就職や転職、スキルアップのために英語を身につけようとする人は多いですが、それらのためだけに限らず、英語力があると老後の生活がより充実した有意義なものになる可能性が高まります。
それまで一生懸命に働いてきた人であればあるほど、定年退職をした後、有り余る自由時間を持て余して何をして良いのかわからなくなってしまうことも少なくありません。周囲でも、退職後は毎日なんとなくテレビを見ているだけで、外出もほとんどしなくなってしまった人の話を見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
「充実した老後を過ごすには趣味を持つべきである」とよく言われますが、趣味の種類によっては、お金を使い続けなくてはならない場合があります。その点、老後に向けて英語力を身につけると、お金を使わなくても楽しめることが増えるのです。
では、実際にどんなことができるようになるか、見ていきましょう。
英語を話せると老後にこんなことができる!
老後に英語力があれば、個人で長期海外旅行をしたり、気候がよく物価の安い国でロングステイをしたりすることも可能になります。完全に移住するのではなく、一年の半分を海外で過ごし、残りを日本で過ごすというような悠々自適の生活を選ばれる人も増えてきました。
一般社団法人 ロングステイ財団によれば、海外におけるロングステイとは、生活の源泉を日本に置きながら海外の1ヶ所に比較的長く滞在し(2週間以上)、その国の文化や生活に触れ、国際親善に寄与する海外滞在型余暇を総称したものであるそうです。*1
ロングステイには様々なタイプがありますが、老後のロングステイは「セカンドライフ型」と呼ばれ、生きがいを見いだし、自己実現につながる効果があるとのこと。さらに、気候風土の異なる国でのロングステイにより健康促進・維持という効果を得られることもあると言います。*2
また、外国籍の大型客船に乗っていろいろな国の人々とともに数カ国を巡る船旅を楽しむシニア旅行も人気です。老後は時間に余裕がある人が多く、船旅なら重い荷物を持ってたくさん歩く必要もありません。寝ている間に次の寄港地へと移動できるので、体力の衰えたシニア世代に人気があるのもわかります。いろいろな国の人々が共に過ごす船旅では、英語ができればクルーとのやりとり、あるいは乗客同士でのコミュニケーションの楽しさも加わって、さらに旅が楽しくなりそうです。
海外へ出ず日本にいても、訪日外国人向けのボランティアもできるでしょう。オリンピック開催に向けて、英語を話せる人材の需要はますます高まることが予想されます。
ボランティアだけでなく、英語力があれば定年退職後にフリーで働くことも可能です。昨今は、海外からの旅行客をホストとして受け入れ、またオンライン英会話レッスンの講師をして収入を得ているシルバー世代もいます。
泊まる場所を探す旅行者と、空き家・空き部屋を貸したい人をつなぐオンラインサービスも話題です。日本では「民泊」とも呼ばれています。平成29年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により、有償で人を泊めようとする人は、都道府県に届け出をすることで、年間180日まで民泊の受け入れが可能になりました。*3
実際、筆者の友人は、子どもたちの独立後、自宅の空き部屋を使って旅行客の受け入れを行い、収入を得ながらいろいろな国の人々との交流を楽しみ生き生きと暮らしています。こうした働き方はシルバーの再就職とは異なり、比較的自由がきくので、「無理のない範囲で、特技を生かして、老後を楽しみながら仕事をしたい」と考えている人に向きそうです。
英語を話せることで、より交流が楽しくなり、趣味と実益を兼ねた充実した老後の過ごし方ができるでしょう。
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老後に向けた英語の学び方
働き盛りの人にとっては、老後はまだまだ先のことに思えるかもしれません。しかし、老いはすべての人に訪れます。英語力を身につけることで、老後にできることの選択肢が増えるのであれば、それを見据えて行動を起こすのが良いでしょう。
学生時代に比べて記憶力や体力が低下していたとしても、老後に向けて英語を学び始める時期に、遅すぎるということはありません。就職や転職のためであればTOEICテストでハイスコアを取得するための英語学習が必要ですが、老後にむけて英語力を身につけるためであれば、自分のペースで学んでいくことができます。
お金をあまりかけられないなら、NHKのテレビ英会話やラジオ英会話を視聴して独学で学ぶのも一つの方法です。また、インターネットを利用した英語のオンラインレッスンも良いでしょう。一定の月額料金で毎日レッスンを受け放題というプランを提供しているオンライン英会話サービスも多く、プランによっては1回数百円でマンツーマンのレッスンを受けられるところもあります。オンライン英会話サービスは、都合の良い時間に自宅でレッスンを受けられるのがメリットです。
オフラインで英語を使ったコミュニケーションを楽しみたいなら、地域の英会話教室やサークルに入ってみるのも良いでしょう。こうした情報は自治体のホームページや広報で入手することができます。自治体に姉妹都市交流があったり、国際交流協会が設置されていたりするなら、そちらをチェックしてみるのも良いですね。
もっと長期で腰を据えてしっかり学びたいのであれば、年齢に関係なく英語を学べる通信制大学・通信制短大に入学あるいは編入する方法もあります。
筆者は子育てが一段落したときに、県内にある通信制短大の英語コースに編入をしました。学生時代に大学や短大で一定の単位を取得している人は、その単位が認定されれば新規入学ではなく編入学をすることが可能です。
通信制大学・短大は、基本的には指定されたテキストを購入して自宅学習をしますが、スクーリングと呼ばれる通学の授業が存在します。スクーリングは土日に開講されることが多いので、会社員をしながら平日は自宅学習、年に数回~十数回(※回数は学校により異なる)、土日に実際に教室で学ぶというスタイルをとっている人たちも少なくありません。
スクーリングの参加者には転職や昇進のために英語を学んでいる方、短大卒業資格を目指して通っている方もいましたが、中高年の方ですでに定年退職をされており老後を楽しむために英語を学んでいる方、海外ロングステイを考えている方もいました。
自宅学習がメインではありますが、スクーリングに参加することで生きた英会話を実践できますし、教授やクラスメイトの存在が仕事をしながら英語学習をするモチベーションアップに一役買ってくれるに違いありません。
通信制で学ぼうとする人たちは総じて前向きですが、中でも老後に向けて自発的に英語を学んでいる人は非常に意欲的で、「英語を身につけたらこんなことをしよう!」と未来の話をされていたのが印象に残っています。彼らからは一昔前のステレオタイプな「老人」のイメージをまったく感じませんでした。
通信制大学・短大は、オンライン英会話サービスなどに比べればお金がかかりますが、通学制の大学や短大と比べれば格段に安い金額で履修ができます。
通信制大学・短大について詳しく知りたい方は、公益財団法人 私立大学通信教育協会が毎年春と秋に開催する合同入学説明会(参加申込不要・入場無料)*4に足を運び、詳しい話を聞いてみると良いでしょう。
英語を話せなくても楽しい老後を送ることは可能です。しかし、英語を話せることで、老後の過ごし方の選択肢が増え、生きがいや充実感を得やすくなります。場合によっては収入にもつながるので、今から老後に向けて英語学習を始めてみませんか。
*1
出所)一般社団法人 ロングステイ財団 「ロングステイについて」
*2
出所)一般社団法人 ロングステイ財団 「ロングステイの効果・効用」
*3
出所)民泊制度ポータルサイト 「住宅宿泊事業法(民泊新法)とは?」
*4
出所)私立大学通信教育協会 「合同入学説明会について」
(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)
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