ポイント
情報提供資料2026年6月15日
海外先進国の利上げ転換を織り込む市場
先週の金融市場は中東情勢動向に一喜一憂
先週の金融市場は落ち着かない展開でした。週前半は米国・イラン間の軍事的衝突やトランプ米大統領の大規模攻撃予告で緊張が走るも、後半は同大統領が攻撃中止を表明、停戦合意(19日に署名予定)に前進との報道で安堵感が広がり米株高・金利低下、米ドル安となりました。
ECBが利上げに転換、FOMCはどう動く?
先週の欧州中銀(ECB)に続き、今週は日銀が0.25%利上げに動く見込みです。またウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長体制初の連邦公開市場委員会(FOMC)では、米景気・物価面のリスク認識と金融政策姿勢に関する前パウエル体制からの変化が焦点となるでしょう。
先進国の利上げ継続シナリオに不確実性も
中東危機発の原油高・国際物流混乱によるインフレ懸念で各国中銀の政策姿勢は一変(上図)、ただし裏を返せば、中東情勢次第で景気・物価のリスク認識(重点はどちらか)が変わる可能性もあります。金融政策見通しを巡る綱引きで市場は当面神経質になりそうです。(瀧澤)
今週の主要経済指標と政治スケジュール
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金融市場の動向
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日本 日銀は利上げへ、国債買入れ減額は2027年4月以降停止の見込み
米金利・中東情勢に翻弄され国内株は乱高下
先週の国内株は、日米の金融政策会合を控えるなか、米長期金利の変動や、中東紛争の動向に振り回され不安定な値動きでした。週初は、米国で利上げ観測が高まるなか、金利上昇を嫌気し国内ハイテク株を中心に大幅下落。ただし、週末には、トランプ米大統領が近日中にイランとの停戦合意に署名する可能性を示唆。原油価格と長期金利の低下を好感し、大幅に反発しました。
2月末の中東紛争開始以降、国内株式市場では、AI半導体関連株が堅調な一方、原油高や金利上昇を背景に空運や不動産、建設などが軟調に推移しています(図1)。15日早朝には「米国とイランが和平合意に達した(19日に合意署名)」との報道もみられるなか、これまで出遅れていた業種に見直し買いの動きが広がるか注目です。
AI需要がけん引する工作機械受注
9日公表の5月工作機械受注は前年比+37%と前月に続き大幅な伸びを記録しました。外需・内需とも堅調で、11カ月連続でプラスを維持するなど高水準が続いています。ホルムズ海峡封鎖によるサプライチェーンの混乱により、駆け込み需要が発生している可能性には留意が必要も、半導体製造装置やデータセンター向けの受注が好調で、AI関連需要が全体を押し上げている模様です。
また、TOPIXの予想EPS(一株当たり利益)は同指数のサイクルに追随しており(図2)、先行きもAI・半導体を中心に堅調な受注が継続すれば、国内企業の業績拡大が期待され足元の国内株の上昇基調を支えるでしょう。
日銀は利上げとテーパリング停止を決定か
一方、インフレ懸念は依然として根強い模様です。5月の国内企業物価は前年比+6.3%と3年ぶりの高い伸びとなりました。円建ての輸入物価が2カ月連続で前年比20%超上昇しており、今後、消費者物価など川下への価格転嫁は避けられないとみます。そうしたなか、日銀は物価上振れリスクに対応すべく、今週15-16日の金融政策会合で政策金利を1.0%へ引き上げる見通しです。先行きの利上げ姿勢を探る上で、声明文や内田副総裁記者会見(植田総裁欠席のため代理)が焦点になりそうです。
また、同会合では国債買入れ減額計画の中間評価も予定されています。日銀保有の国債残高の減額は速いペースで進んでおり(図3)、長期金利が上昇するなか国債市場の安定を優先し、2026年度内の現行計画を維持する一方、2027年4月以降減額を停止する公算が高いとみられます(月間買入れ額を2.1兆円に据え置き)。(大畑)
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米国 米・イラン和平合意報道、新体制下の6月FOMCは据え置き見込み
スペースXの良好なIPOと和平合意が追い風
先週のS&P500はほぼ横ばい。米国・イラン間の攻撃激化に伴う和平期待後退や、オラクルの決算で公表された巨額投資を受けて、半導体株を中心に一時調整。その後、トランプ大統領による和平協議への言及を受けて市場のリスク選好は急回復しました。週末には米国とイランとの和平合意が成立したとの報道が(図1)。今週初は和平トレード(株高・金利安・ドル安)が見込まれます。
先週末12日にはイーロン・マスク氏創業のスペースXが新規株式公開(IPO)。史上最大となる750億ドルの調達で注目を集めた同社は、公開価格を約19%上回る終値でIPO日を終え、好調な滑り出しに。今回の大型IPO成功は投資家のリスク選好につながるほか、アンソロピックやオープンAIの今後のIPOへの注目も高めるでしょう。
物価は高水準も、資源高の波及はわずか
先週は主要物価指標である消費者物価指数(CPI)が公表され、総合が前年比+4.2%、コア(エネルギー・食品除く総合)が同+2.9%といずれも前月から上昇も、市場予想通りとなりました(図2)。資源高を受けエネルギーや航空運賃が高い伸びを維持した一方で、関税影響のはく落や需要軟化等を受けてコア財は減速。資源高の影響品目が限られた点は安心材料です。しかし、11日に公表された生産者物価指数(PPI)は、最終需要における総合が同+6.5%と、CPI対比で高水準に。今後の物価上昇圧力に加え、投入価格上昇を販売価格に転嫁できていない状況も示唆される中で、企業収益への下押し圧力も懸念されます。
強弱まちまちの物価指標を受けて、金利市場は一時小幅に変動するも、その後は値を戻しています。
FOMCは据え置き見込み、新議長の出方は
こうした指標の中でも、多くの米連邦準備制度理事会(FRB)高官は様子見姿勢を継続しており、今週16-17日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、据え置きが確実視されています。そのため、市場の焦点は①和平合意を受けた姿勢変化、②前会合で3票の反対票が入った声明文での利下げガイダンスの有無、③ドットチャートで示唆されるFOMC参加者の姿勢 (図3)、④ウォーシュ新議長の記者会見コメント、でしょう。特に④は金利見通しに加え、バランスシート政策やAIディスインフレに関する姿勢、対市場コミュニケーション意向など注目点は多数。
新任議長は初回会合では大胆な路線変更を見せないと考えられるため、大胆な意見表明が見られた際には市場は大きく反応すると見込まれます。(牧)
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欧州 ECB利上げ開始の一方、BOEは静観か、英国政治動向にも注目
ECBは約3年ぶりに利上げを開始
欧州中央銀行(ECB)は6月政策理事会で、事前の市場予想通り、主要政策金利を0.25%pt引き上げ、中銀預金金利を2.25%としました。声明では、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の上昇がインフレ圧力を強めている点を指摘。ラガルド総裁は記者会見で、今回の利上げは予防的措置ではなく、インフレの基調的な広がりを踏まえた決定であると説明し、エネルギー価格上昇を起点としたインフレ波及への対応であることを明確化しました。
同時公表のスタッフ経済見通し(図1)では、インフレ率が2026~2027年にかけて大きく上方修正された一方、成長率見通しは下方修正。先行きは、エネルギー価格次第でインフレの上振れリスクが大きい一方、中東紛争や金融引き締まりにより成長は下振れ方向とされ、インフレリスク優位の下で引き締めバイアスが維持されるとみられます。もっとも、ラガルド総裁はデータ次第の政策判断姿勢を堅持し、長期インフレ期待は概ね2%近傍に維持されているとしつつ、賃金・価格への二次的影響を注視する考えを示しました。また、注目された7月会合での追加利上げを巡っては明確な示唆はなく、中東情勢次第でインフレ見通しの不確実性が大きい中、次回経済見通しが公表される9月会合で検討する公算が高いとみられます。
英4月GDPは小幅減速、BOEは様子見継続へ
12日に公表された英国の4月月次実質GDPは、前月比▲0.1%と小幅に減少(図2)。公表元によると、中東情勢の影響で海外スポーツイベントが中止されたことを受けて芸術・娯楽を中心に落ち込み、サービス部門が同▲0.2%と全体を押し下げました。もっとも、基調は依然堅調。2-4月平均では前期比+0.7%と成長は維持され、サービス部門も同+0.8%と底堅く、英国経済がサービス主導で拡大する構図は不変です。一方、生産部門の弱さや中東情勢に起因する下振れリスクは残存。このため、今週予定される6月金融政策委員会(MPC)では、イングランド銀行(英国中銀、BOE)が政策変更を迫られる状況にはないと考えられます。総じて、BOEはデータ確認を優先し、当面は政策金利を据え置く公算が大きいとみられます。
英補選、首相交代圧力強まるか
また、英国では18日にメイカーフィールド下院補欠選挙が予定され、労働党有力者バーナム氏の国政復帰が焦点です。世論調査では同氏がやや優勢も、リフォームUKとの接戦が予想されます(図3)。バーナム氏当選となればスターマー首相の交代圧力が強まる一方、ポピュリスト勢力の台頭も懸念され、動向が注視されます。(吉永)
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マレーシア データセンター投資等を追い風に拡大する景気は今後鈍化か
1-3月期の実質GDPは+5.4%拡大と堅調
データセンター投資や電子需要の伸びを追い風に拡大するマレーシアの景気。しかし、今後は中東紛争や国際燃料価格の上昇等が重しとなり景気は緩やかに鈍化するでしょう。先月15日、政府は1-3月期の実質GDPが前年比+5.4%(10-12月期+6.2%)拡大したと公表(速報値の+5.3%を上方修)。需要側では、固定資本投資が堅調でした。
民間消費は前年比+4.7%(同+5.6%)拡大。堅調な拡大を経て緩やかに鈍化しました。政府消費は同+4.1%( 同+6.6%)へ鈍化。燃料補助金負担が拡大する中でその他の歳出が抑制されました。固定資本投資は同+7.3%( 同+9.3%)へ減速しつつ堅調。部門別では建設が同+7.0%(同+10.1%)、設備が同+8.7%(同+9.2%)、主体者別では民間が同+7.8%(同+9.2%)、公的部門が同+5.3%(同+9.5%)へ鈍化しました。外需では、総輸出が同+5.2%(同+6.3%)、総輸入も同+4.6%(同+9.0%)へ鈍化しました。
今年のGDP成長率は+4.6%へ鈍化する見込み
生産側では、AI関連投資等の恩恵を受ける製造業が好調でした。農林漁業は同+2.6%(同+5.7%)へ鈍化。油やし生産が軟化しました。鉱業が同▲2.1%(同+1.4%)へ反落した一方で製造業は同+5.9%(同+6.0%)拡大。運輸機器等が落ち込んだものの電子部品等が加速しました。特にプリント基板や計測・検査機器が好調。世界的なAI関連投資の恩恵とみられます。建設業は同+7.7%(同+10.9%)と鈍化しつつ堅調でした。サービス部門は同+5.6%(同+6.2%)と鈍化しつつ堅調。飲食、宿泊、運輸・倉庫等が拡大しました。情報通信は同+8.1%(同+8.8%)と3期連続で+8%台の伸び。データセンターの稼働によります。なお、自動車販売は同+1.1%(同+8.2%)へ鈍化。EV輸入関税免除措置の期限を控えて前期に駆け込み販売があった反動です。
同国は石油ガスの純輸出国。中東混乱による影響は小さいものの、ゼロではありません。石油ガス価格上昇によって燃料精製、化学、陸運、その他運輸等のコストは拡大。企業収益が圧迫され投資が抑制されるでしょう。政府は補助金を使ってレギュラーガソリン(RON95)の小売価格を抑制しており、国際燃料価格の上昇に伴って補助金負担が拡大。政府は補助金付き燃料の支給対象の縮小を検討しており、実行されれば家計消費を下押しするとみられます。今後もデータセンターやジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)関連の投資が拡大し、電子部門の生産も高い伸びを続ける見込み。しかし、中東紛争と燃料価格上昇の影響が徐々に景気の重しとなり始めるでしょう。今年通年のGDP成長率は+4.6%(昨年+5.2%)へ緩やかに鈍化すると予想されます。(入村)
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主要経済指標と政治スケジュール
※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定
注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。
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