- 2024.09.24
- mattoco Life編集部
新NISAはメリットだけじゃない!押さえておくべき注意点を知って資産形成に活かそう
2024年からスタートした新NISAは制度内容が大幅に見直されました。「非課税期間の無期限化」「投資枠の拡大」など、制度変更によるメリットに注目が集まっています。
一方、新NISAをうまく活用するために、押さえておくべき注意点がいくつかあります。
今回は、新NISAを活用する際の注意点を解説します。
新NISAの概要 *1
NISAとは、投資の利益にかかる税金がゼロになる制度です。通常、株式や投資信託などの利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で投資すると非課税になります。
新NISAの概要は以下の通りです。
出所)金融庁「NISA」を知る
新NISAでは、旧制度のつみたてNISAが「つみたて投資枠」、一般NISAが「成長投資枠」となりました。
<旧制度からの主な変更ポイント>
- 非課税保有期間が無期限化
- 制度が恒久化
- 年間投資枠の拡大
- つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能
- 生涯を通じての非課税保有限度額1,800万円の新設
- 保有商品を売却した場合は、翌年以降に非課税保有限度額の再利用が可能
旧制度は時限的な制度でしたが、新NISAでは生涯にわたって非課税で運用を続けられます。年間投資枠は、つみたて投資枠が3倍の120万円、成長投資枠は2倍の240万円に拡大しました。両枠を併用すれば、年360万円までNISA口座で投資可能です。
新NISAの保有商品を売却した場合、翌年以降にその商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用できます。
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知っておきたい新NISAで押さえておくべき注意点
新NISAはさまざまなメリットがありますが、次のような注意点があることを理解したうえで利用することが大切です。
投資対象商品が限定される
つみたて投資枠の対象商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られます。成長投資枠は上場株式や投資信託等が対象ですが、次の条件に当てはまるものは対象外です。*1
- 監理・整理銘柄
- 信託期間が20年未満の投資信託
- 毎月分配型の投資信託
- デリバティブ取引を用いた一定の投資信託
投資したい金融商品が、新NISAの対象商品に含まれているとは限らない点に注意しましょう。
なお、つみたて投資枠の対象商品は金融庁、成長投資枠の対象商品は投資信託協会のホームページで公表されています。*2*3
成長投資枠だけでは非課税保有限度額を使い切れない *4
新NISAの非課税保有限度額1,800万円のうち、成長投資枠で投資できるのは1,200万円までです。1,800万円の枠を使い切るには、つみたて投資枠も利用する必要があります。なお、つみたて投資枠だけで1,800万円の枠を使い切ることは可能です。
新NISAは損益通算や繰越控除の対象外
損益通算とは、複数の口座で生じた利益と損失を合算することです。繰越控除とは、損益通算しても損失があるときに、その損失を最大3年間繰り越して翌年の利益から差し引くことを指します。
どちらも税負担の軽減につながる仕組みですが、新NISAは損益通算や繰越控除の適用対象外となっています。
NISA口座内でのスイッチングができない
スイッチングとは、これまで運用してきた商品を売却して別の商品を購入し、資産配分を変更することです。iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型確定拠出年金はスイッチングができますが、新NISAは対応していません。
新NISAでは、一度売却した枠は、年内には復活しません。投資先を替えるために商品を買い直したくても、その年の非課税投資枠が余っていない場合は、翌年に投資枠が復活するのを待たなくてはなりません。
米国株式・ETFの外国税は非課税にならない
課税口座で米国株式や米国ETFに投資して配当金を得た場合、米国株の配当に対する課税は、米国で10%引かれた後に、日本でも所得税(復興特別所得税含む)と地方税の合計で20.315%が源泉徴収されます。*51つの利益に2つの国で課税される「二重課税」の状態なので、確定申告をして外国税額控除が適用されると米国で課税された税金は戻ってきます。
新NISAの場合、国内の税金は非課税になりますが、米国での10%は課税されます。二重課税ではなくなるので、米国で課税される10%の税金については支払わなくてはなりません。
未成年者は利用できない *6
新NISA口座を開設できるのは、口座開設を行う年の1月1日時点で18歳以上の人です。2023年までは、ジュニアNISAを活用することで未成年者でも非課税で投資ができましたが、新NISAでは、未成年者が非課税で投資できる仕組みはありません。
海外転勤・赴任で投資を継続できない可能性がある
新NISAを利用できるのは、日本国内に住んでいる18歳以上の人です。海外転勤や海外赴任をすると非居住者となり、新NISAの対象者から外れてしまいます。そのため、最長5年の海外転勤などの場合は、引き続きNISA口座で金融商品を保有できる救済措置があります。
ただし、この制度に対応している金融機関は限られるため、新NISAで運用中に海外転勤・赴任が決まると投資を続けられなくなるかもしれません。海外転勤・赴任の可能性がある場合は、NISA口座で保有を継続できるかを確認しておくといいでしょう。
「株式数比例配分方式」を選択しないと配当金は非課税にならない *6
新NISAで上場株式の配当金、ETF・REITの分配金を非課税にするには、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」にする必要があります。
株式数比例配分方式とは、配当金や分配金を証券会社で受け取る方式です。一度選択すると、課税口座で保有している上場株式の配当金などについても、自動的に株式数比例配分方式が適用されます。
株式投資信託の分配金については、このような手続きは不要です。
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まとめ
新NISAはメリットだけでなく、この記事で紹介したような注意点もあります。とはいえ、非課税期間が無期限となり、年間投資枠も大幅に拡大されるなど、個人投資家にとって使い勝手のよい制度であることは事実です。将来のために資産形成に取り組むなら、無理のない範囲で新NISAをうまく活用しましょう。
*1 出所)金融庁「NISA」を知る
*2 出所)金融庁「つみたて投資枠対象商品」
*3 出所)投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」
*4 出所)金融庁「よくある質問(Q つみたて投資枠だけで非課税保有限度額(1,800万円)を使いきることはできますか?また、つみたて投資枠を使わず、成長投資枠だけを利用することはできますか?)」
*5 出所)三菱UFJアセットマネジメント「米国株の配当は二重課税って本当?引かれた税金を取り戻す外国税額控除について解説」
*6 出所)三菱UFJ銀行「新NISAにはメリットしかない?見落としがちなデメリットを、お金のプロが徹底解説」
*7 出所)日本証券業協会「知っておきたいNISAのポイント」