30代になる前に知っておきたい、「保険証」の種類と切り替えにまつわる話

30代になる前に知っておきたい、「保険証」の種類と切り替えにまつわる話

新卒で企業に就職した場合、会社から健康保険証がもらえます。健康保険証は自分が病気や怪我をした時に病院に見せるもの…ということは知っていても、日本の公的医療保険制度にどんな種類があるのか、またその違いはあやふやという人も多いのではないでしょうか。
保険証は、例えば会社を退職した場合には別の種類へと切り替える必要があります。転職するために会社を辞めたものの、うっかり健康保険を切り替え忘れたり、手続きの仕方がわからないと困ってしまうことも。
ここでは保険証の基礎知識から、保険証の切り替え手続きなどが必要になったときに役立つ情報までお届けします。

そもそも保険証にはいくつ種類がある?特徴をご紹介

日本の公的医療保険制度には、大きく分けて以下の3種類があります。

被用者保険

大企業の正規労働者が加入する「組合健保」、中小企業の正規労働者が加入する「協会けんぽ」、公務員が加入する「共済組合」に分けられます。被保険者が扶養する家族も、被扶養者として、被保険者が加入する保険でカバーされます。

国民健康保険

国民健康保険は、自営業者、年金生活者、非正規雇用者やその家族など、被用者保険に加入していない国民を対象とする保険制度であり、市町村が運営主体です。国民健康保険は、家族一人ひとりが加入するものであり、加入者全てが被保険者です。

後期高齢者医療制度

75歳以上の高齢者などが加入する保険であり、都道府県単位で全ての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が運営主体となっています。被用者保険、国民健康保険いずれも最終的にはこの後期高齢者医療制度へ移行することになります。

出所)厚生労働省「平成29年版厚生労働白書

目次へ戻る

保険証を切り替えなければいけないのはどんな時?

現在日本は「国民皆保険」が採用されており、すべての国民がなんらかの医療保険に加入することになっています。
一般的に企業で働く方は、全国健康保険協会や健康保険組合による健康保険に加入していることになりますが、退職すると被保険者の資格を失ってしまうので、保険証を切り替えなければいけません。
切り替えが必要な主なパターンは以下の通りです。

メリット1

現在の職場を退職して、次の就職先に就業するまで1日以上の期間がある場合

会社を退職した場合は、退職日の翌日にはそれまで加入していた健康保険の資格を喪失します。翌日から新たな職場に就業する場合はそのままその企業の健康保険に加入することができますが、1日以上間が空く場合は必ず自分で「国民健康保険」または「家族の健康保険(被扶養者)」への切り替え手続き、もしくは「健康保険任意継続」をする必要があります。
切り替え方法や任意継続の概要については、後ほど詳しくご説明します。

メリット2

国民健康保険に加入していて、別の市区町村へ引っ越すなど住所変更がある場合

国民健康保険は各自治体が保険者ですから、別の市区町村へ転居する場合は切り替えが必要です。引っ越し前の自治体で脱退手続きを、引っ越し先の自治体で加入手続きをします。
同じ市区町村内での引っ越しの場合も、住所変更が必要なため自治体で手続きをしましょう。

メリット3

退職して国民健康保険に加入しており、家族の扶養に入ったり新たに就職した場合

未就業の状態で国民健康保険に加入している場合、条件を満たせば、家族の扶養に入ることもできます。
家族の扶養になったときには、国民健康保険の脱退手続きが必要です。
新たに就職して健康保険に加入する場合は、加入手続きは会社側から求められる書類などを提出すれば自分で手続きをする必要はありません。ただし、こちらのケースも国民健康保険の脱退手続きは自身で行うことになるので注意しましょう。

目次へ戻る

会社を退職。転職活動中の保険証はどうなる?

現在会社務めをしている方にとって、最も気になるのは退職した場合の切り替えではないでしょうか。そこで、ここでは「1.現在の職場を退職して、次の就職先に就業するまで1日以上の期間がある場合」の切り替え手続きについて詳しくご紹介します。
先程ご説明した通り、退職してすぐに就業しない場合は、国民健康保険に切り替える、家族の扶養に入る、健康保険の任意継続をする、という3つの選択肢があります。

国民健康保険に切り替える

退職して健康保険を喪失した翌日以降に、お住まいの自治体で手続きを行います。

<必要書類>

  • 印鑑
  • 身分証明書
  • マイナンバーのわかるもの
  • 他の健康保険をやめた証明書(社会保険の資格喪失証明書、離職票、退職証明証 等)

必要書類はこの他に年金手帳が必要であったりと、市区町村の定めによって異なるため、必ず各自治体のHPなどで確認してください。

ここで注意しなければならないのは、切り替えまでの期間です。国民健康保険の加入は、必ず資格喪失から14日以内までに届け出るよう定められており、これはどの自治体でも同じです。
届出期限を過ぎてしまうと保険証は届出の日からしか利用できません。もし、それ以前に医療機関を受診した場合、医療費は全額自己負担になってしまいます。

その一方で、たとえ届出をしていなくとも、保険料自体は健康保険の資格喪失日、すなわち国民健康保険の被保険者資格を獲得した月からかかるため、届出が遅れたとしても保険料はさかのぼって支払わなければなりません。
少々わかりにくい仕組みですが、早く切り替えを届け出ないと、保険料を支払っているのに病気になっても医療費を負担してもらえない…というもったいない状況になってしまうということです。

出所)名古屋市公式ウェブサイト「国民健康保険の加入・脱退について」

家族の扶養に入る

家族の被扶養者になることで、扶養者の保険に入ることもできます。この場合、被保険者(家族)の勤め先で手続きが必要になります。被扶養者の認定には収入要件や被扶養者の範囲など諸条件がありますから、提出時期なども含めて家族の勤め先に確認すると良いでしょう。

健康保険の任意継続する

任意継続とは、退職後も引き続き、退職前に入っていた健康保険に加入し続けることを指します。任意継続するための要件は基本的に「それまでに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること」と、「資格喪失から20日以内に申請すること」となっています。
届け出る場合は、各団体に申請書の提出が必要です。

任意継続期間は2年間で、再就職した際などは再び健康保険へ切り替えることができます。ただし、一度任意継続を選択すると、期間内は国民健康保険や被扶養者として健康保険に加入することはできないので注意しましょう。

出所)全国健康保険協会「会社を退職するとき」

目次へ戻る

こんなときどうしたらいい?保険証のよくあるトラブル

切り替え時によくあるのが、切り替え手続き前に病院にかかることになってしまうケースです。無保険で受診してしまったら医療費はどうなるのか…いざその時になって慌てるのは避けたいですよね。
上記のケースを含めた、保険証のよくあるトラブルの対処法をご紹介します。

保険証の切り替え手続きの前に病気になり、無保険の状態で病院を受診した

保険証の提示ができないため、病院での支払いは全額自己負担となります。

保険証の切り替え期間中で保険証が届く前の状態であれば、一旦全額支払い、保険証を手に入れた後に再び病院に行き、レシートと保険証を提示すれば払戻しを受けることができます。詳細な条件は病院側に確認しましょう。

誤って古い保険証を提示してしまった

この場合、医療費のうち保険負担分については、後日、古い保険証の保険者から返還請求があります。
「あなたが間違えて使用した保険証による支払いを立て替えたので、料金を支払ってくださいね」ということです。
正しい保険証で払い戻しを受けるためには、受診日時点で加入している健康保険で手続きが必要です

手続きに手間がかかってしまいますから、誤った保険証を使わないよう充分注意が必要です。

出所)全国健康保険協会「医療費の全額を負担したとき」

保険証をなくしてしまった

万が一保険証をなくしてしまった際は、再交付の申請が必要です。企業に努めている場合は、その旨を事業所に伝えてください。任意継続中などの場合は、直接保険者へと連絡し、申請書を提出してください。
国民健康保険の場合は、各自治体の窓口で再発行を申請できます。

保険証が無い状態で受診をすると払い戻し手続きなどの面倒がかかりますから、保険証はなくさない、なくした場合もすみやかに再交付してもらうようにしましょう。

出所)全国健康保険協会「保険証をなくしたとき」

目次へ戻る

保険証に関する知識は社会人の常識!

知っているようで意外と知らない保険証の仕組み。
いざという時に慌てずに済むよう、社会人の基礎知識として知っておくことが大切です。

(Photo:三菱UFJ国際投信-stock.adobe.com)

関連記事

人気ランキング