ポイント
昨年10月から消費税増税に伴うポイント還元制度が実施されています。制度事務局の調査によると、全国的に8割以上の人がこの制度を知っており、約4割の消費者が還元事業をきっかけにキャッシュレス決済を開始あるいは増やしたようです*1。しかし、このポイント還元制度は今年の6月末で終了しますから、支出管理をしておかないと制度終了後の家計への大きな跳ね返りが心配です。そこで今回は、6月末で制度が終わっても家計に悪影響を与えないための対策を考えていきましょう。
気になるポイント還元制度の利用状況、あれこれチェックしてみよう
消費税ポイント還元制度は、加盟登録店でキャッシュレス決済をすることで買い物代金の5%を還元してくれるという制度です。コンビニや外食店、ガソリンスタンドなど大手企業のフランチャイズ店では還元率は2%となります。
すでに制度を利用し、ポイント還元を受けている人も多いと思います。2020年2月1日時点で加盟登録店数は約99万店で、制度実施開始時点に比べて約2倍に増えている状況です。消費増税後の景気対策を懸念して増税となるかなり前から政府のホームページやメディアなどで告知されていましたが、実施開始時には今に比べてまだまだ少なかったということでしょう。制度開始後の登録店舗数推移を見ると現在まで着実に増えています。
出所)経済産業省「登録加盟店数(都道府県別、2月1日時点)及び店舗の種類別の登録・利用状況、決済手段別の利用状況」を基に三菱UFJ国際投信作成
加盟店登録数の増加に合わせるかのように、実際にポイント還元制度利用状況も増えています。2019年10月1日~12月16日の間の対象決済金額は約2.9兆円*2で、1つ前の調査(12月9日まで)から17日間で約3,000億円増えていることになります*3。単純に考えると、キャッシュレスで買い物する人々の1日当たりの合計額は約176.5億円という計算になります。
金額が大きすぎてイメージできないという人も多いと思います。そこで、ポイント還元制度導入により人々の消費行動がどう変わったか見てみましょう。
制度事務局の調査によると、還元事業をきっかけにキャッシュレス決済を開始した、あるいは増やしたという人は全体の42.4%、導入後もキャッシュレスを利用しない人は14.6%という状況です。残りの人は今までどおりキャッシュレスを利用しているという人達です*1。
新たにキャッシュレス決済を開始、または増やしたという人は、これまでの現金払いをクレジットカードや電子マネーなどでの支払に変更しただけということも考えられますが、人々がキャッシュレスで買い物する頻度は制度導入後に増えており、10代を除くすべての世代で約6割の人は週1回はキャッシュレスで何らかの支払をしています*1。ちなみに、電車やバス等の交通機関での電子マネーの利用はここではカウントに入りませんから、普段の買い物で制度を上手く利用して、家計消費を上手く抑えたいということでしょう。
そもそも2019年10月1日に消費税が8%から10%に上がると同時に実施されたポイント還元制度ですが、今年の6月30日で終了します。
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ポイント還元制度終了前の駆け込み購入に注意
消費税の増税前にまとめ買いや駆け込み購入をすることは良くあります。このポイント還元制度も同様に、終了前にまとめ買いや駆け込み購入をしようと考える人もいるかもしれません。ちなみに、前述調査を見ると、「ポイント還元がなかったらまとめ買いをしたと思うが、ポイント還元があるのでしなかった」と答えている人も少なからずいることがわかります*1。
出所)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス調査の結果について」を基に三菱UFJ国際投信作成
「ポイント還元に関係なく、まとめ買いをした」という人を合わせて、少しでもお得を享受したいという気持ちは多くの人が持っているのかもしれませんね。
しかし、消費税ポイント還元制度終了前のまとめ買いには注意が必要です。というのも、当制度ではキャッシュレス決済方法ごとに還元されるポイントの上限が決められているからです。
たとえば、カードの種類によって異なる場合もありますが、クレジットカードで決済する場合の還元ポイント上限は、多くの場合が月に15,000ポイントまでとされています*4。15,000ポイントまでということは、還元率が5%の場合で考えると決済代金が30万円(30万円×5%=15,000ポイント)までになります。
日常の買い物などでは30万円分も利用することはないかもしれません。しかし、この機会に駆け込みで家電製品や家具類などの買い換え、通信教育の申し込みなどを考えていれば気をつけておきましょう。もちろんクレジットカードや電子マネー決済サービス独自のポイント制度はありますが、政府が実施している購入代金の5%(一部は2%)のポイント還元は上限以上に得られません。いずれ買い換えが必要だからとか、それでも普通に消費税10%で買うよりはお得だし、と納得の上で利用することが大切です。
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ポイント還元制度が終わるとどうなる?
前述したように、制度導入に伴い、これまでの現金払いをキャッシュレス決済に変更しただけということも考えられますが、キャッシュレスを毎日利用している人の割合が増えていることには注目すべきかもしれません。
ちなみに毎日キャッシュレスを利用している人は50代で最も多く、制度導入前の15.4%から導入後は18.6%に上がっています。次いで40代では15.4%から18.0%へ、30代は16.2%から17.8%へと増加しています*1。先に述べたように、交通機関での電子マネーの利用はこの中に含めていませんから、考えられることは、通勤手段での利用ではなく、通勤途中やランチでの買い物や支払いに毎日キャッシュレスを使用しているのではないかということです。
ランチなど毎日支払いが必要な物であれば、ポイント還元期間中はお得なキャッシュレスを利用するのは堅実であるとも言えます。しかし、お得だからと支出意欲が高まり不要なものまで毎日買うようになったのならば、制度終了後の家計が心配です。
今回参照した調査資料だけでは家計支出全体が増えたかどうかは確認できませんが、7月以降も今と同じような買い物の仕方をしているとポイント還元がなくなる分、実質的な支出が増えてしまうことになります。
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ポイント還元制度終了後の支出増から家計を守ろう
対策としては9月から実施予定のマイナポイントを利用するのもひとつの方法です。マイナポイントはマイナンバーカードを持っている人がスマホのアプリなどでお金をチャージしておくと、25%分のポイントが付与されるというものです*5。付与されたポイントはキャッシュレス決済による買い物などに利用できる予定です。現在の消費税ポイント還元制度同様、賢く利用し家計に役立てたいものですが、マイナポイントは期間を通して上限額が5,000円分と決められています。ちなみに実施期間は2020年9月~2021年3月末までの6ヵ月間の予定ですから、25%分とポイント率は大きくても、消費税ポイント還元制度に比べると期間トータルでのお得度は低めともいえるでしょう。
そこで、他の家計対策として、家計支出の見直しをしてみることも必要でしょう。キャッシュレス決済を利用している人も増えているようですから、この機会にクレジットカードなどの利用履歴を確認してみましょう。無駄な支出がなかったかチェックし、できるだけ無駄を省くことに努めましょう。
実は、一度身についた支出グセは直しにくい場合も多いものです。使えるお金を少なくしておく先取り貯蓄をしておけば、強制的に残りのお金でやりくりしなければなりません。必然的に無駄な支出がなくなるかもしれませんし、お金も自動的に貯まっていくので一石二鳥ですね。
先取り貯蓄の方法としては、投資信託の積立制度を利用するのも良さそうです。定期預金など預金商品では利息はほとんど期待できませんが、投資信託は元本保証ではありませんが、2%以上の利回りを期待できることも多々あります。5%のポイント還元制度で2%の消費税増税を感じなかった人もいるかもしれませんが、7月以降は2%の増税を家計にずっしり感じるようになるかもしれません。運用で2%以上にお金が増えるよう、一石三鳥を期待してみてはいかがでしょうか。
*1 出所)一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス調査の結果について」
*2 出所)経済産業省「登録加盟店数(都道府県別、2月1日時点)及び店舗の種類別の登録・利用状況、決済手段別の利用状況」
*3 出所)経済産業省「登録加盟店数(都道府県別、1月21日時点)及び店舗の種類別の登録・利用状況、決済手段別の利用状況」
*4 出所)経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業 消費者向け説明資料(2020年2月)」
*5 出所)総務省「マイナポイント事業」
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三菱UFJ国際投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第404号/一般社団法人投資信託協会会員/一般社団法人日本投資顧問業協会会員
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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