SDGsは、持続可能でよりよい世界の実現を目指す国際目標です。SDGsが採択された2015年9月から8年以上が経過し、目標期限である2030年まであと7年程度を残すところになりました。
「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という印象的なスローガンからも窺えるように、SDGsはこの世界に存在するあらゆる分野がその対象です。金融分野にもSDGs達成に向けて果たすべき役割があります。*1
そこで注目されているのが、サステナブル投資です。
その意義とはどのようなものでしょうか。
SDGsの根幹「サステナブル」
まず、SDGsの概要と、SDGsの根幹である「サステナブル」についてみていきましょう。
SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2030年までに持続可能でよりよい世界の実現を目指す、国際目標です。*1
目標は以下の17で、その下に169のターゲット、231の指標が決められています(図1)。
図1 SDGsのアイコンと特徴
出典:外務省「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」p.2
図1の右側は、SDGsの特徴です。
「SD」と「Gs」
SDGsの「Gs」は「目標(Goals)」を指しますが、「SD(Sustainable Development:持続可能な開発)」とはどのようなことを指すのでしょうか。
「持続可能な開発(発展)」とは、「将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損なうことなく、現在の世代ニーズを満たすような発展」を指します。*2
そして近年、「持続可能な開発(発展)」の考えの下に、経済と環境、さらに社会をあわせた3つの調和を意識し、将来の世代ニーズも考えた開発(発展)の必要性が問われるようになりました。
そのような意味が込められた「サステナブル(持続可能な)」はSDGsの根幹をなす考えであり、そのポイントは以下の3点です。*2
- 先進国と開発途上国の格差を考えること
- 将来世代のことを考えること
- 経済と環境の調和にプラスして、社会問題も考えること
SDGsの資金調達ギャップ
SDGsの策定当時、SDGs達成のために必要な投資額は年間で5~7兆米ドルと推定されていました。
そのうち、投資の必要性が特に高い低所得国のSDGs関連セクターで必要な投資額は年間3.3~4.5兆米ドルと推計されていましたが、実際の投資額は1.4兆米ドルに留まっていたため、年間の資金調達ギャップは約2.5兆米ドルとされていました。
これらのセクターへの投資は次第に増加したものの、資金が需要に追いつくことができなかったため、資金調達ギャップは年々拡大し、2022年時点では3.9兆米ドルにまで拡大しているとOECD(経済協力開発機構)は試算しています。*3
資金調達ギャップを解消するためには
資金不足を担う可能性があると注目されているのが、「ESG投資」です。
「ESG投資」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する取組も考慮した投資のことを言います。世界持続的投資連合(GSIA)によると、ESG 投資残高は、欧州が約 14 兆ドル、米国が約 12 兆ドルに対し、日本は約 2 兆 2 千億ドルと規模は大きくありませんが、2018 年には 2016 年の約 4.5 倍に大幅に伸びています。
図2 国・地域別のESG投資残高
出所)経済産業省「通商白書2020 第Ⅱ部 第3章 第3節」
日本の取り組み
日本政府は、新しい資本主義の下、「誰ひとり取り残さない」持続可能な経済社会システムを作り上げていくとの決意の下、「アクションプラン 2023」を定めました。
「SDGs アクションプラン 2023」は、「2030 アジェンダ」に掲げられている 5 つの P(People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ))に基づき、以下の事項に重点的に取り組むこととしています。
- People 人間:多様性ある包摂社会の実現とウィズ・コロナの下での取り組み
あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
健康・長寿の達成 - Prosperity 繁栄:成長と分配の好循環
成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備 - Planet 地球:人類の未来への貢献
省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
生物多様性、森林、海洋等の環境の保全 - Peace 平和:普遍的価値の遵守
平和と安全・安心社会の実現 - Partnership パートナーシップ:官民連携・国際連携の強化
SDGs 実施推進の体制と手段
SDGs アクションプランは、SDGs 実施指針に基づき、2030 年までに目標を達成するために、「優先課題 8 分野」において政府が行う具体的な施策やその予算額を整理し、各事業の実施による SDGs への貢献を「見える化」することを目的として策定されています。*4
サステナブル投資戦略としてのインパクト投資
インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動を指します。
従来、投資は「リスク」と「リターン」という2つの軸により価値判断が下されてきました。これに「インパクト」という第3の軸を取り入れた投資、かつ、事業や活動の成果として生じる社会的・環境的な変化や効果を把握し、社会的なリターンと財務的なリターンの双方を両立させることを意図した投資を、インパクト投資と呼びます。
インパクト投資は、ESG投資と同様、サステナビリティ(持続可能性)やレスポンシビリティ(責任・責務)の実現を目指します。また財務的リターンとの両立を目指します。その意味ではインパクト投資とESG投資は共通する基盤を持ちます。*5
サステナブル投資戦略にはさまざまなものがありますが、インパクト投資はそのなかで、SDGsの達成と最も親和性があり、直接的な効果をもたらし得る戦略です。*3
その理由として、インパクト投資の目的がSDGs関連の投資ニーズと合致していること、そしてその投資の効果を測定・評価・開示できることが挙げられます。
インパクト投資残高は2022年時点で1兆1640億米ドルと推定されており、インパクト投資の市場規模は年々拡大傾向にあります。*6
インパクト投資の増加は、前述の3.9兆米ドルの資金調達ギャップを解消する上で重要な役割を果たすことができると考えられています。
サステナブル投資戦略の一つとして有益なインパクト投資に注目してみましょう。
*1 出所)外務省「持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」p.2
*2 出所)国立環境研究所「知ってる?本当の「SDGs」活用法-押さえておきたい“4つのポイント” 」
*3 出所)MUFGファースト・センティア サステナブル投資研究所「今こそ行動を起こす時 SDGs達成のためにサステナブル投資が果たし得る役割」(2023年8月)
*4 出所)外務省「SDGsアクションプラン2023」< PDF>
*5 出所)GSG国内諮問委員会「インパクト投資について」
*6 出所)財務省「インパクト投資の国内外の最新動向」