亡くなった家族の所有していた財産を調べていると、まれに「名義株式」が見つかることがあります。また、過去に何らかの事情で名義株式が発生し、どのように処理すればいいか困っている方がいるかもしれません。
名義株式を放置していると、さまざまな問題が生じることがあります。税金などのリスクを念頭に置きつつ、できる限り速やかに名義株式を解消しましょう。
本記事では、相続時などに判明する「名義株式」について、問題点や解消法などを解説します。
名義株式とは
「名義株式」とは、株主名簿上の株主と実質的な株主が異なる株式です。
たとえばA社の株主名簿において、Xが普通株式100株を保有している旨が記載されているとします。この場合、A社はXを株主として取り扱います。
しかし、その100株を取得するために金銭を払い込んだのは、実はXでなくYでした。Yは何らかの理由で、Xに株主として名義を貸してくれるように頼んでいたのです。
このような場合には、100株の実質的な株主はYであると判断される可能性が高いです。株主名簿上はXが株主ですが、実質的にはYが株主となります。これが「名義株式」と呼ばれる状態です。
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名義株式が発生する主な理由
名義株式は、さまざまな理由で発生することがあります。たとえば、次に挙げる理由などが考えられます。
- 旧商法下で要求されていた、株式会社の設立時の発起人の人数要件を満たすため
- 出資者が複数いるかのように見せかけて、対外的な信用を得るため
- 相続税の負担を軽減する目的で、あらかじめ株式の名義人を子どもにしておいたため
- 株式を譲渡した(譲り受けた)際、株主名簿の書換えを適切に行わなかったため など
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名義株式に当たるかどうかの判断基準
株主名簿上の名義人が本当に株主であるのか、それとも別に実質的な権利者がいる『名義株式』であるのかは、次の要素などを考慮して判断されます。(東京地裁昭和57年3月30日判決参照)。
- 株式取得資金の拠出者
- 名義貸与者と名義借用者の関係およびその間の合意内容
- 株式取得(名義変更)の目的
- 取得後の利益配当金や新株等の帰属状況
- 名義貸与者および名義借用者と会社の関係
- 名義借りの理由の合理性
- 株主総会における議決権の行使状況 など
特に、株式を取得するためのお金を名義人とは別の人が支出した場合は、名義株式のリスクが高いと思われるので注意が必要です。
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名義株式によって生じ得る問題点
名義株式が存在すると、株主名簿上の株主(名義株主)や実質的な株主、あるいはその相続人において、次のような問題点が生じることがあります。
- 真の株主は誰かについて争いが生じる
- 名義株式を譲渡できないことがある
- M&Aの際、デューデリジェンスで指摘されて問題になる
- 相続トラブルの原因になる
- 予期せず相続税が課される
真の株主は誰かについて争いが生じる
名義株主と実質的な株主の間では、真の株主は誰かについて争いが生じるリスクが常に存在します。本人が亡くなった後は、その相続人が関与してきて、非常に複雑な争いに発展するケースもあるので要注意です。
名義株式を譲渡できないことがある
名義株式については、株主名簿上の株主(名義株主)は実質的な管理を有しません。したがって、名義株主やその相続人が株式を譲渡しようとすると、その譲渡の有効性が問題なる可能性が高いと考えられます。
特に、譲渡契約を締結・実行してから名義株式であることが判明すると、譲受人も巻き込んで深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
M&Aの際、デューデリジェンスで指摘されて問題になる
名義株式が存在する場合、株主構成や支配権の帰属が不透明になり得るため、会社は大きなリスクを抱えた状態といえます。
もしM&Aによって他人に会社を売却しようとするなら、デューデリジェンスの際に名義株式の存在が判明して指摘される可能性が高いです。名義株式を解消しない限り、M&Aを実現することは難しいでしょう。
相続トラブルの原因になる
名義株式の可能性がある株式については、株主名簿上の株主や取得時に払込みをした者が亡くなった場合、相続財産に含まれるのかどうかがはっきりしません。
遺産分割を行う際には、名義株式が相続財産に含まれるのかどうかを確定する必要があります。しかし、状況によっては訴訟に発展するなど、相続財産の確定は難航することが少なくありません。数年間にわたって相続トラブルが続いてしまうことも十分考えられます。
予期せず相続税が課される
名義株式の実質的な株主が亡くなった場合、相続税の課税に当たっては、名義株式も相続財産に含まれると判断される可能性があります。
実質的な株主の相続人が名義株式を認識していなかった場合、税務調査によって名義株式の存在を指摘され、予期せず多額の相続税を課されることもあり得るので要注意です。
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名義株式を解消する方法
名義株式を解消するためには、次の方法が考えられます。
- 共同で株主名簿の書換えを請求する
- 訴訟で株主名簿の書換えを求める
- 名義株式を買い取る
共同で株主名簿の書換えを請求する
株主名簿上の株主と実質的な株主は、会社に対して共同で株主名簿の書換えを請求できます。互いに協力できる場合は、この方法によってスムーズに名義株式を解消することが可能です。
ただし、株主名簿上の株主から実質的な株主への無償譲渡とみなされると、贈与税が課されるリスクがあります。
そのため税務調査に備えて、贈与ではなく、最初から実質的な株主が権利者であったことを説明できるようにしておくべきです。過去に遡って出資の経緯に関する資料を集める、双方の間で確認書を作成するといった対応を検討してください。
訴訟で株主名簿の書換えを求める
株主名簿上の株主が自らの権利を主張する場合、実質的な株主は裁判所に訴訟を提起して、株主名簿の書換えを命じる判決を求めることが考えられます。勝訴判決が確定すれば、会社に対して単独で株主名簿の書換えを請求できます。
訴訟においては、出資の経緯などに照らして、自分が名義株式の実質的な権利者であることを証明しなければなりません。証拠資料を確保するなど、十分な準備を整えたうえで訴訟を提起しましょう。
名義株式を買い取る
訴訟を回避したい場合は、株主名簿上の株主から名義株式を買い取ることも考えられます。
株主名簿上の株主が売買に応じる場合は、株式譲渡契約を締結したうえで実質的な株主が名義株式を買い取ります。
株主名簿上の株主が売買に応じない場合は、スクイーズアウト(=少数株主を強制的に排除する手続き)等を検討することになります。
いずれの場合も、株式の売却・買い取りに伴う税務上の取り扱いについては慎重な検討が必要です。税理士のアドバイスを求めてください。
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まとめ
株主名簿上の株主と実質的な権利者が異なる「名義株式」は、株式譲渡や相続などの場面において、さまざまなトラブルの原因になります。
自分が名義株式に関与している場合や、亡くなった家族が名義株式に関与していることに気づいたら、速やかに問題を解消しましょう。必要に応じて、税理士や弁護士に相談することをおすすめします。
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。










