臣官房政府広報室 「政府広報オンライン」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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