新NISAが始まって2年目を迎え、資産運用の成績が気になる方は多いのではないでしょうか。含み損が画面に表示されると、このまま続けてよいのか不安になるものです。
しかし、含み損が出た局面で売却すると、結果として長期投資の考え方を十分に活かせなくなる場合があります。
大切なのは、新NISAの仕組みを正しく理解し、自分の投資目的と許容できるリスクを再確認することです。
本記事では、含み損との向き合い方から、長期投資の考え方、具体的な対処法、注意しておきたい行動、そしてデータから見える実態まで順を追って説明します。
NISA2年目に含み損が気になる理由
新NISAは2024年開始で2年目はまだ序盤
NISA2年目はまだ資産運用の序盤にあたり、積み立てた金額自体はそれほど大きくなりません。新NISAは2024年1月に始まった制度で、投資額が少ないうちは、わずかな値下がりでも損益の変化が目立って見えやすくなります。
2024年12月末時点でNISA口座数は約2,560万口座に達し、2023年12月末から21%増加しました。NISA買付額は累計約52.7兆円で、2023年12月末から49%増となっています。ここ数年の年間増加額が5兆円程度だったのに対し、2024年の1年間ではその3倍以上が流入しました。*1
資金流入が急増した局面では、市場環境によっては価格変動が意識されやすくなることも考えられます。
相場変動と評価損の不可避性
評価額が一時的にマイナスになる局面は避けられません。株式や投資信託の価格は日々変動するため、どれほど優れた商品を選んでも評価損は起こり得ます。NISA2年目であっても、この原則は変わりません。
昨年4月に開催されたNISAに関する有識者会議では、まだ制度が開始して1年であるため何らかの評価は難しいとされ、すぐに結論するのではなく、複数のデータを継続的に見ていくことが大事だと指摘されています。*2
短期的な含み損は、制度の良し悪しというより、市場価格が変動する性質による側面が大きいと考えられます。短期間の評価損だけで投資の成否を判断しないことが、資産運用を続けるうえでの前提になります。
含み損の不安は投資目的と許容リスクのズレ
不安が過大になる原因の一つは、投資目的と実際にとっているリスクがかみ合っていないことです。含み損そのものよりも、それに対する不安の大きさが問題になることがあります。
つみたて投資枠を利用して新NISAを始めた動機・目的で最も多いのは「将来・老後の生活資金」を確保するためであり、次いで「資産形成自体が目的」「将来の不測の事態への備え」が続きます。*3
老後資金のように使う時期が10年以上先であれば、途中の含み損は回復の時間が残されています。一方、数年以内に使う予定の資金で投資していると、同じ含み損でも不安の度合いは大きくなります。自分が何のために投資しているのかを確認することが、含み損との向き合い方を左右します。
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新NISAの仕組みを押さえて焦りを減らす
つみたて投資枠と成長投資枠の違い
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠があります。金融庁は、NISA制度を一本化し、旧つみたてNISAを引き継ぐつみたて投資枠と、旧一般NISAを引き継ぐ成長投資枠を設け、両者を併用可能としました。年間の投資額の上限はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。*4
つみたて投資枠は長期の積立・分散投資に適した投資信託が対象で、成長投資枠は上場株式なども購入できます。ただし成長投資枠でも、整理・監理銘柄や信託期間20年未満の投資信託、高レバレッジ型、毎月分配型は除外されています。自分がどちらの枠で何を買っているかを把握しておくと、含み損が出たときに冷静な判断がしやすくなります。
非課税保有期間の無期限化と制度の恒久化
新NISAでは非課税で保有できる期間に期限がありません。金融庁は、若年期から高齢期に至るまで長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、非課税保有期間を無期限化しました。あわせて口座開設可能期間にも期限を設けていません。*1
期限がないということは、含み損が出ていても「期限切れで損が確定する」心配がないことを意味します。長期投資を前提とした資産運用では、この仕組みが大きな支えになります。
非課税保有限度額と売却後の枠の再利用
新NISAでは、生涯を通じての非課税保有限度額が1,800万円に設定されています。そのうち成長投資枠は1,200万円が上限です。*5
また、保有していた商品を売却すると、翌年以降にその分の非課税枠が復活します。つまり、一度使い切っても再び投資に充てることが可能です。非課税枠の再利用が可能であることを踏まえると、含み損だけを理由に直ちに売却する必要性は相対的に低いといえます。枠の上限と再利用の条件を把握しておくことで、資産運用の計画を長い目で組み立てられます。
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含み損でも慌てない長期投資の考え方
長期・積立・分散がブレにくい理由
長期の積立投資では、購入時期を分散することで、取得単価を平準化させ高値掴みとなる可能性を低減させる効果が期待できます。いわゆるドルコスト平均法の考え方で、短期の上下に一喜一憂しにくい仕組みです。
※投資対象が値上がりを続けた場合や、結果的に下がってしまった場合は一括購入の方が有利になる場合があります。
金融庁は、1990年1月のバブル崩壊直前の翌月から2020年3月まで毎月1万円ずつ日経平均に積立投資を行ったシミュレーションを公表しており、2020年3月の市場下落局面を含めても、投資総額363万円に対して評価額は472万円とプラスになったとしています。このデータから、資産形成は長期的な視点で行うことが大事であるとわかります。*6
過去データを用いた金融庁のシミュレーションでは、バブル崩壊直前から積立投資を行ったケースでも、長期では評価額がプラスとなった結果が示されています。
※過去のデータであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
2年目は1年目の振り返りで投資行動を整える
NISA2年目は、1年目に選んだ商品や買付額を振り返る良い機会です。含み損があるかどうかだけでなく、そもそも投資の目的に合った商品を選んでいるか、毎月の買付額が家計に無理を与えていないかを点検してはいかがでしょうか。
有識者会議では、家計の特徴として長期投資との親和性が高いという点があり、政策的に家計の長期的な株式保有を優遇することの費用対効果は大きいと指摘されました。*2
家計の収支と投資のバランスを整えたうえで続けることが、長期投資の土台になります。資産運用を「生活の一部」として無理なく組み込むことが、2年目の行動を安定させる鍵です。
見るべき指標は損益より家計と継続性
NISA2年目の段階では、評価損益の数字よりも、投資を継続できているかどうかに目を向けることが有効です。含み損が出ていても積立を止めずに続けられているなら、長期投資の方針は機能しています。
生活防衛資金を確保したうえで投資に回す金額を決めることが前提となっています。毎月の家計の収支を確認し、投資額が生活を圧迫していないかを定期的にチェックすることが、含み損よりも優先すべき指標になると思われます。
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含み損が出たときの具体的な対処
積立の継続と買付額の調整の判断基準
含み損が出たときは、家計の余裕度を基準に「積立を続けるかどうか」を判断してはいかがでしょうか。結論を急ぐ前に家計の状況を確認し、生活防衛資金が十分に確保されているなら、積立を継続する方針を検討してみてください。
NISA制度は安定的な資産形成を目的とするものと位置づけられています。含み損が出たことだけをを理由に積立を止めてしまうと、長期的な資産形成の流れが中断されてしまう可能性があります。家計の状況を踏まえたうえで判断することが大切です。毎月の買付額を一時的に減らしてでも継続する選択肢を検討することが、長期投資を途切れさせないための対処法といえます。
売却前に確認したい商品性とリスク
売却を考える前に、保有商品の性質が投資目的に合っているかを確認します。含み損に耐えられず売却を考えるとき、その前に保有商品の性質を確認します。投資信託であれば、投資対象や運用方針、信託期間などを改めて見直します。長期保有を前提とした商品であれば、短期の値動きで売却する必要性は低い場合が多いです。
2024年中につみたて投資枠で売却された理由として最も多いのは「利益確定のため」の37.0%で、次いで「現金が必要となったため」が27.8%、「リスク調整(リバランス)のため」が24.4%でした。*3
売却理由の上位に「含み損が不安だから」は入っていません。売却を検討する際は、いま現金が必要かどうか、商品のリスクが自分の許容範囲を超えていないかを軸に判断するとよいでしょう。
NISAでは損益通算できない点の理解
NISA口座で生じた損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算ができません。これはNISAの非課税というメリットの裏側にある特徴です。課税口座であれば、ある銘柄の損失を別の銘柄の利益と相殺して税金を減らせますが、NISA口座ではその仕組みが使えません。*7
そのため、NISA口座で含み損が出ている商品を売却して損失を確定しても、税金面でのメリットは得られません。売却によって非課税枠の簿価が減り、翌年以降に枠が復活するとはいえ、損失そのものは取り戻すことはできないのです。
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注意しておきたい行動
短期成績で乗り換えを繰り返すこと
短期の成績だけを見て頻繁に売買を繰り返すと、長期投資のメリットを十分に活かしにくくなる場合があります。含み損が出ると、成績の良い別の商品に乗り換えたくなることがあります。しかし、NISAでは、売却のたびに非課税枠を消費するため、短期的な成績比較だけで判断することは、結果として投資効率を下げてしまうこともあります。
2024年におけるNISAの継続保有率は86.1%と高く、特につみたて投資枠では94.2%となっています。1銘柄も売却していない割合も79.5%に達しました。*1
多くの利用者が売却せずに保有を続けている状況です。短期の成績に振り回されて乗り換えを繰り返すよりも、当初の方針を維持して積立を継続することが、長期投資では合理的と考えられる対応といえます。
成長投資枠での集中投資と回転売買の落とし穴
成長投資枠では、特定の銘柄への集中や短期間での売買が増えやすく、値動きの影響をうけやすくなる場合があります。また成長投資枠は個別株式も購入できるため、特定の銘柄に資金を集中させたり、短期間で売買を繰り返したりする行動が起きやすい枠です。集中投資や回転売買は当たれば大きな利益が得られる可能性もありますが、外れたときの損失も大きくなる可能性があります。分散や保有期間を意識することが安定性につながると考えられます。
金融庁は、金融機関が顧客に対して成長投資枠を活用した回転売買を無理に勧誘するような行為を規制するため、監督指針を改正し、金融機関に対する監督およびモニタリングを強化する方針を示しています。*4
成長投資枠を使う場合でも、分散を意識し、頻繁な売買を避けることは、資産運用の安定性を保つうえで大切といわれています。
長期投資で慎重に考えたい商品の特徴
新NISAでは長期・積立・分散投資を後押しする観点から、長期投資に適さないと判断された商品があらかじめ除外されたうえで、対象商品が整理されています。しかし、新NISAで買える商品の商品性(特徴)によっては長期投資と相性を確認しておきたいものもあります。ここでは、判断の際に意識しておきたい代表的な特徴を整理します。
値動きが大きく、短期的な価格変動の影響を受けやすい商品
価格変動が大きい商品は、評価額の上下も大きくなりやすく、途中経過で不安を感じやすくなることがあります。長期で保有する場合には、自身のリスク許容度との整合性を確認することが重要です。
商品構造が分かりにくい、または保有期間が限定されている商品
仕組みが複雑な商品や信託期間が短い商品は、長期保有を前提とした場合に想定外の影響を受ける可能性があります。価格がどのような要因で動くのかを理解しやすいかどうかが、継続のしやすさにつながります。
特定のテーマに偏りやすい商品
特定のテーマに特徴のある商品は分かりやすい反面、資産全体の成長や分散の観点では注意が必要な場合があります。長期投資では、全体のバランスを意識することが大切です。
長期投資に向いているかどうかは、商品そのものだけで決まるものではありません。
投資の目的や期間、家計とのバランスを踏まえ、「長く保有し続けやすいか」という視点で考えることが、NISAを活用した資産形成を安定させるポイントになります。
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おわりに
NISA2年目に含み損が出ていても、それは長期投資の過程でしばしば起こりうることです。非課税保有期間が無期限である新NISAの仕組みを理解し、投資目的と家計のバランスを確認することで、不安は大きく軽減できるでしょう。
押さえるべきポイントは3つあります。まず、短期の損益ではなく投資の継続性を重視すること。次に、生活防衛資金を確保したうえで無理のない金額で積立を続けること。そして、成績だけを理由にした頻繁な乗り換えや回転売買を避けることです。これらを意識しながら、自分のペースで資産運用を続けていくことが、NISA2年目以降の土台になると考えられます。
*1 出所)金融庁「 説明資料(令和7年4月3日、NISAに関する有識者会議 資料3)」
*2 出所)金融庁「「NISAに関する有識者会議」(第1回)議事要旨 」
*3 出所)日本証券業協会「 新NISA開始1年後の 利用動向に関する調査報告書」
*4 出所)金融庁「 アクセスFSA 第234号」
*5 出所)金融庁「 NISAを知る」
*6 出所)金融庁「 つみップオンライン」
*7 出所)国税庁「 No.1535 NISA制度」










