ポイント
情報提供資料2026年6月22日
市場は年内の追加利上げを見込む
地政学リスク後退受け日経平均は大台突破
先週の株式市場は、米国とイランの和平覚書署名による地政学リスク後退を受け概ね堅調に推移。米国株は6月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのタカ派シフトを受けて一時下落する場面が見られた一方、日経平均はテック銘柄を中心に週を通じて上昇し7万円を突破しました。
ウォーシュ新議長の初陣は改革姿勢が鮮明
6月FOMCでは政策金利を据え置いたもののタカ派な見通しが示され、日銀および欧州中銀は利上げを決定するなど、各中銀はインフレ警戒感を強めています(上図)。しかし和平を受け物価圧力が軽減されれば柔軟に政策を調整する可能性もあり、政策不透明感は続くでしょう。
また、ウォーシュ新米連邦準備理事会(FRB)議長は主要金融政策に関する作業部会の設置公表や声明文量の大幅削減など、着任早々に改革姿勢を鮮明化しました。
中東和平協議と米FOMC後の高官発言に注目
今週は一進一退を続ける中東和平協議の進捗とFOMC後の米高官発言が焦点。経済指標では23日に購買担当者指数(PMI)が公表、スタグフレーション(物価上昇と景気悪化の同時進行)が意識されるのかに注目です。(牧)
今週の主要経済指標と政治スケジュール
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金融市場の動向
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日本 日銀は利上げを決定、日経平均株価は71,000円台を突破
中東リスク後退で日経平均株価は急騰
先週の国内株は力強い展開でした。米・イランが戦争終結に合意し地政学リスクが後退、AI関連でも特に電子部品株が上昇をけん引し、18日の日経平均株価は終値で71,000円を上回りました(図1)。また、日銀が政策金利を31年ぶりの水準に引き上げるなか、銀行セクター(東証33業種)は年初来高値を更新し1996年以来の水準を回復。その他にも原油価格下落を好感し、空運などこれまで出遅れていた業種にも見直し買いが広がりました。
日経平均株価は先週末比で5,000円超上昇、高値警戒感も意識されますが、企業利益の拡大に加え(図1)、原油輸入依存度が高い日本では、ホルムズ海峡の通行再開期待が好感されやすく、当面底堅い推移が見込まれます。
日銀は利上げとテーパリング停止を決定
日銀は6月15-16日の金融政策決定会合で、政策金利を1.0%に引き上げることを賛成7・反対1で決定(高市政権下で任命されリフレ派と目される浅田委員が反対)。また、国債買入れ減額計画の中間評価では、2026年度内の現行計画を維持する一方、2027年度以降の減額計画停止が決定されました(月間2兆円程度の買入れを継続)。
声明文では「基調的な物価上昇率が2%の物価安定目標を超えて上振れていくリスク」と明言している点はタカ派的も、植田総裁の代理として会見した内田副総裁は、追加利上げの決め手は「経済の大きな下振れリスクの後退」と言及。今後も利上げ路線を継続する意向を示したものの、先の利上げペースについては、あくまでも「経済物価情勢に応じて」行うスタンスを強調。物価上昇抑制のために追加利上げを急ぐ姿勢は示されず、ビハインド・ザ・カーブ懸念から債券市場では長期金利が上昇、為替市場では円安地合い解消には至っていません(図2)。
今後の利上げペースは経済・物価動向次第
また、内田氏は2027年度以降の国債買入れ減額停止に関して「国債市場の安定を考慮する場合、保有を日銀から他の投資家に移行するためにそれなりの準備期間が必要」と説明。日銀はタカ派姿勢をにじませつつも、バランスを重視した政策運営を志向している模様です。
5月の消費者物価は生鮮除く総合が前年比+1.4%と4月から横ばい(図3)、原油高の影響は未だ限定的ですが、価格転嫁の動きは今年の秋頃から本格化する見込みです。物価動向次第では日銀の追加利上げ時期前倒しも考えられます。今週は植田総裁(氷見野副総裁代読)や田村審議委員など日銀高官の挨拶にも注目です。(大畑)
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米国 6月FOMCはタカ派、新議長は改革姿勢強めで政策不透明感は強まるか
地政学リスク後退受け底堅く推移
先週のS&P500は上昇。米国とイランの和平覚書署名を受け地政学リスクへの警戒感が後退。一時タカ派な米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けて下落も、和平を受けた原油安が長期金利を下押したこと(図1)やアップル・インテルの業務連携を受け、史上最高値を更新した半導体株指数を中心に株式市場は堅調に推移しました 。
ウォーシュ新議長初陣は改革姿勢が鮮明
6月16ー17日のFOMCでは、3会合連続での政策金利(3.50-3.75%)の据え置きを全会一致で決定。声明文では、「物価安定を実現する」と言及し物価上昇圧力への警戒姿勢を明確にし、前会合で3票の反対票が入った利下げガイダンス記載を削除しました。さらに政策金利見通しでは、全体的にタカ派姿勢が鮮明に、特に年内では6名の委員が2回以上の利上げを見込む形となっています(図2)。
ウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長は、着任後初となる記者会見で、金融政策の5分野(コミュニケーション、バランスシート、データソース、生産性と雇用、インフレ枠組み)を検証する作業部会の設置を公表。年内めどに取りまとめるとしました。今後は作業部会を通じ、かねてより主張していたバランスシート縮小や物価指標改善等を政策に反映していく予定と見られます。さらに本会合では声明文が大幅に簡素化されたほか、同議長は経済・政策金利見通しについて見通しを提出しないなど、同議長の変革志向は鮮明となっています。
今後、資源安と物価圧力を睨みながら数会合は据え置きで様子を見る見込み。しかし、パウエル前議長の明確なコミュニケーションに慣れた金融市場にとっては、金融政策はより見通しづらくなったと言え、会合ごとに大きく市場が変動する可能性に注意が必要でしょう。
今週はFRB高官発言と業況指標に注目
今週は月曜日に予定されているウォラー理事などFRB高官の発言から、新議長の理事とのコミュニケーション方針や今後の政策見通しを見極める形となる見込み。
さらに、月曜日発表の購買担当者景気指数(PMI)や水曜日発表の耐久財受注を通じて、AIブームや資源高による物価上昇圧力の動向や、物価高の中で米国景気の屋台骨であるAI設備投資に悪化の兆しが見られないかを確認する形となるでしょう。高値警戒感が根強い半導体関連株にとっては、これらの指標を無難に通過することが上昇基調の維持に不可欠と考えられます。(牧)
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欧州 中東リスク後退で景況感底入れか、BOEは据え置きで様子見
ZEW期待指数は大幅改善、中東リスク後退でPMIは底打ちを示唆か
16日に公表されたドイツの6月ZEW景況感期待指数は10.5と前月(▲10.2)から大幅に改善し、市場予想(▲6.0)も上回ってプラス圏を回復しました(図1)。中東情勢が改善し、エネルギー価格の低下を通じてインフレ圧力が緩和するとの期待を背景に、先行きに対する楽観が強まっています。一方、現況指数は▲81.0と前月(▲77.8)から一段と悪化し、ドイツ経済の足元の弱さは依然として顕著です。公表元は、期待指数の改善は財政拡張や回復期待に支えられているとしつつ、回復は脆弱であり、貿易摩擦や地政学リスク、投資不足などの構造問題が引き続き下押し要因になると指摘。過度な先行き悲観は和らぎつつも、景気回復力を巡る脆弱さは残り、当面はその持続性を見極める展開は続きそうです。今週は、ユーロ圏や主要国の6月購買担当者景気指数(速報値)が公表予定。中東情勢の悪化が回避される中、景況感の底入れやインフレ圧力の強まりに歯止めがかかるかが注目されます。
BOEは政策金利を据え置き、様子見を継続
イングランド銀行(英国中銀、BOE)は18日、6月金融政策委員会(MPC)で政策金利を3.75%に据え置いたと公表。委員9名のうち7名が支持した一方、2名は即時利上げを主張し、前回会合より利上げ支持が1名増加しました。
議事要旨によると、多くの委員は足元の経済指標を踏まえ、中東紛争前に進展していたディスインフレに対する確信を強めている模様です。18日公表の英国の4月失業率は4.9%と小幅に低下したものの、高止まりが続いており、求人数も減少基調。また、4月の平均週給は前年比伸び率が概ね横ばいも、民間部門では伸び率の減速が確認され(図2)、総じて、労働需給は緩和方向にあります。さらに、5月の消費者物価は前年比+2.8%と市場予想を下回り、2ヵ月連続でBOEの4月見通しを下振れました(図3)。
先行きの政策判断を巡っては、エネルギーショックに伴う二次的影響が鍵になるとの見解で一致。インフレ期待が安定していれば、目標への回帰過程において一時的な上振れは許容可能とされ、現時点では追加利上げの緊急性は高くないとみられます。一方、インフレ上振れリスクへの警戒は残し、二次的影響の強まりが確認されれば、利上げする必要があるとしました。米・イランの停戦合意を受け、足元ではエネルギー価格が低下も、その影響が経済全体に波及するには時間を要し、BOEは当面、インフレ上振れリスクを警戒しつつ、政策金利を据え置き、慎重な見極め姿勢を堅持する見込みです。(吉永)
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中国 年初の加速を経て景気は急減速、景気支援策の再投入は不可避か
外需が堅調だが内需の冷え込みが深刻化
中国の景気が軟調です。景気は政府支出の前倒しなどに支えられて1₋3月に加速した後に4月に鈍化し、5月にさらに勢いを失いました。世界的なAI関連投資などを追い風に輸出と生産が堅調な一方で国内消費や投資などの内需が冷え込むなど、経済の二極化が鮮明に。1₋3月期の景気加速に安心し景気支援の手を緩めた当局は、この先再び内需刺激策を強化することを迫られるでしょう。先週16日、政府は5月の主要景気指標を公表。小売売上高の伸びが反落し(図1)、固定資産投資は下げ幅を広げた一方(図2)、輸出を追い風に生産は堅調でした(図3)。小売売上高(名目)は前年比▲0.6%(4月+0.2%)へ反落(図1)。マイナスの伸びはコロナ感染下の2022年12月以来です。
今後も輸出が拡大し輸出部門の生産が高い伸びを続ける一方、家計消費と企業の国内投資などの内需は低迷を続ける見込み。政府は4‐5月に鈍化したインフラ投資を再び加速させて景気の回復を促すと予想されます。世界的なAIデータセンター投資ブームが続く中で、半導体、高機能コンピューター、サーバー用マザーボード、ネットワーク機器、光学モジュールなどの需要が急増。今後もこうした製品の生産と輸出が高い伸びを続けるでしょう。世界的な燃料価格高騰の中でEVの需要も拡大しており、太陽光パネルや風力タービン等再生可能エネルギー関連の需要も根強い模様。加えて、多国籍企業が生産拠点の地域的な分散化を図る中で、工業用ロボット等の生産と輸出も拡大を続けるとみられます。
今年のGDP成長率は+4.6%前後へ鈍化か
家計消費は今後も勢いを欠く見込みです。軟調な雇用環境や住宅価格の低迷による逆資産効果も重し。耐久財買替支援策の規模は昨年より縮小しており、これまでの支援による需要先食いの反動も加わるとみられます。
不動産投資は今後もマイナスの伸びを続ける見込み。住宅取得要件の緩和などに伴って沿海部の大都市の住宅販売が回復しているものの、内陸部の過剰住宅在庫の解消には時間がかかりそうです。製造業投資は過剰設備部門や建設関連部門の低迷が続くものの、政府の高度化支援対象分野は堅調な伸びを続けるでしょう。インフラ投資は、4-5月の低迷を経て緩やかに回復する見込み。第15次5カ年計画の主要開発計画は多くのインフラ計画を含んでおり、初年度の今年は北京政府の支援の下で多くの投資が実行されるとみられます。1₋3月期に加速した景気は4-6月期より鈍化した後に景気支援策に支えられて10-12月期にかけて回復、今年通年のGDP成長率は+4.6%前後(昨年+5.0%)へ鈍化すると予想されます。(入村)
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主要経済指標と政治スケジュール
※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定
注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。
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