ポイント
投資を始めたいけれど、大きく損をするのが怖いという方は多いのではないでしょうか。「分散投資」は、そうした不安に対処する可能性がある方法の一つです。
この記事では、分散投資の効果がどのような仕組みで生まれるのか、そしてどんな種類やメリット・デメリットがあるのかを順を追って整理していきます。やりがちな失敗パターンまで押さえておくと、自分に合った投資の進め方を考えやすくなります。
分散投資とは何か――定義とリスクの基本
投資における「リスク」の正しい意味
「リスク」と聞くと「危険」や「損をする可能性」を思い浮かべるかもしれません。しかし、資産運用の世界では、リスクは「リターンの変動」、つまりリターンのブレを指すのが一般的です。株式や債券のリターンは、配当や利息によるインカムゲインと、価格の上下によるキャピタルゲインで構成されており、将来のリターンは確定していません。*1
つまり、リスクが大きいとは「大きく儲かるかもしれないが、大きく損をするかもしれない」という振れ幅が広い状態のことです。反対にリスクが小さければ、リターンの振れ幅も小さくなります。この「振れ幅」の大きさをどう抑えるかが、分散投資の出発点になります。
分散投資の定義とリターンを安定させる効果
分散投資とは、投資対象を広く分散させることで偏ったリスクをとらず、収益率の変動幅を小さくすることを期待できるようにする方法です。金融商品のリターンを予測することは不可能であり、今年の上昇率が高かったから来年も高い、とは限りません。短期的な価格変動は予測が難しく、ランダム・ウォークに近い挙動を示すと説明されることが多いです。*2
投資の世界には「すべての卵を一つのカゴに入れるな」という格言があります。*3
ひとつの商品に資金を集中させると、その商品が値下がりしたときに資産全体が大きな打撃を受けます。複数のカゴに分けておけば、ひとつが落ちても残りは無事です。消費者庁の教材でも、投資対象を分散させることでリターンを安定させる方法として、異なる企業の株式や安全性の高い債券に投資対象を分散する手段が挙げられています。*4
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分散投資の効果が生まれる仕組み
リスクとリターンのトレードオフと相関係数の役割
運用資産にはそれぞれ異なった特性があります。一般的にリスクの小さな資産は得られるリターンも小さく、リスクの大きな資産からは高いリターンが得られるとされています。この関係を「リスクとリターンのトレードオフ」と呼びます。*1
分散投資の効果を高めるカギになるのが、資産同士の値動きの関係です。たとえば株式と債券の値動きには、株式が下落したときに金利が低下して債券価格が上昇するなど、互いに補い合う逆相関が見られることが長期平均では多いとされています。値動きが反対方向に動きやすい資産を組み合わせると、一方が下がっても他方が上がることで全体の振れ幅が小さくなります。こうした相関の違いを活かすことが、分散投資の効果が生まれる根本的な仕組みです。*3
標準偏差で見る分散効果の数値的イメージ
リスクの大きさは、リターンの標準偏差という数値で表されます。標準偏差が大きいほどリターンの振れ幅が大きく、リスクが高いことを意味します。GPIFが2025年4月1日より適用した基本ポートフォリオの策定時に用いた数値では、日本株式の期待リターンは4.8%、リスクつまり標準偏差は約19%です。*1
これは、年次リターンが正規分布に近いと仮定した場合、期待リターン4.8%を中心に±1標準偏差(約19%)の範囲に収まる確率が約68%と解釈されます。日本株式だけに集中すると、この振れ幅をそのまま受けることになります。複数の資産を組み合わせるとポートフォリオ全体の値動きを安定化させ、リスクを低減させる効果が期待できます。
※過去の実績・状況または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではございません。
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分散投資の4つの種類――資産・地域・通貨・時間
資産クラスの分散(株式・債券・オルタナティブ)
分散投資の具体的な方法は大きく4つに分けられます。
まず1つ目は、株式や債券などの商品の分散です。*2
株式だけ、あるいは債券だけに偏らず、値動きの性質が異なる資産クラスを組み合わせることがポイントになります。
一般的に株式と債券は相関関係が低いとされており、バランスファンドはリスクをコントロールした効率的な運用を目指しています。1つの資産クラスに資金のすべてを集中させず、複数の資産クラスを持つことで、特定の市場が下落したときの影響を和らげる構造をつくることが、資産クラスの分散における基本的な考え方です。*3
地域・通貨の分散と為替リスクへの備え
2つ目は国や地域の分散、そして3つ目は円やドルなどの通貨の分散です。*2
日本だけに投資していると、日本経済が低迷したときに資産全体が落ち込みます。海外の市場にも資金を振り向けると、特定の国の景気に資産が左右されにくくなります。
海外資産を持つ場合は通貨の変動リスクも生じるため、どの通貨建ての資産をどの程度持つかを確認しておくことが大切です。
時間の分散(ドル・コスト平均法)と積立投資の効果
4つ目は、積立などによる時間の分散です。毎年一定金額で同じ銘柄を複数回に分けて購入すると、安いときには多くの数量を買い、高いときには少ない数量しか買わないという効果が生まれます。この手法はドル・コスト平均法と呼ばれています。*2
ただし、特定の投資対象が値上がり続けたり、一旦上がってその後下落する場合等は、購入時期を分散させるよりも一度に全額投資した方が結果的に有利になる場合があります。
リスクを抑えた投資を行いたい場合に意識すべき方法としては、長期投資、分散投資、積立投資の3つが挙げられます。*4
一度にまとまった金額を投じるのではなく、購入のタイミングを分けることで、高値づかみのリスクを減らすことができます。これから投資を始める方は、資産・地域・通貨・時間の4つの切り口を組み合わせて検討してみてください。
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GPIFのポートフォリオに見る分散投資の実践例
GPIFは分散投資をどう実践しているか
分散投資を大きな規模で実践している例として、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が挙げられます。GPIFは、相場の上げ下げに合わせて資産配分を頻繁に変えるよりも、あらかじめ決めた配分を長く保つほうが、長期運用では安定した成果につながりやすいとしています。*6
このためGPIFでは、積立金をどの資産にどれだけ配分するかという基準として、「基本ポートフォリオ」を定めています。これは、期待できる収益とリスクの大きさを踏まえて決められた、年金運用の土台となる配分です。*6
GPIFの基本ポートフォリオの中身
GPIFの基本ポートフォリオは、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式にそれぞれ25%ずつ配分する、4資産の均等配分です。値動きによって配分がずれたときに許容される幅も定められており、一定の範囲に収まるよう管理されています。
この配分は、年金運用に必要な利回りを確保しながら、できるだけリスクを抑える考え方に基づいています。日本と海外、株式と債券に幅広く振り分けることで、特定の国や資産の値動きに偏りすぎない形にしているのが特徴です。つまり、GPIFは、資産の種類と投資先の地域の両方で分散投資を行っています。*6
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分散投資のメリットとデメリット
リスク低減と安定的リターンというメリット
分散投資の主なメリットは、リターンの変動幅を抑えて資産全体の値動きを安定させる点にあります。金融庁は、NISAにおける継続保有率や非売却率が高水準にあることから、長期的に資産形成を行う意識がNISA利用者に一定程度浸透していると分析しています。*7
長期で保有を続けられる理由の一つは、分散投資によって大きな下落局面でも資産全体の損失が限定されやすいからです。一発で大きな利益を狙うのではなく、安定したリターンを積み重ねたい方にとって、分散投資の効果は大きな味方になると考えられます。
リターンの上限が抑えられるデメリット
分散投資にはデメリットもあります。値動きの異なる資産を組み合わせるため、特定の資産が大きく上昇したときにも、その恩恵を資産全体でフルに受け取ることはできません。リスクを抑える効果の裏返しとして、リターンの上限も抑えられる構造です。*8
さらに、複数の資産を保有すると、それぞれの値動きや配分のずれを定期的にチェックする手間が発生します。特定企業の株式等1つの銘柄に資金のすべてを集中させていなくても、米国株式だけ、日本株式だけ、あるいは株式だけといった特定の国や地域・資産クラスへの依存も同様に偏りになります。*5
分散の幅を広げるほど管理コストも増える可能性があるため、無理なく続けられる範囲を見極めましょう。
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分散投資の注意点
「分散できている」という誤解
投資する本人が分散投資をしているつもりでも、実際はそうではないという場合が多くあります。
全世界株式型ファンドは、日本を含む先進国や新興国など、世界中の株式に幅広く投資するタイプの投資信託です。こうした商品は、1本で幅広い地域に投資できることから、分散投資の入り口として注目されることがあります。*8
全世界株式型ファンドは、地域の分散に関してはある程度の効果があります。しかし、投資先の地域は広く分かれていても、資産クラスとしては株式に集中している点に注意が必要です。「世界中に投資している=十分に分散できている」とは必ずしも言えません。分散を考えるときは、投資先の地域だけでなく、株式と債券のように値動きの異なる資産を組み合わせているかという視点も大切です。*8
株式偏重ポートフォリオのリスクと初心者の投資中断
新NISAをきっかけに投資を始めた人も多くいます。
初心者を含めた個人投資家の関心が高いファンドは、全世界株式型や米国S&P500指数などの株式型ファンドに偏っています。ただし、長期の資産形成では、1つの商品や1つの資産クラスに偏るのではなく、分散投資の考え方を理解しておくことが重要です。*8
分散投資の仕組みと効果を正しく理解しないまま株式偏重のポートフォリオを組むと、下落局面で不安に駆られ売却してしまうリスクが高まります。売却することは損失を確定して市場から退出することになるので、その後の市場の回復局面の恩恵を享受できないことになります。自分が保有している資産全体のバランスを定期的に見直す習慣をつけておくことが、長く投資を続けるための土台になります。
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おわりに
分散投資の効果は、資産クラスや地域、通貨、時間という4つの切り口でリスクを抑えるところに生まれます。GPIFの4資産均等配分のように、公的年金の運用でも長期にわたって実践されている手法です。
大切なのは、「分散しているつもり」にならず、自分のポートフォリオが特定の資産クラスや地域に偏っていないかを定期的に確認することです。基本的な数値とその意味を押さえつつ、無理なく続けられる範囲で資産配分を考えてみてください。
分散投資は損失を回避する投資手法ではないため、金融市場や経済の動向等により保有資産が値下がりし、損失が発生することもございます。
*1 出所) 年金積立金管理運用独立行政法人「分散投資の意義② 投資のリスクとは」
*2 出所) 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「分散投資の考え方」
*3 出所) 年金積立金管理運用独立行政法人 「分散投資の意義③卵を一つのかごに盛るな」
*4 出所) 消費者庁 消費者教育教材(金融・投資分野)「事業者向け消費者教育プログラム」
*5 出所) eMAXIS(イーマクシス)「eMAXISバランスとは? | eMAXIS(イーマクシス)」
*6 出所) 年金積立金管理運用独立行政法人「基本ポートフォリオの考え方」
*7 出所) 金融庁「NISAに関する有識者会議資料(NISA制度の利用状況・分析資料)」
*8 出所) 金融庁「資産形成の基本:NISA特設ウェブサイト」










