現在仕事をしている60歳以上の人のおよそ8割は、高齢になっても働きたいという意欲を持っています。
また、高齢者の雇用対策もあって、現在は定年の引き上げや継続雇用制度が導入され、65歳まで、あるいはその先も働ける企業は増えています。
退職後、どのくらいの高齢者が働いているのか、実際にはどのような職業についているのかなどを見ていきましょう。
「働けるうちはいつまでも」が4割
内閣府の平成26年の意識調査によると、仕事をしている60歳以上の人のおよそ8割が、定年後の高齢期でも仕事をしたい、と回答しています(図1) 。
「65歳くらいまで」「70歳くらいまで」「80歳くらいまで」などという風に年齢を区切って考えている人もいますが、「働けるうちはいつまでも」働きたい、と答えている人の数が圧倒的に多く、全体の4割を超えています。
(注)調査対象は、全国60歳以上の男女。現在仕事をしている者のみの再集計。
出所)「高齢期の暮らしの動向」(内閣府「令和元年版高齢者白書」より)を基に三菱UFJ国際投信作成
そして実際、75歳以上でも仕事をしている人は少なくありません。
雇用形態としては、嘱託、契約社員、アルバイトやパートなど、様々な形のいわゆる非正規での就業が多くを占めています。
こうした非正規での雇用は、60歳を境に増加しています。
出所)「高齢期の暮らしの動向」(内閣府「令和元年版高齢者白書」より)を基に三菱UFJ国際投信作成
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65歳以上で仕事をしている人の職業や賃金
65歳以上の高齢の就業者数を主な産業別に見ると、下図のようになっています。
出所)労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査 2016年」p49を基に三菱UFJ国際投信作成
専門的・技術的な仕事は、多くの企業がその能力を活用したいと考えていて、就業を続ける高齢者の割合が高くなっています。
企業が65歳以上の高齢者を雇用している理由としては、他には「意欲と能力があれば特に労働者の年齢は関係ないため」「まじめに働いてもらえるため」「若年者に対する技術や仕事への姿勢についての教育効果を期待できるため」というものが挙げられています。
また、勤務日数や勤務時間については、企業の従業員規模が小さいほどフルタイムで働く人の割合が多く、「100人未満」の企業ではおよそ6割が「フルタイムで働く者がほとんどである」状態、一方で「1000人以上」の場合では、およそ6割が「フルタイム以外で働く者がほとんどである」状態です。*1
中小企業で、それまでに培った知識や能力をいかして働いている人が多いと見られます。
そして、賃金の面では、やはり定年前よりもその水準は低くなります。
65歳直前の賃金水準を100とした場合、66歳時点での賃金(賃金・賞与を合計した年間賃金)はもっとも高い人で95.1、低い人で80.9です。
企業側の賃金に対する考え方は図4のように様々ですが、業種で見た場合、「定年後でも仕事が同じなら原則、賃金は下げるべきではない」という見解に肯定的なのは運輸業が他業種より高く、逆に「賃金の原資が限られており、高年齢者の賃金が高いままだと現役世代の賃金が下がるので、高年齢者の賃金を下げても構わない」という見解に肯定的なのは輸送用機械器具製造業が他業種に比べて高くなっている、という調査結果にもなっています。
出所)労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査 2016年」p40を基に三菱UFJ国際投信作成
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定年後の起業について
仕事で得てきた知識やスキルを利用して、起業するという人もいます。
出所)「高齢期の暮らしの動向」(内閣府「令和元年版高齢者白書」より) を基に三菱UFJ国際投信作成
政府の調査では、起業家全体のうち、65歳以上の人は少しずつ増えていて、平成29(2017)年では11.6%にのぼっています。75歳を過ぎての起業者もわずかながら存在しています。
また、55歳~64歳の起業者も多く、退職直前に自らの事業に移行する動きも見られます。
中小企業庁の調査によると、2017年で60歳~69歳の人が起業した分野としては、
- 学術研究、専門・技術サービス業(25.3%)
- 飲食店(12.4%)
- 農林漁業(9.8%)
- 建設業(7.1%)
- 小売業(7.0%)
などがあります。
また、70歳以上での起業は、
- その他サービス業(29.8%)
- 農林漁業(13.1%)
- 製造業(9.4%)
- 小売業(9.3%)
などがあります。*2
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高齢者の就職活動
現在は、企業でも定年の引き上げや廃止、継続雇用の制度を導入する動きがあることで、それまでの勤め先にとどまることができる環境も広がりつつありますが、現在の勤め先がまだ対応ができていなかったり、「職を変えたい」という理由で、定年後に一から就職活動を行う人も少なくありません。
また、「時間に余裕を持ちたい」という理由からパートやアルバイトでの就業を選ぶ人もいます。
そのような場合の就職活動は、主に以下のような手段があります。
一つはハローワークです。
全国240ヵ所のハローワークに「生涯現役支援窓口」というシニア世代のための窓口が設けられていて、求職者の希望と企業のニーズをマッチングします。
職場見学や職場体験の案内も行なっています。
そして、シルバー人材センターです。原則として60歳以上の利用が可能です。
自治体のシルバー人材センターに入会し、請負や委任の形で仕事を引き受ける他、こちらはボランティア活動の紹介もしています。
そのほかは産業雇用安定センター、日本人材紹介事業協会といった法人が職業の紹介をしています。
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まとめ
少子化の傾向が続いていることもあって、今後も、高齢者の就業の必要性は続くとみられます。
同時に、その働き方も多様化していく可能性が大いにあります。
老後も仕事を続けたいと考えている場合は、企業が定年時にどのような制度を設けているかを調べておいたり、専門職を目指すための資格の取得を考えるのも良いかもしれません。
「仕事をする」ということを長い目で見て、何歳くらいまで、どんな働き方をしたいか、など、一度具体的に考えてみると、どんな準備が必要かが見えてくることでしょう。
*1
出所)労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査 2016年」p46-47
*2
出所)中小企業庁「2019年版中小企業白書」p170
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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