個人向け国債の金利は上昇基調が続いています。財務省の資料では、令和7年度に3商品すべての金利が過去最高を更新したとされています。*1
この記事では、預金や投資信託との違いを整理し、資産の組み合わせを検討する際の視点をお伝えします。ポイントは次のとおりです。
- 個人向け国債は国が発行し、最低金利0.05%が保証されています。
- 預金は預金保険制度で1金融機関あたり元本1,000万円と利息までが保護対象です。
- 投資信託は元本割れの可能性がある一方、値上がり益や分配金が期待できます。
- 短期資金は預金、中長期の安全資金は個人向け国債、成長期待の資金は投資信託と役割で使い分けることを検討します。
個人向け国債金利の上昇背景
金利上昇のきっかけと金融政策
個人向け国債の金利が上向いた背景には、日本銀行による金融政策の転換があります。
2024年3月19日に日銀はマイナス金利政策の解除と、長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の撤廃を発表しました。この方針変更により、市場金利や預金金利が上昇する一因になったと考えられます。当時、定期預金についても、三菱UFJ銀行は同日、年0.002%〜年0.2%だった金利を年0.025%〜年0.3%へ引き上げると発表しました。
金融政策の転換は、長らく低位で推移していた市場金利の水準を切り上げるきっかけとなりました。市場金利を基準として利率が決まる個人向け国債は、こうした環境変化の影響を直接受ける商品です。金利がどの指標に連動して動いているかを押さえておくと、今後の商品選びの判断がしやすくなります。
過去最高水準となった発行金利の実態
市場金利の上昇を受け、個人向け国債の発行金利も切り上がっています。
金利の動きなどの影響を受け、発行総額は前年度比で1.7兆円増の6兆1,526億円となり、平成18年度以来の大きさとなりました。1足元の発行条件も高水準です。令和8年5月募集分では、変動10年第194回債の初回利子適用利率が年1.67%、固定5年第182回債が年1.89%、固定3年第192回債が年1.57%と定められました。2令和8年8月募集分では、変動10年第197回の初回適用利率が年1.87%、固定5年第185回が年2.06%、固定3年第195回が年1.71%となりました。*3, *4
発行金利は回ごとに動いています。募集時期ごとの利率を確認したうえで購入判断を行うことがポイントの一つです。
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個人向け国債の基本と3タイプの特徴
変動10年・固定5年・固定3年の違い
個人向け国債には3つのタイプがあり、金利の決まり方と満期までの期間が異なります。
個人向け国債は国が発行し、1万円から購入できる個人のみを対象とした国債で、半年ごとに適用利率が変わる変動10年、発行時に設定された利率が満期まで変わらない固定5年と固定3年の3タイプがあります。*5
変動10年の適用利率は、毎月行われる10年固定利付国債の入札における平均落札価格を基に計算される複利利回りを基準金利とし、半年ごとに基準金利×0.66で適用利率が決まります。固定5年は『基準金利-0.05%』、固定3年は『基準金利-0.03%』で利率が決まり、いずれも最低金利は年0.05%です。*5,*6
金利の見通しやそれぞれの仕組み、満期、中途換金の条件などを確認したうえで比較することが大切です。
共通する6つの商品特長
3タイプに共通する商品性を確認します。
個人向け国債の主な特徴として、国が発行し、満期時の償還金額および中途換金時の買取金額は額面金額100円につき100円であること、1万円から購入可能であること、発行後1年経過後は原則として1万円単位で中途換金できること、(中途換金時には所定の中途換金調整額が差し引かれます)毎月発行されること、最低金利は年率0.05%であることが挙げられます。
中途換金の特例:災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害等により被害を受けられた場合、又は保有者 本人が亡くなられた場合には、上記の期間にかかわらず中途換金できます。ライフプランに合わせて3つの商品から選べます。*6
少額から積み上げやすく、満期時には、発行者である国から額面金額で償還される仕組みです。まとまった資金がない段階でも購入を始めやすく、家計の資産形成に組み込みやすい商品性といえます。
金利設定方法と最低金利保証
金利の決まり方に加え、下限が設けられている点も個人向け国債の特徴です。基準金利は市場実勢を反映するため、金利環境が動けば、次回発行の利率もその影響を受けます。
そのうえで最低金利は年率0.05%と定められています。*6,*7
基準金利が大きく低下した局面でも、この下限を下回らない仕組みです。
変動10年は金利上昇局面では適用利率が上がる可能性がある一方、最低金利が設けられているため、制度上は年率0.05%を下回らない仕組みです。金利がどの方向に動くかを予測しにくい場面でも、下値への備えがある商品として位置づけられます。
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個人向け国債と預金の比較
金利水準と安全性の違い
個人向け国債と定期預金は、いずれも安全性を重視する資金の受け皿として比較されます。
預金金利も上昇しており、比較する際は同じ時点の金利を確認する必要があります。たとえば三菱UFJ銀行の2026年8月時点の円預金金利では、普通預金は年0.4000%、スーパー定期金利は0.5000%から1.2500%となっています。
一方、2026年8月募集分の個人向け国債は、変動10年の初回適用利率が年1.87%、固定5年が年2.06%、固定3年が年1.71%です。したがって、少なくともこの時点では、代表的な大手銀行の標準的な円定期預金金利を上回るケースがあります。ただし、預入期間、流動性、保護制度、キャンペーン金利の有無を含めて比較する必要があります。
ただし、預金と国債は仕組みそのものが異なるため、金利の高さだけでなく、預入期間や換金の柔軟性も含めて比較することがポイントです。
預金保険制度と国債の元利払いの仕組み
安全性の裏付けとなる制度の違いも押さえておきます。
利息の付く普通預金や定期預金などの一般預金等は、1金融機関ごとに、預金者1人当たり合算して元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。
個人向け国債は預金ではないため預金保険制度の対象ではありませんが、元本や利子の支払いは発行者である国が責任を持って行う仕組みです。ただし、日本国の信用状況の悪化等により損失が生じる可能性がある点には留意が必要です5
預金と国債では、資金を守る仕組みが異なります。それぞれの制度上の位置づけを理解したうえで、預ける金額や期間を検討することがポイントです。
中途換金・流動性の比較
資金の引き出しやすさも重要な比較軸です。*6
定期預金は、預入時に選んだ期間で満期を迎える商品であり、金融機関ごとに中途解約の扱いが定められています。個人向け国債は原則として発行から1年間は途中換金できないため、近い将来に必要となる可能性がある資金は預金で確保し、しばらく使う予定のない資金については、個人向け国債も選択肢の一つとなります。
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投資信託との使い分け
リスク・リターン特性の違い
個人向け国債と投資信託は、リスクとリターンの性格が異なります。
金融庁は、有価証券等への投資は預金等とは異なり、元本割れ等のリスクを伴うものであるとし、有価証券等へ投資をするときは、投資対象商品や発行会社等についてよく調べ、十分理解したうえで売買等を行うことが必要であると呼びかけています。*7, *8
両者は、値動きの有無と元本の扱いという点で大きく異なる商品です。それぞれの性格を理解したうえで、資産全体の中でどの役割を担わせるかを決めることがポイントです。
運用目的別の使い分け判断基準
商品選びは、運用目的や投資期間によって異なります。
個人向け国債が適していると思われる人の例としては、より高い金利での運用を希望する人、運用資金が1,000万円を超える人、金利上昇の恩恵を受けたい人(変動10年)などが考えられます。一方、個人向け国債の満期は固定3年、固定5年、変動10年であり、発行後1年間は原則として中途換金できません。2年以内など短期で使う可能性がある資金については、定期預金や普通預金など、より流動性の高い選択肢と比較することが重要です。
令和7年度の個人向け国債について、財務省の分析によれば、1件当たりの購入金額が令和6年度と比べて減少傾向にあります。これは30~40歳代といった若年層の購入者が増加し、小口での購入が多くなっていることが背景にあるとされています。*1, *2
短期で使う可能性がある資金は預金、中長期で一定期間使う予定がなく安全性を重視する資金は個人向け国債を検討する、という整理が考えられます。値上がり益を期待する資金は投資信託と分けて考えると、目的と商品性のずれを避けやすくなります。
資産全体でのバランス配分の考え方
家計の資産配分は、それぞれの目的に応じて決めていきます。
財務省は、令和8年度において、幅広い世代で資産運用への関心が高まっていること等を踏まえ、中長期的な視点からの購入者層の拡大を目指しています。比較的若い勤労世代(20歳代〜30歳代)をメインターゲットとして、個人向け国債の商品性の魅力を分かりやすく訴求することにより、商品性の理解の促進を図り、販売拡大につなげる広告を展開する予定になっています。*8
短期の生活防衛資金は預金、中長期で安全性を重視する資金は個人向け国債、値動きを受け入れて成長を狙う資金は投資信託と、役割ごとに配分を決める発想が有効です。それぞれの制度と商品性を理解したうえで、家計の目的、使う時期、リスク許容度に応じて、比率を検討することが考えられます。
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購入時の注意点と失敗を防ぐポイント
中途換金調整額の算出方法
中途換金には調整額が差し引かれます。
財務省は、中途換金のしくみを、額面金額+経過利子相当額−中途換金調整額とし、中途換金調整額は直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685で算出するとしています。発行から1年が経過すれば中途換金することができ、災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害等により被害を受けた場合、または保有者本人が亡くなった場合には、上記の期間にかかわらず中途換金できます。*6, *7
購入時には、途中で換金する場合の受取額の計算方法を理解しておく必要があります。想定外の資金需要に備え、換金ルールを確認したうえで購入金額を決めることが大切です。
購入手続きと取扱金融機関
購入には金融機関での口座開設が必要です。
個人向け国債を含めた国債を初めて購入する際には、証券会社や銀行などの金融機関で国債口座を開設する必要があります。利払日は、原則として発行月の15日と、その半年後の15日に設定されています。*5, *6
購入までの流れを事前に確認し、募集期間内に手続きを進める段取りが必要です。既に取引のある金融機関で国債口座を開設できるか確認すると、流れを把握しやすくなります。
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おわりに
個人向け国債の金利は、日銀の金融政策の転換を背景に上昇基調となり、令和7年度は3商品すべての金利が過去最高を更新しました。定期預金と比べても足元の利率は高い水準にあり、国が発行する仕組みや、最低金利年率0.05%の下限も備わっています。
一方で、預金保険制度の対象ではなく、発行から1年間は原則として中途換金ができない点には注意が必要です。短期資金は預金、中長期の安全資金は個人向け国債、成長を狙う資金は投資信託と役割で分け、家計に合ったバランスを検討できます。
*1 出所)財務省「 国債トップリテーラー会議(第25回)議事要旨」
*2 出所)財務省「個人向け国債の発行条件等」
*3 出所)三菱UFJ銀行「個人向け国債(2026年8月6日~2026年8月31日募集分)」
*4 出所)三菱UFJ銀行「個人向け国債」
*5 出所)財務省「 特集 適用利率が上昇してきている 個人向け国債の特長と購入方法」
*6 出所)財務省「個人向け国債」
*7 出所)証券取引等監視委員会「投資をされる方へ」
*8 出所)財務省「最近の国債管理政策における課題と取組」










