春先は新生活に切り替わる場合が多く、それに伴う出費の増加などが重なって、貯金がしにくい時期です。貯金できない理由は大きく2つに分かれます。1つは、新生活のストレスや不安によって「今すぐ楽になる支出」が増えること。もう1つは、家計やお金の情報が多すぎて決められないことです。
この記事では、「春先に貯金できない人が増えやすい背景」、「心理的な原因によって貯金ができない場合」、「情報が原因で貯金ができない場合」、「明日からできる立て直しの手順」
を紹介します。
春に貯金できない人が増えやすい背景
家計の環境が変わり貯金の優先順位が下がる
春先に貯金できない理由は、気持ちの問題だけではなく、家計の「環境」が変わりやすい点にもあります。出費が増える場面が重なり、判断することも増えるため、貯金の優先順位が下がりやすくなるのです。
判断することが増えると、選択肢を比較するだけで疲れ、決めること自体を先送りしやすくなります。また、住まいや職場、保険などの手続きが重なる時期は、情報を理解する負担や対応の手間が積み上がり、考える余力が削られます。*2
新生活の固定費・初期費用で可処分が目減りする
春先は引っ越しや入学、就職、異動などで生活の土台が変わりやすく、まとまったお金が出ていきます。家賃が変わると毎月の固定費が上がり、手元に残るお金が減るため、貯金に回せる額が小さくなります。
一人暮らしの初期費用は地域差がありますが、一般的に家賃の2〜6カ月分程度があれば安心です。たとえば家賃8万円なら、初期費用は16万〜48万円が目安になります。*1
さらに、家賃だけでなく、通勤や通学の定期代、家具・家電、通信費の見直しなど、生活を回していくための支出が連続します。また、新生活を始めて固定費が上がることで、貯金を長く圧迫しやすくなります。
環境変化のストレスで「ご褒美消費」が起きやすい
4〜5月は、環境に慣れるまでストレスがかかりやすく、散財しやすくなります。
特に、「ご褒美消費」は、回数が増えやすいのが厄介な点です。仕事帰りのコンビニ、週末の外食、気分転換の買い物が重なると、貯金のために残すはずだったお金が自然に消えていきます。
また、回数が増えると、家計を圧迫している原因であると見えにくくなります。
契約の更新など情報が増えて家計の意思決定が鈍る
春先は、家計の判断材料が一気に増えます。新しい給与明細、保険や福利厚生の案内、住まいの契約、学校や職場の手続きなど、家計を圧迫する材料が多く、優先順位を決めにくくなります。
たとえば、固定費の見直しや貯金額の設定を考える必要がありますが、春先はそれよりも目の前の手続きや支払いが優先されやすく、結果として貯金が滞りやすくなります。
交際費・イベント費が増える
春は行事が重なるため、家計が膨らみやすい季節です。職場や友人関係では歓送迎会が増え、週末は花見などの外出が入りやすくなります。
さらに5月の大型連休では、旅行・帰省・外食などのイベント支出が増えやすくなります。こうした交際費や行事による出費は、生活の満足度にはつながる一方、貯金に回す額を短期的に圧迫しています。
収入のタイミングがズレやすく、資金繰りがタイトになる
春は就職・転職・異動などで生活が切り替わりやすく、収入と支出のタイミングがズレがちです。
たとえば新卒の場合、給与の締め日と支払日の設計次第で、4月に働き始めても初任給が5月以降になるケースがあります。一方で、家賃・交通費・生活用品などの支払いは新生活の開始と同時に発生します。
また、交通費や備品代などを後日精算する場合、短期的に家計を圧迫する原因になります。
このように、一時的にでも資金繰りが苦しい局面があると、貯蓄は難しくなります。
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心理的な原因によって貯金ができない場合
不安やストレスを下げるための散財
不安やストレスが強いと、短い時間で気分が変わる行動を選びやすく、出費が増えます。
特に、節約の判断をしにくくなります。たとえば、安価で済む自炊を選ぶより、外食で手間を減らすほうが楽に見えます。こうした支出は、頻度が増えると貯金の枠が削られ、貯金できない状態が続きやすくなります。
心理的な原因が支出につながっているときは、家計簿の数字だけを見ても改善しにくいことがあります。まずは、ストレスが高い日の行動を把握するほうが、立て直しが早くなります。
将来の安心より今の安心を選ぶ現在志向バイアス
現在志向バイアスとは、将来の利益を過小評価し今すぐ得られる利益を大きく感じてしまうバイアスです。たとえば「1年待てば10万円もらえる」よりも「今すぐ5万円もらえる」ほうが、直感的に魅力的に見えてしまう、という現象です。現在志向バイアスが働くと、貯金を始める決断が後回しになります。
春先は出費も気疲れも増えるため、将来のために我慢するより、今日を乗り切るために使う判断が増えがちです。すると現在志向バイアスも働きやすくなります。この場合では、目標が大きすぎることが貯金を止める原因になることがあります。年単位の目標を月単位に直すだけでも、次にやることが見えやすくなります。
貯金できないことへの自己否定が行動を止める悪循環
貯金が続かないと、自己否定につながるケースがあります。しかし自己否定は家計の確認や見直しを阻害して、かえって貯蓄を止める原因になります。
将来への不安が強いのに準備の手応えがないと、焦りが増えます。その焦りが自己否定につながると、家計を整えるための小さな一歩すら重く感じられます。こうして、貯金できない理由が、手元にお金が残っていないという問題から、お金があっても行動できないという問題へと、変わっていきます。
自己否定が強いときは、家計を完璧に管理しようとするより、確認などのハードルを下げましょう。たとえば、まずは残高だけを確認する、次に固定費だけを確認する、というように、管理ではなく確認から行いことで、心理的な負担が小さくなります。
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情報が原因で貯金ができない場合
家計管理の情報が多すぎて選べない
家計管理の方法は、家計簿、固定費の見直し、現金管理、口座の分け方など選択肢が多く、情報を集めるほど迷いが増えます。情報が多いと、選択する際に考える量が増えて、行動する前に止まりやすくなります。
行動を後押しする「ナッジ理論」の情報整理の枠組みとして、「EASTチェックリスト」があります。
Easy(やりやすさ)、Attractive(やりたくなる工夫)、Social(まわりの影響)、Timely(やるタイミング)の観点で情報を整理します。4つの観点に分けて考えることで、やることが多い場面でも「何を直せば行動につながるか」が見えやすくなります。情報量に圧倒されず、意思決定に必要な要素だけを抽出して判断に活かすことができます。
完璧な正解探しで先延ばしになる
情報型の人は、失敗したくない気持ちが強く、完璧な正解を探しがちです。しかし家計の管理は、家族構成や住まい、働き方で条件が変わるため、誰にでも当てはまる唯一の正解はありません。
家計管理においては、口座やサービスを選ぶ場面で迷いが生じ、そのために調べる量がさらに増えて、結果的に貯金の開始時期が遅れやすくなります。
対策するには、選ぶ時間を減らすことです。やり方を探す時間を短くし、決定するまでの期限を設けることで、先延ばしを防ぐことができます。
キャッシュレスで支出の痛みが薄れやすい
情報型の人は、記録の方法や分類の仕方にこだわりすぎる傾向があり、記録する際の手間が増えて続かなくなることがあります。加えて、数字の変化が後から来るキャッシュレス決済は、使った実感が薄れやすいです。支出の感覚が薄れ、記録も止まると、気づいたときには貯金に回す額が減っていることがあります。
キャッシュレス中心でも、支出の感覚を持つことはできます。ポイントは、支出の全てを記録するではなく、確認する回数と場所を決めることです。アプリの通知や予算アラートを使い、手間なく確認できる形にすることで続けやすくなります。
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明日からできる立て直しの手順
心理的な原因による支出を減らすには
心理的な原因による支出は、無理にゼロにすることをめざすのではなく、支出の揺れを小さくすることが重要です。たとえば、仕事のストレスなどで気持ちが荒れやすい曜日や時間帯を把握して、あらかじめ上限を決めた「気分転換費」を支出に組み込むことで、予想外な支出を減らしやすくなります。
もう1つのコツは、支出する際に、購入の意思決定を遅らせることです。買う前に10分だけ待つ、夜はネット通販のカゴに入れて翌朝に決めるなど、気持ちが落ち着く時間をはさむと、使い過ぎが減りやすくなります。
情報過多を原因とした支出を減らすには
情報過多の場合、まずは選択肢を減らし、決断する回数を減らすことが必要です。
たとえば、給与口座から毎月決まった金額を貯蓄口座へ引き落とす設定をしておくと、情報過多や選択することのストレスとは関係なく貯蓄を行うことができます。
また、判断に時間をかけるほど、他の情報が増えて決断することが難しくなります。決断する際は、意思決定までの時間を先に区切るとよいでしょう。
仕組み化で行動コストを下げる
貯金を続けるには、継続できる仕組みを作ることが必要です。
仕組みで回すには、以下のような例があります。
- 給料日に貯金用口座へ自動で移す金額を固定する
- 残高確認は月1回、日付を決めて行う
- 大きな支出は買う前に見積もりを取る
重要なことは、やることを増やすのではなく、減らすために仕組みを作るということです。春先の忙しい時期でも、貯金行動を残りやすくなります。
固定費を見直す
固定費は一度見直すと、毎月の支出が自動的に下がり、効果が続きやすいです。
見直す際は、各契約一回ずつ行いましょう。
通信費やサブスク、保険のうち、まずは明細を見て月額が大きいものを1つ選び、30分だけ作業時間を確保します。通信費なら直近数か月の利用量に合うプランへ変更し、サブスクなら使用していないのに課金している契約がないか確認します。保険は、公的保障でカバーされる範囲を踏まえつつ、保障の重なりや過剰な特約がないかを整理します。*2
浮いた分を出費してしまわないように、すぐに貯蓄に回すとよいでしょう。
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おわりに
春先に貯金できない理由は、初期費用や交際費などの出費が増えることと、新生活の大きなストレスや情報量の多さが原因です。単純に手元の金額が少ない場合もあれば、心理的要因で貯金行動自体が進まないケースもあります。
心理的な原因によって貯金ができない場合は、気持ちの波を小さくする工夫が必要です。情報過多の場合は、選択肢を減らして自動化する工夫が必要です。
*1 出所) UR都市機構 「 一人暮らしの初期費用は最低いくら?内訳と安く抑えるコツ|へや学部|URくらしのカレッジ|UR賃貸住宅」
*2 出所) 知るぽると「出ていくお金を減らすには、固定費の見直しが最優先 ─ 初めての1人暮らし、賢いお金の管理術|知るぽると」










