中東リスク再燃、政策金利とAI投資の行方を見極めへ

中東リスク再燃、政策金利とAI投資の行方を見極めへ

情報提供資料2026年7月13日

日本国債市場で高まるリスクプレミアム

中東情勢悪化、AI関連株の調整から回帰へ

先週の株式市場は、AI・半導体株の利益確定売りと中東情勢悪化への警戒が交錯し、荒い値動きとなりました。週前半は、過熱警戒からAI関連銘柄が調整する一方で、景気・消費関連株への資金シフトもみられました。しかし週後半は、中東情勢悪化に伴う原油高を背景にインフレ懸念が再燃し、債券や景気敏感株が買いにくくなったことで、AI関連株への物色が再び優勢となりました。

金利上昇・円安圧力が続く日本市場

日本市場では金利上昇・円安基調が継続。10年国債利回りは一時2.9%近辺まで上昇し、市場では日銀の金融政策正常化に加え、財政リスクプレミアムの上昇も意識されています(上図)。片山財務相による国内投資促進発言等を受けて、金利低下・円高が進む場面もみられましたが、財政運営や国債需給への警戒は依然根強い状況です。

政策金利とAI投資の行方を見極める週

今週は主要中銀の政策金利見通しを左右する重要な材料が目白押しです。中東情勢に加え、米6月物価指標や小売売上高、ウォーシュFRB議長の議会証言が金融政策の方向性を占う材料となります。また、ASMLやTSMCの企業決算はAI投資の持続性を測る試金石となり、金融政策とAI投資の先行きを見極める週となりそうです。(吉永)

今週の主要経済指標と政治スケジュール

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金融市場の動向

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日本 骨太ショックで長期金利は一時、30年ぶりの水準を更新

骨太方針の文言修正も市場の見方は不変か

先週の日経平均株価は軟調。週の前半はAI相場の持続性への懸念や中東問題再燃で大幅続落も、週末にかけ反発しました。今週は小売などの企業決算にも注目です。

他方、債券市場では政府が骨太方針の原案を公表後、長期金利が急上昇。「財政規律」の文言が削除された一方、積極財政・日銀の利上げけん制姿勢が示され、市場ではインフレ懸念に加え財政悪化懸念も意識されています(図1)。政府は文言修正を検討、金融政策の独立性が明記される模様です。さらに10日には片山財務相が年金基金による国内資産への投資拡大を示唆するなど政府は金利上昇抑制に腐心。金利は目先低下余地を残すものの、消費減税や官民投資370兆円超、防衛費増大などの財政拡張懸念が意識されやすいため、金利上昇圧力は根強いとみます。長期金利は節目の3%が視野に入りそうです。

中東情勢収束期待の高まりでマインド改善

8日公表の6月景気ウォッチャー調査は、景気の現状判断DIが44.0と2カ月連続で上昇。また、先行き判断DIは全項目で大幅に上昇するなど、米・イラン停戦合意後に実施された6月調査では、中東情勢収束への期待感が確認されました(図2)。ただし、物価上昇や供給不安などを懸念する声は引き続き多数みられ、中東情勢悪化前の水準を取り戻すには至っていません。現状判断理由コメントからは、6月は飲食・小売中心に台風や大雨などの天候不順により来客数の減少を指摘する声もみられました。

また、物価高を背景に節約志向が継続している様子がうかがえる一方、「一部の富裕層の消費意欲は高水準を保っている」、「高額品売上が富裕層中心に目立つ」との声も目立ち、消費の二極化が進んでいる模様。株高などの資産効果もあり、日本でも高所得者層による旺盛な消費が景気を下支える構図が強まりつつあります。

日銀は利上げペースを早められるか?

日銀が9日に公表した地域経済報告では、AI需要拡大を背景とした生産・輸出の堅調さに加え、人件費増や原油高による価格転嫁の進展、夏場以降の値上げ方針など、足元の日銀シナリオに沿った声が多く示されました。

実際、国内企業物価は6月に前年比+7.1%と3年3カ月ぶりの高い伸びに。さらに、輸入物価(円建て)も同+29.7%と前月から更に伸びが加速するなど、川上の物価上昇は歯止めがかかりません(図3)。円安・金利上昇要因でもあるインフレ懸念が深刻となるなか、日銀が利上げペースを早められるのかが目先の焦点です。(大畑)

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米国 地政学リスク再燃だが、決算本格化で業績相場へ移行か。物価も要注目

決算シーズン到来、業績主導相場へ移行か

先週のS&P500は上昇。イランによるホルムズ海峡を通行する商船への攻撃に端を発した米・イラン間の武力衝突と海峡の再封鎖宣言を受けて地政学リスクが再燃。市場は資源高・金利高・ドル高と、景気敏感株から半導体株へのセクターローテーション巻き戻しで反応しました。トランプ大統領は停戦の覚書は終わったとしつつ「攻撃は長くならない」と攻撃に深入りしない姿勢を見せる中で、海峡封鎖は長くは無いと見られるものの、改めて停戦の脆弱さを印象づける結果となりました。

ただし、今週以降は決算発表が本格化することで市場の目線は企業業績へと移動する見込み(図1)。火曜・水曜には主要金融機関の決算が公表され、企業やプライベートクレジットへの貸出に悪化の兆しが無いか注目です。

6月FOMCの議事録は委員間の意見相違鮮明

先週は6月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公開され、経済や雇用の先行きへ自信をのぞかせるも、物価見通しは上方リスクがあると示唆。特にAIブームを受けた物価圧力に言及しました。さらに一部委員が利上げに理解を示す一方で、その他の委員は据え置きを主張するなど、足元の政策金利水準に関する委員間の意見の隔たりは大きく、政策は今後の物価次第といえます。さらにガイダンスの簡素化に賛成する委員は一部に留まり、ここにも委員間の意見相違が見えました。

先週はウォーシュ議長が作業部会の主要人事を公表(図2)。大学教授や中央銀行総裁経験者、AIや小売業界首位企業関係者を含む力の入った布陣であり、バランスが取れた人選といえます。今週は半期議会証言も予定されており、新たな材料を待つ展開となる見込みです。

今週公表の物価指標は、上方圧力を示すか

今週は火曜日に6月消費者物価、水曜日に6月生産者物価が公表予定です。6月ISM製造業・サービス業景気指数では物価上昇圧力の低下が示唆された一方、米国内のガソリン価格も5月中旬には下落を始めていることから、a)生産者物価の上昇が鈍化しているのか、b)燃料価格上昇の影響がコア物価にも波及しているのか、に注目が集まります(図3)。足元市場では6月消費者物価(前年比)は総合が+3.8%(前月:同+4.2%)、コア(総合除く食品・エネルギー)が+2.9%(前月:同+2.9%)を予想しています。

その他、ベージュブック(地区連銀経済報告)や6月小売売上高も公表予定。物価高を受けた企業や個人の投資・消費意欲への影響も確認する形になるでしょう。(牧)

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欧州 ドイツ製造業に回復の兆し、ECBはインフレ警戒を維持へ

ドイツ製造業、底入れの兆候が徐々に鮮明に

7日に公表されたドイツの5月鉱工業生産は前月比+0.9%と、市場予想(同+0.2%)を上回り、2025年9月以来の大幅な伸びとなりました(図1)。主力産業である自動車生産が同+3.6%と大きく増加したことに加え、建設業やエネルギー部門の増産も全体を押し上げました。エネルギー価格上昇や中東情勢の混迷が続くなかでも生産活動は回復基調を維持し、製造業の底入れを示唆しました。

また、6日に公表されたドイツの5月製造業受注も同+1.9%と4月の減少から反発(図2)。とりわけ、航空機・船舶・鉄道車両・軍用車両を含むその他輸送機械が同+85%と急増したほか、機械設備や電気機器も堅調に推移しました。ユーロ圏外からの受注は同▲3.2%と弱含んだものの、ユーロ圏向け受注は同+11.2%、国内向け受注も同+1.3%と底堅さを維持しました。ドイツ政府によるインフラ投資や防衛支出拡大を背景に、今後の設備投資や製造業需要への期待も高まっています。3カ月平均では、製造・受注ともに力強さを欠く状況が続くものの、そろって改善したことで、ドイツ製造業は長期低迷から緩やかながら回復局面へ移行しつつあることがうかがえます。

ECB、エネルギー高によるインフレリスク への警戒解けず

欧州中央銀行(ECB)の6月政策理事会の議事要旨では、中東情勢に伴うエネルギー価格上昇がインフレに及ぼす影響への強い警戒感が改めて確認されました。原油価格は4月のピークから低下したものの、天然ガス価格は依然として高水準にあり、燃料や化学製品、食品などへの価格転嫁を通じてインフレ圧力が幅広い分野へ波及するリスクが指摘されました。一方で、景気見通しについては、中東情勢を巡る不透明感を背景に下振れリスクが意識されたものの、雇用環境や内需は比較的底堅く推移していると評価されました。そのため、インフレ率を中期的に2%へ戻すためには追加的な金融引き締めが必要との認識が理事会内で共有されたことが示されました。

もっとも、政策運営については今後の経済指標や物価動向次第とする姿勢も改めて強調されました。中東情勢の改善を背景に、市場では追加利上げ観測がやや後退していたものの、先週には米国・イラン間で再び攻撃の応酬がみられ、停戦合意の持続性への懸念が再燃したことで原油価格は再上昇(図3)。ECBは、依然エネルギー価格上昇の波及やインフレ期待の不安定化に対する警戒を解いておらず、今後もエネルギー価格や企業の価格転嫁動向、賃金動向を注視しながら、当面は引き締め的な政策スタンスを維持する可能性が高いとみられます。(吉永)

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タイ 4月に落ち込んだ景気は5月より緩やかな回復軌道に

5月には家計消費や民間投資が緩やかに回復

中東紛争ショック等から4月に落ち込んだタイの景気は5月に緩やかに回復。今後も燃料価格の低下、海外からの来訪者の回復、政府の家計消費支援策、域内のAI関連投資等にけん引されて回復が続くものの、その勢いは鈍いでしょう。6月末にかけて政府は5月の主要景気指標を公表。輸出が鈍化したものの海外からの来訪者数が伸び、民間消費や民間投資など内需が加速しました。

民間消費指数(PCI)は前月比+0.6%(4月▲1.9%)と4カ月ぶりのプラスの伸び。耐久財が同+3.1%(同+0.7%)へ加速(図1)。燃料価格が上昇する中で電気自動車(EV)の購入が伸びました。サービスも同+1.4%(同▲2.1%)と3カ月ぶりのプラス。来訪者の回復によります。非耐久財は同+0.7%(同▲5.9%)へ反発。中東紛争で3月に燃料の買いだめがあり4月にその反動減が生じたものの、5月に入り消費は正常化した模様です。民間投資指数(PII)は同+1.2%(同+0.2%)と好調でした。運輸機器が同+5.3%(同▲1.2%)へ急反発(図2)。業務用車両購入や船舶輸入が加速しました。設備投資は同+0.3%(同+0.8%)と8カ月連続の伸び。AIや電子関連の直接投資が伸びました。建設投資は同▲0.3%(同▲0.6%)と3カ月連続のマイナスでした。

今年のGDP成長率は+2.2%前後の見込み

輸出(金を除く)は同▲0.6%(同+1.3%)へ反落。ハードディスクドライブ(HDD)や通信機器が失速し、自動車も鈍化しました。海外からの来訪者数は同+7.5%( 同▲3.9%)、支出額は同+2.3%(同▲2.4%)へ反発。中東情勢の安定化と航空便の再開を受けて欧州からの長期滞在客が回復しました。輸出の落ち込みから生産も減速。製造業生産は同▲0.3%(同▲0.1%)と軟調でした(図3)。猛暑の欧州向け需要から空調など家電製品が加速した一方、輸出の低迷から自動車や電子製品が落ち込みました。

今後は国際燃料価格の低下などが海外からの来訪者数の回復を促す見込み。観光シーズンの年末年始には欧州からの長期滞在客が増え関連部門を支えるでしょう。また、燃料小売価格の低下は家計の購買力を高め、政府による家計消費支援策(6-9月、総額1,200億バーツ)も同消費を押し上げる見通し。もっとも、高水準の家計債務や家計向け融資の低迷などの重しが残るため、消費回復の勢いは鈍いとみられます。アジア域内でのAI関連投資ブームも関連部門の輸出と投資を押し上げる見込み。もっとも、関連部門のすそ野が狭いこと、同部門の輸入依存度が高く国内付加価値率が低いことから、景気押上げ効果は大きくないとみられます。今年のGDP 成長率は+2.2%(昨年+2.4%)となると予想されます。(入村)

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主要経済指標と政治スケジュール

※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定

注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。

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