相場操縦はなぜ問題?事例を含めて弁護士が解説

相場操縦はなぜ問題?事例を含めて弁護士が解説

株式などの市場価格を意図的に操作する「相場操縦」は、金融商品取引法によって禁止されている違法行為です。相場操縦行為をした者は、被害者に対する損害賠償や課徴金納付命令、刑事罰の対象となります。

投資家としては、相場操縦行為に巻き込まれて大きな損失を出さないように注意しなければなりません。リスク許容度を適切に設定して分散投資を行うなどの自衛策に努めてください。

本記事では相場操縦行為について、禁止されている理由やよくあるパターン、投資家がとるべき自衛策などを解説します。

相場操縦行為とは?何が問題?

相場操縦とは、有価証券や暗号資産等の市場において、相場を人為的に変動させるなどして、公正な価格形成を阻害する行為です。有価証券および暗号資産に関する相場操縦等は、金融商品取引法の規定によって禁止されています。本記事では、主に上場株式に関する相場操縦を取り上げます。

相場操縦行為をした者は、その行為によって生じた他人の損害を賠償する責任を負うほか、課徴金納付命令や刑事罰の対象にもなります。

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【事例解説】相場操縦行為のよくあるパターン

相場操縦行為の代表的なパターンとしては、次の例が挙げられます。

  1. 見せ玉
  2. 仮装売買
  3. 馴合売買
  4. 終値関与
  5. 買い上がり・売り崩し

見せ玉|約定させるつもりがない大量の注文を繰り返す

(例1)
AはP社株式を1株当たり120円で購入した後、114~119円の範囲に指値で大量の買付注文を行った。
その後、株価が上昇して125円となったところで、Aは120円で買ったP社株式を売り抜け、大量の買付注文を取り消した。

「見せ玉」とは、実際には約定させるつもりがない大量の注文を行って、特定の銘柄の取引が盛んに行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘引しようとする行為です。

例1では、Aが買い指値を大量に入れたことにより、他の投資家が「買いが強くなっている」と誤解した結果、P社の株価が上昇したことが窺われます。それを利用して、Aは120円で買ったP社株式を125円で売り抜けて利益を得ました。
これらの状況を総合的に考慮すると、Aの行為は「見せ玉」に当たる可能性が高いと考えられます。

仮装売買|自分同士の売買などによって出来高を水増しする

(例2)
BはX証券の口座にて、Q社株式を1株当たり110円で買った。
その後Bは、X証券の口座で保有しているQ社株式の売付注文を発注し、同時期にY証券の口座でQ社株式の買付注文を発注し、ともに約定した。
Bの注文の約定によって出来高が急増したことが影響し、Q社の株価が上昇して115円となったところで、BはY証券の口座にあるQ社株式を売り抜けた。

「仮装売買」とは、株式などの権利を移転するつもりがないのに、同一人物が売買両方の注文を発注するなどして、特定の銘柄の出来高を意図的に水増しし、他の投資家の取引を誘引しようとする行為です。

例2では、Bは別々の証券口座から売買両方の注文を発注し、事実上「自分対自分」の取引を成立させることによってQ社株式の出来高を急増させています。このようなBの行為は「仮装売買」に当たる可能性が高いと考えられます。

馴合売買|知り合い同士の売買によって出来高を水増しする

(例3)
CはR社株式を保有していたところ、親族であるDと通謀して、R社株式の出来高を急増させるためにCD間で売買を行うことにした。
CはR社株式の売付注文を発注し、Dはそれと同時期に同数量のR社株式の買付注文を発注し、ともに約定した。
C・Dの注文の約定によって出来高が急増したことが影響し、R社の株価が上昇したところで、DはR社株式を売り抜けた。

「馴合売買」とは、知り合い同士が取引を行って特定の銘柄の出来高を意図的に水増しし、他の投資家の取引を誘引しようとする行為です。

例3では、親族同士のC・Dが通謀して売付注文と買付注文を行うことにより、R社株式の出来高を急増させています。
最終的にDが利益を得ましたが、C・Dは親族同士なので、裏で話し合ってCにもキックバックを行うといったことも可能でしょう。これらの一連の行為は「馴合売買」に当たる可能性が高いと考えられます。

終値関与|取引終了間近の発注によって価格を上下させる

(例4)
EはS社株式を保有しているところ、その終値を高くすることを目的として、大引けの5分前に現在の株価(160円)よりも高い161円で買付注文を発して約定した。その後S社株式の取引は行われなかったため、E単独の約定によってS社株式の終値は161円となった。
Eは、上記と同様の行為を複数回にわたり頻繁に繰り返した。

「終値関与」とは、まもなく取引時間が終了する段階で、特定の銘柄の終値を高くするために買付をし、または安くするために売付をする行為です。

例4では、Eが買付を行わなければS社の株価は160円だったところ、Eの買付によって161円に上昇しました。
取引の回数だけで、直ちに適法・違法が決まるわけではありませんが、例4では、終値を高くする目的があり、同様の行為を頻繁に繰り返していることなどから、終値を人為的に操作しようとしたと判断される可能性があります。

買い上がり・売り崩し|大量の購入や売却によって価格を上下させる

(例5)
FはT社株式を大量に保有しているところ、株価を吊り上げる目的で成行の買付注文を行い、すべて約定した。
Fの買付により、T社の株価は180円から200円まで急騰した。株価の上昇と出来高の急増に気づいた多くの他の投資家がT社株式の買付を行った結果、T社の株価がさらに250円まで上昇したところで、Fは保有しているT社株式を売り抜けた。

特定の銘柄の価格を意図的に高騰させる目的で買付を行うことを「買い上がり」、逆に意図的に下落させる目的で売付を行うことを「売り崩し」といいます。

例5では、Fが成行注文によってT社の株価と出来高を上昇させ、それが呼び水となってさらなる株価の高騰に繋がりました。このようなFの行為は「買い上がり」に当たる可能性が高いと考えられます。

例5とは反対に、他の投資家の取引を誘引する目的で、一連の売付けなどにより相場を人為的に下落させ、その後に安値で買い戻す行為は、『売り崩し』として相場操縦に該当する可能性があります。

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相場操縦行為に巻き込まれて大きな損失を出さないための対策

相場操縦行為が行われていることを見抜くのは、十分な知識や経験を備えている人でもかなり大変です。投資経験が乏しい人であればなおさら、相場操縦行為を見抜くのは難しいでしょう。

それでも次のような対策を徹底すれば、相場操縦行為に巻き込まれて大きな損失を出してしまうリスクを抑えることができます。

  1. 許容できるリスクの大きさを決める
  2. 分散投資をする
  3. SNSの「煽り」に飛びつかない
  4. 時価総額が小さく、流動性の低い銘柄への投資は避ける

許容できるリスクの大きさを決める

投資をする際には「どの程度の損失なら受け入れられるか」を決めておくことが重要です。

生活費や緊急時の資金まで投資に回すと、相場操縦などによる急落に巻き込まれた場合に大きな影響を被ってしまいます。余裕資金の範囲で投資を行い、無理のない資金管理を心がけましょう。

分散投資をする

一つの銘柄に資金を集中させると、その株価が相場操縦などによって急落した場合に大きな損失を被るおそれがあります。複数の銘柄に資金を分散すれば、特定の銘柄の値動きによる影響を抑えることができます。

SNSの「煽り」に飛びつかない

SNS上では、「必ず上がる」「今が買い時」などと特定の銘柄の購入を勧める投稿や、「すぐに売らなければ逃げ遅れる」などと売却を促す投稿がしばしば見られます。

このような投稿については、投稿者が自ら利益を得る目的で、相場操縦的な取引を行っている可能性もあるため注意が必要です。株価が急激に動いても、SNSの情報だけを鵜呑みにせず、冷静に状況を見極めてください。

時価総額が小さく、流動性の低い銘柄への投資のリスクを理解する

時価総額が小さく出来高の少ない銘柄は、少額の資金でも株価が大きく変動しやすいため、相場操縦行為のターゲットにされがちです。
投資経験が浅いうちは、時価総額が大きく流動性の高い銘柄を中心に購入を検討するとよいでしょう。

阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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