2030年には人間が乗れるドローンが登場?! いずれは"一家に一台"の身近な存在に

2030年には人間が乗れるドローンが登場?! いずれは"一家に一台"の身近な存在に

今後の成長が期待される、革新的な産業についてわかりやすくレポートする『MattocoLife調査隊が行く、いま注目の投資テーマ』シリーズ。今回は、実現されれば“空の産業革命”が起こると言われている、ドローンについて専門家に聞いてきました。

一般社団法人 日本ドローンコンソーシアム 会長
千葉大学名誉教授
野波健蔵

(のなみ・けんぞう)1979年、東京都立大学大学院博士課程を修了。NASA研究員などを経て、94年に千葉大学教授に就任。2008年千葉大学理事・副学長(研究担当)、2013年(株)自律制御システム研究所創業、代表取締役CEO、2014年千葉大学特別教授(現:千葉大学名誉教授)、2017年一般社団法人日本ドローンコンソーシアム会長
80年代より自律制御ロボットの研究を開始し、90年代半ばから地雷除去や海底測量用ロボットを次々と開発。98年からドローン研究に着手し、2001年に自律制御飛行をするドローンの開発に成功した。

2015年に流行語大賞を受賞したドローン

近年、話題に上ることも増えてきたドローン。無人の飛行ロボットの総称で、ラジコンのように操作できるものから、ある程度の自律性を備えたものまで、さまざまな種類があります。日本では2015年に流行語大賞を受賞するなど人々の関心を集めている一方、ドローンが荷物を届けたり人間を乗せたりする世界は、まだ遠い未来のような気もしてしまいますよね。

あとどのくらいすれば、ドローンを日常的に活用する世界が訪れるのでしょうか。また、ドローンが当たり前のものとなることで、私たちの生活はどう変わるのでしょうか。日本ドローンコンソーシアム 会長の野波健蔵先生にお伺いしました。

千葉大学の名誉教授でもある野波先生は、1998年からドローンの研究を続けてきた、いわば業界のトップランナー。ご自身も8機のドローンを所有されており、休日にはご自宅の近くでドローンを飛ばすこともあるそうです。

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すでに農業、測量、インフラ点検などの分野で活躍

——現時点では、一般の人にとってのドローン=ホビーのイメージが強いのではないかと思います。一方、すでに実用化されている、産業用の“はたらくドローン”もあると聞きました。

野波「現在、ドローン産業の規模のうち、は日本国内で1,400億円ほど、世界では1.6兆円ほどと言われています。国内では約半分がホビー用、残りの半分が産業用として活用されています。なかでも大きなシェアをもつのが農業の分野で、日本でもすでに、1万機近い農薬散布用ドローンが使われていると言われています」

農業の次に多い用途が測量です。都市部ではあまり見かけませんが、地方では測量用のドローンをよく見かけます。ドローン業界のなかでも、今もっともビジネスとして成長が注目されている分野です」

ドローンを用いた測量は「空中測量」と呼ばれ、従来のGPSなどを使う測量よりも誤差が少ない点が特徴。地上から撮影した画像データをもとに、より正確な地図を作ることができます。国の測量機関である国土地理院が、公共の地図を作る際にも活用している手法だそうです。

野波「国土地理院は全国に、地形をはかる目印となる『水準器』を埋めています。数年に一度、水準器をもとに地図を更新するのですが、雨風の影響などで水準器の位置がずれてしまうこともありました。そこで活躍するのが、ドローンを用いた空中測量です。人が歩いて水準器を確認しに行く必要がないので、コストの削減にも役立っています

空中測量は地図の作成以外にも、さまざまなシーンで活用されています。例えば土砂崩れが起こった時にドローンを飛ばして写真を撮影し、従来の地図データと比較すれば、どのくらいの量の土砂が移動したのかを高い精度で見積もることができます。災害時の復旧作業にかかる時間や、作業に必要なダンプカー・人員の予想にも、実はドローンが一役買っていたというわけですね。

ホビー、農業、測量に次ぐ産業用ドローンの用途には、インフラ点検があります。橋の高い箇所など、人間では簡単にアクセスできない部分の点検でドローンが活躍しています。

橋脚部のドローンによる点検

写真提供:日本ドローンコンソーシアム

野波「下水道管の点検に使うマイクロドローンが好例でしょう。日本には約48万km以上、地球12周を超える長さの下水道管があり、その老朽化は社会問題にもなっていますが、人の入れない狭い下水道管の点検は困難です。そこで、両手に乗る程度の大きさのマイクロドローンにライトとカメラを乗せて下水道管の中に飛ばし、内部の写真を撮影して点検を行っています」

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人間の移動に使う“パッセンジャードローン”

——ここまで代表的な産業用ドローンの用途を伺ってきましたが、意外にも物流の分野では使われていないのですね。

野波「日本では日本郵便や楽天がドローンのプロジェクトを立ち上げているものの、まだビジネスにはなっていません。物流ドローンの分野では、米国・中国が先を行っている印象ですね」

「たとえば米国のスタートアップ企業ジップラインは、ルワンダでワクチンや治療薬をドローンに乗せて運んでいます。舗装された道が少なく車ではスピードを出しにくいことに加え、内戦が多く荷物が略奪されてしまう恐れのあるアフリカでは、空路での運輸が適しています」

「同社のドローンは、100~200kmの距離を30kgほどの荷物を乗せて運ぶことができます。プロペラではなく、飛行機のような固定翼で飛ぶタイプのドローンで、時速200kmものスピードを出せる上、農道のようなちょっとした滑走路があれば離陸が可能。ユニセフも支援している、多くの命を救うドローンです」

——これから広がっていきそうな、ドローンの新しい用途はありますか?

野波「今後の大きな流れとしては、大型ドローンの開発が進むのではないかとみています。というのも、100~200kgくらいの荷を運べる物資運搬ドローンへの需要がとても高いからです」

――どのようなシーンで利用する目的なのですか?

野波「たとえば山で木を切り倒した後、大きな木をふもとまで運ぶのは大変な作業です。山中にはトラックの通れる道路などがない場合が多く、今は有人ヘリを使うのが一般的です。しかし有人ヘリをチャーターするコストは高く、これを無人機にできないか……というリクエストは多いのです」

「日本ではまだ技術的に開発できていませんが、もし100kgの荷物を安定して運べるドローンが完成すれば、当然『人を運びたい』という話になるでしょう。2030年ごろには、人間の移動に使う“パッセンジャードローン”がどんどん飛び始めるかもしれません」

——あと10年で人が乗れるドローンが出てくるだなんて、予想だにしていませんでした!

野波「いずれは家電のように、ドローンを“一家に一台”もつ時代も来るかもしれません。ドローンがスーパーの帰り道に重い荷物を持ってくれたり、傘を持って付いてきてくれたり、犬の散歩に行ってくれたり……ドローンの存在は、どんどん身近になっていくと期待しています」

後編につづく

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