ポイント
情報提供資料2026年8月10日
日米協調介入は単なる時間稼ぎで終わるのか
円相場は1米ドル158円前後で小康状態に
円相場は7月31日の日米協調介入で急伸後、先週は1米ドル158円前後で小康状態となりました。2022年秋や2024年夏は円買い介入を機に20円超、円高に振れた例もあります(上図)。日米当局が追加介入も辞さない姿勢を鮮明にするなか、目先は円一段高のリスクに要警戒です。
高市政権・日銀の政策運営への信頼回復が鍵
ただし、円安抑制効果が持つかは不透明です。円安進行の主因として、高市政権の拡張財政や日銀の利上げの遅さ(政府による介入との声も)が指摘されるなか、財政政策、特に消費減税の軌道修正や、日銀の独立性への疑念払拭なくして円安基調からの転換は困難でしょう。
ウォーシュFRBの利上げ予測を巡り神経戦に
米ドル円相場を左右する日米金利先高観を見る上で、米連邦準備理事会(FRB)の動向も焦点です。市場は依然、ウォーシュ新議長の真意を測りかね利上げ予測が揺れています。当面は米雇用・物価をにらみつつ、米利上げ観測の変化に振らされる展開が続きそうです。(瀧澤)
今週の主要経済指標と政治スケジュール
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金融市場の動向
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日本 日米協調介入で日銀の利上げ前倒し観測が高まる
円の先安観は修正も、円安圧力は根強い
先週の国内株は方向感の定まらない展開でした。日経平均株価は5日に66,000円台を回復も、その後はAI関連が失速し続落。ハイテク企業の設備投資の持続性や、中国AI企業との競争激化に対する不透明感が解消されるまでAI関連株の不安定な値動きは続きそうです。ただし、足元は国内企業決算の7割超が市場予想を上回るなど、4-6月期決算は堅調です。今週も、企業決算を材料に個別物色が続き、AI関連以外への裾野拡大も期待されます。
他方、為替市場では、米ドル円が日米協調介入により一時155円台を付けるも、10日には158円台まで上昇。原油高の再燃や米利上げ期待の高まりが円相場の重しとなりました。異例のタイミングでの日米協調介入を受け、投機筋の円売り持ち高は縮小傾向にある一方(図1)、高市政権の財政拡張や日銀の利上げが遅れるとの懸念に加え、実需の円売り材料も根強く(図2)、根本的な円安要因が改善しない限り、円安基調は続くとみます。
日米協調介入が日銀の早期利上げを後押し
今回の日米協調介入を受け、日銀の利上げ前倒し観測が高まっています。ベッセント米財務長官が円安是正に向け「できることは何でもする」と全面協力の意向を示すも、「植田総裁が必要な対応をとると信じている」と日銀へ利上げ要請ともとれる発言も見られました。市場の次回9月会合での利上げ確率は60%を超えています。また、10日公表の7月金融政策会合の主な意見では、「利上げペースが市場の想定より早まる可能性」との意見もみられ、日銀のタカ派姿勢が鮮明となりました。次回追加利上げまでの距離はそう遠くはなさそうです。
消費減税実施なら実質賃金はプラス維持か
5日公表の6月毎月勤労統計は、名目賃金が前年比+3.4%と前月から伸びが加速。春闘での高水準の賃上げに加え、夏のボーナスも好調、特別給与は同+3.5%と賃金全体の押し上げに寄与しています(図3)。また、実質賃金は同+1.6%と前月から横ばいも、6カ月連続のプラスを維持。名目賃金の高い伸びに加え、足元2%割れまで低位安定しているインフレ率も追い風です。
インフレ率に影響する消費減税については、来年4月から食料品の消費税率を1%にする基本方針案が、5日に閣議決定されました。秋の臨時国会での法案成立の可能性は高いとみられ、実際に消費減税が実現すれば、原油高によるインフレ圧力が相殺され、実質賃金は当面プラス圏での推移を続ける可能性が高いとみます。(大畑)
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米国 雇用統計はやや弱めも許容範囲内、今週は物価指標が最大の波乱要因
好決算追い風にダウ平均は連日史上最高値
先週のS&P500は上昇。S&P500採用企業の8割超が公表済となった足元進行中の決算は総じて良好な内容となる中(図1)、米国とイランの和平協議再開への期待や、資源価格の下落とやや弱めの雇用統計を受けた金利低下が追い風に。ダウ平均は連日で史上最高値を更新するなど、好業績銘柄を中心に株価は堅調に推移しました。
今週は半導体製造装置大手アプライド・マテリアルズの決算にて同社が示す需要見通しは要注意なものの、市場の関心は、予想を下回る雇用統計を受けた金利低下を背景に、今後の物価指標と金利動向へ移ると考えられます。加えて、中東和平を巡る追加情報の有無や交渉進展に対する市場の確信度も相場を左右するでしょう。
米雇用は低位安定状態の継続を示唆
先週は雇用関連指標が多数公表され、6月雇用動態調査(JOLTS)は卸売業や非耐久財製造業が弱く求人件数が前月比減少も、失業者が減少し失業者一人当たりの求人件数は1を上回り改善。7月ADP雇用統計が示す転職者の賃金上昇率は上昇を継続しました。また、7月雇用統計でも失業者数が減少し失業率が4.1%と下落を継続(図2)。一方で、非農業部門雇用者数が市場予想を下回る前月差▲2.3万人と減少、娯楽・宿泊や地方政府が減少をけん引しました。賃金の伸びも減速し、労働需給の緩みを印象付けました。各指標の結果はまちまちですが、総じて「低解雇・低採用」状態が継続していると見られます。
この結果を受けて市場では9月の政策金利利上げ織り込みが後退し、10年債利回りは一時下落しました。
金融政策を左右するのは物価側
今週は7月消費者物価(CPI)、生産者物価(PPI)など物価指標が公表予定。先週公表のISM景気指数は、中東情勢の再悪化などを受けて価格項目が高水準で推移しており(図3)、引き続き川下のコア財CPIへの転嫁動向に注目が集まります。他方、粘着度の高いサービス価格も先月は減速ながらも高水準が継続しており、こちらも要注意。物価見通しについては先週、ウィリアムズNY連銀総裁がインフレ圧力の緩和についての楽観的な見方を示した一方、シュミッドやポールソン地区連銀総裁はインフレ率の高さについての懸念を示す等、FRB高官内でも見方は様々であり、今週の結果が雲を晴らす結果となるか、市場は固唾をのんで見守る形となるでしょう。
また、14日公表の小売売上高は堅調な見込み。こちらは物価高を受けた個人消費への影響が焦点です。(牧)
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欧州 ユーロ圏消費に弱さが残る一方、ドイツの生産活動は底堅く推移
ユーロ圏の財消費はなお力強さを欠く状況
6日に公表されたユーロ圏の6月実質小売売上高は前月比▲0.3%と、5月の同+0.4%から一転して減少。市場予想(同+0.1%)も下回り、財消費は依然として力強さを欠いている状況です。自動車燃料売上は増加したものの、食品・飲料・タバコや非食品売上と幅広く減少しており、エネルギー価格上昇による家計負担の増加を背景に、消費者が慎重な支出姿勢を維持していることがうかがえます。国別では(図1)、ドイツが同▲1.1%と低迷が目立ったほか、フランスも同▲0.5%と2大経済国は減少する一方、スペインやイタリアは増加がみられ、域内でも消費動向にばらつきがみられます。エネルギー価格上昇の影響はなお家計部門へ波及する過程にあるとみられ、今後も実質購買力への下押し圧力が見込まれるなか、家計消費は当面停滞感の強い推移が続く可能性が高いと考えられます。
ドイツの生産活動は持ち直し基調を維持
7日に公表されたドイツの6月鉱工業生産は前月比+0.2%と3カ月連続で増加し、自動車(同+3.6%)や航空機・鉄道車両・防衛関連を含む輸送機械(同+8.4%)が増産を牽引しました(図2)。4-6月期全体でも前期比+0.7%と増加し、生産活動の緩やかな回復は続いています。また、6日に公表された同国の6月製造業受注も前月比+3.1%と、市場予想(同+0.3%)を大きく上回って増加。機械設備等分野での大型案件が押し上げ要因となったほか、自動車関連受注も堅調でした。もっとも、公表元によると大型受注を除いたベースでは同▲0.5%と、基調的な需要回復にはなお不安定さが残っています。
加えて、ドイツの6月輸出額は1,393億ユーロと過去最高を更新。輸出が4‐6月期の成長を支えたことが確認された一方、輸入額は前月比+4.4%と増加した結果、貿易黒字は縮小しています(図3)。地域別ではEU向け輸出が増加も、米国や中国向けは減少。他方、中国からの輸入は同+9.1%と大幅に増加し、中国企業との競争環境は引き続き厳しい状況にある模様です。
中東情勢によるエネルギー価格上昇にもかかわらず、ドイツ製造業は想定以上の底堅さを維持していることが確認され、防衛支出拡大やインフラ投資計画、自動車・資本財需要の回復は引き続き追い風となると期待されます。一方、高金利環境やエネルギーコスト上昇、中国との競争激化、猛暑に伴うライン川の水位低下といった逆風も残ります。足元では循環的な回復が続いているものの、本格的な生産回復局面へ移行できるかは引き続き見極めを要しそうです。(吉永)
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インドネシア 今年前半に堅調であった景気は後半にかけて鈍化する見込み
政府の公共投資や経常歳出が景気を支援
堅調に拡大するインドネシアの景気。しかし、政府予算の前倒し執行などが景気を支えており、民間消費や投資は勢いを欠きます。今後は政府支出の伸びが鈍化し成長率も鈍化するでしょう。先週5日、政府は4-6月期の実質GDPが前年比+5.3%(1-3月期+5.6%)へ減速しつつ(図1)、市場予想(Bloomberg集計)の+5.1%を超過したと公表。需要側では、公共投資などが加速し内需(在庫投資を除く)の前年比寄与度が+5.9%pt(同+6.1%pt)と堅調でした。
民間消費は前年比+5.1%(同+5.5%)へ鈍化しました。今年の断食明け大祭(レバラン)は3月下旬と昨年(4月初旬)より早く、同休暇期の消費が1-3月期に前倒しとなった反動も発生。レギュラーガソリン(RON90)以外の燃料価格引き上げも重しとなりました。政府消費は同+16.0%(同+21.8%)拡大。政府の給食無償支給事業などが伸びました。固定資本投資は同+6.9%(同+6.0%)へ加速しました(図2)。設備投資が同+1.3%(同+10.8%)へ鈍化したものの、運輸機器は同+26.0%(同+12.4%)、建設投資も同+6.6%(同+5.3%)へ加速。村落協同組合関連の公共投資などが拡大した影響です。外需では、総輸出が同+4.1%(同+0.9%)へ加速し、総輸入も同+8.8%(同+6.4%)へ加速しました。
今年通年のGDP成長率は+5.3%前後の見込み
農林漁業は同+3.8%(同+5.0%)へ鈍化(図3)。農作物が落ち込み総生産を下押ししました。鉱業は同▲1.6%(同▲2.1%)と低迷。政府による生産計画承認が遅れた影響です。製造業は同+4.5%(同+5.0%)へ鈍化しました。建設投資需要から窯業土石製品や金属製品が好調で、食品、衣服履物、運輸機器も堅調であった一方、燃料精製や卑金属が軟調。石炭、金属鉱石や石油ガス生産が落ち込んだ影響です。建設業は同+6.7%(同+5.5%)へ加速。政府の公共投資が伸びました。サービス部門は同+6.2%(同+6.8%)へ鈍化。運輸・倉庫、金融・保険などが鈍化しました。
堅調だった政府の経常歳出の伸びは今後鈍化する見込み。政府予算の前倒し執行の反動が生じるとともに、前年同期の歳出低迷からの反動も薄れます。また、家計消費も勢いを欠く見通し。安定性に欠ける非組織部門雇用の比率が高いなど雇用環境の弱さが重しです。企業投資もさえない見込み。一次産品輸出機構の設立を目指すなど政府の経済運営は迷走しており、政策面の不透明感が直接投資を下押ししています。一方、石炭・鉱物採掘計画は今後認可が進む見込み。今年上半期に低迷した生産と輸出は今年後半に加速するでしょう。今年前半に加速した景気は今年後半に鈍化し、今年通年のGDP成長率は+5.3%前後(昨年+5.1%)となると予想されます。(入村)
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主要経済指標と政治スケジュール
※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定
注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。
出所)各種情報、Bloombergより三菱UFJアセットマネジメント作成
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