「貯金か投資か」で迷う人が見落としているたった一つの視点

「貯金か投資か」で迷う人が見落としているたった一つの視点

「貯金か投資か」という問いは、資産形成を考え始めた多くの人が最初にぶつかる壁です。しかし、この二択だけで判断しようとすると、自分がどの程度の損失まで受け入れられるのかという視点が抜け落ちやすくなります。
この視点こそが「リスク許容度」であり、貯金と投資の配分を決めるうえで欠かせない判断軸です。リスク許容度を把握しないまま投資を始めると、想定外の値下がりに耐えられず途中で手放してしまう恐れがあります。本文では、貯金と投資の違いから生活防衛資金の確保、そしてリスク許容度に基づく資産配分の考え方まで順を追って解説します。

貯金と投資の本質的な違い

貯蓄の役割と安全性

貯蓄は、いざというときや必要な出費に備えてお金を蓄えておくものです。銀行の預貯金など安全性の高い金融商品が代表的な手段とされています。*1
銀行に預けているだけでは資産の実質的な価値が目減りする可能性があります。これは、物価上昇率が預金金利を上回る局面では、預金だけでは資産の実質的な価値が目減りする可能性があるからです。*2
つまり貯蓄は「減らさない」機能に優れる反面、「増やす」力は限定的です。安全性を確保しつつ、資産全体の価値を守るには別の手段との組み合わせが求められると思われます。

投資の役割とリスク・リターン

投資は、利益を見込んでお金を出すことです。株式や投資信託、債券などを購入し、中長期的にお金を増やす役割を目指します。ただし元本割れのリスクがあり、運用の結果として資産が減る場合もあります。*3
投資により物価上昇率を上回るリターンが得られることもありますが、値動きがある以上、短期間で大きく資産が変動する場面も避けられません。こうしたリスクとリターンの関係を理解したうえで、自分の状況に合った運用先を選ぶことが大切です。貯蓄と投資はどちらか一方を選ぶものではなく、役割の異なる手段として組み合わせを考えることが重要と考えられます。

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見落とされがちな「お金の色分け」

資金を3つに分類する考え方

生活に必要なお金とは別に「すぐには使わない余裕資金」を分けることで、無理なく資産運用を始められます。*2
具体的には、お金を使い道に応じて3つに色分けする方法が有効です。
1つ目は日常生活の引き落としなどに使う決済用資金、2つ目は病気・失業への備えや教育費・旅行などに充てる目的確定資金、3つ目は生活に影響を与えない当面使う予定のない余裕資金です。投資の資金としては、3つ目の余裕資金が考えられます。こうした色分けを行わずにすべてを一括で管理すると、生活に必要なお金まで投資に回してしまうリスクがあります。まず手元の資金を3つに仕分けることが、投資の出発点になります。

生活防衛資金の目安と確保方法

生活防衛資金とは、もしもの時に備えて確保しておく緊急資金のことです。消費者庁の教材では、一律の正解はないものの緊急資金の目安として生活費3か月分から1年分が示されており、たとえば月の生活費が20万円であれば60万円から240万円が目安になります。*4
また、病気や失業に備えて毎月の生活費の1年分程度を「万一の目的の費用」として用意しておくという考え方もあります。*1
生活防衛資金は、すぐに引き出せる普通預金や定期預金など安全性の高い手段で保管するのが基本です。この資金が十分に確保されてはじめて、残りの余裕資金を投資に振り向ける判断が現実的になります。自分の家計の月額支出をまず把握し、必要な月数分を先に確保することで、無理のない設計ができます。

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リスク許容度という判断軸

リスク許容度の定義

リスク許容度とは、投資をする際にどの程度の価格変動まで、とりわけマイナスになった場合にどの程度の損失額まで受け入れられるかという度合いのことです。この度合いは点数やパーセントで客観的に示されるものではなく、あくまでも主観的なものであるため、正確に測定することは難しいとされています。*5
さらにリスク許容度は個人に固定されたものでもなく、同じ人でも投資目的や投資金額、年齢や知識・経験などの状況が変われば変化します。家計の有価証券の購入・保有が増えている背景にも、金融商品の価格変動リスクに対する捉え方(リスク許容度)の変化や株価上昇期待の高まりが考えられます。*6
リスク許容度は「一度測れば終わり」ではなく、ライフステージに応じて繰り返し見直すものだと捉える必要があるでしょう。

許容度を左右する5つの要因

リスク許容度を左右する要因は主に5つあります。

  • 年齢(期間):長期に運用できる人のほうが、万一損失が出ても換金せずに保有し続けられるため許容度は高い傾向があり、逆にその資金を近い将来使う予定がある場合は許容度が低くなる傾向があると考えられます。
  • 収入の水準や収支の方向性:収入が多い人やこれから増えていく人は許容度が高くなりやすい一方、収入が多くてもほとんどが使用予定資金であれば許容度はさほど高くならないと考えられます。
  • 保有資産額:資産が多い人は許容度が高くなる傾向があります。
  • 本人の性格や投資経験:資産が目減りすることにどの程度耐えられるかは人それぞれ異なり、投資経験がない人は自分の許容度を過大評価せずリスクを抑えめにスタートするほうが堅実です。
  • 投資目的:何に使うかだけでなく、「一時的な値下がりを許容して大きな収益を目指すのか」「値下がりは許容できず換金時の収益も小さくてよいのか」に置き換えて、その資金のリスク許容度を把握します。*5

消費者庁の教材でも、投資経験が少ない・値下がりへの不安が大きい・年齢が高い・余裕資金がないといった場合においては、投資をしないことや少額から始めるという選択肢も示しています。*7
5つの要因を自分に当てはめてみることで、漠然とした不安を具体的な判断材料に変換できます。

許容度に応じた資産配分の考え方

リスク許容度の目安を確認したら、次は投資金額と値動きの大きさのバランスを見ながら資産配分を考える段階です。投資金額を少なくすれば、多少リスクの高い投資対象を選んでも金額ベースでの損益は小さくなります。反対に、大きくもうけたいと欲を出してリスクの高い対象にまとまった金額を投資すると、大きな損失を被る可能性があります。 *5
たとえば、リスクの高い投資対象には少なめの金額を、リスクの低い投資対象には多めの金額を配分するという方法が挙げられます。投資金額とリスク許容度を総合的に勘案して配分を決めることが、想定外の損失を防ぐうえで有効と思われます。市場の下落を「想定内」としてイメージできれば、自身のライフプランに支障が生じない投資判断や、リスク許容度を踏まえた金融商品の選択にもつながります。*8

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リスクを抑える長期・積立・分散投資

長期投資と複利効果

長い期間にわたり投資を続けることで、運用で得られた利益がさらに運用されて増えていく「複利」の効果が働きやすくなります。また、投資期間が長いほど短期的な価格変動の影響を受けにくくなる傾向があります。*3
積立・分散投資を長期間継続することで、複利効果も享受しつつ安定的な資産形成に取り組むことが可能になると考えられます。*9
短期の値動きに左右されにくい点が長期投資の強みであり、リスク許容度がそれほど高くない人にとっても取り組みやすい手法です。

(注)将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。

積立投資とドル・コスト平均法

一度に多額の投資を行うのではなく、あらかじめ決まった金額を継続して投資する積立投資も有効な手段です。定期・定額で投資を行うことで、価格が高い時期には少なく、価格が低い時期には多く購入する「ドル・コスト平均法」が活用できます。*3
積立投資は一括投資に比べて高値掴みなどのおそれを軽減する効果が期待できます*9
購入タイミングを分散させることで1回あたりの判断負荷が下がるため、投資経験が浅い人にとっても始めやすい方法です。

(注)特定の投資対象が値上がり続けたり、一旦上昇しその後下落する場合等は、購入時期を分散させるよりも一度に全額投資した方が結果的に有利になる場合があります。

分散投資によるリスク低減

投資する地域や資産・銘柄などを分ける「分散投資」もリスクを抑えるうえで欠かせません。1つの地域や資産のみに集中投資すると、それが値下がりした場合に資産全体が減ってしまいます。多様な地域や資産をバランスよく保有することで、全体のリスクを減らすことにつながります。*3
分散投資により、ポートフォリオ全体が特定のリスクから受ける影響を軽減することが可能です。*9
長期・積立・分散という3つの手法を組み合わせることは、価格変動の影響を軽減し、安定的な資産形成を目指すうえで有効な考え方です。

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NISA活用と失敗を防ぐ注意点

NISAの非課税メリットと枠の概要

2024年からスタートした新しいNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、1つの口座で併用できます。つみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円が上限です。生涯を通じた非課税保有限度額は1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円までとなっています。*3
非課税保有限度額は簿価、つまり取得価額で管理され、売却した分についてはその枠を翌年以降に再利用できます。通常であれば投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で発生した利益には課税されないため、長期運用との相性が良い仕組みです。生活防衛資金を確保したうえで、余裕資金の範囲内でNISA枠を活用するという順序が、無理のない第一歩になります。

初心者が陥りやすい失敗例

金融商品には安全性・収益性・流動性という3つの基準がありますが、これらすべてが優れた商品は存在しません。自分が許容できるリスクの範囲を確認し、目的に応じた無理のない投資を検討することが大切です。*3
金融庁のモニタリング結果では、一部の販売会社が提供するファンドラップにおいて、販売時点で総コスト控除後の期待リターンがマイナスのコースが確認されました。特に低リスク帯の一部コースでは、総コスト控除後の実績リターンがマイナスとなっている事例も示されています。*10
「低リスク」という表示だけで安心するのではなく、コストを差し引いた後のリターンがどうなるかまで確認する姿勢が、失敗を防ぐうえで欠かせません。

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おわりに

「貯金か投資か」は二者択一の問題ではなく、生活防衛資金を確保したうえで、自分のリスク許容度に合った配分を決めるプロセスです。年齢や収入、投資経験、保有資産額、投資目的という5つの要因を手がかりにすれば、漠然とした迷いを具体的な判断に変えることができます。
まずは手元の資金を3つに色分けし、生活防衛資金を先に確保することから始めてみてはいかがでしょうか。そのうえで長期・積立・分散投資やNISAの仕組みを理解することで、自分に合った資産形成の道筋が見えてくるのではないでしょうか。

(注)NISAに関する注意事項はこちら

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