『子供は14歳で複利を理解する』

『子供は14歳で複利を理解する』

子供は3歳になると、ぼんやりとお金の存在がわかるようになります
また、7歳までに身につけた習慣が、その後の金銭管理に役立つというケンブリッジ大学の研究もあり、そして、14歳では複利の概念を理解できるようになります

これは、アメリカ・ニューヨーク在住のマネーリテラシー研究家であるべス・コブリナーさんが書いた「Make your kid a money genius」(邦題「おカネの天才の育て方」)に出てくる、子供の成長とお金の概念についての考え方です。

コブリナーさんは、オバマ政権時代に、若い人たちのための金融教育諮問委員をつとめ、世界で人気のパペットアニメにも登場し主人公に貯蓄術を教えた、著名なお金の達人です。

この本から、幼少期のマネーリテラシーについて確認していきます。

お金の勉強は遅すぎない

冒頭でみたように、仮にマネーリテラシーが3歳からスタートするのであれば、「もう家の子供には遅い?」と思ってしまうかもしれません。しかし、そんなことはありません。この本の対象は3歳から23歳、つまり社会人1年目でも遅くないとあります。

ただ、早ければ早いほど良いことには違いありません。子供は3歳の時点で価値や交換を理解し始めるので、その年齢に応じたことを教えてあげるのが理想的です。

コブリナーさんは、3歳時点で教えるべき貯蓄の心得として

  • 待つことはいいこと
  • おカネを安全な場所に貯める
  • 家族の貯金箱にお金を貯める

を挙げています。*1

待つこととは、すなわち我慢することを覚えることです。具体的には3歳の子供がおもちゃを欲しがったら、「誕生日になるまでおもちゃを待とう」とか「誕生日には誰を呼ぶ?」と話し合うなどです。そして誕生日が来たら、待ってて良かったとちゃんと伝えます。

こうした行動は、子供の忍耐とその先のよりよい未来を想像する力を育み、目の前の誘惑に流されづらくなる力を養います。そうすればきっと、お金で身を持ち崩すこともなく、社会から過剰に逸脱して周りを困らせることもなくなるでしょう

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やり抜く力『グリット』を育てる

2016年から2017年にかけて、アンジェラ・ダックワース教授『やり抜く力』が話題となりました。やり抜く力はグリット(GRIT)と呼ばれます。ペンシルベニア大学の研究によると、このグリットがある人は成績も優秀で、貯蓄力も高く、さらには人生の満足度も著しく高いことがわかっています。

しかし、就学前の子供にグリットなどあるのでしょうか? 何をやり抜くというのでしょうか?ここでも、コブリナーさんは具体的なメソッドで私たちに寄り添ってくれます。

たとえば、就学前の児童にグリットを教える手段として

  • 家の手伝いを生活の一部に
  • 仕事がお金になることを伝える
  • 仕事があるのは良いこと、それを好きなのはもっと良いこと

といったものを挙げています。*2

これは非常にわかりやすい説明です。家のお手伝い、たとえば、ご飯がよそわれたお茶碗をダイニングテーブルに運ぶ、お掃除ロボットがちゃんと走り回るか観るなどといったことです。このようなごく簡単なことから、日常生活の雑事を生活の一部にして、グリットと同時に生活力を身につけます。

とくに、家事の力を身につけることは重要です。
将棋の藤井聡太7段の強さを解説した「藤井聡太4段も受けていた!モンテッソーリ教育とは?天才を育てる技術」では、子供に対する家事仕事の重要性が語られています。

「大人が行う日常の動作、たとえば、洗濯や掃除、野菜を切る、ボタンを縫い付けるなどの練習をします。(中略)自分のことは自分でできるようになります。そして自信を得ることで、自立心や独立心を養うことができます。」

とあります。家事力を身につけることは、子供の心を依存から独立に導くものなのです。

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お手伝いに対して対価を払ってはいけない

その一方で、お小遣いをインセンティブにしてお手伝いを頑張らせるというのはよくないとも書かれています。また、ペナルティにすることも成長期には逆に反発を招いて危険ともあります。
家事は家庭の日常のひとつですから、むしろそれ以外の特別な仕事を達成したときに、報酬として与えるのが理想的ということです。*3

ハーバード大学のローランド・フライヤー教授の研究でも、親が子供に学業成績に対してインセンティブを与えることは効果がなく、そればかりか努力のプラス面まで打ち消してしまうことがわかっています。*4

「今度のテストで100点取ったら、ニンテンドースイッチを買ってあげるよ」

これは親が非常に言いがちなインセンティブ設計ではないでしょうか。しかし、どうせやるなら結果ではなく過程や努力に対してご褒美を与えたほうがよいとハーバード大学の研究は示します。たとえば、同じ学習に対して褒めるのであっても、

●プリントで満点だったら、ゼリーを食べて良い(結果)
●3枚プリントをこなせば、ゼリーを食べて良い(過程・努力)

とするのであれば、後者のほうが子供のパフォーマンスを引き出すのに有効だということです。

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学費の重圧に苦しむ学生

これだけを見ると、アメリカの子供に対するマネー教育は非常に進んでいるように感じます。その一方でアメリカでは学費の重圧に苦しむ学生が多く、「ルポ貧困大国アメリカ」では、貧しい州においてより良い職を得るため大学や大学院に進学したものの、奨学金が足りずクレジットカード破産に追いやられる学生の話がでてきます。

しかし、だからこそ、より幼少期からお金の力を身につけて生き抜いていってほしいという親の願いが強く、社会全体のマネーリテラシーが進んでいるのかもしれません。

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クレジットカードの概念

コブライナーさんの本に戻ります。本では「借金を返そう」として、まるまる一章を使ってクレジットカードとの向き合い方が説かれています。子供用のクレジットカードはまだ早い、たとえ払えなくとも請求書を無視することは絶対にしてはいけない、など、少し大きくなってからのクレジットカードとの使い方が丁寧に説かれています。

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子供は14歳で複利を理解する

さらに、書籍は投資についての真実を告げる章として、重要な「複利」の概念は中学生で理解できるとあります。中学生になると子供は儲かるという話に食いつき、金利が金利を生むということに驚きます。

「10歳の時から毎月7ドル50セントを投資に充て始めるとしよう。それが年率平均7%の金利を生むとする。65歳になった時、お金は5万1800ドルになっている。35歳から始めたとすれば、65歳で手にするのは8250ドルだ」

とあります。
これはイコール、子供に忍耐を覚えさせることといっても過言ではないのではないでしょうか。小さな我慢の積み重ねが、その場の誘惑に負けない精神を養い、それが結果として子供がお金に困らない幸福な人生を約束してくれると、教えてくれます。

*1 
出所)「おカネの天才の育て方」(べス・コブリナー 著)

*2 
出所)「藤井聡太4段も受けていた!モンテッソーリ教育とは?~天才を育てる技術~」(教育問題研究会 著)

*3 
出所)Roland G. Fryer, Jr.「Financial Incentives and Student Achievement: Evidence from Randomized Trials」

*4 
出所)「ルポ貧困大国アメリカ」(堤 未果 著)

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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