インパクト投資とは?概要やメリット・デメリット、ESG投資との違いを解説

インパクト投資とは?概要やメリット・デメリット、ESG投資との違いを解説

世界で社会・環境問題への関心が高まる中、資産運用の世界ではインパクト投資への注目度が高まっています。
「インパクト投資」という言葉を聞いたことはあっても、その内容はよくわからないことが多いかもしれません。インパクト投資は個人でも実践できるため、定義や特徴を理解して資産形成に役立てましょう。

今回は、インパクト投資の概要やメリット・デメリット等について解説します。

インパクト投資とは

インパクト投資とは、財務的リターンとポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを同時に生み出すことを目指す投資行動です。*1

投資銘柄を選定する際、従来は「リスク」「リターン」の2つの基準をもとに価値が判断されていました。インパクト投資では、さらに「インパクト」という第3の基準も取り入れて投資判断を行います。

リスクやリターンだけでなく、事業や活動の結果として生じた社会的・環境的な変化や効果も把握することによって、財務的リターンと社会的リターンの両立を意図した投資を行っていきます。

インパクト投資で理解しておきたい用語

インパクト投資において、理解しておきたい用語は次の2つです。

出所)GSG国内諮問委員会「インパクト投資とは

インパクト投資では、企業の事業が社会や環境に与える影響(インパクト)を、数値化できる要素とできない要素の両面から把握し、投資を行います

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インパクト投資の市場規模

財務省の資料によれば、世界のインパクト投資の市場規模は以下の通りです。

出所)財務省 財務総合政策研究所 「インパクト投資の国内外の最新動向」P7

2017年から2022年の5年間で、市場規模は約10倍に拡大しています。

国内のインパクト投資も拡大しており、2021年度の投資残高は1兆3,204億円です。前年度調査の約4倍となっています。また、国内の市場規模のポテンシャルは5兆3,300億円とする調査結果もあります。*2

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インパクト投資の4つの構成要素

インパクト投資を構成する要素として、以下の4つが挙げられます。*1

  • 意図があること
  • 財務的リターンを目指すこと
  • 広範なアセットクラスを含むこと
  • インパクト評価を行うこと

インパクト投資は、社会・環境的課題解決への貢献を意図するものです。それと同時に、財務的なリターンの獲得も目指します。

インパクト投資は、さまざまな資産が投資対象に含まれるのも特徴です。上場企業だけでなく、非上場企業や実物資産、私募含む公社債なども投資対象となります。*3

また、インパクト評価を行うことが必須です。社会・環境的課題への取り組みの成果を定量的・定性的に把握し、それをもとに投資戦略がマネジメントされている必要があります。

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インパクト投資とESG投資は何が違う?

ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を組み合わせた言葉です。ESG投資では、売上や利益率といった財務情報に加えて、非財務情報であるESG要素も考慮して投資先を選定します*4

インパクト投資とESG投資は、社会・環境的課題の解決を目指すという点では共通していますが、相違点もあります。

インパクト投資は、財務的リターンの獲得が前提です。ただし、リターン獲得とは別の次元で、特定の社会・環境的課題解決を目的としています。インパクトの測定・可視化も必須です。

ESG投資も社会・環境的課題への取り組みを考慮して投資先を選択しますが、あくまでも中長期的な企業価値や投資リターンの向上が目的です。また、インパクトの測定・可視化が行われないケースもあります。*2

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インパクト投資のメリット

インパクト投資のメリットは以下の通りです。

リターンが期待できる

インパクト投資は、社会・環境問題解決への貢献と財務的リターンの両立を目指す投資手法です。社会・環境問題への取り組みに積極的な企業は、持続可能な社会を目指す現代では高く評価されるため、長期にわたって安定的なリターンが期待できます

社会貢献につながる

インパクト投資は、投資を通じて社会貢献ができるのも特徴です。インパクト評価の高い企業に投資することによって、社会・環境問題の解決に貢献することができます。

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インパクト投資のデメリット

一方で、インパクト投資には以下のようなデメリットもあります。

リターンを得られるとは限らない

どんな投資手法にも言えることですが、投資である以上、必ずリターンを得られるわけではありません。投資対象資産・銘柄の価格は、さまざまな要因で変動します。たとえ社会・環境問題の解決に大きく貢献したとしても、財務的リターンに直結しない可能性もあります。

投資対象を選ぶのが難しい

インパクト投資は、従来の「リスク」「リターン」だけでなく、インパクト評価を可視化したうえで、幅広い資産・銘柄から投資対象を選定しなくてはなりません。専門知識も必要になるため、個人がインパクト評価を行って投資対象を選ぶのは簡単ではないでしょう。

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インパクト投資の始め方

個人がインパクト投資を始める場合は、投資信託が選択肢の一つとなります。

投資信託は、複数の投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家がさまざまな資産・銘柄で運用を行う金融商品です。運用で得た利益は、投資金額に応じて投資家に分配されます。

投資信託の中には、インパクト投資をテーマとする投資信託(インパクト投資ファンド)もあります。投資対象の選定や運用を専門家に任せられるため、個人でもインパクト投資を実践しやすいでしょう。

投資信託は少額から購入できるので、まとまったお金を準備しなくても始められます。また、積み立てを活用すれば、自分で購入タイミングを判断する必要もありません。

インパクト投資ファンドは、商品によって着目しているテーマに違いがあります。ファンドを選ぶときは、目論見書でテーマを確認し、月次レポートなどで具体的な組入銘柄や過去の運用成果を確認するといいでしょう。

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まとめ

インパクト投資は、社会・環境問題解決への貢献と財務的リターンの両立を目的としているのが特徴です。インパクト投資ファンドを活用すれば、個人でも気軽にインパクト投資を始められます。投資を通じて社会貢献をしたいなら、インパクト投資を検討してみてはいかがでしょうか。

*1 出所)GSG国内諮問委員会「インパクト投資とは

*2 出所)財務省「インパクト投資の国内外の最新動向

*3 出所)金融庁「「インパクト投資」-その意義と推進-」P7

*4 出所)年金積立金管理運用独立法人「ESG投資

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