ポイント
2025年12月時点では、日本では長引く低金利政策の修正や世界経済の変動を背景に、金利が上昇しつつある局面を迎えています。
本記事では、投資信託や住宅ローン、預金金利の動きから家計全体へのインパクトまで、金利上昇がもたらす具体的な影響を解説します。
投信・投資信託への影響
投資信託は、投資家から集めたお金をひとつにまとめ、運用会社が株式や債券などに投資して運用します。運用で生じた損益は、投資額に応じて投資家に帰属します。投資信託の値動きを表す「基準価額」は、組み入れている資産を時価評価した金額などをもとに算出されるため、株価や債券価格が動けば、基準価額も上下します。*1,*2
金利が上がる局面では、新しく発行される債券の利回りが高くなり、相対的に利回りの低い既存債券は魅力が下がるため、債券価格は下がりやすくなります。
債券を多く組み入れた投資信託では、この債券価格の変動が基準価額に反映されます。加えて、金利の変化は株式の評価にも影響しやすく、株式・債券の両方を組み入れる投資信託でも、基準価額は変動します。*3
また、金利が高い状態は資金調達コストの上昇につながり、信用(貸出)や民間投資の伸びが鈍化する傾向が考えられます。金融環境が引き締まると資産価格の見直しも起きやすくなり、リスクの高い資産への投資は、配分を慎重に検討する場面が増えます。
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投信市場の動向
投資信託市場は債券型、株式型、バランス型など多様な商品で構成されています。
金利が上昇すると、企業の借入コストが上がり、資金調達が難しくなることで業績見通しが慎重になりやすく、株式市場はリスクを取りづらくなる傾向があります。
実際、中小企業1,000社を対象にした2023年12月から2024年12月の調査でも、金利上昇を理由に設備投資を見直した事例が多く報告されています。*4このような企業活動の抑制は、株式を多く組み入れた投信のパフォーマンスにも影響を及ぼします。
日本国債の金利上昇局面に起きたVaRショック(2003年6月に日本で起きた債券価格の暴落)は、金融機関が保有する債券ポートフォリオの評価損を誘発し、投信市場にも影響を与えたと分析されています。*5
ただし、すべての投資信託が同じように影響を受けるわけではありません。短期債券を中心としたタイプや、金利上昇に強いセクターに注力する投資信託もあります。投信市場の動向は金利上昇の影響を受けつつも、個別の商品設計や運用方針によって異なる結果となる点を理解しておかなくてはいけません。
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海外投資と国内投資
海外資産を組み込む投資信託は、株式や債券そのものの値動きに加えて、円と外貨の交換レートの変化でも基準価額が動きます。たとえば外貨建て資産を円に換算するとき、円高(円の価値が上がる方向)なら円換算の評価額が小さく、円安なら円換算の評価額が大きくなります。*6
為替は金利とも関係します。一般に、金利差が広がると高金利の通貨が選ばれやすくなりますが、実際の円高・円安は、日米などの金融政策の見通し、物価や景気、投資家のリスク姿勢といった複数の要因が同時に作用して決まります。日本でも2024年に、金融政策の転換が意識される局面と並行して円安方向に進む局面があり、4月下旬〜5月にかけては為替の大きな変動と、財務省による円買い介入の実施が確認できます。*7このため、「金利が上がったから円高」のように一方向で整理するのではなく、為替変動そのものを前提に投資信託の値動きを見ておく必要があります。*8
こうした局面では、資産の持ち方を分散する、為替ヘッジの有無を商品選定で確認する、といった整理がポイントになります。なお為替ヘッジは、金利差などを背景にコストが生じ、基準価額に影響することがあります。*9
一方、国内の債券で運用する場合でも注意点はあります。金利が上がると新規発行の債券は利回りが上がりやすい反面、すでに発行されている低い利率の債券は価格が下がりやすくなります。そのため、保有債券の評価損が一時的に生じる局面があり、どのタイミングで高い利回りの新発債へ入れ替えるのかが、運用成績に影響します。*3
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住宅ローンへの影響
住宅ローンは家計の中でも特に長期的な支出の多くを占めるため、金利上昇の影響をダイレクトに受ける領域です。ローンの返済額は「借入金額」「金利」「返済期間」によって大きく変わるため、金利水準の変化が生活費に直結します。これから住宅を購入しようとしている方だけでなく、すでに借り入れを行っている方も、金利の上昇局面では早めの情報収集と対策が求められます。
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変動型と固定型の比較
住宅ローンの金利タイプには「変動型」と「固定型」があります。変動型は市場金利や銀行の指標金利の動向に応じて、半年ごとなど一定サイクルで適用金利が見直されます。一方、固定型は借り入れ時に決めた金利が一定期間変わらないため、金利上昇の影響を抑えやすい反面、当初の金利水準が変動型より高めに設定される傾向があります。
米国の住宅ローン金利は2024年11月時点で30年物固定住宅ローン金利が6.81%まで上昇しました。これはFRB(米連邦準備制度)が利下げを実施したにもかかわらず、大統領選挙結果などで国債利回りが高止まりしたためと報じられています。*10
一方で日本でも、マイナス金利の緩和を示唆した日銀の政策変更を受けて、多くの銀行で住宅ローン基準金利の上昇が進んでいます。*11
特に変動型金利を選択している場合、半年ごとに返済額が変わる可能性があるため、金利の先行きが見えにくい状況では慎重なシミュレーションが必要です。固定型でも、契約期間終了後には再度金利タイプを選ぶタイミングが訪れることがあり、その際に金利が上昇していると返済負担が大きくなる可能性があります。*12
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金利上昇時のリスク
金利が上がると、毎月の支払い額が増加し、総返済額も増えるため、家計のキャッシュフローを圧迫します。例えば、借入金額3500万円、借入期間35年では、金利0.5%から0.7%への小幅な上昇でも、毎月の返済額は約3000円増え、総返済額は約130万円増えるという試算があります。*13
金利が1%以上引き上げられれば、負担はさらに大きくなります。日本銀行の政策金利が上昇に転じると、それに連動して長期金利も上昇しやすくなり、結果として住宅ローン金利が高くなります。
このような流れは借り手の家計負担に響きます。特に変動型ローンでは、短期間で返済額が増えるリスクに注意が必要です。固定型でも、更新時期と金利上昇が重なると負担が急増する場合があります。
金利上昇時のリスクを軽減するには、繰り上げ返済で元本を早めに減らす方法や、複数の金融機関で借り換え条件を比較して有利な金利設定を探すことが効果的です。
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預金金利への動向
金利上昇局面では、銀行が預金者に支払う利息も上昇する傾向があります。預金で資産を管理している方にとっては、金利の上昇は一見好ましいニュースですが、実際にどの程度の利率が提示され、どれほど家計にプラスになるかは銀行ごとに異なります。
普通預金と定期預金の違い
預金金利には普通預金と定期預金があり、それぞれ適用される利率が大きく異なります。普通預金はいつでも引き出しが可能なため、金利は低めに設定されるのが一般的です。一方、定期預金は一定期間引き出さないことを条件に、普通預金より高い利率が適用されます。
金利上昇局面ではこの利率差が大きくなることもあり、普通預金のままで良いのか、あるいは定期預金に振り分けたほうが良いのか、慎重に検討する必要があります。
FSA Analytical Notes(2025年5月版)によれば、金利上昇時には預金の残高伸び率がやや高まる傾向が見られる一方、業態別の差も大きく、一概に高金利の銀行を選べばよいとは限らないと指摘されています。*14
預金者は自身の流動性の必要性や資産運用の目的を整理し、普通預金と定期預金のバランスを考えることがポイントです。定期預金の金利が上がった場合でも、その後の金利動向によって預け入れ期間の設定が変わるため、慎重な判断が求められます。
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ネット銀行の増加
近年はインターネット専業の銀行(ネット銀行)が増え、高めの預金金利を掲げて預金を集めるケースが増加しています。金利上昇局面ではこの動きがさらに強まる傾向があります。ネット銀行は店舗を持たない分、固定費を抑え、その分を金利に還元できるためです。実際、金利が上昇したタイミングで新規口座開設や資産移動が増えたという報告もあります。
ただし、ネット銀行は貸し出しを含む総合的な銀行ビジネスを展開していない場合、金利変動による利ザヤを得にくいこともあります。加えて、債券投資でのリスクや資金繰りの安定性など、ネット銀行ならではの課題も指摘されています。預金金利が上昇しているからといって、銀行の経営体質や預金保険制度を十分に理解せずに大きな額を預けると、思わぬリスクを抱える可能性があります。預金の利息収入が増えるメリットは確かですが、金融機関のリスク許容度や運営状況も考慮しながら預金先を選ぶことが大切です。
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家計へのインパクト
家計では、上述したように住まいに関わる支出(家賃などの住居費)や、住宅ローン返済が負担として大きくなりやすいですが、消費支出の内訳では食料も大きな割合を占め、日々の生活費が家計を左右します。*15
ただし、企業側では資金調達コストが上がると、設備投資や採用の判断が慎重になると考えられます。日本銀行は、金融引締めが企業や個人の借入をしにくくし、経済活動を抑え、物価に押し下げ圧力が働く流れを説明しています。*16
つまり、物価への影響は一方向ではありません。金利上昇は需要を冷やして物価上昇圧力を弱める経路があるため、「金利が上がる=物価が上がる」と決め打ちせず、需要とコストの両面で家計への波及を分けて見ておく方が安全です。
また、需要の減少が雇用に波及するメカニズムとして、内閣府は「発注量の減少→売上の減少→雇用需要の減少」という流れを整理しています。住宅市場の減速が不動産・建設周辺の雇用や家計の所得環境に間接的に影響するのです。*17
一方で、金利上昇は「借りる側」だけでなく「預ける側」にも波及します。日本銀行は、金融機関が政策金利や市場金利の変化を踏まえて貸出金利だけでなく預金金利も設定しています。*18家計では、ローン負担が増える一方で預金利息が増える局面もあり得ますが、どちらがどれだけ家計のキャッシュフローに効くかは、借入残高・固定/変動の内訳・預金残高・見直しのタイミングによって変わります。
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家計防衛のポイント
家計防衛のポイントとしては、まず固定費の内容と「金利に連動する部分」を分解して把握することが現実的です。
住宅ローン返済中であれば、
- 適用金利の見直し頻度
- 返済額の見直しタイミング
- 返済額の上限や未払利息の扱い
- 固定期間終了後の再選択条件
などを契約書面で確認し、支払い増が出るなら家計の安全余裕資金(生活防衛資金)を厚めに取る、という順で備えましょう。*12
また、保険についても影響は無視できません。生命保険の保険料は、保険会社が資産運用による一定の運用収益を見込み、その分保険料を割り引く「予定利率」という考え方を含んで計算します。
金利環境が変わると新規契約の設計(予定利率を含む前提)が見直され、商品によっては保険料や返戻の考え方に影響が出ます。保険は「金利が上がれば必ず得」といった単純な話になりにくいため、家計全体(ローン、生活費、資産運用)と同じ表で見比べて判断するのが安全です。
資産運用面では、金利上昇は債券価格に下押し要因になりやすい一方、新規に買う債券の利回りが高くなる側面もあります。金利上昇局面を「損得」で一括りにせず、保有資産の目的(短期の現金化か、長期の積立か)と、価格変動・為替変動・金利変動のどれをどこまで取るかを、配分と期間で調整することが現実的です。*19
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おわりに
金利が上昇する局面では、多くの金融商品を検討する機会が増え、より慎重な資金計画が求められます。投資信託や住宅ローン、預金金利はいずれも家計や企業活動と深く結びついています。金利動向によるプラス面とマイナス面を把握しながら、どの選択肢が自分のライフプランに合っているかを見極めることが大切です。
特に住宅ローンは毎月の返済額が家計を大きく左右しますし、投資信託や預金の選び方次第で将来への備えも変わります。先の見えづらい時代だからこそ、複数の金融商品を相互に照らし合わせて判断することが大切です。
*1三菱UFJアセットマネジメント「投資信託の基本と仕組み」
*2)三菱UFJアセットマネジメント「基準価格ってなに?」
*3)日本証券業協会「投資の時間 いまさら聞けない投資Q&A」
*4)中小機構「円安等の影響に関する調査報告」
*5) 財務省「VaRショックについて―2003年における金利急騰時のケース・スタディ―」
*6)三菱UFJアセットマネジメント「為替変動リスク」
*7)財務省「統計表一覧(外国為替平衡操作の実施状況)」
*8)三菱UFJ銀行「円安はいつまで続く? 為替変動の要因やメリット・デメリットをわかりやすく解説」
*9)三菱UFJアセットマネジメント「為替ヘッジ」
*10) JETRO「11月の米住宅ローン金利は上昇傾向も、住宅建設に対する事業者の信頼感は安定」
*11)三菱UFJ銀行「【住宅ローン】変動金利の基準金利見直しについて」
*12)三菱UFJ銀行「金利タイプの選び方」
*13)三菱UFJ銀行「毎月の返済額を試算する」
*14)金融庁「FSA Analytical Notes ⾜元の預⾦動向の実態把握と⾦利上昇との関係にかかる分析 」
*15)総務省統計局「家計調査報告 家計収支編」(2024年(令和6年)平均結果の概要)
*16)日本銀行「日本銀行について(金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?)」
*17)内閣府「第1部 第1章 第3節 年齢別地域別に異なる建設業の就業構造」
*18)日本銀行「調査・研究 金融システムレポート(2025年4月号)」
*19)三菱UFJ銀行「利上げとは?住宅ローンや為替・株価・物価に与える影響をわかりやすく解説」










