MBOや完全子会社化などを行う際には、少数株主を排除する「スクイーズアウト」の手続きがとられます。
基本的には、少数株主側がスクイーズアウトを阻止することは難しいケースが多いです。ただし、株式の買取価格については争う余地もあるので、会社法上のルールや手続きを確認しておきましょう。
本記事では、株式会社が行うスクイーズアウトの手続きや、スクイーズアウトに直面した投資家の対処法などを解説します。
スクイーズアウトとは
「スクイーズアウト」とは、株式会社の多数株主が少数株主を排除する手続きです。MBOや完全子会社化などを行う際には、スクイーズアウトが実施されます。
たとえば、A社の代表取締役であるXが、A社株式を100%取得するMBOを実施するケースを考えます。
現状、A社にはX以外に10人の株主がいます。Xは各株主と交渉したところ、9人は株式を売り渡すことに同意してくれました。しかし、残りの1人であるYがどうしても同意してくれません。
このままでは、XがA社株式を100%取得することはできません。そこでスクイーズアウトを実施します。
一定の要件を満たしたうえで、会社法に基づく手続きをとると、A社またはXが強制的にYの保有する株式を取得することができます。その結果、XがA社株式を100%保有する状態が実現されます。
(目次へ戻る)
スクイーズアウトに用いられる主な手続き
スクイーズアウトには、会社法上の手続きが用いられます。主に用いられる手続きは次のとおりです。
- 特別支配株主の株式等売渡請求
- 株式併合
- 株式交換
- 全部取得条項付種類株式の取得
特別支配株主の株式等売渡請求
総株主の議決権の90%以上(これを上回る割合を定款で定めた場合は、その割合以上)を保有する者は「特別支配株主」に当たります。
特別支配株主は、会社および自分以外の株主全員に対し、保有する株式全部を売り渡すよう請求できます(会社法179条1項)。その結果、最終的には特別支配株主が100%の株式を保有することになります。
株式併合
「株式併合」は、数個の株式を併せて1株とする手続きです(会社法180条1項)。株主総会の特別決議が必要とされています。
株式併合によるスクイーズアウトの際には、排除する少数株主が保有する株式数がいずれも1株未満となるようにします。
1株未満の株式は、最終的に金銭を交付して会社が買い取ること等ができるため、最終的にはMBOや完全子会社化が実現されます。
株式交換
「株式交換」は、株式会社の発行済株式の全部を、他の株式会社または合同会社に取得させる手続きです(会社法2条31号)。株式交換が完了すると、当事者は完全親子会社となります。
株式会社間の株式交換については、原則として双方の会社において株主総会の特別決議が必要です。
株式交換によって親会社となる会社は、子会社となる会社の既存株主に自社株式または現金を交付し、その株式を取得することができます。最終的には完全子会社化が実現します。
全部取得条項付種類株式の取得
「全部取得条項付種類株式」とは、株主総会の特別決議により、会社がその全部を取得することができる種類株式です(会社法108条1項7号)。
株主総会の特別決議に要する株式(発行済株式の3分の2以上)を取得すると、すべての発行済株式を全部取得条項付種類株式へ変更する旨の定款変更を、単独の賛成で決議することができます。
次いでさらに株主総会の特別決議を行い、全部取得条項付種類株式の取得を決定します。その際、少数株主には1株未満の普通株式が交付されるようにします。
最終的には、少数株主が保有する普通株式を金銭によって精算することで、多数株主が100%の株式を保有する状態が実現します。
(目次へ戻る)
スクイーズアウトに直面した少数株主(投資家)の対処法
株式を保有する会社からスクイーズアウトの案内を受けた場合、少数株主(投資家)は次の対応を検討してください。
- 特に何もしない|最終的には金銭が交付される
- スクイーズアウトの中止を請求する
- 「反対株主」になるための手続きを行う|会社に対する反対通知・反対の議決権行使
- 会社に対して反対株主の株式買取請求を行う
- 裁判所に対して価格決定の申立てを行う
- スクイーズアウトに関する株主総会決議の有効性を争う
特に何もしない|最終的には金銭が交付される
スクイーズアウトの条件に不満がないなら、特に何もする必要はありません。最終的には株式を手放すことになりますが、会社が定めた条件に従って金銭が交付されます。
スクイーズアウトの中止を請求する
スクイーズアウトによって不利益を受けるおそれがある少数株主は、会社(株式等売渡請求については特別支配株主)に対してスクイーズアウトをやめることを請求できることがあります(=中止請求)。
特別支配株主の株式等売渡請求・株式併合・株式交換・全部取得条項付種類株式の取得のいずれについても、一定の場合には中止請求が認められています。ただし、法令違反や定款違反などが要件とされているため、常に認められるわけではありません。
会社に対して反対株主の株式買取請求を行う
株式併合・株式交換・全部取得条項付種類株式の取得によるスクイーズアウトについては、反対株主の株式買取請求が認められています。反対株主は会社に対し、保有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。
株式買取請求を行うためには、「反対株主」の要件を満たさなければなりません。具体的には、株主総会に先立って反対する旨を会社に通知し、その株主総会において反対の議決権を行使する必要があります。
株式買取請求を行った場合の買取価格は、会社と少数株主の協議によって決めるのが原則です。ただし、効力発生日から30日以内に協議が調わない場合は、その期間の満了後30日以内に限り、裁判所に対して価格決定の申立てをすることができます。
スクイーズアウトに関する株主総会決議の有効性を争う
スクイーズアウトの実施に必要な株主総会決議に不適切な点がある場合は、その決議の不存在や無効の確認、または取消しを求める訴えを提起することも考えられます。
ただし、株主総会決議の不存在・無効・取消しが認められるのは、ごく例外的なケースに限られます。裁判所に訴えを提起する際には、株主総会決議の問題点を立証できるように、十分な準備を整えたうえで臨む必要があります。
(目次へ戻る)
まとめ
株式を保有する会社からスクイーズアウトの案内を受けたときは、近いうちにMBOや完全子会社化などが予定されています。買取価格など、通知されたスクイーズアウトの条件が適切かどうかを確認しましょう。
特に何もしなければ、最終的には株式を手放すことになる代わりに、会社または多数株主から金銭が支払われます。
買取価格やスクイーズアウトの有効性を争うことも考えられますが、訴訟を見据えた準備が必要です。弁護士のアドバイスを受けるなどして、どのように対応すべきか、どのような準備が必要かをよく検討してください。
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。










