「貯金があっても不安な人」の正体不明の不安とは?将来への不安を分解して安心に変える資産形成ガイド

「貯金があっても不安な人」の正体不明の不安とは?将来への不安を分解して安心に変える資産形成ガイド

貯金はあるのにお金の不安が消えない。そう感じている人は少なくありません。不安の正体は、貯金の額そのものではなく、将来の支出や収入の見通しが立っていないことにあるのではないでしょうか。

この記事では、将来の不安を構成する具体的な論点を分解し、家計の可視化から資産形成の手段選びまで、不安を安心に変える手順を整理します。

貯金があっても不安が消えない理由

不安の正体は金額不足ではなく見通しの欠如

お金の不安は「いくら持っているか」ではなく「この先どうなるかが見えない」ときに大きくなる傾向があります。単純にお金だけがあればよいわけではなく、一人ひとりが置かれた環境に応じて安心かつ豊かな生活を送るには、家計管理、生活設計、必要に応じた資産形成、そして外部知見の活用が欠かせません。*1

つまり、口座残高を増やすだけでは不安は解消しにくいということです。老後に向けた計画の立案を「重要」または「やや重要」と答えた人は92.2%に達する一方、実際に具体的な計画を立て生活に反映している人は29.4%にとどまっています。*2
「大事だと分かっているが行動できていない」状態こそが、見通しの欠如を生み、不安を持続させる原因と考えられます。将来の収支を時間軸で描くことが、不安を小さくする出発点になります

不確実性がストレスを増幅する構造

将来への不安は「分からないことが多い」ほど強くなりやすい傾向があります。たとえば、老後にいくらの資金が必要なのか、毎月どのくらい使っているのか、預貯金だけで足りるのかなどが見えないままだと、不安は漠然と膨らみます。

老後という長い期間に対し、物価や年金制度がどう変わるのかを正確に見通すことは難しく、その不確実性がストレスを大きくしています。具体的な計画を持たないまま漠然とした不安を抱え続ける構造が、この数字の裏側にあります。

損失回避と情報過多による不安の強化

人は利益を得る喜びよりも、資金を失う苦しみのほうが強く感じられる傾向があります。この傾向があるため、「老後に資金が足りなくなるかもしれない」という情報に触れると、たとえ十分な貯金があっても不安が膨らみやすくなります。

情報収集と不安の関係にも目を向ける必要があります。老後に向けた計画の「情報収集や学習をしたことがある」と答えた人は52.0%に上る一方、具体的に立案し生活に反映している人は29.4%にとどまります。*2
情報を集めても行動に移せていない層が一定数存在します。情報量だけが増え、判断や行動につながらない状態は、かえってお金の不安を強める方向に働きやすいです。情報を集めたら「何をするか」を1つ決めて行動に移すことが、不安の連鎖を断ち切る手がかりになると思います。

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将来不安を生む代表的な論点

老後資金の不足感の出どころ

老後資金への不安は「貯蓄がいくらあっても足りない気がする」という感覚から生まれやすいです。内閣府の調査では、老後の生活を心配する理由として「十分な金融資産がないから」と答えた人の割合が70%前後と一貫して高水準にあり、2023年調査では最も回答割合が高い項目になっています。*3

一方、二人以上の世帯(全年代)の平均貯蓄額は2,026万円、中央値は700万円とされており、年代や就業状況によって大きな差があります。単身世帯では平均1,468万円に対し中央値は210万円にとどまります。*4
平均値と中央値の大きな差は、一部の世帯が平均を押し上げている実態を示しています。「平均」を目安にすると多くの世帯は不足感を覚えやすくなるため、自分の世帯の収支に即した金額で必要額を確認することが欠かせません。

年金と退職金の過小評価

老後資金を考えるとき、年金や退職金の受取額を低く見積もりすぎると、不安は実態以上に大きくなります。内閣府の調査では、2007年時点で「年金や保険が十分ではないから」と答えた人は70%近くに達していましたが、2023年にはこの回答の比率は40%程度にまで低下しています。*3
年金への不信感がやや薄まった一方、依然として4割が不安を感じています。

公的年金以外に必要と考える夫婦の老後生活資金(65歳以降)の平均は月17.9万円です。個人年金保険に加入している世帯では基本年金額の平均が年105.3万円、月に換算すると約8.8万円です。*5
公的年金と退職金の見込額を正確に把握し、不足する部分だけを資産形成で埋めるという考え方が、過度な不安を防ぐ基本になります

医療費・介護費・インフレの見積もり難

老後資金の計算を難しくする要因として、医療費・介護費の増加と物価上昇があります。2023年の日本の物価上昇率は3.2%、名目賃金上昇率は3.1%でした。2024年4月から公的年金の支給額は2.7%引き上げられましたが、物価上昇には追いつかず、名目ベースでは引き上げられているものの、物価上昇率との関係では実質的に年金の価値は目減りしています。*4

さらに、認知症高齢者の保有資産は2020年の約255兆円から2040年には約349兆円へ増え、家計資産総額に占める比率も2020年の8.2%から2040年には12.1%に上昇する見通しです。推計では2030年以降は日本の家計資産の1割以上が凍結する可能性も指摘されています。*6
介護や認知症への備えを含めて支出を見積もることが、計画の精度を高めます

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不安を安心に変えるお金の設計図

家計の現状を可視化する

不安を和らげる第一歩は、自分の家計が今どうなっているかを数字で確認することです。家計管理を「重要」または「やや重要」と答えた人は93.5%に上る一方、実際に家計管理を意識して生活している人は77.6%でした。さらに、家計管理について情報収集や学習をしたことがある人は53.8%にとどまります。*2

「どのようなタイミングでどの程度お金を使う予定か」「そのためにはいつまでにいくら貯めておく必要があるか」などについて真剣に向き合ったことがある人は、あまり多くないかもしれません。*1
毎月の収入と支出、貯蓄残高を1枚のシートに書き出すだけでも、漠然としていた不安の輪郭が見えてきます。

目的別にお金を分けて役割を固定

家計を可視化したら、次は貯蓄を目的ごとに分けて役割を固定します。老後資金として必要なお金を目的別に考えると、現在の貯蓄と必要な資金の不足分が具体的になり、計画的な貯蓄がしやすくなります。*4

たとえば、日常生活の予備費、5年以内に使う教育費や住宅費、10年以上先の老後資金のように分けると、それぞれに適した管理方法が見えてきます。生活設計に関するライフプランの立案を「重要」または「やや重要」と答えた人は93.1%ですが、具体的に立案し生活に反映している人は35.8%です。*2
お金の役割を明確にすることで、「何のためにいくら必要か」を基準に判断できるようになります。

ライフイベントと資金計画の時間軸

目的別に分けたお金を、いつ使うかという時間軸に並べることで、資金計画はさらに明確になります。夫婦の場合は年齢差や男女の平均余命の違いを考慮し、「夫婦2人で生活する期間」と「残された配偶者が1人で生活する期間」に分けて考える方法があります。老後の生活費のイメージがつかない場合は、夫婦2人の期間は退職前の生活費の7割、1人の期間は5割で計算する目安も示されています。*5

また、健康なうちは無理のない範囲で働くことが、経済面だけでなく精神面にもよい影響を与えるとの指摘もあります。*4
ライフイベントを年表のように並べ、それぞれに必要な金額と貯める期間を書き出すと、今やるべきことが具体的に見えてきます

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資産形成の手段を比較して選ぶ

貯蓄と投資の役割分担

資産形成を始めるとき、貯蓄と投資は「どちらか」ではなく「使い分ける」ものです。近いうちに使う予定のあるお金は元本が減らない預貯金に置き、10年以上先に使うお金は投資で運用するという考え方になります。

金融庁は、家計の安定的な資産形成を支援するため、NISAの抜本的拡充・恒久化や金融経済教育の充実などの取組を推進しています。*7
たとえば、現役で月々の収入がある場合、現有資産のうちリスクを取れる部分は投資に回し、月々のフローで積立を続けるという方法があります。投資期間が長いほど過去データ上価格変動リスクが平準化される傾向があるので、一括投資をしたうえで積立を併用する方法も選択肢として挙げられています。*8
自分の収入と支出のバランスから、貯蓄に残す金額と投資に回す金額の比率を決めることが最初の作業になります。

(注)長期保有や時間分散は損失を回避する投資手法ではないため、金融市場や経済の動向等により保有資産が値下がりし、損失が発生することもあります。

NISAとiDeCoの使い分け

資産形成の税制優遇制度として、NISAとiDeCoの2つがあります。NISAは株式や投資信託などの運用益・配当金が非課税になる制度で、いつでも払い出しができる自由度の高さが特徴です。一方、iDeCoは毎月掛金を払い将来の年金を自分で準備する私的年金制度で、運用益の非課税に加え掛金が全額所得控除されるため税制上の優遇が大きくなります。ただし、NISAにはiDeCoのような所得控除の仕組みはありません。*9

金融庁のWebサイトの有識者のコラムでは、NISAとiDeCoのどちらがよいかという問いに対して「どちらも使う」のが正解であるとしています。老後資金として資産形成に臨むならiDeCo、老後資金以外の用途で資産形成するならNISAという使い分けが示されています。*10
資金の目的と引き出し時期に応じて、2つの制度を組み合わせて、それぞれの特徴を理解した上で上手に活用してみたらいかがでしょうか。税です。

(注)税金の取扱いの詳細については、税務の専門家等に確認されることをお勧めします。

投資商品選びの判断基準

投資商品を選ぶときは、自分の知識や管理にかけられる時間に合った商品を選ぶことが大切です。資産形成の基本は「長期」「積立」「分散」の3つです。あれこれ投資信託を組み合わせるのが難しいと感じる場合は、複数の資産クラスを1本にまとめたバランスファンドをコツコツ積み立てることも良いでしょう。*10

NISAの投資枠の中では複数の運用商品を選んだり、必要に応じて変更したりすることも可能です。ただし、頻繁に商品を入れ替えると長期投資の効果が薄れる場合もあるため、まずは1つの商品を選び、一定期間続けてから見直す手順で検討してみてください。商品を選ぶ前に、いつ・何のために使うお金かを確認し、その期間に合ったリスク水準の商品を選ぶという順番を守ることが、判断の軸になります。

公的機関の金融経済教育と資産形成支援

資産形成に関する支援体制は公的な枠組みでも整備が進んでいます。2024年4月に金融経済教育推進機構(J-FLEC)が設立されました。「一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングを実現し、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献すること」を目指しています。*1

金融庁、厚生労働省およびJ-FLECは、認定アドバイザーや担当職員が家計管理、ライフプランニング、金融商品の特性、NISAの概要・口座開設の流れ、iDeCoの概要などを幅広い視点から解説するセミナーを開催しています。*11金融庁は、家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元される「成長と分配の好循環」を実現することが重要であるとしています。*7
こうした公的機関の制度やセミナーを活用し、自分に合った資産形成の進め方を確認してみてください。

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おわりに

貯金があっても不安が消えない原因は、将来の収支が見えないことにあるのではないでしょうか。不安の正体を分解すると、老後資金の不足感、インフレや介護費の見積もり難、年金・退職金の過小評価といった具体的な項目に分けられます。

家計を可視化し、お金を目的別に分け、時間軸でライフイベントと資金計画をつなぐ。そのうえでNISAやiDeCoなど税制優遇制度を活用した資産形成を進めることで、漠然としたお金の不安は「対処できる課題」に変わります。まずは自分の収支を書き出すところから始めてみてください

*1 出所) 一般財団法人 日本経済研究所「ファイナンシャル・ウェルビーイングと金融経済教育の普及について

*2 出所) 一般財団法人 経済広報センター「大人の「金融経済教育」に関するアンケート調査結果

*3 出所) 内閣府「第1節 平均消費性向の低下とその背景

*4 出所) 三菱UFJ銀行「60代の平均貯蓄額はいくら?老後資金を賢くためる方法を解説!

*5 出所) 公益財団法人 生命保険文化センター「2025年6月30日号|メールマガジンバックナンバー 一覧

*6 出所) 財務省「高齢者の資産をめぐる2つの問題 ~認知症発症による資産凍結と 相続に伴う大都市圏への資産集中~PDF1,PDF2

*7 出所) 金融庁「資産運用立国について

*8 出所) 金融庁「本音が飛び出す! つみたてNISA座談会

*9 出所) 三菱UFJ銀行「NISAとiDeCo(イデコ)の違いは?併用は可能?それぞれの特徴をわかりやすく解説!

*10 出所) 金融庁「有識者コラム

*11 出所) 金融庁「~将来を見据えたおかねのキホン~NISAとiDeCoで始める資産形成セミナー 開催について

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