根強いインフレ懸念・堅調な米景気や労働市場を受け、米利上げ期待が急上昇

根強いインフレ懸念・堅調な米景気や労働市場を受け、米利上げ期待が急上昇

情報提供資料2026年6月8日

インフレ懸念強まる中でも堅調な米国景気

5月米雇用統計を受けハイテク株が大幅安

先週の株式市場は主要株価が一時最高値更新も、5日の米雇用統計を受け米金利が急騰し、ハイテク株を中心に大幅下落。為替市場では日銀の6月利上げ期待が一段と強まる中でも円安圧力は根強く、米ドル円が160円を突破。今週は再び円買い介入への警戒感が強まりそうです。

米国は、景気・雇用とも堅調

5月の米ISM景気指数は、製造業・サービス業ともに4月から上昇し市場予想を上回るなど、米景気は堅調です(上図)。原油高に起因するコスト増などにより、インフレ懸念が根強いなか、5月米雇用統計からも労働市場の好転が示され、利上げ転換への思惑が強まっています。

今週は米CPI、ECB理事会に注目

今週は10日に5月の米CPIが公表予定。4月と同様に高い伸びとなれば、利上げ期待の高まりから金利上昇、米ドル買いの動きが強まりそうです。また、11日のECB理事会では0.25%の利上げが決定される見通し。追加利上げの必要性をどの程度強く示唆するかが焦点です。(大畑)

今週の主要経済指標と政治スケジュール

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金融市場の動向

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日本 AI関連企業の利益は堅調、日経平均株価は68,000円を突破

国内株は最高値更新も、その後軟調

先週の国内株は不安定な値動きでした。3日の日経平均株価は終値で68,000円を突破し、TOPIXとともに最高値を更新。日銀の6月金融政策会合での利上げ観測の高まりから銀行株が上昇する場面も見られました。週末にかけては、米・イラン紛争を巡る不確実性の高まりや、AI関連株の過熱感が意識され、軟調に推移しました。

国内株式市場では、ソフトバンクGの時価総額が1日にトヨタを上回り国内首位となりました(図1)。3日には半導体メモリ大手のキオクシアHDの時価総額が一時トヨタを上回るなど、日本株の主役は自動車などの製造業から、AI・半導体関連産業へ移行しつつあります。

1-3月期の経常利益は製造業が好調

AI関連株は過熱感が懸念されるものの、利益面は堅調です。2026年1-3月期法人企業統計では全規模全産業の経常利益が前年比+14.6%、うち製造業が同+42.9%、非製造業が同+1.4%と製造業の堅調さが目立ちます。特に、情報通信機械が同+174%と大幅増益を記録し全体をけん引(図2)、AI・データセンター向けに半導体やメモリなどの需要増加が寄与しました。また、石油・石炭製品も同+709%となり、資源価格高騰前に調達した在庫を取り崩すことでマージンが拡大した可能性が考えられます。

企業利益は堅調の一方、設備投資は全産業で前年比+0.0%と伸び悩みました。AI関連や省人化投資等への投資意欲は旺盛も、中東情勢混乱による供給制約が投資の進捗を阻害した可能性もあり、8日の1-3月期実質GDP2次速報の設備投資は、前期比▲0.7%と1次速報から下方修正されました。物価高で消費に不安を残すなか、設備投資が持ち直せるかが内需安定の鍵を握るでしょう。

植田総裁は「利上げの是非を議論」と言及

注目された3日の植田日銀総裁の講演は、「物価の上振れリスクが高まれば、利上げの是非に関する議論が必要」とし、昨年12月の事実上の利上げ予告を想起させる内容でした。来週6月会合での利上げが規定路線とは言えないものの、前向きな姿勢が改めて示されました。

また、植田総裁は①AI関連需要の拡大、②高水準の企業収益、③政府による石油備蓄放出・代替調達の進展などを受け、中東情勢に起因した経済下振れリスクは後退しているとの認識を示唆。4月の実質賃金も前年比+1.9%とプラス幅を拡大するなか(図3)、15‐16日会合までの約1週間の間に中東情勢が一段と悪化しない限り、同会合での追加利上げの可能性が高いとみます。(大畑)

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米国 FOMC前の経済指標ウィーク、雇用指標堅調で半導体株は一時調整

堅調な雇用統計を受けて、金利高・株安に

先週のS&P500は下落。レバノンのイスラム武装組織とイスラエル間の対立激化や米国とイスラエル・イラン間の攻撃に伴い和平期待が後退。一方、半導体企業ブロードコム決算(売上高見通しの予想比下振れ)を契機としたAI関連銘柄の下落に、堅調な雇用統計による金利高が直撃。半導体株を中心に幅広く下落しました。

今週12日にはイーロン・マスク氏創業のスペースXが新規株式公開(IPO)予定。宇宙事業や衛星通信インフラであるStarlinkを中心とした利益創出期待は強く、同日の株価は堅調となる可能性も。購入資金捻出やナスダック指数組入に伴うリバランス売りによる短期的な市場下押し圧力は意識されるものの、大型IPO成功は投資家のリスク選好につながり、市場の追い風となる見込みです。

経済や雇用底堅く、利下げの誘因とならず

先週は主要な経済・雇用関連指標が公表されました。4月ISM製造業・サービス業景気指数は景気拡大圏で改善した他、4月雇用動態調査(JOLTS)の求人数や5月雇用統計の非農業部門雇用者数は市場予想以上に増加。失業率も+4.3%と横ばいでした(図2)。採用は減少しており、求人増加が一部業種に偏るなどやや不安定さは残すものの、米国労働市場は総じて底堅さを維持しています。

6月16-17日開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)での判断材料となる地区連銀経済調査(ベージュブック)でも多くの地区が経済活動の拡大と雇用の安定を示唆。一方で、物価は前回調査から加速していると回答しました。資源高の波及効果や生活費高に伴う賃上げにも言及しており、粘着的な物価高も意識され始めています。

物価指標は一時的に下振れの可能性も

かかる中、今週は10日に消費者物価指数(CPI)、11日に生産者物価指数(PPI)が公表予定。総合は長引く資源高に伴うエネルギー価格上昇がけん引し目線は上向き。さらに足元では、AIブームと資源高という需要・供給両面からの物価上昇圧力が意識され、コア財(エネルギー・食品除く財)の上昇幅・上昇項目にも注目が集まります。

ただし、前回4月に見られた2025年10月の政府機関閉鎖に伴う計算上の家賃価格押し上げ要因の剥落(図3) が前月比での短期的な下押し圧力となる見込み。トランプ関税効果の剥落や、労働需給のゆるみに伴う人件費低下も視野に入るなか、足元の市場では、前月比は前月から低下、前年比は上昇が見込まれています。(牧)

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欧州 インフレの広がりが消費を圧迫、ECBは利上げへ

インフレ懸念強く、ECBは利上げへ

2日に公表されたユーロ圏の5月消費者物価(速報値)は、前年比+3.2%と前月(同+3.0%)から伸びが加速しました(図1)。エネルギー価格が同+10.9%と高い伸びを維持し、引き続きインフレ加速を主導。また、サービス価格も同+3.5%へ上昇しており、エネルギー高の影響がサービス分野へ波及しつつある状況がうかがえます。さらに、非エネルギー工業製品も小幅に上昇し、物価上昇圧力の広がりを改めて意識させる結果となりました。

また、1日に公表された欧州中央銀行(ECB)の4月消費者期待調査からも、インフレ懸念の強さがうかがえます(図2)。1年先の期待インフレ率(中央値)は前年比+4.0%と前月から横ばいとなり、高水準を維持しました。3年先の期待インフレ率は同+2.9%と小幅低下も、依然として高止まりしています。こうした状況の下、一部のタカ派的なECB当局者は、2022年の高インフレ局面の記憶が新しい中、エネルギー価格上昇の二次的影響が当時よりも早いペースで経済全体に波及する可能性を強く警戒。加えて、4月政策理事会の議事要旨からは、エネルギー供給の正常化の遅れがエネルギー価格の高止まりを通じてインフレ期待を押し上げ、二次的な物価上昇圧力を強める可能性への懸念が高まっていることも確認されています。

このため、ECB内では早期の利上げを通じてインフレ期待の上振れを抑制すべきとの認識が強まっている可能性が高いとみられ、今週開催予定の6月政策理事会では、0.25%ptの利上げが確実視されています。今後の焦点は、7月会合での追加利上げの有無や利上げ到達点に移ると考えられます。中東情勢を巡る不透明感が根強い中、ECBは引き続きインフレ期待の抑制を重視する姿勢を維持すると予想され、記者会見で示されるラガルド総裁の見解に加え、最新のスタッフ経済見通しが、今後の金融政策の方向性を占う上で重要な材料として注目されます。

ユーロ圏消費は弱含み、エネルギー高が圧迫

4日に公表されたユーロ圏の4月実質小売売上高は前月比▲0.4%と2カ月ぶりに減少し(図3)、足元の個人消費の鈍化を示す内容となりました。食品・飲料・たばこは同+0.9%と増加も、非食品(除く自動車燃料)は同▲0.9%、自動車燃料も同▲2.7%と減少。耐久財やエネルギー関連支出の弱さが全体を押し下げ、とりわけ燃料販売の減少は価格高騰による需要抑制の影響を反映しているとみられます。消費者のインフレ期待は依然として高止まりし、5月消費者信頼感指数は引き続き低調に推移。購買力の低下やマインドの冷え込みを背景に、個人消費への下押し圧力は当面続く可能性が高いと考えられます。(吉永)

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インドネシア 歯止めのかからぬルピア安を受けて大幅利上げを実施

止まらない資本流出と低迷するルピア

自国通貨ルピアの下落に見舞われるインドネシア。当局は市場予想を上回る利上げを行って相場の安定化を図る構えです。もっとも通貨の低迷は複数の要因によるもの。今後も相場の低迷が続く見込みです。

先月20日、インドネシア銀行(BI)は政策金利を4.75%から5.25%へ引き上げ(図1)。Bloomberg集計では金融機関41社中25社が5.0%への利上げを予想するなか、市場予想を上回る利上げ幅でした。BIは金融調節オペ金利も引き上げ。12 カ月物中銀手形(SRBI) 利回りは6 月5 日時点で7.250% と政策金利を2%pt 超過。今年1 月半ばより2.564%pt上昇しました。BIの政策声明は、今回の利上げは中東紛争による混乱の中でルピア相場の安定化をさらに強めるための措置であると説明。また、今年と来年の物価を目標の範囲内に収めるための予防的な措置でもあるとしました。ルピアは今年初より先週5日にかけ対米ドルで7.4%下落(図2)。(a)中東紛争発生後の米ドルと米金利の変動が両者への感応度の高いルピアを下押しし、(b)4-6月期に対外配当支払いの集中により経常収支が悪化し、(c)資本収支が悪化したこと等によります。資本収支の悪化は、(1)株式と(2)国債市場からの資本流出、(3)直接投資の低迷、(4)居住者による資本逃避などが背景です。

政策予見性やガバナンスの質の低下懸念も

(1)外国人による株式買越額は今年初来6月4日までに▲34億ドルと近隣諸国に劣後(図3)。主要な新興国株式指数MSCI新興国の算出元は、情報開示の不透明さ等を理由に指数の見直し(状況次第ではフロンティア指数への格下げ)に着手しています。(2)外国人による債券買越額も今年初より6月2日にかけて▲7億ドルとタイの+15億ドルに劣後。財政悪化の懸念等が重しです。同国は一次産品の純輸出国であるものの、国際燃料価格の上昇は政府が負担する燃料補助金を拡大させます。(3)直接投資の低迷は、現政権の下で政策の予見性やガバナンスの質が低下したとの懸念によるもの。昨年9月に海外投資家の信頼が厚いスリ・ムルヤニ財務相が辞任し、今年2月にプラボウォ大統領の甥が中央銀行副総裁に就任したことなどが背景です。なお、政府はルピアの安定化に向けて、一次産品(パーム原油、石炭、フェロニッケル等)の輸出を政府系機関に集中することを検討中。海外企業の間には採掘権や所有権が侵害されるとの懸念も高まっており、直接投資がいっそう低迷するリスクがあります。

落ち着いた物価の下でBIは当面金利を据え置く見込み。もっとも、今後もルピア安が加速すれば追加利上げを行うことをためらわないとみられます。(入村)

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主要経済指標と政治スケジュール

※塗りつぶし部分は今週、(*)は未定

注)(日)日本、(米)米国、(欧)ユーロ圏・EU、(独)ドイツ、(仏)フランス、(伊)イタリア、 (英)英国、(豪)オーストラリア、(加)カナダ、(中)中国、(印)インド、(伯)ブラジル、(露)ロシア、(他)その他、を指します。NAはデータなし。日程および内容は変更される可能性があります。

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