中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは?メリットや課題、電子マネー等との違いを解説

中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは?メリットや課題、電子マネー等との違いを解説

たびたびニュースで取り上げられる中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)ですが、そのメリットや課題はどこにあるのでしょうか。
本記事では、CBDCのメリットと課題、混同されやすい電子マネーや暗号資産との違いについて解説します。

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CBDCとは

そもそもCBDCとはどのような特徴を持つのでしょうか。一般的には以下の3つを満たすものといわれています。

  1. デジタル化されていること
  2. 円などの法定通貨建てであること
  3. 中央銀行の債務として発行されること

中央銀行が提供している銀行券は、誰であっても365日24時間使える支払い決済手段としての性質を持っています。このように現状、紙幣や硬貨で提供されているものを、デジタル化した通貨がCBDCです。より簡潔に表現するならば、CBDCとは中央銀行が発行する電子的な通貨のことです。*1 *2

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各国におけるCBDCの検討状況は

現時点で、日本銀行がデジタル通貨を発行する計画はありません。しかし、新たな情報技術を深く理解するという観点から、CBDCについては日本銀行も含め、各国で研究が進められています。*1

例えば、日本銀行と欧州中央銀行の共同調査プロジェクトとして、CBDCのプラットフォームとなりうる分散型台帳技術の調査がなされ、2020年には第4フェーズの報告書が公表されました。*3

また、スウェーデンにおいては、CBDCを検討する背景に、キャッシュレス化の浸透によって起きた問題があります。キャッシュレス化が進んだ結果、現金を使用できる小売店が減少し、銀行口座を持たない人の購買に支障をきたす状況が生まれているのです。国民が広く中央銀行の発行するお金を国民が広く使用できるようにすることの打ち手として、CBDCを検討している事例です。*4

カンボジアやバハマといった発展途上国においては、自国通貨や決済のインフラが完全には整っていないことを背景に、決済制度の構築としてCBDCを採用しています。経済インフラが未整備な一方、スマートフォンの普及率は高いことがCBDC導入を後押ししたといえます。*5

中国においては、中国人民銀行によるCBDCは、流通現金の代替を明確な目的にしています。現金の発行や流通にかかるコスト削減のほか、偽造・マネーロンダリング・テロ資金供与を防止するといった不正防止が大きな狙いです。*4

このように、CBDCの検討・導入の目的や背景は国によって異なるものの、各国が実用化にむけて着実に歩みを進めているといえるでしょう。

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CBDCのメリット

では、CBDCを導入するメリットはどのような点にあるのでしょうか。中央銀行や国民にとっての主なメリットを紹介します。*4 *6

誰もが利用できる「金融包摂」

スウェーデンの事例のように、キャッシュレス化の進行により銀行口座を持たない人の買い物に支障が生じています。
このように、銀行口座に紐づいたキャッシュレス決済が利用できない人も含め、誰もが金融サービスを利用できる「デジタル金融包摂」がCBDCのメリットの1つです。発展途上国においても、金融包摂がCBDC発行目的の1つとされる場合があります。

自国通貨・決済のインフラ整備

カンボジアやバハマの事例のように、発展途上国においては自国通貨や決済のインフラが未整備の場合もあります。そのような国の場合、CBDC発行によって新たに経済基盤を構築できるというメリットがあります。
既に安定的な自国通貨・決済システムが稼働している先進国と異なり、一から決済制度を設計するため、デジタル技術を全面的に採用しやすい点も利点でしょう。

コスト削減

従来の紙幣や硬貨といった現金は、物理的なものであることから、現金の発行・輸送・保管にコストがかかります。CBDC発行により、このような物理的なものを扱うためのコストが削減されるメリットがあります。日本銀行による発行・流通にかかるコストだけでなく、店舗における現金管理の人件費や輸送の際の警備費用なども削減可能になります。

国際決済を含めた利便性向上

CBDC普及によるメリットとして、現金をATMで引き出し持ち歩くことのリスクや手間の軽減が挙げられます。さらに、国際送金には現在多くの手数料が必要ですが、CBDC普及によって、国際送金の手数料減といったクロスボーダー決済の改善にも繋がります。

不正や犯罪の防止

匿名性の高い現金と異なり、CBDCは取引日時や取引をした人などの記録がなされます。そのためCBDCの普及は、通貨偽造・マネーロンダリング・テロ資金供与・麻薬売買といった不正や犯罪の防止に繋がるメリットがあります。中国におけるCBDC導入においては、不正防止を導入目的の1つとして挙げています。

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CBDCの課題

メリットの多いCBDCですが、導入における課題はどのようなものがあるのでしょうか。想定される主な課題を紹介します。*4

民間の決済サービスとの共存

日本においても「○○ペイ」といった民間事業者による決済サービスが普及しており、それらへの影響の大きさが懸念されています。CBDCの決済コストが民間の決済サービスより安く、さらに利便性が高ければ民間のサービスは維持が難しくなる可能性があります。日本銀行はこうした官による民業圧迫の結果、民間のイノベーションを止めてしまう可能性を懸念しています。

個人情報保護

CBDCでは取引情報が記録できるため、取引情報が全て中央銀行に集まります。国としては、そうした情報がビジネスに活用され自国経済が活発化するのが望ましいものの、個人のプライバシー侵害が起きないように個人情報保護をどのように行うかという制度設計上の課題も存在しています。

システムの安定とセキュリティ

物理的な現金と異なり、CBDCは停電や通信障害時に使用できなくなるリスクを持っています。さらに、CBDCシステムへのサイバー攻撃によるシステムダウンや情報の不正取得など想定され、CBDCシステムのセキュリティ対策は大きな課題です。

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CBDC・電子マネー・暗号資産の違いは

CBDCと混同されやすいものとして、電子マネーと暗号資産があります。発行体や通貨基準を軸に、それぞれの違いを確認してみましょう。

電子マネーとの違い

法定通貨を基準にデジタル化された「電子マネー」とCBDCの大きな違いは発行体です。CBDCは中央銀行が発行するものであるのに対し、電子マネーは民間企業などが発行します

さらに、使用できる店舗や場所が決済業者と契約を結んでいるところに限られる電子マネーに対し、CBDCは使える場所が限定されません。また、店舗などが代金支払いとして受け取った電子マネーを法定通貨に変えるには入金まで時間を要しますが、それ自体が法定通貨であるCBDCは現金化の時間を要さない点も大きな違いです。*7

暗号資産との違い

電子マネー同様、暗号資産の発行体は民間企業などで、発行体が中央銀行であるCBDCとの大きな違いです。さらに大きな違いとして、法定通貨を基準としているか否かという点があります。電子マネーは法定通貨を基準とする一方、暗号資産は法定通貨を基準としない独自単位です。また、発行体により裏付け資産の状況は様々ですが、一般的に裏付けとなる資産が無いことが多く、それ故に価格変動も非常に大きいことも特徴です。*8

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世界各国の今後の検討に注目

現在、世界各国がCBDCの実証実験や、導入の検討を進めています。日本銀行は現時点でCBDCの導入予定はないとしていますが、欧州中央銀行との調査を行うなど、日本においてもCBDCの可能性や課題について研究がなされています。日本を含めた今後の各国の動向や、自らが使う決済サービスとの関係に注目です。

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