ポイント
変動金利住宅ローンを借りている方は、金利上昇局面での借り換え判断のポイントを整理しておくと良いでしょう。
この記事では、環境変化、変動金利の仕組み、借り換えの目安、注意点、家計防衛策までを解説します。
- 個人向け住宅ローンの新規貸出額における金利タイプ別割合では、変動金利型が83.5%と最も高くなっています。*1
- 変動金利は短期プライムレートに連動し、5年ルールや125%ルールは短期的な緩和にとどまります。
- 借り換えの目安は金利差0.5%以上、残高1,000万円以上、残期間10年以上とされています。
- 諸費用や繰り上げ返済との比較、金融機関への相談を通じた慎重な判断が求められます。
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変動金利住宅ローンを取り巻く環境変化
新規貸出額の83.5%を変動金利型が占める現状
変動金利住宅ローンは、日本の住宅ローン市場で最も選ばれている商品タイプです。
国土交通省の民間金融機関向け調査では、個人向け住宅ローンの新規貸出額における変動金利型が83.5%と最も高く、前年度からは0.8ポイント低下しました。一方、住宅価格の上昇などを背景に、35年超の住宅ローンやペアローンの利用は増加しています。*2
証券化ローン(フラット35等)は4.9%、固定金利期間選択型は9.5%で、いずれも前年度から増加しています。*1
変動金利型が多くを占めつつも、新規貸出額ベースでは、固定金利期間選択型と証券化ローンの構成比が前年度より上昇しています。
マイナス金利解除と政策金利引き上げの流れ
政策金利の水準は、住宅ローン金利の方向を左右する重要な指標です。
国土交通省によると、日本銀行のマイナス金利政策の解除以降、政策金利の引き上げを背景に住宅ローン金利が上昇傾向にあります。*2
日本銀行は、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%程度で推移するよう促していましたが、2025年12月の会合では同レートを0.75%程度で推移するよう促すことを決定しています。*3
また、2026年6月16日に、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を0.75%程度から1.0%程度へ引き上げ、同年7月31日の会合では1.0%程度に据え置きました。*4,*5
長く続いた低金利局面から、金利が動く局面へと環境が変わっていることが分かります。変動金利で借りている方は、この流れを前提に将来の返済負担を見直す必要がある可能性があります。
住宅ローン金利上昇の背景
金利上昇は金融政策の転換と家計の負債構造の両面から説明できます。
日本銀行は、家計のバランスシートの負債側の大部分が住宅ローンで、GDPの4割程度に相当すると指摘しました。日本の住宅ローンは変動金利型が大部分を占めているため、金利が上昇すると名目の利払い額は増加します。*6
こうした住宅ローンの利用実態と環境変化の中では、住宅ローン返済が将来の家計の負担になり得ることから、あらかじめ消費者が金利リスク等について適切に理解しておくことが一層重要です。*2
政策金利の引き上げは、変動金利で借りる家計の利払いを押し上げる方向に働きます。自分の返済がこの構造の中に置かれていることを認識したうえで、対策を検討することが求められます。
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変動金利の仕組みと金利上昇時のリスク
短期プライムレートと政策金利の関係
変動金利住宅ローンの金利は、どの指標に関係しているかを知ることで動きが読みやすくなります。
住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートなどを参考に各金融機関が決定するのが一般的です。短期プライムレートは、金融機関が信用力の高い企業向けの短期貸出に適用する最優遇金利で、政策金利や市場金利などを踏まえて各金融機関が決定します。日銀が利上げを実施し、政策金利が引き上げられているため、変動金利型の住宅ローン金利も上昇傾向にあります。*7
つまり、政策金利の変更は短期プライムレートを通じて変動金利型の適用金利に伝わります。日銀の政策金利の動きを、自分のローンの将来金利を占う目安として押さえておくとよいでしょう。
5年ルール・125%ルールの実際
変動金利型には返済負担の急変を和らげる仕組みが設けられています。
日本銀行は、家計の金利耐性について、近年、年収に対する年間返済額比率(DSR)の高い若年世代において住宅ローン保有世帯が増えていると指摘しました。*8
一部の変動金利型住宅ローンでは、元利均等返済の場合に5年ルール(適用金利が変わっても、毎月の返済額を原則として5年間変更しない仕組み)や125%ルール(返済額の見直し時に、新しい返済額を直前の返済額の125%以内とする仕組み)が採用されています。ただし、5年ルールや125%ルールの有無・内容は金融機関や返済方式によって異なります。自身の契約に適用されるかどうかは、契約書や金融機関への確認が必要です。
これらの仕組みがあっても金利上昇時には利息負担が増え、元金の減りが遅くなる点に注意が必要です。*9
5年ルールと125%ルールは、あくまで一時的に返済額の変化を緩やかにする仕組みです。金利上昇局面では、見えにくい形で利息の割合が増え、元金が予定通りに減らないという事態が起こり得ます。
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借り換え判断の基準とタイミング
金利差・残高・残期間の3つの目安
借り換えを検討する際の一般的な参考条件として、金利差0.5%以上、残高1,000万円以上、残期間10年以上が挙げられることがあります。ただし、これらは借り換えメリットを保証する基準ではなく、諸費用、返済方式、団体信用生命保険、住宅ローン控除などを含めた個別試算が必要です。*9
3つの目安は、金利差の大きさ、残高の大きさ、返済期間の長さという観点から、借り換え効果が費用を上回りやすい条件を示すものです。自身のローンの残高証明や返済予定表を手元に用意し、これらの数値をそれぞれ確認したうえで、借り換え判断のスタートラインに立つことが有効です。
金利上昇を見込む利用者が増えている背景
借り換えの方向性は、利用者の金利観と密接に関係します。
住宅金融支援機構が2025年4月から2025年9月までに住宅ローンを利用した人を対象に実施した調査では、回答者の73.7%が、今後1年間で住宅ローン金利は現状よりも上昇すると見ており、その割合は前回調査から8.0ポイント増加しています。*10
金利上昇を見込む利用者が多数派になる中で、返済額の見通しを安定させたい層にとって固定金利は選択肢の一つになります。自身の金利観と生活設計を照らし合わせ、変動を維持するか固定へ切り替えるかを検討する余地があります。
諸費用と総支払額の比較検討
借り換えの判断では、金利差だけでなく手続き上の費用を含めた総額比較が欠かせません。
フラット35借り換え融資では、借り換えに伴う諸費用として、印紙税、融資手数料、抵当権の設定および抹消に関する登録免許税・司法書士報酬、適合証明検査費用、借り換え前ローンを完済する際の繰り上げ返済手数料および経過利息、火災保険料・地震保険料などが発生する場合があります。*11
借り換えでは金利差による軽減額と、諸費用の合計を比較する必要があります。月々の返済額の減少だけではなく、完済までの総支払額と諸費用を含めた数値で判断することが求められます。
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借り換えのメリット・デメリットと注意点
固定金利への借り換えで得られる安心感
固定金利への借り換えには、家計の見通しを安定させる意味合いがあります。
変動金利型から全期間固定金利型に借り換える主なメリットは、借り換え時点で完済までの適用金利と返済額を確定できることです。固定金利期間選択型の場合は、固定期間終了後に適用金利や返済額が変わる可能性があります。これにより、市場金利が上昇しても月々の返済額が変わらず、長期的な家計の見通しが立てやすくなります。*9
変動金利型から固定金利型に借り換えることで、借り換え後の金利上昇による返済額増加リスクを抑えられる可能性があります。固定金利の水準まで金利上昇が続くと考える場合に有効です。*7
固定金利への切り替えは、将来の返済額を確定させることで家計計画を立てやすくします。
借り換えで見落としがちなリスク
借り換えには利点だけでなく、注意すべき点も伴います。
変動金利型から固定金利型への借り換えでは、現在よりも適用金利が上がる可能性が高いうえに、借り換え時には手数料がかかります。*7
住宅金融支援機構の調査によると、借入当時は金利上昇への懸念が薄く、約3割が収入や貯蓄で対応可能と判断し、残りは将来の金利変動について深く考えていなかったことが明らかになっています。しかし現在では、約5割が当初と比べて金利変動リスクに対する不安を強めています。*12
借り換え直後の金利負担と諸費用の負担は、想定した効果を打ち消す可能性があります。金利上昇への不安の高まりと、切り替えに伴う実費とを比較することが必要です。
繰り上げ返済という選択肢との比較
借り換え以外にも、返済戦略として繰り上げ返済があります。
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に住宅ローン残高(元金)の一部を任意のタイミングで返済することです。住宅ローンの利息は、元金に適用金利を乗じて計算されます。そのため、繰り上げ返済で元金を減らせば、金利上昇の影響を抑えることが可能です。*7
ただし、繰り上げ返済により手元資金が減るほか、住宅ローン控除額が減少する場合や手数料が発生する場合があります。生活予備資金を確保したうえで判断する必要があります。
繰り上げ返済は元金そのものを減らすため、金利上昇時の利払い増加を抑える効果があります。手元資金の余裕と借り換え費用を見比べたうえで、どちらが自分に適した方法かを検討することができます。
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借り換え以外の家計防衛策と相談先
返済額増加時の実態調査から見える対応
金利上昇時の家計の対応は、調査から具体的な傾向が読み取れます。
住宅金融支援機構の調査によると、返済額が3万円増加した場合、主な回答では、返済余力があって継続する見通しの人が24.2%、繰り上げ返済または借り換えを検討する人が44.1%、対応の見当がつかない人が27.2%となっています。*9
また、金利上昇局面での借り換え意向についての調査では、現在のローンを継続する考えが約3割、より低金利の変動金利への借り換えを検討する人が約4割、金利水準によって固定金利への借り換えを検討する人・既に固定金利への借り換えを検討している人がいることもわかっています。*12
自身の家計余力と将来の金利見通しを踏まえ、どの対応が最も現実的かを整理する必要があります。
金融機関・専門家への相談活用
返済戦略の検討にあたっては、専門的な相談先の活用が有効です。
住宅金融支援機構の調査では、金利が上昇した場合の対応に関する相談先として、約4割が住宅ローンを借りている金融機関と回答しています。*12
借入先の金融機関は、契約内容や残高、返済予定を把握している立場です。自身のローンの現状を整理したうえで、まずは借入先へ相談し、必要に応じて他の金融機関の条件と比較する流れを取ることができます。
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おわりに
変動金利住宅ローンを取り巻く環境は、マイナス金利の解除と政策金利の1.0%への引き上げを経て、住宅ローン金利が上昇傾向にあります。日本の住宅ローンの多くを変動金利型が占める中、5年ルールや125%ルールは短期的な緩和にとどまり、利息負担と元金の減り方には注意が必要です。
借り換えを検討する際は、金利差0.5%以上、残高1,000万円以上、残期間10年以上という目安に加え、諸費用と総支払額、繰り上げ返済との比較を行うことがポイントです。家計への影響が気になる場合は、借入先の金融機関などへ早めに相談し、自身の状況に合った対応を選ぶことが求められます。
*1 出所)国土交通省「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年3月)」
*2 出所)国土交通省「住宅ローンの金利リスクの普及啓発について」
*3 出所)日本銀行「金融市場調節方針の変更について (2025年12月19日)」
*4 出所)日本銀行「金融市場調節方針の変更について (2026年6月16日)」
*5 出所)日本銀行「当面の金融政策運営について(2026年7月31日)」
*6 出所)日本銀行「わが国の経済・物価情勢と金融政策」
*7 出所)Money Canvas「 金利が1%上がると住宅ローンはどれくらい変わる?生活防衛策は?」
*8 出所)日本銀行「金融システムレポート(2024年10月号)」
*9 出所)Money Canvas「住宅ローンの固定金利への借り換えとは?メリット・デメリットを解説」
*10 出所)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2026年1月)」
*11 出所)フラット35「-よくある質問-借換えの場合、融資手数料などの諸費用を借入額に含めることができますか。」
*12 出所)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査-住宅ローン利用者(2024年度以前借入者)調査(2025年10月調査)」










