「他人のために大事なお金を使うと、自分の幸福度が増すかもしれません」

「他人のために大事なお金を使うと、自分の幸福度が増すかもしれません」

日々のお金に少しゆとりが出たら、何にお金を使いたいと考えるでしょうか。

・月に一度、回らないお寿司さんにいく
・家事代行を頼んで、その時間は休息にあてる

というアイデアも、自分へのご褒美としてとても良さそうです。
その上で、他人のためにお金を使うと、実は使った人の幸福度が増すという研究があるのですがご存知でしょうか
今回は、その研究について詳しくお伝えしていこうと思います。

そもそも幸せとは?

世界的に著名な心理学者であるダニエル・ギルバート氏が書いた「明日の幸せを科学する」という本では、そもそも幸せには3つの種類があるとされます。

  • 私は幸せだ(感情の幸せ)
  • ○○だから幸せだ(道徳の幸せ
  • ○○については幸せだ(判断の幸せ

私達が幸せを口にするとき、1番目の「感情の幸せ」が馴染み深いのではないでしょうか。カカオたっぷりのチョコレートを食べたとき、念願の昇進をしたとき、大好きな香りがふと漂ってきたときなどに共通した気持ちです。

一方で、幸せについて考えるとき、多くの哲学者が2番目の「道徳の幸せ」を説きます。つまり、社会的使命を果たし、道義上の義務を果たすことだというのです。*1

3番目は複雑なのでここでは触れませんが、このように幸せにはいくつかの科学的な定義があります

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GIVE(他人に与える)が良い理由

そして、2014年ごろに幸福や能力について、注目を集める心理研究がアメリカで発表されました。それが『GIVE&TAKE』で著名となったアダム・グラント博士の研究です。ギブ・アンド・テイクのギブであり、ギバーつまり「与える人」こそもっとも成功する人だといいます。*2

この研究とTEDトークをきっかけに、いっきに「GIVE」の効用が世界中に知れ渡りました。まず与えることで、結果として自分が成功するのです

個人において、営業パーソンの売上・エンジニアの生産性・医学生の成績は、トップがギバーの人であるという研究があります。*2

こうしたことから、お金についても同様だと導き出されるのではないでしょうか。つまり、他人のためにお金を使うと、実は一番幸福度が増すのは自分であるということです

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お金と幸せには相関関係がない

ではなぜ、人に与えると、他人のためにお金を使うと、幸福度が増すのでしょうか。それは私達が社会的動物だからにほかなりません。ここで注意しなければならないことは、お金と幸せには相関関係がほとんどないという研究があることです。*3

これは、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学の心理学部准教授のエリザベス・ダン博士によって発表されたものです。

研究によると、お金と幸福は驚くほど相関がないかわりに、実証研究から幸福になれる使い方が8つ提案されています

  1. モノではなく経験を買う
  2. 自分ではなく他人の利益のために使う
  3. 少数の大きな喜びではなく多数の小さな喜びに使う
  4. 期間の延長や保障にお金を使わない
  5. 支払いを先延ばしにしない
  6. 買ったものが生活をどう向上させたか振り返る
  7. いつまでも買ったものを比較しない
  8. 他人の幸福に細心の注意を払う

ここで重要なこととして取り上げたいのが、他人にお金を使う、他者への投資です。
同じダン博士の著書である”「幸せをお金で買う」5つの授業” からみていきたいと思います。

「他人にたくさん投資すればするほど、幸福度は増したのです」

「あなたがもっとたくさんのお金を稼ぐことに焦点を合わせているなら、『お金を一部の人にあげること』が『もっとたくさん稼ぐこと』と同じぐらい自分にとっての報酬になることを頭にいれておいてください」*4

とあります。

調査の結果、もっとも貧しい国でも、もっとも豊かな国でも、幸福度を高めてくれるのは他者に対してお金を使ったときであることがわかったというのです。
これは子供も同じでした。2才児では自分のクッキーやクラッカーを誰かに与えたとき、もっとも幸福が引き出されたそうです。*4

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他人との結びつきや経験に使うとよりよい

ではその幸福のコストパフォーマンスをもっとも高めるお金の使い方とは、何であると述べられているのでしょうか。
同著では「選択する」「つながりをつくる」「インパクトを与える」であるとされています。

ひとつめの「選択する」は、誰かを助けるシーンにおいて、「助けるべきだといわれた人たちよりも助ける助けないはあなたの自由だと言われた人たちのほうが、(同じ助けるでも)より大きな幸せを感じた」とういことです。*4

ふたつめの「つながりをつくる」はさらに重要とされ、カフェのギフト券を渡した場合、誰かと一緒に時間を楽しんだ人がもっとも幸福度が高くなったそうです。

他者とのむすびつき。経験。これらを得るためにお金を使うことこそ、もっとも幸福のコスパを高め、インパクトをもたらすと研究は示しています

本稿の冒頭の、お金をお寿司や家事代行に使うというのでも、

・家族を月に1度、回らないお寿司に連れて行く
・家事代行を頼み、その時間をコミュニケーションに充てる

という使い方が、もっとも幸福度を高めてくれるという結論が導き出せるのではないでしょうか。

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最後に

今回は著名な学者・心理学者の研究と書籍をベースに、幸福を”お金で買う”方法をみてきました。
そしてその結果として、一番素晴らしいお金の使い方は他者のために使うことである、という一つの考え方が提示されました。そして、それが自分の富をも増やすことにも繋がる事があるという研究結果も、併せてご紹介をさせて頂きました。

仕事を頑張って昇進した、繁忙期を乗り越えて残業代がまとめて入ってきた、試行錯誤して副業が軌道にのった、節約や配当が入ってきたなどでもいいでしょう。
少し収入にゆとりを感じたら、そんなときは、そのゆとりの分を大切な誰かに惜しみなく使ってみてはいかがでしょうか。
私達は社会的動物である以上、他人との関係からは逃れられません。それなら、人のために使ってみる、ちょっとしたギバーの精神でお金を使ってみると、実は自分自身の幸福を非常に高めてくれることを実感できるかも知れませんね
今の時代は、「与える人」こそ、実は成功するというのは非常に興味深い話です。

*1  出所)「明日の幸せを科学する」(ダニエル・ギルバート著)

*2  出所)アダム・グラント TEDトーク『「与える人」と「奪う人」あなたはどっち?

*3  出所)「If money doesn't make you happy, then you probably aren't spending it right

*4  出所)「「幸せをお金で買う」5つの授業」(エリザベス・ダン著)

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

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