ポイント
日本銀行は令和8年6月16日に政策金利を引き上げましたが、年内にも再利上げの観測が出ています。この記事では次のポイントを押さえて解説していきます。
- 政策金利がゼロ近傍から段階的に引き上げられ、現在の水準に至った経緯を確認。
- 変動金利型住宅ローンを利用する世帯が約8割に達しており、5年ルール・125%ルールの落とし穴に注意が必要。
- 二人以上の世帯では貯蓄現在高の平均が2,059万円です。一方、二人以上の勤労世帯のうち住宅ローン返済世帯では、現在貯蓄残高が1,300万円、負債現在高が2,076万円となっています。また、世帯主が50歳未満の各年齢階級では、平均の負債現在高が貯蓄現在高を上回っています。
- 家計防衛は、ローンの見直し、預貯金と有価証券の配分点検、家計負担を悪化させる恐れのある資金調達の回避が柱となる。
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政策金利1.0%への到達と再利上げ観測の全体像
利上げの経緯と現在地
日銀の短期金利の誘導目標は段階的に引き上げられ、基準貸付利率も現在の水準に至っています。
短期金利の誘導目標は、当初は0〜0.1%程度に置かれ、2024年7月に0.25%程度、2025年1月に0.5%程度、同年12月に0.75%程度へと順次引き上げられ、2026年6月には1.0%になりました。*1
日本銀行が公表する基準貸付利率の推移では、令和6年8月1日に0.50%、令和7年1月27日に0.75%、令和7年12月22日に1.00%、令和8年6月17日に1.25%と記録されています。*2
およそ2年の間に、短期金利の誘導目標はゼロ近傍から1.0%程度まで、基準貸付利率は1.25%まで切り上がりました。
追加利上げが意識される背景
日本銀行は令和8年6月の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を従来の0.75%程度から1.0%程度へと変更することを賛成多数で決定し、あわせて補完当座預金制度の適用金利および基準貸付利率の変更も決めました。今後の金融政策運営については、基調的な物価上昇率が2%に近づいている中、現在の金融環境は緩和的であることを踏まえ、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針です。*3
ただし、日銀は追加利上げの時期をあらかじめ明示しているわけではなく、経済・物価・金融情勢を見極める姿勢を示しています。
内閣府の月例経済報告関係資料では、日本銀行は6月16日に無担保コールレート・オーバーナイト物を1.0%程度で推移するよう促すことを決定しています。*4
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政策金利の仕組みと家計への波及ルート
無担保コールレートと短プラの連動
日本銀行は、2024年3月から金融政策の枠組みを見直し、政策金利を無担保コールレート・オーバーナイト物としたうえで、金融市場調節方針においてその誘導目標を定めています。*5
日々の実勢は、日本銀行が公表する無担保コールO/N物レートの確報でも確認できます。*6
この短期金利の水準が動くと、金融機関の資金調達コストに影響し、企業向け貸出の基準となる短期プライムレート(短プラ)にも反映されていきます。家計の借入や預金の条件は、金融機関や商品ごとの基準金利・見直しルールを通じて見直されます。変動金利型ローンでは、短期プライムレートなどに連動して基準金利が改定される場合があります。
預金・ローン金利への波及経路
政策金利の変更が家計の契約条件に反映されるまでの期間は、金融機関・商品・契約条件によって異なります。
三菱UFJ銀行では、2026年6月16日発表の短期プライムレートの引き上げに伴い、2026年9月1日のから住宅ローンの変動金利の基準を見直すとしています。既存の借り入れでは、変動金利の種類や契約時期によって新利率の基準日・適用開始日が異なります。
同行の公表では、2026年8月31日以前に借り入れた場合、変動金利(毎月型)は2026年9月1日を基準日とし、2026年10月の返済日の翌日から新利率を適用し、2026年11月の約定返済分から反映します。変動金利(年2回型)は2026年10月1日を基準日とし、2026年12月の返済日の翌日から適用し、2027年1月の約定返済分から反映します。ただ、契約時期などにより異なる場合があります。*7
政策金利の変更は、短期プライムレートなどの市場・金融機関の基準金利を通じて、商品ごとに定められた基準日や見直しルールに沿って借入金利へ反映される場合があります。自分の契約でどの日付が基準になっているかを確かめれば、次に金利が動くタイミングを見通しやすくなります。
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住宅ローン変動金利のリスクと注意点
変動金利利用者約8割の実態
住宅ローン利用者の多くは変動金利を選んでいるため、政策金利の動きが家計に波及しやすいといえます。
国土交通省によると、我が国の住宅ローン利用者の約8割は変動金利型住宅ローンを利用している状況(令和7年時点)です。日本銀行のマイナス金利政策の解除(令和6年3月)以降、政策金利の引上げを背景に、住宅ローン金利が上昇傾向にあります。また、昨今の住宅価格の上昇等により、35年を超える超長期の住宅ローンの利用者やペアローンの利用者も増加しています。*8
こうした住宅ローンの利用実態、環境変化の中では、住宅ローン返済が将来の家計の負担になり得ることから、あらかじめ消費者が金利リスク等について適切に理解しておくことが重要です。*9
借入額が大きく期間が長いほど、金利の変化が総返済額に及ぼす影響も大きくなります。自身が変動・固定のどちらで組んでいるか、返済期間は何年かを、契約書で改めて確認しておく必要があります。
5年ルール・125%ルールの落とし穴
変動金利型住宅ローンの一部には、返済額を一定期間据え置く仕組みがあり、注意が必要です。
住宅ローンによっては、返済額を5年ごとに見直す「5年ルール」(金利が変更になった場合、元金と利息の内訳は変わりますが、次回の見直しまで返済額は変わりません。)返済額は5年ごとに見直しますが、金利上昇により返済額が大きくなる場合でも、新返済額は前回までの返済額の125%を超えない「125%ルール」があります。
ただ、5年ルール・125%ルールの適用有無や内容は金融機関・商品・契約条件により異なります。資料や返済予定表で、自身の契約に適用されるルールを確認する必要もあります。
貸出期間・金利水準別のデフォルト傾向
貸出期間の長さは、返済リスクの見え方を左右します。
金融庁が地方銀行の貸出明細データを用いて行った分析では、貸出期間35年超のカテゴリでデフォルト率が相対的に高いことが確認されています。ただし、この分析は地方銀行データを対象とし、デフォルトを債務者区分の下方遷移で判定している点に留意が必要です。*10
借入期間を長く取れば毎月の返済額は抑えられますが、金利変動を受ける期間も長くなります。期間の長さと金利上昇リスクをセットで考える姿勢がポイントです。
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家計の貯蓄・負債データが示す防衛の重点
貯蓄2,059万円・負債675万円の内訳
家計の防衛策を考えるにあたり、平均像を数字で確認します。
総務省の家計調査(貯蓄・負債編)速報要約では、二人以上の世帯における2025年平均の1世帯当たり貯蓄現在高(平均値)は2,059万円で、前年に比べ75万円、3.8%の増加となり、7年連続の増加となるとともに、比較可能な2002年以降で最多となっています。このうち勤労者世帯では1717万円で、前年に比べ138万円、8.7%の増加となっています。また、二人以上の世帯の貯蓄保有世帯の中央値は1264万円となっています。また、二人以上の世帯の勤労者世帯のうち持家世帯(勤労者世帯に占める割合81.9%、世帯主の平均年齢52.0歳)について、住宅ローンの有無別に1世帯当たり貯蓄現在高をみると、住宅ローン返済世帯(同41.4%、同47.0歳)は1300万円となり、前年に比べ96万円、8.0%の増加となっています。同様に、負債現在高をみると、住宅ローン返済世帯は2076万円となっており、前年に比べ92万円、4.6%の増加となっています。*11
2025年平均では、住宅ローン返済世帯の負債現在高が貯蓄現在高を上回っています。
年齢別に見る負債超過リスク
年齢によって、家計のバランスは大きく異なります。
家計調査の速報要約では、二人以上の世帯について世帯主の年齢階級別に純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)をみると、50歳以上の各年齢階級では貯蓄現在高が負債現在高を上回り、貯蓄超過となっています。このうち、60〜69歳の世帯の純貯蓄額は2609万円と最も多いです。一方、50歳未満の各年齢階級では、負債現在高が貯蓄現在高を上回っており、負債超過の状態です。*11
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家計防衛の実践ステップ
住宅ローンを確認する際のポイント
住宅ローンの見直しは、家計防衛で最も大きな効果を持つ論点の一つです。
国土交通省は、住宅取得希望者が住宅ローンの利用を検討するにあたり知っておくことが望ましいと考えられるポイント(金利タイプや返済期間等の選択における注意点等)をまとめたリーフレットを作成・公表しています。*8
まず行うべきことは、現在の金利タイプ、残存期間、残高を書き出し、金利が動いた場合の返済額の変化を試算することです。行政が公表する資料に沿って、選択の前提を自分の言葉で整理することがポイントです。
預貯金・有価証券の配分見直し
金利のある時代は、資産の置き場所を点検することが有効です。
2024年と比べると、通貨性預貯金、有価証券などが増加しています。通貨性預貯金は、前年に比べ18万円、2.6%の増加で、17年連続の増加となっています。有価証券は、前年に比べ63万円、16.7%の増加となり、3年連続の増加です。*11
預貯金と有価証券の双方が積み上がっている実態からは、家計が現金と投資の両輪で資産形成に取り組んでいることが考えられます。ローン残高、生活費の数か月分の予備資金、余裕資金の順に整理し、どこに置くのが自分の家計に合うかを確かめることが出発点になります。
避けるべき危険な資金繰り
資金繰りが苦しくなったときほど、危険な手段を避ける判断が重要になります。
金融庁は、いわゆる「後払い(ツケ払い)現金化」について、形式的には後払いによる商品売買であるが、商品代金の支払に先立ち、商品の購入者が金銭を受け取ること、給料日等に商品代金を支払うことになり、その商品代金と先に受け取った金銭との差額が高額になるといった特徴を挙げています。高額な支払によりかえって経済的生活が悪化し、多重債務に陥る危険性があり住宅ローンや生活費の負担増を一時的にしのぐ目的で、後払い現金化などに頼ることは避ける必要があります。*12
金利上昇の局面で家計が圧迫されるほど、こうした仕組みに近づかない判断が家計防衛につながります。
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おわりに
政策金利は段階的に切り上がり2026年8月現在1.0%となっていますが、今後も日本銀行は経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を示しています。短期プライムレートを通じた波及の仕組みや、変動金利型住宅ローンの5年ルール・125%ルールなど、家計に関わる論点は多岐にわたります。
まずは自分の借入契約と資産の配分を書き出し、どの数字が金利に連動して動くのかを確かめてください。行政が公表する資料に立ち返りながら、危険な資金繰りを避ける姿勢を保つことが、金利のある時代の家計防衛の土台となります。
*1 出所)参議院「参議院常任委員会調査室・特別調査室」
*2 出所)日本銀行「基準割引率および基準貸付利率(従来「公定歩合」として掲載されていたもの)の推移公表データ一覧」
*3 出所)日本銀行―「『金融市場調節方針の変更について』(2026年6月16日)」
*4 出所)内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」
*5 出所)日本銀行「金融市場調節方針の変遷を教えてください。」
*6 出所)日本銀行「過去データ 無担保コールO/N物レート(毎営業日) 2026年 」
*7 出所)三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
*8 出所)国土交通省「住宅:住宅ローンの金利リスクの普及啓発について」
*9 出所)国土交通省「「住宅ローンの常識が変わる!?」リーフレットを作成しました! ~住宅ローンの金利リスクの普及啓発に取り組みます~」
*10 出所)金融庁「地方銀行の住宅ローンのデフォルト状況に関する分析」
*11 出所)総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」
*12 出所)金融庁「「今すぐ現金」「手軽に現金」に注意ください!」










