火災保険にはどのような役割があるでしょうか。「自宅に火災が発生した時に保険金が支払われる保険」という認識をお持ちの方は多いと思いますが、それ以上の機能や補償内容について、深い知識がある方は意外と少ないものです。
実は火災保険は、ライフスタイルの変化に応じて柔軟にメンテナンスをしていく必要があるのです。
そこで今回は、そんな火災保険の役割について少し詳しく見ていきたいと思います。
・建物と家財が対象
火災保険には、大きくは建物自体を補償の対象とするものと、建物内の家財を補償の対象とするものの2種類に分けられます。
「建物」とは、建物それ自体や門・塀・垣や物置などのことを指し、家財とは、ソファやカーテン、家電などのことを言います。例えば、建物のみを補償の対象とする火災保険に加入していた場合で自宅が火災に見舞われた場合、部屋の中の家財に及んだ損害までは補填されませんので注意が必要です。
・補償内容は火災だけではない
火災保険の補償内容は、火災発生時だけに限りません。落雷や風災・雹災・雪災などの自然災害の他、ガス管などの破裂・爆発による損害、水災による床上浸水、更には盗難による損害と幅広く補償する商品もあります。居住する地域や周辺環境によっては、こうした災害に見舞われる可能性が高いと考えられる方もいるのではないでしょうか。
また、保険会社やプランの内容にもよりますが、「不測かつ突発的な事故」による損害も補償対象となるケースもあります。例えば、模様替えでソファを動かしていた時に誤って壁にぶつけてしまい壁が破損した場合など、日常生活で起こりうる事故でも保険金が支払われる場合もあるため、加入時にはしっかりと検討してみましょう。
火災保険の見直しは必要?
火災保険の期間は10年以上の長期のものや、1年間などの短期のものまで様々です。前述の知識を踏まえ、定期的な見直しは必要なのかどうか、メリット・デメリットの面から検討してみましょう。
見直しをするメリット1:必要な補償を確保できる
加入時には「必要」と思って契約した火災保険でも、年月の経過とともに実際のライフスタイルにフィットしなくなることもあり得ます。定期的に補償内容を見直すことで、「今、何が必要なのか」を明確にし、自らの生活にマッチした補償を選ぶことが可能になります。
詳しくは後程詳しく解説しますが、適切なタイミングで、適切な補償内容に見直しをすることで、万が一の時にも慌てず、被った損害を補填し、家計の圧迫を未然に防止することが可能になります。
見直しをするメリット2:保険料を節約できることがある
「火災保険のみに加入している」という方は少ないかもしれません。多くの人は、自動車保険を始め、生命保険や傷害保険、医療保険など、様々な種類の保険に加入されているかと思います。
異なる保険種類であっても、一部で補償が重複する場合もあります。定期的に見直しを行うことで、こうした補償の重複を防ぎ、無駄な保険料を節約することが可能になります。
見直しをしないデメリット:火災保険を有効活用できない
定期的に火災保険を見直すことで、「どのような場合に保険金が支払われるのか」を振り返ることができます。つまり見直しをしないということは、「自らが加入している火災保険について知る機会を失う」ということになります。
これによって、「保険金が支払われる事由が発生しているのに、その機会に気付かない」という状況が発生してしまう可能性があります。これは大変もったいないことです。せっかく保険料を支払っているのであれば「単なるお守り」ではなく、いざという時にしっかりとした補償を受けられるよう定期的に契約内容を見直しましょう。
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見直すタイミングをどのように考えればいい?
では、実際に「どのタイミングで」火災保険を見直すべきなのでしょうか?
もちろん最良のタイミングは、「必要」と思ったときなのですが、ライフイベント発生時なども、積極的に見直す機会にしてみましょう。
見直すタイミング1:結婚
結婚すると、同居する家族が増えることとなります。このタイミングで生命保険などの補償内容を見直す方も多いかもしれませんが、火災保険においても見直すべき点があります。
・家財の補償額を再検討
「家族が増える」ということは、それに伴って生活用品が増えていくことを意味します。家電や家具など、一人暮らしの時と比較しても家財の必要補償額は異なりますので、保険金額の引き上げを検討することが必要になります。
見直すタイミング2:出産
出産を経て家族が増えると、結婚の時と同様に、部屋内の物が増えることとなります。また、子どもがいることによって、結婚の時とは少し違ったリスクも顕在化してきます。
・家財の補償額アップ
結婚と同様に、家財の必要補償額は増加します。子供用の家具や買い増しした家電、その他の物品などを加味した保険金の再検討が必要です。
・「不測かつ突発的な事故」への対応も必要に
例えば、子どもが部屋で遊んでいる時に、意図せず家財を壊してしまったり、壁紙・床などを傷つけてしまうことは十分に考えられます。こうした場合には、「不測かつ突発的な事故」に対応した補償にも加入しておくと、リスクヘッジになります。この補償は、保険会社によって内容が異なるため、加入されている保険会社または代理店に確認してみると良いでしょう。
・家の外で他人に損害を与える可能性も
子どもが外で遊んでいる時に他人の物を傷つけてしまったり、デパートなどで買い物している時に商品を壊してしまったり、といったリスクも考えられます。
多くの保険会社の火災保険には、「個人賠償責任保険」が付加できる場合が多いため、出産を機に、こうした補償への加入を検討するのも有効です。
見直すタイミング3:引越し
引越しをすると、生活環境が大きく変わります。それに伴って、結婚や出産の時とは異なるリスクが顕在化する可能性もあるため、見直しの際には注意が必要です。
・水災への補償は万全か
引越しによって、家を取り巻く環境、地理的な条件が変わります。川が近い場所に引越した場合には、床上浸水などを含む水災への補償が十分かどうかを確認する必要があります。
・道路が近いかどうかにも注意
道路が近いと、走行する車から飛んできた石で窓ガラスが割れたり、敷地内の物が壊されてしまうリスクもあります。また、車が運転を誤って家に衝突する、というリスクも考えられます。建物外部からの物体の飛来や衝突に対しても、火災保険で補償されるケースがあるため、この点にも注意が必要です。
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地震保険の役割と特長は?
地震大国である日本に住む私たちにとって、地震に対する備えは必須です。地震保険は文字通り地震による損害を補償するための保険であり、火災保険に付加する形で加入ができます。
地震によって火災が発生して損害が発生し、また建物が損壊したりした場合、地震保険に加入していなければ、保険金は支払われません。地震による損害を被ることが「万が一」とは言えない環境だからこそ、加入の是非については検討したいところです。
・火災保険金額の半額が上限
地震保険の保険金については、火災保険金として設定している金額の半額が上限となります。地震保険は国が推進する保険であり、民間の損害保険各社が引き受けた地震保険を国が再保険により引き受け、リスクヘッジしています。*1
地震による災害は被害が広範囲にわたることが多く、甚大な地震災害の発生時には国の予算から保険金支払いがなされることから、一度災害が発生すると国としても莫大な費用拠出となってしまうため、このような措置が取られています。
・建物だけではなく、家財にも付加可能
地震保険の特長の一つとして、建物の火災保険だけではなく、家財の保険にも付加できることが挙げられます。地震発生時は、部屋の中の家財が揺れによって落下したり、火災発生により燃えてしまったり等の被害が想定されます。
こうした事情からも、地震保険の検討時には、「家財の保険にも地震保険を付加するかどうか」の検討も非常に重要になります。
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まとめ
火災保険の見直しについて解説しました。加入してそのままになっているという方は、一度保険証券を見直してみて、今の自分のライフスタイルや考え方、周辺環境などにフィットしているかどうかを考えてみることが重要です。そのことにより、今の暮らしをもっとよくするためのヒントが見つかるかもしれません。
*1 出所)財務省「地震保険制度の概要」