転職で失敗しないためには「お金の視点」が大切

転職で失敗しないためには「お金の視点」が大切

転職が成功したのかどうかを判断することは簡単ではありません。それは、仕事や会社の評価が、人それぞれだからです。属性が似た2人が同時に同じ会社に転職して、同じ給料と同じ仕事を与えられても、片方は「転職してよかった」といい、他方は「転職すべきでなかった」と思うこともあります。
しかし転職の成否に一定の基準がなければ、転職を考えている人は何を目標にしていいのかわかりません。
この記事では、転職により収入などの「お金」が増えたら成功とし、減ったら失敗という仮定をおいて、転職というイベントを評価していきます。

なぜ転職の成否を「お金の視点」で判断するのか

なぜ転職の成否を「お金の視点」で判断してよいのでしょうか。仕事をする意義は、お金を得ることだけではないはずです。職場は仕事を通じた自己実現の場でもあるので、「やりたいことをやることができれば、お金は二の次」と考える人もいるでしょう。

しかしそれは本心でしょうか。例えば、あまりやりたくない仕事をすることになるが1,000万円の年収が約束されている会社と、最もやりたい仕事をやらせてもらえるが年収300万円の会社があり、その両方から誘われたらどちらを選ぶでしょうか。

その答えは、転職支援のdodaの調査結果にも出ています。


dodaの転職理由ランキング2018によると、転職理由の3位で全体の10.5%を占めた要因は「給料に不満がある」というものでした(*1)。つまり、お金(給料)と転職はかなり深い関係にあるのです。

転職理由の1位は「ほかにやりたい仕事がある」(14.9%)、2位は「会社の将来性が不安」(10.7%)でした。このうち「会社の将来性の不安」は、給料への不安も含まれている可能性があるので「お金関係」に含めても良いでしょう。
また、9位は「市場価値を上げたい」(3.3%)でした。ビジネスパーソンとしての自分の労働市場価値を上げれば給料が上がるので、これも「お金関係」と考えることができます。
10位は「会社の評価に不満がある」(3.2%)でした。これも、自分のことをあまり評価してくれない会社から、高く評価してくれる会社に転職すれば給料がアップする可能性が高いので、「お金関係」といえるでしょう。

つまり、お金のことを考えて転職する人は相当多い、と考えてよいでしょう。

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生涯賃金と見えないお金

「お金の視点」で転職の成否を考えるとき、「生涯賃金」のことを考える必要があります。漠然と給料を増やしたいと考えるのではなく、一生涯に稼ぐお金を増やせるかどうかを計算に入れて転職先を吟味しましょう。

例えば、転職したことで給料の手取り額が2倍に増えても、ボーナスがなくなったり、長く務められなかったりすれば、生涯賃金は減る可能性もあります。それでは「お金の視点」でみた転職は失敗したと評価せざるを得ません。
さらに生涯賃金には、月々の給料のほかに、退職金や年金なども含めて考慮した方がよいでしょう。
では、なぜ毎月の給料の手取り額だけでなく、数十年後に支払われる退職金や年金も含めて考慮した方がよいのでしょうか。

案外、長期間にわたって支払うものが重要

それは、人生をトータルで見ると、その場で支払う買い物よりも、長期間にわたって支払うことになる住宅、保険、車などへの対応が重要だからです。
確かに、会社の同僚との飲み会や新しいスーツ、家族旅行なども大切な買い物です。したがって、その場で支払うためのお金を持っておくことは必要です。

しかし、自家用車や住宅、生命保険やがん保険、老後の蓄えのための投資は、より重い決断を伴う買い物といえるでしょう。例えば、自家用車を買う場合、時に5年ローンを組むこともあるでしょう。住宅ローンなら、35年にわたって支払うことも珍しくありません。生命保険の保険料も支払い方法によっては長期にわたるものもあります。投資も長期的な視野に立ってプランを立てる必要があります。

自動車や住宅、生命保険などを購入するには、長期的に安定した収入源が必要になります。したがって、転職先を探すときにも「長期的に安定した収入を与えてくれる会社かどうか」という視点を持つ必要があります。
そこで転職先企業を選ぶときには、次のような特徴を持っている企業かどうかも調べてみましょう。

  • 長期間、安定的に成長しそうな業界の企業か
  • 業界内で長期にわたって優位性を保てる企業か
  • 退職金を支給する企業か
  • 賃金制度に年功序列的要素が含まれているか

値札がないモノに値段をつける

「お金の視点」で転職の成否を判断するとき、「見えないお金」についても考える必要があります。
例えば、転職活動の結果、次の2社から内定をもらえたとします。

  • 賃金は安いけれども、企業ブランドが高いA社
  • 賃金は高いけれども、知名度がないB社

どちらが「お金の視点」で優れた会社でしょうか。実は一概にB社とはいえないのです。
なぜなら、賃金が安くても企業ブランドの高いA社に勤めていれば、社会の評価という「見えないお金」を得ることができるからです。

例えば、いわゆる一流企業に勤めている人は、銀行の住宅ローン審査に通りやすくなります。
またA社が、社員を大切にすることで企業ブランドを高めているとしたら、やはり「見えないお金」を得ることができます。病気やケガやメンタルの支障などで職場から離脱せざるを得ないときでも、社員を大切にする会社では復帰するチャンスが与えられます。「退職せずに済むこと」には値札はついていませんが、その金銭的価値はとても高いといえます。

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業界や年齢ごとの転職リスクを考える

労働政策研究・研修機構の「転職による賃金変動D.I.」という資料を見ると、転職による賃金減少リスクが業界/年齢ごとに理解できます(*2)。
賃金変動D.I.(ディフュージョン・インデックス)とは、転職によって賃金が1割以上増加した転職者の割合から、賃金が1割以上減った転職者の割合を引いた数で表されます。

業界別では以下のような結果になっています。

出所)労働政策研究・研修機構「労働移動に伴う賃金・所得変動、ユースフル労働統計2018」のデータを基に三菱UFJ国際投信作成

年によってバラツキがあるものの、2016年で見ると、「建設業」、「情報通信業」は数字が大きいことから、転職して賃金を上げやすい業界であることがわかります。
一方、「医療、福祉」、「教育、・学習支援業」では、転職によって賃金を下げるケースが多いことがわかります。

さらに年代別では次のような結果になりました。

出所)労働政策研究・研修機構「労働移動に伴う賃金・所得変動、ユースフル労働統計2018」のデータを基に三菱UFJ国際投信作成

2016年で見ると、20~24歳と25~29歳での転職で賃金が上昇するケースが多く、年齢が上がると転職で賃金が下がる傾向があることがわかります。

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そのほかの転職失敗とは

以上、お金と転職の成否についてみてきましたが、転職によって収入が増えても「失敗した」と感じる人はいます。
転職の失敗を回避するには、「地位」の視点、「慣れ」の視点、「資格」の視点も必要です。

転職すると前の会社での地位は消えてなくなります。「課長」や「部長」や「執行役員」という役職を重視する人が、転職によってこれらの文字を失えば大きな喪失感を伴うことになるでしょう。したがって、転職では「地位」の視点を持つことが大切です。

またこれまでと異なる業界の会社に転職する場合、「慣れない仕事」をすることになります。新しい仕事を覚えることは常にストレスを伴います。
さらに、保有している「資格」を活かすことができる会社から、その資格を必要としない会社に転職すると「正味の実力」で勝負することになります。資格が必要な仕事は、「資格が資格保有者を守っている」という一面もありますが、転職によってその守りを失うことになります。

今の会社に退職届を出す前に、自分自身に「地位」、「慣れ」、「資格」の効果を失ってでも転職する価値があるのか」と問いかけてみてください。

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まとめ~お金だけではないがお金は大事

転職とお金は切っても切れない関係にあります。長期的な視点に立って、転職お金の両方をみなければなりません。
転職する意義はお金増やすことだけではありませんが、転職によってお金を増やすことを考えてみることはそれなりに意義があります。

*1 出所)doda「転職理由ランキング2018

*2 出所)労働政策研究・研修機構「労働移動に伴う賃金・所得変動、ユースフル労働統計2018

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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